三 嗚呼社會は
○一人の同情者なし-----○水鏡を執つて顔を浮ぶれば-----○天地我を捨てしか
 (編者曰冒頭六十五字を削る)嗚呼社會は、如何にして私に斯く慘酷無情なるや。因縁は私の衷情を解せず。益〃酷に、益〃逆解し、而して社會は一人の同情者なく、炎暑と戰ひ、今又烈寒と鬪ふ。水鏡を執つて、自己の顔貌を浮ぶれば、肉落ち、骨聳え、色蒼うして、生色なく、自然の温光さへ身に及ぼす。然れど、男子或觀念に向て意を決せざれば已む。已に決す。豈徒に是等に障害に依て意を碎かんや。然れど、私は今日迄何の爲に勉め、誰の爲に勵み、何の爲に耐え、誰の爲に忍びしか。(編者曰二字を削る)は猶慊らず、[所謂大問題を以て]我を責む。嗚呼、如何なれば斯く抂れる世ぞ。嗚呼、我は今より何の樂あり、何の甲斐ありて世に永らへん。將に來らんとする公判廷に爭ふは、何の爲ぞ。嗚呼、天余を捨てしか。地余を顧みざるか。
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