目 標
人工内耳を活用して装用者の生活の質(Quality Of Life)を高める。
参加者
装用者本人、家族、友人や同僚、ST、医師。
期 間
人工内耳埋め込み術の術前から開始し、手術後は人工内耳を使用している限り、原則的には永久に続く。
頻 度
装用者の条件(装用者の環境、失聴の時期、手術の状況、内耳の状態など)や、病院の体制によっても異なるが、特にはじめの1年間は定期的なリハビリが大切。
内 容
手術前
@ 人工内耳のしくみや特徴、限界、長所や短所の理解(本人と家族)
A 人工内耳を活用するための準備(読話などコミュニケーションの練習)
手術後
@ スピーチプロセッサーやヘッドセットの操作方法の理解
A マップの調整(マッピング)
B 補助機器や補助システムの理解
C 医学的管理(傷口、中耳、内耳や電極の状態)
D 聴き取り練習
E コミュニケーション能力の向上
F 人工内耳の受容(きこえの特徴や限界)
<マップの調整(マッピング)>
内耳に埋め込まれた電極の、どこにどのくらいの電気を流すかを設定するものが、マップ。
マップは装用者一人ひとりに専用のものを作る。体調や人工内耳に慣れることによって内耳の状態は変化する。それに伴ってマップも細かい修正を行う必要がある。
<マップの概要の説明>
チャンネル(使用電極対の):聴き取りに使うための音の一部
Tレベル(最小可聴閾値:きこえる範囲でもっとも小さい音の時の電流量)
Cレベル(最大快適閾値:快適にきこえる範囲でもっとも大きい音の時の電流量)
モード(使用電極対):刺激する電極の組み合わせ
その他
<マッピングの流れ>
1.問診
きこえの状態や問題点、調整への要望などをリハビリ担当者と話し合う。
具体例)
(例えば、大きすぎてビンビンひびく、甲高くてキンキンする、こもった感じ)
2.TレベルとCレベルの測定
TレベルとCレベルをチャンネルごとに測る。
Tレベル…かすかにきこえ始めるとき
Tレベルがわかりにくい時
Cレベル…大きい音だが不快ではないとき
3.SWEEP(音の大きさのバランス調整)
全てのチャンネル(使用電極対)について、Tレベル、Cレベル、50%(TとCの中間)の「音の大きさ」をそろえる。音の質は内耳のどこに電極があるかで、すでに決まっている。ここで調節できるのは音の大きさ(電極に流す電気量)だけ。
「2番目が<少し>小さい」「4番目が<かなり>大きい」などと具体的に伝える。
人工内耳に慣れていないうちは、「だいたい同じ位の大きさ」になればよい。
慣れてきたら、なるべく細かく、納得できるまで調整したほうが音のバランスが良くなる。
5つすべてがきちんと聞こえるようにする。自信のない時はもう一度聞く。
5つすべてを同じ音にするのではなく、「同じ大きさ(強さ)」にする。
ちょうどいい大きさよりもやや小さめの大きさにそろえる。
4.試聴
マップを作成して試す。いろいろな音や言葉、声を聴いて、マップの問題点を探す。問題がなければ、そのマップを登録して、マップ調整は終了。
5.微調整
試聴の結果をもとに、マップの細かい修正をする。その後でまた新しいマップを作成し、試聴する。
マップの調整の頻度は、音入れ直後は頻繁に行う方が良いが、その後は非常に個人差がある。一般には、あまり頻繁にマップを変えると、いつまでもそのマップの音に慣れることができなくなるので、2ヶ月以上は同じマップを使う。きこえが良好ならば、同じマップを何年も使用する場合もある。しかし、装用者本人が気づかないところできこえが悪くなっていたり、問題がおきていることもあるので、半年から1年に一度は検査の意味でも診察とマップ調整を受ける方が安全。マップ調整をして、大きな変化がなければ、調整前のマップを引き続き使用することも可能。
「自分のきこえは自分が作る」という意欲と責任感を持ち、リハビリ担当者と協力することで、より聴きやすいマップを作っていけると思う。
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