人工内耳友の会「東京」支部第8回勉強会
2005/09.18 
人工内耳友の会「東京」支部会長 宮嶋建二

電話を使ってみよう

始めに 「電話が必要な時に掛けることが出来れば」「電話を受ける事が出来れば」と思う人は多いかと思います。
私たち人工内耳者にとって電話は日常の中での手軽な伝達機器と言えないのが実状でしょう。

そうした中でも地震や突発的な災害が何時起こるか分かりません、こんな場合にでもいち早く家族や子供達と連絡する事が出来るとしたらとても有り難いことです。
「人工内耳では電話の会話は無理」と諦めている人はいないだろうか。
確かに電話での会話は難しい面は有るが使い方の概念を変える事で利用価値は大きく変わります。
普通会話が成立しなくても良いのです、一定の事が分かれば十分にその役割を果たす事を知っておきましょう。
特に装用児の場合は日頃から電話に慣れ親しんで置くことは重要です。
「非常時の話の内容」や「避難の為の決め事」を作りしっかり「聞き慣れさせて置く」事で危険から守れる確率は増大するはずです。
更に携帯電話は一番身近な所に置くことが出来るし移動時にでも大変に役立つことを認識して置きましょう。
電話から全ての内容が分からなくても声を聞けば「安全」「居場所」「状況」等の事が直ぐに分かり十分な安心材料に成ることも知っていましょう。
又いざと言う時に「直ぐに電話を受けて対応出来る」ようにするには日頃から電話に親しんで置く事がとても大事です。
電話の実践的対応法を把握して置けば慌てないで使えるのは事実です。
「電話、何時でも大丈夫」と言う気持ちを作り準備して置きましょう。
やりとりの始めは必ず有線の電話を対象としましょう、ワイヤレス電話や子機等は聞き取りにくいので自分も相手もお互いに使うのは避けましょう

電話を掛ける前に用意すること

1、  電話アダプタが有れば必ずそれを活用しよう。
※電話アダプタとは電話線から直接スピーチプロセッサに接続し音声入力する機器
※電話アダプターはコクレア社等で純正品が販売されています、迷わず此の品の購入をお勧めします   商品ナンバーz43085  ¥7950円 【税別】 

【携帯アダプタ、耳掛けよう共に同料金】 

※接続の方法は後ページの別紙か購入品に解説書が有ります。
※その他詳しくは各機器の取り扱い会社にたずねてください。
※市販品【ソニー】等も有りますがこちらの製品は格安ですが純正では無いので聞き取りの善し悪しについての保証は有りません。

2、その他テレホンガイド等使い勝手の良い物が有ればそれを使用しても良いしょう。
※テレホンガイドとは受話器に付ける音声拡声機器です

3、周りは出来るだけ静かな環境にしましょう。
※雑音の有る中での聞き取りが悪く成るのは電話も同じです。
4、会話の途中で電池切れを起こさない様に確認しておきましょう。
※途中で音が消えてしまうのはパニックに至りやすいし、いろいろな障害があります。
5、気持ちにゆとりを持たせ聞き耳モードにしましょう。
※気持ちが高ぶっていると聞き耳モードにならないので深呼吸したりして気を落ち着けよう。

電話を掛けて見よう

1、 始めは天気予報177や時刻案内117等に掛けてみよう
※相手方が一方的に話すところで良いのでダイヤルして電話から伝わる声を聞いてみよう。
※始めは早口のようで良く聞き取れないかも知れないが何度か繰り返し聞きいてみよう。
※ここでは大体の聞き取り音声の感覚を把握する為ですから良く聞き取れなくても大丈夫です。

2、 家族や友人で人工内耳を良く理解しており気兼ねなく話せる人から始めてみよう。
※平常心で電話出来る人が特に良い。
※間違った聞き取りをしても当たり前のことですから気にせず進めよう。

3、出来るだけ聞き取りやすい話し方をして呉れる人を選ぼう
※ゆっくりはっきり歯切れ良くを実行してくれる人が最適
※自身と対話する機会が多く聞き慣れている人なら更に良い

4、感度調整つまみで常に感度を調整しよう
※感度調整つまみは固定せずに常に指を添えて聞き取りやすく微調整しながら聞く
※話しながらの途中でも相手の音声に合った感度を探りながら話そう。
※ここで注意して置きたいことは声そのもの耳感の善し悪しで調整するのではなく「良く聞き取れる」レベルを探ることです。

5、先ず自分から話し掛けよう
※語りかけの電話は相手からの返事や答えを予測しやすいので試して見よう。
※自分の話す声もしっかり聞きながらスピードは極力抑えてゆっくり話そう
※自分の話し方が早いと気持ちが急いでしまい聞き取りにも良くないから押さえよう。
※自分の話す声と相手の声が重ならないように間を置いて話しましょう。
※焦りの会話は相手の言葉と重なってしまうので焦らずにゆっくりを実践しよう

6、相手と話しながら出来る限り復唱するようにしましょう。
※復唱は聞き取りが間違っている場合でも相手が気づいてくれるし自分自身がしっかり確認出来るので必ず実行しよう。

「駅の改札に11時に来て下さい」
「はい 駅の改札に11時に行きます」
「障害者手帳を忘れずに持ってきて下さい」「はい、障害者手帳は忘れずに持っていきます」

7、緊急の場合は相手に元気で有ることだけを知らせる。
※会話が成立しなくても自分が元気で助かったことなどを相手に知らせれば良いので一方的に声を聞かせる。 
受け電話をする前に「電話が受けられる」と言うことは私たち装用者や装幼児を持つ親御さんにとって大変有り難いことです。
地震などが頻繁に起こり関東での大地震もあり得るなどの報道が盛んにされています。台風や火災等と言った不測の災害も何時起こるか分かりません。
あなたに又は家に残した子供達の安全等を出先からでもが電話で確認出来るとしたらとても安心できます。
特に家で留守をしている装用児が電話を受けられるとしたら親御さんはどんなにか嬉しいことでしょう。
子供の声が聞こえただけで十分役割を果たして呉れる事は言うまでも有りません。
それにはとにかく日頃から電話を取れる様に親しんで置く事が大事です。勇気を持って取りかかってみましょう。

電話を受けてみよう

1、  ベルが鳴っても慌てないで一呼吸置いてから一端は耳掛けマイクで受ける。
※「そのまま少しお待ち下さい」「人工内耳【補聴器】のためアダプターと接続します」と言て受話器をいったん置く。
※ベルを鳴らしたままで接続に手間取ると相手が留守と思い切ってしまう場合がある為
※出来れば待たせている間相手をヤキモキさせないために置いた受話器に向かって「今用意をしています」等と話しかけましょう

2、スピーチプロセッサにアダプターを接続する。
※この時はけして慌てずにゆっくりと確実に接続作業を行いその間に多少でも高ぶった気持ちが有ればそれを静める。
※ベルが鳴っている間に用意するのは焦りの原因にもなり機械を落としたりするなど思わぬ事故にも繋がりかねないので止めよう。

3,勇気を持って会話に取りかかろう
※ゆっくりとした口調で「お待たせいたしました」と言う事から受け始める。
※自分の焦りに成らないためにとにかくゆっくりの語りを心がける※モニターなどで相手が誰か分かる場合はその人の特徴を思い浮かべながら聞き取ろう
※相手が誰か分からない場合でも気を鎮めて声に集中して聞いてみよう
※聞いていて途中で話が分からなくなっても最後まで聞く
※最後まで聞くと全部の内容が分からなくても大まかな事が把握できる事もある。                     ※又最後まで聞いて置くと再度話してもらった時の理解度が上がる
※再度聞いてもどうしても話の内容が把握できない場合は分かるところまで復唱をしながら聞き取りにくい箇所を手に知ってもらう
例 
「明日は駅の2番ホームから  東京行きの電車に乗って下さい」
「明日は駅のからの後が良く聞き取れません」
「もう一度ゆっくりと話してみて下さい」
※再度話してもらうことに遠慮をしない事、躊躇をして聞き過ごさないようにしよう。
※それでもどうしても聞き取れなくても当たり前の事ですから気にしないこと。
※落ち込む必要はけして有りません、そう言う時の対処法も用意して置きましょう
※マニアル等を作って張っておくのも便利 

「残念です。骨を折って頂きましたが人工内耳【補聴器】では良く聞き取れませんでした」
「お急ぎの場合は○○番がファクスになっておりますのでそちらに文章で送って頂くか後ほど○○時頃には家族が帰りますのでお掛け直し下さい」等の返答対策を考えて置くと便利で有ると共に大いに安心できる。

4、セールス電話が頻繁な今日だが練習のつもりで受けてみよう。
※大半が早口で一方的な話が多いので殆ど聞き取れない。
※何度も受けていると大体話し方でセールス電話と言うことは分かってくる。
※セールス電話と家族等の電話のかけ方の違いを知っておくことも大事
※適当なところで切り上げるようにしよう
※「私は留守番ですから分かりません」「人工内耳【補聴器】なので会話は無理です」等と言って切ろう。
※こちらが切る前にガチャンと切ってしまうようなふとどき者もいるが気にしないでやらせておこう。 

携帯電話使う前に

携帯電話はどうもと引っ込み思案のあなたも簡単な活用のし方によって大いに役立ちます。
直接ではうまく聞き取れない場合はイヤホーンを使うなどすると置き電話より数段理解度の高い聞き取りが可能な場合もあります。
又聞き取りが困難でも私たちの「耳」の代役をしっかり担ってくれるのはメールです。
待ち合わせや用件を伝えるのに大変便利で有ることは今使用している人が一番良く知っているはずです。
上手に使えば料金も安いし電話以外の機能も沢山あり大変役に立ちます。

携帯電話を使ってみよう

1、  携帯電話を毛嫌いしない
※機械物は苦手だとか、電車などでカチャカチャやっているのを見ると どうも・・・;と言う方もいるかと思うがマナーさえ守れば良いことです。
※嫌いという先入観を捨てて親しみを持って取りかかろう。

2、  携帯電話で聞こえ方を確認してみる
※掛けマイクやラペルマイク等それぞれのマイクのどの位置が一番聞き取りやすいか確認しよう。
※スピーチプロセッサの感度調整をしてみて聞き取りやすいレベルを確認しよう
※周りに雑音が有る場合や電波が悪い場合は適切な所まで位置を変える。
※風などが有る場合も風音が障害になるので位置を変えよう。

3、  携帯電話はイヤホーンマイクを活用すると聞き取りがアップする
※風のある場所や騒音箇所から避けられないような場合に有効性を発揮する。
※ハウリング等が起きる場合もイヤホーンマイクが有効
※イヤホーンマイクはダブルマイクの物の方が有効性が高い

4、  携帯電話はメールを活用し情報を交わそう
※目で正確な情報を確認できて間違いがない
※保存しておくと見直せる便利さも備えている

5、  写メールはいざと言う時に大変役に立つ
※避難場所などは文章での説明が難しい場合などは目で見える写真メールが役立つ。
※大事な場所や説明が難しい物等は写真を撮って保存しておこう。

6、  周りに携帯で迷惑になる人が居ないか確認をしよう。
※携帯は便利だが思わぬところで迷惑を掛ける場合があるので特に病院や電車内飛行機内などとにかく人混みの中では注意しましょう。
※受信発信時に人工内耳に雑音が入る場合が有るので携帯電話とスピーチプロセッサは位置を少し離して持とう。

7、  日頃から親しんでおくことで必要なときに直ぐ役立つ
※電話で子供達と良くやり取りをして「装用児の聞き取りにくい箇所」や「聞き間違う箇所」を良く確認し実際に起こった時のための実践的やりとりを練習しておくと有利。
※非常時に使う言葉など大事な言葉は日常頻繁に使うことで慣れさせて置き「聞き取りにくさを克服」しておこう。

参考

「避難場所は○○」「○○に逃げなさい」
「誰それの誘導に従いなさい」等など様々な状況を判断して必要な言葉の拾い出しをして頻繁に使いましょう。
※落ち合い場所や避難経路など事前に拾い出して覚えさせよう。
以上のような事柄を上げましたが皆さんに必ずしも当てはまることばかりかどうか分かりません。
出来ればこのマニアルを元にそれぞれ必要なことを付け加え「自分の最適マニアル」に変えて利用していただけたら幸いです。