浩之の憂鬱 (すいません、kageさん(^_^;)) 「浩之ちゃん」 あかりが言った。 「いいよ、片づけ位私がやるから」 「そんな体でなにいってんだよ。いいから洗い物はマルチに任せときな。 皿を運ぶくらいはオレがやるから」 「でも、料理までつくってもらったんだから片づけくらい・・・」 「臭いで気分悪くなってできなかったんだろ。いいから座ってコーヒー でも飲んでろ。いや、コーヒーは体に悪いから、麦茶な」 「そうですよー、私に任せてくださーい。はい麦茶でーす」 「うん、ありがとう、マルチちゃん、浩之ちゃん」 大きなおなかをゆすって椅子に座り込んだあかりがいう。 「るん、るらら〜」マルチが鼻歌を歌っている。洗い物や掃除をしている時の マルチは本当に楽しそうだ。 それをじっと見ていたあかりが声をかける。 「マルチちゃん」 「はい、なんですか?」 「お願いがあるんだけど聞いてくれる?」 「はい、何でもおっしゃってください。あかりさん」 「うん・・・」あかりがじっとオレを見つめて言った。 「わたしがこんなだから、当分浩之ちゃんの相手をしてあげられないと思うの。 だからマルチちゃん、当分の間、浩之ちゃんのお世話をおねがいできる?」 「ぶっ!」 オレは思わず飲みかけのコーヒーを吹き出した。 「はい、もちろんです〜。一生懸命お世話いたします〜」 にこっとほほえむあかり。オレの方はどっと汗が噴き出してきた。 「し、知ってたのか!?」 「・・・うん。マルチちゃんが話してくれたわ」 マルチは何のことかわからず、きょとんとオレとあかりを見比べている。 「すまん・・・」 「ううん、マルチちゃんはかわいいし、そういう機能がついているなら仕方ない わ。内緒にされているのは悲しかったけど・・・」 ちょっぴりトゲのある言い方であかりが言う。 「わたし、マルチちゃんも好き。浩之ちゃんも大好き。マルチちゃんだったら許 せるわ。その代わりもう隠し事はしないで」 「すまん・・・」オレはまた言った。 「あのう、あかりさん、もしかして私が浩之さんのお世話をすることはいけない ことなんでしょうか?」 マルチが心配そうな声でたずねる。 「マルチちゃん」 あかりがやさしい声で言う。 「浩之ちゃんに可愛がってもらってどうだった?」 「はい、とっても嬉しかったです。やさしくてあったかくって」 「私もそう。だから独り占めにしないわ。マルチちゃんだけ分けて上げる」 「ありがとうございます」 本当に明るい笑顔のマルチに少しだけ困ったような笑顔のあかりが、急にオレ の方に向き直る。 「その代わり、浩之ちゃん」 「は、はい」 「私とマルチちゃん以外の娘に浮気したら許さないからね」 「あ、ああ、もちろんだ。そんなことねーだろ」 とは言いながら、何人かの顔が脳裏に浮かんで離れていった。 マルチとの関係を認めてもらったのはいいが、これからはあかりの尻にしかれっ ぱなしなんだろうな・・・とオレは思った。