ニューパラダイムを覗き読む

「アトランティス」

  フランク・アルパー著

  高柳 司訳   香取孝太郎監修

  コスモテン・パブリケーション刊

 この本を一言で評すると「不思議な気分のする本」だ。かつてあったと言われる古代文明アトランティスで用いられていた科学を紹介している。その科学の内容はクリスタルに関わること。「ただの石がなんだ?」と思われる方がいるかもしれない。実は私もそう思った。しかし読んでみると不思議に先が読みたくなる。そこに書いてあることが事実か否かはわからんが、とにかく先を読みたくなる。そんな本だ。「そんなまさか・・・」と思いつつ先を読んでしまうから、心と理性が引き裂かれるような体験だ。しかもクリスタルの説明が妙の細かい。そんなこと書いて嘘だったらどうするの?と思いつつも、きめ細かい描写につい引き込まれてしまう。もっとも僕にクリスタルに関する不思議な体験があったから、疑問を持ちながらも素直に読めるのかもしれない。

 僕の友人にK.C.Jonesというヒーリング・ストーンを売っているお店で働いていたsという女性がいる。彼女は石にずっと興味を持ち、石から様々な情報を受け取るようになった。彼女に石を持たせると、その石がどこから来たものかを当てるのである。sと何人かで会ったとき、友人のひとりが青く透明な石を取り出した。するとsが、「その石を浄化してあげるね」という。

 石を手のひらの上に載せ、もう一方の手を上からかざした。しばらくは何も起こらなかったが、三分ほどそうしていると不純物を少し含み、きらきらと輝いていた石のなかに光の粒子がまわりはじめた。それも石の中心に向かって渦を描いていく。速度は中心になるほど速く巻き込まれていく。そんな光を見るのはもちろんはじめてだった。いくつもの光の粒子が石の中心に向かってまわっていった。

 そう、それからこんな話しを聞いたことがある。国際イルカクジラ会議のテーマ曲「All as one」を演奏している LOVE NOTES のリーダー、ヒロ川島はかつてとても気に入った石を持っていた。彼は旅行で行ったバリのホテルでその石のパワーを強くしようと東西南北に水晶を置き、その中心にお気に入りの石を一晩置いておいたそうである。翌朝、石を見ると粉々に砕けていたそうだ。もちろん水晶はそのままである。いったいどうしたのかそのときの彼には全然わからなかった。石にいったいどんな力が加わったのか・・・。そこから彼はこんな教訓を読みとった。

「自分はいつも『もっと・・・だったら良いのに』『もっと・・・にしたい』と思い続けている。自分が好きな石はそのままで充分好きな石なのに、そんな石にさえ『もっとパワーを・・・』と考えてしまう。どうしてその石がそのままでいいと思えなかったんだろう」

 上のふたつの体験は自分がそれを体験したり、ヒロ川島から直接聞かなかったら、とうてい信じることのできない話しである。しかし僕はそれを体験したし、ヒロ川島の人間性を知っていてその話しを直接聞いた。僕にとっては疑いようがない。と言っても、だからこれが真実だと声高に叫ぶつもりもない。

 人は何に興味を持っているか、何を信条としているかによって見るものが違ってくる。たとえば一輪挿しに活けられた花を見て、きれいと思う人と、もうすぐ枯れてしまうのかと悲しみを感じる人がいるだろう。蟻の行列を見て「元気に働いているな」と嬉しく感じる人と「お前たちも一生そうやって苦労して働き続けるのか」と悲しみを感じる人がいるだろう。

 思いこみで人は視覚さえも変えてしまう。心理テストにある、若い令嬢に見えたり、醜い老婆に見えたりする絵をみなさんはご存じだろう。もしかすると私たちは科学という一方的な見方だけを信じていて、もっと違う視点からのものの見方を忘れているのかもしれない。科学によって見ると老婆に見えていたが、別の見方では令嬢に見える。またはその逆に科学では令嬢に見えていたものが、別の見方では老婆に見える、そんなことがたくさんあるに違いない。

「アトランティス」はそんな、ものの見方の違いに気がつかせてくれる。

「アトランティス」に書かれていることが事実か否か、私にはわからない。しかし、それが事実であることを信じ、生きていた人々がいたとしても不思議ではないような気がする。

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