「プレアデス+ 地球をひらく鍵」

  バーバラ・マーシニアック著  大内 博訳

     コスモテン・パブリケーション刊

 チャネリングという言葉を僕が知ってからもう10年はたつだろう。ある書店で並んでいた一冊のあやしげな本からその言葉を知った。「バシャール」。その本を開くとそこに並んでいた文字は、当時のまだ未発達なワープロの文字だった。10年前やっと一般に発売された頃のワープロは、文字に斜めの線があるとその線はギザギザに印刷されてしまったのだ。そのギザギザ線をいっぱい含んだワープロ文字で「あなたのワクワクすることをしなさい」と何度も繰り返し書かれていた。もちろん「ワクワク」という文字はギザギザがいっぱいで、なんか全然ワクワクできない文字になっていた。

 いくら予算がないからといって、ワープロで本をつくるとはすごいことするな・・・と思いながら立ち読みをした。そのころはまだDTPなんて言葉すら知らなかった。

 ダリル・アンカ著「バシャール」は著者ダリル・アンカが宇宙存在「バシャール」とチャネリングをして語った内容をそのまま文字にしたものだった。チャネリングの場所はどこかセミナーができるような会場らしく、一般の参加者からの質問にバシャールが答えるようにして進められていた。

 昔から不思議なものが好きだった僕は、さっそくその本を買い読んでみた。しかし、なかなか読めなかった。何ページか読むとすぐに眠くなる。こんなに眠くなる本はつまらないんじゃないかと思い、読むのを何度かやめるが、どうしても気になるのでまた読む。結局すべてを読むのに半年ほどかかった。読み終わっても、読んだり読まなかったりしていたせいか、何を読んだかよくわからなかった。頭に残ったのはただ「あなたのワクワクすることをしなさい」。

 それから数カ月後、友人が関野あやこさんのセミナーに行こうという。

「誰それ?」

「日本人でバシャールにチャネリングする人だよ」

 へえ。日本人にもそんな人が現れたのかと思い、興味津々でそのセミナーに行くことにした。2日間のセミナーだったが、1日目の土曜日は仕事が入って行けなかった。2日目、当時の僕は確かに興味はあったが、なんか嫌だなという感覚もあったので、朝行くのに躊躇した。結果30分ほど遅刻した。

 会場に着くと100人ほどのひとたちが静かに座っている。

「では、この女性に意識でつながってみましょう」

 まだ若い関野さんは、ひとりの女性の肩に手を置き参加者の意識を誘導していく。僕もすぐに席を見つけ、誘導にしたがった。

「ゆっくり静かに目を閉じて、リラックスしてください。では、あなたのからだから彼女のからだへ白い帯がつながっていることを想像してください」

 僕の閉じたまぶたの裏には白い帯が会場の中央へと向かってスルスルと伸びていくのが感じられた。

「では、あなたの目の前に現れる映像をそのままにしておいてください」

 しばらくするとまぶたの裏にひとの顔がぼんやりと見えた。そしてその顔が「あなたのことなんか興味がない」と言わんばかりにスッと横を向いた。すると映像はパッと変わり、目の前に海が広がった。しかしそれは普通の海ではない、皮膚の海だった。その皮膚の海が遥か水平線の彼方から裂けてくる。裂けた口はパックリと赤い。その裂け目が僕の目の前まで迫ってきた。

「はい、ゆっくり目を開けてください。いま見えた映像をみなさんに分かち合ってください。どんな映像が見えましたか?」

 何人かのひとが手をあげ、自分が見た映像を語っていった。僕は手をあげてみようかとも考えたが、なんか恐いのでやめておいた。

「では、みなさんがつながった彼女にどんな気持ちでここにいたかを話してもらいましょう」

「私は、ここに・・・ひとに裏切られて悲しいという気持ちでいました」

 鳥肌がたった。僕の見た映像はそういうことだったのか。しかし、そんなもの単なる偶然かもしれない。いや、起きたことを素直に受け入れよう・・・。

 その体験が自分にとってあまりにも強烈だったので、その日の講演会のことはそれ以外ほとんど覚えてない。

 以来「ワクワクすること」が気になった。会社では自分がしたいと思った仕事が奇跡的にできるようになった。当時の僕は入社二年目、普通ならばしたいことなどできるはずもなかった。しかし「ワクワクすること」に導かれてラジオ番組の企画を立てOn Airさせたり、有名アーティストの全国ツアーについてまわったりもした。そしてついには会社を辞め、独立する。

 宇宙存在「バシャール」が実際にいるかどうか、僕には確かめようがない。しかし、そこで語られた言葉が僕の人生をつき動かしたことは確かである。

 今回紹介する「プレアデス+ 地球をひらく鍵」も最近増えてきたチャネリング本の一冊である。今回ここに書評を書こうと読んでみた。この本は95年の10月に出版され、発売されたばかりの本を僕は知人からもらい、ところどころ読んでいた。通読は今回がはじめてである。にもかかわらずこの本にはここ数年間の僕の興味をほとんどすべて、きれいに説明してある。はっきり言って驚いた。

「地球が浄化のダンスを踊りつづけ、揺れや振動の激しさが増大していくにつれて、あなた方は志をともにする人たちと一緒に、すでにつくっているコミュニティをさらに強化したいという衝動、あるいは新しいコミュニティをつくりたいという衝動にかられるでしょう」

 友人とともに「ヌースフィア・プロジェクト」というコミュニティを作っている。地球環境や精神世界に興味のあるひとたちをネットしていった。会員はあっというまに200名を越えてしまった。

「コミュニティーのメンバーそれぞれが食べ物や、音楽や、エネルギー、音をともに分かち合い、貢献しあうことが必要になるでしょう」

 実際、「ヌースフィア・プロジェクト」には自然食レストランのオーナーや作曲家、ジャズ・プレーヤー、ヒーラー、ライター、テレビ番組のプロデューサーなど、ありとあらゆる人々が集まってくる。

「あなたが住むコミュニティ、あるいは住む場所を決めるとき、植物や動物と話をすることを学ばなければなりません。これは不可欠のことです。これはとんでもない話のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。(中略)あなた方のなかで、最近じっくり腰を落ちつけて犬や猫と話をした人が何人いるでしょうか。こうすることによってあなたの感受性が高まり、何かの決定をくだしたり忠告をするに際して、新しいレベルから物事を見ることができるようになるでしょう」

 僕は独立して以来ずっと動物のコミュニケーションに興味を持っている。龍村監督の「地球交響曲」で有名になった象のエレナにツァボで会った。イルカの解放運動をしているかつての「わんぱくフリッパー」の調教師リチャード・オバリーにもキー・ウェストで会った。御蔵島で自然に生息するイルカとも一緒に泳いだ。僕はずっと自然から何かを学びたいと思ってきたのだ。そして象やイルカ、シロアリ、サンゴ、森の木々から得た洞察をもとに、いくつかの雑誌に寄稿した。動物や植物は僕にとって師である。

 そして最近、もうひとつの存在が師となりつつある。子供だ。友人の子供がこんなことを言っている。

「お父さん、宇宙ってたくさんあるの知ってる? 長くて丸い宇宙や四角の宇宙や三角形の宇宙があるんだよね。三角形の宇宙は『バンチョウ』っていうんだよ。僕はそこから来たの。そこで神様につくられて、氷になって地球に来たの。宇宙は寒いから氷にしなきゃいけないんだよね。地球まで来ると、太陽の熱で氷が溶けて、お母さんのおなかにシュッと入るの。でね、一回死んでから生き戻ったの」

 前半の言葉は確かめようがないが、最後の言葉「一回死んでから生き戻ったの」にはちゃんと理由がある。その子の母親がまだ妊娠三ヶ月の頃、風疹にかかり医者から堕胎を勧められた。しかし、両親はせっかく授かった命だからと出産することを決める。そのとき、父親である僕の友人が、まだ母親のおなかのなかの子供に語りかけた。

「お前は一度死んだんだ。新しい命を得て生まれてこい」と。

「地球をひらく鍵」にも子供についての記述がある。

「これからのコミュニティは、子供たちの方向をむいて展開されていきます。(中略)このような子供たちの多くはきわめて高度に進化した存在で、生まれて数日ないしは数カ月のうちに言葉を流暢に話しはじめるでしょう。彼らはさまざまなことを知っていて、それを思いだし、『私は戻ってきました』というでしょう」

 この本は僕にいくつかのガイドを与えてくれた。そしてそのガイドは僕の心のガイドだ。それは睡眠時に見る夢と同様、現実と遊離している部分もある。

 しかし睡眠時の夢が有用な心のガイドとなるのと同様、この本もなかなかのガイドたりえるようである。

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