■◇■僕が食べた旨いもの Vol.12 できたて豆腐 豆腐ってもんはなんですね、味があるんだかないんだか、その微妙なところがいい んですね。冷や奴なんかついカツカツと上の歯と下の歯を噛み合わせて食べるけど、 そんなことする必要がないくらい、舌で押しつぶせばいいくらい柔らかいのが豆腐の いいとこですね。 昔、僕が食べていた豆腐はもめんごしがかたくて絹ごしにあこがれましたけど、母 が絹ごしは食べにくいから駄目とかって言っていつももめんごしだったので、絹ごし が食べたい少年時代を過ごしましたんです。 でもって絹ごしあこがれ症候群だった僕は柔らかくて箸でつまめなくて舌にのせる ととけてしまうくらい柔らかい豆腐に片思いの日々だったのですが、いざ絹ごしを食 べるとなんか味が足りなく感じたのはひとえに美味しい豆腐ではなかったというだけ なのでありましょうか。 ところが最近究極の豆腐を味わっています。 ところは江古田。北口から歩いてものの一分のところに市菜という飲み喰い処があ ります。そこに出てくる「できたて豆腐」、本当にできたてなんです。 まず丼に豆乳が出てきます。そこに目の前でにがりを入れてしばらく待つんです。 こんだけ。 ところがこの こんだけ が、とても旨いのです。丼の中にみるみる豆腐ができあ がっていきます。それをレンゲですくえばあら不思議。さっきまでは液体だった豆乳 が、今は豆腐になっているじゃああーりませんか。さっきまで液体だった豆腐を口に ふくむと柔らかくて豆乳の甘みがジワッと出て、なんともジューシー、ファンタステ ィックであります。 本当の豆腐はこの状態の物から水分を抜くのですが、抜ける水分はうまみをふくん だ水分ですから もったいないのです。うまみをふくんだままの豆腐一歩手前の「で きたて豆腐」。一度食べたら病みつきです。 |