■◇■僕が食べた旨いもの Vol.4     ギネス・ビール

 去年10月にアイルランドへ行って以来、ギネス・ビールのファンである。しかし、

缶入りのギネスはギネスにあらず。ギネスはギネスをサーブするライセンスを持った

パブで飲まなければならない。アイルランドで飲んだギネスに近いギネスが飲めるパ

ブの一軒が大崎にある「アイリッシュパブ ザ・シャノンズ」だ。ホームページは以

下の通り。地図もあるので行きたい人はどうぞ。

http://www.alles.or.jp/~shannons/j-index.html

 実際にここがギネスをサーブするライセンスを持っているかどうかは知らない。だ

いたいそのライセンスが日本で有効かも知らない。わざわざ

「あの〜、お宅はギネスのライセンス持っているんですか?」

ともちょっと聞きにくい。アイルランドではそのライセンスがないとギネスをサーブ

することはできないそうだ。

 ギネスはまず泡がきめ細かい。とけかけたソフトクリームのようになめらかである。

 グラスを傾けよう。泡の味は苦いが香ばしい。鼻を抜ける匂いがギネスのほのかな

甘さを期待させる。さらにグラスを傾けるとトロリとした舌触りのビールが口に広が

る。苦みとその奥深くに眠る甘みのバランスが絶妙である。僕はビールを飲むとき、

必ずつまみを用意する。つまみなしのビールはどうも寂しい。つまみとの対比の中に

ビールの味が浮き出てくる。しかし、ギネスにはつまみはいらない。バーで飲んだと

き、つまみを取るということさえ忘れてしまっていた。そのくらいギネスの味に魅了

されてしまった。缶入りのギネスを日本で飲んでいたのでその味を期待していたが、

見事にその期待は裏切られた。松田優作がかつて「なんじゃこりゃー!」と叫んだよ

うに、アイリッシュ・パブで叫びそうになった。

 アルランドではまずダブリンでセント・パトリック教会に行った。その教会の庭に

ギネスの設立者の像があった。そのときはまだ本場のギネスを飲んでいなかったので、

「へぇー」としか思わなかったが、飲んだ後にそこを訪れていたら手を合わせて拝ん

だかもしれない。「幸せなものを残してくれました」と。

 アイルランドを僕はほとんど一周したが、そのあいだに気づいたことがある。アイ

ルランドの海も川も鉄分が多いせいか、こげ茶色なのである。ギネスをちょっと薄く

したような色なのだ。しかも僕の見た海はアイルランドの西側の海だっだが、波間に

アイボリーの泡がたち、まるでギネスビールなのだ。アイルランドの人たちは意識し

ていないかもしれないが、祖国の海や川を愛するようにギネスを愛しているのではな

いだろうか。

 うーん、またギネスが飲みたくなってきた。

僕が食べた旨いもの

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