マッチ

   大人はマッチの気持ちよさを忘れている。
   子供の頃、親の目の届かないところで
   無心にマッチを擦り続けたことはないかい?
   マッチの秘密を見つけるために僕は何度も擦った。
   力一杯押しつけてゆっくり擦ったり、
   軽く押しつけてサッと擦ったり、
   マッチの方向を燐の部分を手前にしたり向こうにしたり、
   いろんなことをしてマッチの秘密をあばこうとした。
   でも、結局はマッチを擦るのが気持ちよかったのだ。
   火遊びは、秘密をあばこうとするうちに
   その楽しさに溺れてしまう。
   そういうもんだろ?

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