「推背図」その2 ~ 第四十二象の再考…その1?


■ はじめに

 「推背図」について書いたのは2年以上前、2020年7月のこと。そこで書いたのは、第四十三象の「黒兎」とは2023年のことだろうということでした。これは実は「推背図」に関する通説(私の持っている本に限っては、の話ですが)とは違った説だったのですが、とくに反響もなくあと半年で2023年を迎えようとしています。
 さらに私は第四十二象に関して、2023年かその前に「中国の動きにストップをかける動き」が出てくると、そして「西方女子」が来るのではということを書いています。

 これだけ言えば、以下に書くことは想像がつくと思いますが、あえて文章にしてみます。それは自分の考えの整理のためでもありますし、前に書いた予想の修正のためでもあります。

 なお、「西方女子」についてはすでにネットにも上がっているようですが、以下はあくまで私が自分で考えたことであることを表明しておきます。(同じ意見になることも当然ありえると思いますが他のサイトは全く参考にしていません)

■ 「西方女子」とは?

 タイトルの「西方女子」とは、もうすでにわかる人にはわかるでしょうが、8月2日夜に台湾を訪問したペロシ米国下院議長のことではないかとニュースを見てまず思いました。もちろん他の人である可能性はあって、例えば米国の副大統領は女性ですし、諸外国には女性のトップが少なくありません。また癸卯年まで半年ほどあります。そう考えるとまだペロシが「西方女子」と限りません。

 ところが、関連するニュース記事を見ていて「あれ?」と思いました。それは「ペロシ」の中国語表記が「裴洛西」となっていたことです。「裴」は中国での姓の一つで、この字を使うこと自体は違和感はありません。例えば、裴世清といえば随の使者として日本に来た人です。また「裴」は「衣」がついているように、衣服の特徴を示すものです。(「推背図」には西方女子の衣服についての記載があります)さらに「洛」はもとは洛水という河の名前ですが、いまは都の意味で使われます。日本でも「洛」といえば京都のことです。で、そのあとに「西」がつくわけで、これを並べると「都の西の裴」という人物になります。これはまさに「西方女子」にピッタリではありませんか(政治家の演説口調)
 ん??いやいや、そうでもないか?

 大事なことが抜けてますね。美人かどうかは各人の評価に任せるとして(若い頃の写真を見るとかなり美人だと私は思いますが)頌に「西方女子琵琶仙」とあります。もしペロシ議長とするなら彼女は「琵琶仙」のはずです。果たしてペロシ議長が琵琶仙たりえるのかを考えてみました。

 「琵琶仙」ときけば、あるいは「推背図」の挿絵をみると、楽器、とくに弦楽器を演奏しそうな感じです。しかし、ネットで調べた限りでは、趣味はクロスワードパズルのようで、弦楽器、例えばギターとかバイオリンとかが弾けるという記事には出会えませんでした。来歴を見ると結婚後しばらく子育てした後は政治一筋のようです。やっぱりペロシ議長は「琵琶仙」ではないのでしょうか。

 しかしながら「琵琶」には別の意味があるのかもしれません。
 前にも触れましたが、「琵琶行」という唐代の詩人白居易の有名な詩があります。原文や日本語訳はネットで見られますので参照いただくとして、内容を大胆にまとめれば、没落した身を嘆く老女の愚痴を聞いた私(白居易)がわが身に照らし合わせて共感するというような詩です。
 この詩も、詩であるがゆえに暗喩があり(と思うのは私だけか?)、さらに邪推すれば台湾の立場のようにも感じられる詩です。この詩の中の「琵琶仙」は老女(といっても意外と若いかも)なのですが、まさにペロシ議長も普通にいえば老女であり(にしては若々しいとは思いますが)通じるところがあります。

 この詩では白居易が最後の方で次のように語ります。
「今夜聞君琵琶語、如聴仙楽耳暫明、莫辞更坐弾一曲、為君翻作琵琶行、感我此言良久立、却坐促絃絃転急」
(拙訳) 「今夜あなたの琵琶の語りを聞き、まるで仙人の語りを聴くようで考えが明らかになった。ぜひもう一曲弾いてください。私はあなたのために「琵琶行」という詩を作りましょう。私のこの言葉にしばらくじっとしていたが、座りなおして演奏したところ急な曲調に変わった。」

 こういうふう書くと、白居易の漢詩すら予言の書みたいになりますね(笑)。

■ 「朝中日漸安」について

 「朝中日漸安」を前の記事では「政治の中枢が徐々に安定してくる」という意味と解釈しました。この解釈自体は間違ってはいないと思います。しかしその後の各国の動きを見ると、もう少し深く考えてみる必要がありそうです。

 そもそも「美人自西来」とはいうものの、どこに来る(あるいは来た)のか。これは前のページの第四十象でも問題にした「我」とは誰かと通じるものがあります。第四十象のときには「我」は台湾のことだろうとしましたが、果たして第四十二象もそれでいいのか?もし台湾であれば「総統府は安心する」あるいは「行政府は徐々に安定する」ということでいいのですが、もしここでの「朝」が、「中華人民共和国」あるいは「習王朝」だとすれば「安心する」というわけにはいかないでしょう。ペロシ議長が台湾を出た直後から軍事訓練を始めたこと、そしてその軍事訓練が過去にない規模・パターンで実施されたことから、その状態を「安」という文字で表現するのはあたらないように思えます。少なくとも、これを書いている8月15日現在では、まだ「安」という状態にはなっていないと思います。

 ということを踏まえて、私としては次の三つのことが考えられるのではないかと思います(「推背図」が当たる予言書だということを前提にすれば、ですが)。
 一つはペロシ議長は「西方女子」ではないということ。そうであれば、この四十二象はまだ実現していない象かまたは別の事件を指しているということになります。
 二つめはペロシ議長がこの象でいう「西方女子」であり、この象は台湾の事件で進行中であるということ。
 三つめは、ペロシ議長は「西方女子」だが「朝」は中華人民共和国(以下台湾に対して大陸と称することにします)であり中国共産党が徐々に安定する、あるいは大陸が安定した国家になっていくということです。この場合はこの象は大陸と台湾の事件を並立して予言しているということになります。
 この三つの考え方について触れながら先を続けます。

■ 「此時渾跡居朝市」とは

 本項の主題に入る前に「長弓」に触れておきます。これは「張」の字を指すというのが定説です。ただ仮に「張」という人物であったとしても、「美人」が来た時には「地に在る」すなわちまだ無名である可能性が高く、現時点はわからないとしか言いようがありません。そしてその地は大陸なのか台湾なのかははっきりしません。
 なお私は、「長弓」は日本列島の形かもしれないとも考えてもいますが、これは今は棚上げにしておきます。

 さて、四十二象の頌には「此時渾跡居朝市」とあります。すなわち「西方女子」が来た時には「渾跡」がすでにあるということです。では「渾跡」とは何か?ですが、私は政府と市民との間の混乱の跡と解釈しました。
 ここで問題となるのは、「此時」と「朝」です。すなわち「此時」とはいつで、「朝」はどこの政府を指すのか、ということです。
 仮に西方女子がペロシ議長であるならば、「此時」はまさに現在であり、「渾跡」はすでに起きたことということになります。
 政府と市民との間の混乱といえば、香港の民主化運動とその弾圧、あるいは中国本土の不動産問題やコロナ対策に対する不満とそれを押さえつける政府の対応が思い当たります。いずれも中華人民共和国(大陸)であり台湾ではありません。
 仮に「朝」が台湾総統府だとすれば。コロナ騒ぎはありまだ続いてはいますが、比較的コントロールされていて混乱しているようには見えません。そうなるとペロシ議長は「西方女子」ではないということになります。あるいは前項で提示した三つめの考え方、西方女子の話と「朝」とは別の話であると考えるべきか…。

 さらにこの後に「閙乱君臣百萬般」と続きます。「百萬般」は百万回と訳しましたが、これはちょっと不正確で、あえて訳すなら百万種類でしょうか。意味としては「あちこちで数多く」ぐらいの意味でしょう。
 ただこの句が最初の「此時」に続くのか、あるいはしばらく時間がたってからなのかはよくわかりません。しかし「朝市」と「君臣」は対比として使われているように思われます。すなわち政府と市民の間で混乱がおき、政府内でも争いごとが起きる(あるいは起きている)ということのように思われます。仮にこれが大陸の話だとすれば、すでに共産党内でも権力闘争が起きていることを示唆しているようにも思えてきます。(まあ共産党内での権力闘争は日常茶飯かもしれませんが)

■ はたしてペロシ議長なのか?

 話を最初に戻しますと、現時点での状況からすると「西方女子」はペロシ議長を表すように思われますが、「琵琶仙」といわれると引っかかりを覚えます。
 いやいや、「琵琶」は楽器ではなく別の(あるいは特殊な)意味があるだろうということは前にも書きましたし、今回も「琵琶行」を引用して違う意味を少しばかり引っ張り出してみました。しかし決定打といえるようなことは引っ張り出せていません。何度も言いますが、もとより「推背図」が当たる予言書であることを前提にした話ではあります。

 結局のところ、何とも尻すぼみなのですが、現時点では「西方女子」がペロシ議長だと言い切るほどの自信はありません。2023年までにもっと「西方女子」にふさわしい(?)女性(あるいは琵琶仙)が中国を訪れるかもしれません。しかし、やっぱり「西方女子」はペロシ議長であり、これから大陸と台湾の関係は大きく変動していくのかもしれません。そして2050年頃、予言のとおり「子孫結ぶ」という状態になるのか…。
 しばらく中台関係、あるいは米中関係(中美関係)からは目が離せませんね。
 ん??日中関係は?
 「弓」が日本を指していないとすれば、日本はかやの外に置かれるかもしれません。

 しばらく様子をみてから、「推背図」その3を書くことになるかもしれません。乞うご期待??


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 作成  2022年 8月16日