■◇■僕のおしゃべり   Vol.30     楽天家
    
 獅子座流星群を見た。前の時より数が多かった。ニュースでは200年に一度の流星群だったなどと言っている。「そうか200年に一度か」と思うとニタッとしてしまう。だいたい21世紀を迎えたときは1000年に一度の体験だったし、今回は200年に一度の体験だし、いいときに生まれたと思う。

 でも、ほかの時代に生まれた人には1000年に一度とか、何百年に一度の体験がないかというと、きっとそんなことはない。今回の流星群にしたって何十年かしたら、そんなことがあったことすらたいていの人は忘れているだろう。だからきっとおそらく間違いなく、どんな時代にも1000年に一度のなんとかとか、500年に一度のたりらりらんがあるに違いない。そうしてその時代の人たちは「いい時代に生まれたなぁ」と思いながら死んでいくのである。そのあとの時代に生まれた人は、その時代にあった1000年に一度のなんとかや、500年に一度のたりらりらんの存在すら知らずに過ごすのだ。そして、自分の時代の1000年に一度のほにゃらららや、500年に一度のおっぺけぺのぺをありがたがって死んでいく。

 そこまで考えて、なんとちっぽけでつまらない存在なんだろう人間は、と考える人もいるのだろうが、僕はたりらいらんやほにゃらららやおっぺけぺのぺを楽しむ生き方がいいなぁと思う。こういう愚かさが人を幸せにする。

 幼い頃、十三歳年上の兄のそばで騒いでいると兄は決まって僕を静かにさせた。

「ようちゃん、だまりんぼしよう」

 だまりんぼとは、お話しをせずに黙ってじっとしている遊びである。もししゃべったり騒いだりしたら負けになる。幼い僕は一生懸命だまりんぼした。でも子供だから飽きてしまう。そういうとき兄はわざと僕の顔をのぞき込み、眉や鼻をぴくぴくさせて僕を笑わせようとする。すると僕は笑わないようにまた一生懸命静かにしているのだ。大人から見れば幼い僕は愚かだが、やっている本人はとっても楽しかったのである。僕の楽天家の素質はこうして育てられたのだな。

    

僕のおしゃべり

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