マルセラン夫人の総括   

   マルセラン夫人の変わり身

・ ロダン美術館を出たとき、見かけた、一鬼が気なった拒否的態度の日本人女性。
・ 公園のベンチに腰掛けて編みものをしていた、平穏で、家庭的で、静かで、贅沢な雰囲気を身につけていた女性。
・ カクテル・ドレス姿、唇はくっきりと赤く彩られ、目は青っぽく大きく隈取られた厚化粧の彼女。
・ きっちりと両脚を包んでいる細いズボン、顔をスカーフで包んだ運転席の女性。

・ 岸が車を動かしかけているとき、すごいスピードで一台の車が、こちらの横をすり抜けていった。
車は見る見るうちに、形を小さくしていったが、こちらをすり抜ける時、ぶつけていった叫び声だけが、その花やかさを消さないで、あとに残っていた。
 「あの運転は家内ではないと思うんです。もっとも女は調子にのると、何をやり出すか判らぬところがありますが」

一鬼は車の運転が、マルセラン夫人と知って、信じ難いが、夫人にはそうしたところがあるかも知れない思った、というマルセラン夫人。

・ ベズレイのホテルの夕食の時、〈お城〉の話題でうきうきと軽口を叩いたのが、翌朝はただ慎ましやかで上品であった夫人。

マルセラン夫人は、作者井上の女性理想像の1つか。−−−第5章マルセラン夫人考察 参照

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