AI着色は昭和時代の夢を見るか(その28)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回は前回から始まった新シリーズで、最初の北海道撮影旅行で1972年7月17日に行った苗穂機関区でのカットのカラー化です。機関区のような鉄道施設という人工的な空間もけっこうイケることが前回わかりましたが、今回はちょっと難題といえるカットも含まれています。さあAI君はこれをどのように料理してくれるのでしょうか。この挑戦も楽しみですね。

今回のスタートは、再び出発線に雁首を揃えて並ぶ機関車達のカットから。前回の「揃い踏み」とは違い、D51737号機とC58415号機という本線寄りに駐泊していたの二輌のアップから。737号機はちょっとウェザリング効き過ぎですね。前回ぐらいのほうが良かったかも。まあ、鷲別のカマならこのぐらいサビたり汚れたりしているのもいますから、北海道のD51という意味ではまったく荒唐無稽というものでもありません。C58の方は前照灯を減光で点灯させちゃってますね。それはある意味、この部分が「ライト」だということを認識しているということになりますから、その表現がリアルかどうかはさておき、AI君の理解としてはけっこう的確といっていいでしょう。

さて今回のチャレンジその1。DD14形式がでてきました。ご当地苗穂機関区配属のDD14314号機です。AdobeのAI君は、1年ちょっと前まではディーゼルとか色味のある車輛はお手上げだったのですが、相当に学習したようで今回は色味を出してきました。例によって彩度をものスゴく下げて「様子見」って感じでの色のせですが、明らかに赤味を入れてきています。これがディーゼル機関車で、ディーゼル機関車は赤系だということは学習して認識しているようです。進歩してますね。屋根を黒っぽくしているのもグレーが正解なので悪くありません。しかしこいつの前照灯も点灯させちゃったのはちょっと蛇足かな。まあ、これなら一応合格かな。

転車台の扇形庫と反対側の留置線に佇む、小樽築港機関区D51600号機。先程のDD14のカットで左端にちょっとだけテンダが写っている機関車です。模型化用に最適なサイドビュー。おまけにこの日の札幌は降ったり止んだりの曇天。ピーカンでないのが幸いして、下回りの様子もかなりキッチリと捉えられています。築港のカマらしく、コンプレッサーの金帯や空気操作管などがしっかり磨かれていますが、その様子も上手く描写しています。目の錯覚もあるのでしょうが、コンプレッサーの帯は金色に見えますし、空気操作管も銅色に見えます。600号機は戦後すぐ山陽筋から北海道に転属、爾来廃車まで小樽築港一筋という象徴的なカマです。

前回、転車台へと進むシーンが出ていた鷲別機関区のD511098号機が、転線して転車台から降りてきました。戦時型D51の特徴を押さえつつ、転車台の向こうに見えるセキをアウトフォーカスにしているところなど、我ながらマセたガキですね。なんか気恥ずかしくてイヤだなあ。まあ、趣はあるんですが。全体にウェザリングが強すぎますが、まあコイツは鷲別のカマなので、汚ければ汚いほど「らしい」ともいえますから、まあ表現のうちでしょう。しかし彼方のセキ。これも目の錯覚かうっすら帯に黄色味が入っているような。なんかズルくなってきたなあ。

次なる試練は、庫の中で撮影したC576号機のカット。6号機はこの年の4月までは和歌山機関区にいましたから、苗穂に転属してきた直後という時期ですね。北海道での活躍も1年に満たないぐらいで、ためにする広域配転という感じです。この強いコントラストのカットをどう料理するのか楽しみでしたが、さらにコントラストを強調する方向できましたね。天気が悪かったのでそんなに外が明るいわけではないのですが、まるで扇形庫に向かって朝日が射してきたかのような、強烈な陽光が庫の中に広がっている感じで作画してきました。全体の色温度の低さとか現実の状況とはかなり違うのですが、強引に朝日っぽくしてしまったところにAI君の「意思」を感じます。これはこれでいいでしょう。

転車台の上には、石炭を満載して出区の準備も整った小樽築港機関区のD5170号機が上がります。次の仕業に備えての転線作業でしょうか。流石に築港のカマ。この70号機も充分に手入れされキレイに整備されています。先程の600号機もそうでしたが、築港は動輪の輪心のところも磨くんですね。築港のカマをプロトタイプにするときには、けっこう重要なポイントかも。全体の色のバランスもいいのですが、「安全第一」には緑十字を入れて欲しかったですね。これは鉄道に限らず、工場や工事現場にはつきものなので、安全第一の文字があるところの十字マークは緑、と学習して欲しいものです。庫の中にはDD13がいますが、これもちゃんと赤味を入れてきています。

転車台が回ってD5170号機が正面を向いてきましたので、近寄ってアップで撮影します。これも「架線注意」にはちゃんとした色味を刺してきました。前回もそうでしたが、これは知識として学習して知っているようです。転車台の運転台のところには、運転係と機関車の誘導係と二人の職員がいますが、運転係は黄へル、誘導係は白へルと、ヘルメットの色を変えてきています。これはけっこう効果的。ジオラマでも応用できますね。実物がよく手入れされている分、カラー化のウェザリングも控え目で、前のカットのように築港と鷲別の見分けがちゃんとできるというのはなかなか評価が高いところです。今回は難題が出ましたが、良くこなしたのではないでしょうか。
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