AI着色は昭和時代の夢を見るか(その31)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回はまた前回からの続きで、最初の北海道撮影旅行で1972年7月17日に行った苗穂機関区でのカットのカラー化の第五回となります。AI君は鉄道施設もそれなりにこなせることがわかりましたが、今回もけっこう遊んでいるカットが多いですし、夕方になって天気もまた悪くなってきたので、なかなかキワどい限界カットが多くなりますがそれをどのように料理してくれるのでしょうか。

まずは新たに登場してきた、苗穂機関区のC58421号機の公式側から。当時苗穂機関区には414・415・416・419・421と5輌のC58が配属されていましたが、全て戦後型でした。415・416はすでに撮影しましたから、5輌中3輌を押さえていたことになります。C58形式にあまり興味がなかったことと、苗穂で撮影したカットはほぼ発表していないので、半世紀手付かずで気付きませんでした。元の機関車がかなり汚れているのと、辺りが暗くなってきていること、煙が絡みついていることなどの関係で、かなりぼんやりした表情の画面になっていますが、それも含めて結構それらしく色を載せてきています。色味が少ない中で、「架線注意」の黄色と赤が効いています。これはもう「わかってやって」ます。ドーム手摺の抜け方がいいですが、これ模型じゃ再現できない細さですね。

これまたこの日の新顔が現れました。小樽築港機関区のD51713号機。誘導係が前デッキに乗っているところを見ると、転車台方向転換して出てきたところでしょう。この誘導係の乗り方こそ、降雪時に備えた正規の北海道スタイル。安全にこれをやるために行われたのが「踏段改造」でデフを切詰め、前部端梁に手摺りを立てることで、デッキ上に誘導係のスペースを確保するのが目的です。それをきっちり記録しているという意味では、いまとなってはけっこう貴重なカットかもしれません。しかしこうやって見ると誘導係は黄へルですが、構内機関士は白へルなんですね。機関士は動労なので革マルで白へルというわけではないんでしょうが(もはやこのネタがわかる人は70前後以上だな)。明らかに色を変えてきているということは、グレースケールで差があるんでしょう。

今度は70号機の真正面のアップ。カーブを利用して機関車の真正面のアップを取る人は、最近の撮り鉄には多いですが、昔はちゃんと線路の中から停車中の機関車を撮ったものです。これも光線状態は辛いですが、まあなんとか雰囲気が出たカラー化になっています。さっきの713号機もそうでしたが、微妙に赤ナンバーっぽいですね。AI君のクセからいえば、これは明らかに「顔色を見ながら赤を差して」いますね。前からそうですが、どこかで赤ナンバーを学習してしまったのでしょう。713号機はAI君がよくやる前照灯が「減光」で点灯している感じでしたが、こちらはしっかり消灯状態です。クセはありますが、このカットでこのカラー化なら、まあ及第点ではないでしょうか。

つづけて前回の公式側と対になるような、ナメクジドームに着目したボイラ上半部のカットを非公式側から撮ります。ここまでアップにすると、「架線注意」はちゃんと色を入れていることをチェックできます。「黄・黒のゼブラに赤文字」は鉄道以外にも工場や工事現場で危険を表す標識によく使われていますので、そっちからの類推と思われます。なかなか良い仕事をしていますね。これもやはりナンバープレートには赤を入れていますね。赤ナンバーが好きとは、AI君はさては名古屋出身か? それは冗談にしても、古い鉄道車輌の色を学習する時に、リニア・鉄道館に陳列された車輌の写真をたくさん食わせちゃったという可能性はありますね。空の感じはなかなかいいです。

先ほどのC58421号機が、最初から停まっている小樽築港機関区のD51465号機の次位にやってきました。このカットも赤ナンバーでないし、前照灯もちゃんと消灯しています。465号機は築港のカマらしく、テンダ側板にも微妙に艶が感じられる表現になっているところはいいですね。苗穂駅の構内も含めて、ちょっと草は生やし過ぎというきらいもありますが、リアルかどうかはさておき、模型のレイアウト的表現としては違和感はないですね。でもこれだけの面積を「ミニネイチャー」とかで埋めようと思ったら、かなりの金額ですね。AIで草生やす分には金はかかりませんから。それも含めて、どことなくジオラマ感が強いカットになりました。

鷲別機関区のD51742号機の後ろに同じく鷲別機関区のD51629号機が連結して、重連で構内を入換えます。ラジアスロッドが後退位置ですから、転線して戻ってくるところのようです。しかし629号機は現役のカマにも関わらず、テンダのナンバーがペンキ書きですね。現役蒸機末期にはナンバープレートの盗難にあったりして、一時的にペンキ書きのナンバーで走るということがままありました。正面やキャブのナンバーが盗られても、一番目立たないテンダのナンバーで置き換えてペンキ書きにすることが多かったようです。629号機は長らく常磐筋で活躍し65年に鷲別区に移動したカマで、大宮工場式のキャブ吊輪が北海道では珍しく目立ちます。

2輌のカマがバックして、脇のところまでやってきました。先頭のD51742号機を正面から押さえます。こちらもラジアスロッドが後退位置ですから、構内とはいえ重連で力行していたんですね。前照灯は減光状態にしてしまっていますが、さすがに鷲別名物である煤まみれの副灯LP405はそのままです。742号機は鷲別では珍しいギースルエジェクタ付き。これまた低い位置のナンバープレートと共に、並のD51とはちょっと違う面構えです。742号機も常磐筋のカマですが、郡山工場持ちだったのでキャブの吊り輪は鷹取工場式というか一番標準的なタイプです。バック運転で629号機の方が前位になっているので、629号機の機関士が窓から身を大きく乗り出して体をひねり、信号確認をしながら運転している姿が見て取れます。
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