AI着色は昭和時代の夢を見るか(その34)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回もまた前回からの続きで、最初の北海道撮影旅行で1972年7月17日に行った苗穂機関区でのカットのカラー化の第八回となります。さしもの苗穂機関区ですが、さすがに今回でおしまい。やっと終わったという感じですね。時刻も夕刻となっていて、やっと夕日が雲の間から顔を出しました。なんともアソんだカットが多くなってきていますが。こういう贅沢ができたのも、まだ幹線に蒸気機関車が溢れていたこの時代ならではということができるでしょう。

今回最初は蒸機ではなく、ディーゼルカーキハ22形式。この当時は電化区間は函館本線だけだった上に、千歳線はまだ苗穂-北広島間が単線の旧線で白石経由ではなく、直接苗穂から分岐していました。ということでこの区間では、ディーゼルカーもかなりの本数が走っていました。函館本線でもラッシュ時には架線の下で蒸機牽引の旅客列車もまだあった時代です。まあこの写真はストラクチャ用にトランス搭を撮影したものと思うので、列車は写りこんだオマケですね。線路と草地、建物はワリといい感じに仕上がっていますが、キハはちょっと苦手なようでほとんど色味がなく白黒のままのようです。とはいえうっすらと赤みを入れているように感じるのは、例によってAI君の忖度でしょうか。

続いては苗穂工場側に留置されたキハ09形式。この時は2輌連結して留置されており、西よりの車輌は前々回に掲載しましたが、もう1輌の相棒を撮影しました。こちらは運転台側が外を向いていますので、正面が拝めます。これも彩度を落としてきていますが、しっかり赤みを入れています。おまけに朱色っぽい赤で、前回よりらしい感じですね。窓回りも白抜きではなく、しっかりクリームを入れていますので、AI君はディーゼルカーの色は認識しているのでしょう。しかしまじまじと見れば見るほど、なんでこんなのをつくっちゃったのかという感じです。北海道なら平坦線が多いので、増結用のキクハにとどめておけばコストもかからず良かったのにと思ってしまいますね。

三度クラの中に入ってゆくと、苗穂機関区のC1199号機が点検中。当時苗穂機関区には99号機のほかに、129号機、177号機と3輌のC11が配置されており、入換・小運転の運用があった。二次型はわりと機関区を絞って集中的に配置されていた傾向があり、苗穂も3輌中2輌が二次型だった。蒸気が出ているところをみると有火なので修理や整備ではなく、蓋が開いているので、ピストン弁まわりの点検中であろう。作業員のナッパ服やヘルメットの色もなかなかいい感じに再現している。全体が赤みがかっているが、確かに夕日が差し込んできているのでこれはこれで庫内の雰囲気は出ている。

庫の反対側の線に佇む小樽築港機関区のD51600号機。函館本線の列車から蒸気機関車の顔を拝めることがよくあったので、苗穂機関区はこっち側の線も留置線として活用したのだろう。築港のカマらしく、北海道のD51としてはよく手入れされ、夕日の中で黒光りしている感じが伝わってくる。隣のDD14もよく見るとちょっぴり赤みを入れているので、AI君はまた得意の様子見で来たな。やっと見えてきた青空の感じも、線路の感じもこれなら及第点でしょう。それにしても、この石炭の積み上げ方。ドームよりもキャブの屋根よりも数十センチは高く、車輌限界に触れてるよな。まあ苗穂は電化区間なので、パンタグラフ込みの車輌限界をクリアすればいい発想かな。

夕日に映えるC58415号機の顔。普通の車輌写真には飽きてしまった、ちょっと凝ったカットを撮ろうという気持ちは良く伝わってきます。C58という機関車は妙なバランスなので絵にしにくいカマですが、こういう撮り方をする分には立派な蒸気機関車に見えますね。なかなか作画意図を汲み取ったカラー化といえ、夕方のフォトジェニックな陽射しをうまく再現してくれました。これなら、モノクロのままよりカラー化したカットの方がいいと言えるでしょう。しかし、これもまたナンバープレートに赤を入れてきてますね。オマケに赤ナンバーが煤で微妙に汚れたところまで再現して。本当にAI君は赤ナンバーが好きなんですね。

前回登場した三重連の連結面の隙間から、場内を回送するC58形式を撮影します。前回の並びを考えると、このC58は421号機でしょうか。タイミングが合っているところをみると、狙って撮ったカットのようです。確かに停まっている蒸機の間から走る蒸機が見えるという状況は、幹線でも蒸機がまだ栄華を誇っていた時でなくては撮れませんから、なかなかこの時代を映し出したカットと言えるでしょう。ナッパ服がなんか軍服のような色になっていますが(旗を振っているからAI君は軍人と思ったか)、フロントデッキに乗った誘導係は、北海道での正規の位置。冬の降雪対策ですが、これを行うために踏段改造が行われたという貴重な記録でもあります。

最後は再びC58415号機を題材とした「凝った」写真。夕焼けとともに顔を出した青空と、逆光気味の夕日を浴びた機関車の色味とが、なかなかいいコントラストになっています。先ほどの正面のアップもそうですが、鉄道写真ではなく、ある種の芸術写真みたいなカットのカラー化のバランスというのは、それはそれで学習しているようですね。判じ物のようにも見えますが、ドーム前の手摺り、苗穂工場式のキャブ吊輪、バタフライスクリーン、増炭板と北海道のカマらしいところはしっかり押さえられています。このときはまだ16だけど(松本伊代ではない)特定番号機のディテーリングとかやってましたから、意図して構図を決めたのでしょう。これで苗穂機関区は終わりますが、カラー化はまだ続きます。
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