AI着色は昭和時代の夢を見るか(その5)


PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。やっていて中々面白いんでけっこうハマってしまった。まあ出来については大体予測がつくようになったが、それでも想像よりウマく行くこともあれば、何でこうなるのという想定外の上がりの時もある。生成AIとは違って、人工着色のアシストと考えればそこそこ役に立つともいえる。なわけでで今月もまだまだ続きます。今回も71年冬の三回目の九州撮影旅行でのカットから。いつもの通り、こういう場合にカラー化のアルゴリズムがウマく働くというその「成果」を示すべく、吐き出したデータはそのままで、ポストプロのレタッチはしていないことを申し添えておきます。



まずはおなじみ大淀川橋梁を渡る日豊本線の下り貨物列車から。牽引機は吉松機関区のC5723号機。これ、列車や橋梁はほとんどモノクロのままだなあ。空と水面に色をつけただけでカラー感を出しているという、相当な手抜作品。とはいえ、ちょっと見には色味がでているので、これはこれでテクニックなんでしょうか。悪いことを教えた人がいたんでしょうね大淀川橋梁は、この下流側の方がフェニックスの並木はあるし、遠景もキレイだし、景色としては上流側よりいいのですが、列車とかぶるところにケーブルが張ってあって、ちょっと撮りにくく、国道橋から真横が取れる上流側の方が一般的なお立ち台でした。宮崎-南宮崎間にて71年12月16日の撮影。


次は駅撮りのかなり極端なカット。確かに色は付いているものの、元が黒身ばかりの構図なので、難儀したのはよくわかる。夕日がハイライトで当たっているような感じで色温度の低い光線を入れて、それがほぼ唯一の色味になっている。これはこれで面白いかも。キャブのナンバープレートと砲金製の区名票の輝きは中々良い感じ。これがアクセントだと学習しているのは優秀だ。遠景に彩度低く色をつけているのも、全体がほぼモノクロのままの中では色が付いている感じがして効果的か。吉松機関区のC5723号機が牽引する日豊本線の下り旅客列車。宮崎駅にて71年12月16日の撮影。


霧がかかっている山の中というのは、難しそうに見えて実はAI君の得意なシチュエーション。ということで、朝霧に煙るシーンを着色してもらいました。霧島神宮駅を出発した日豊本線の下り貨物列車。都城-隼人間はこの当時でも列車本数が極端に少なく、かなり効率の悪い線区でしたが、一度は行っておきたいということで、午前中は日豊本線で、午後は肥薩線でという抱き合わせのスケジュールを組んで本数を稼ぎました。流石に手馴れた感じで、霧の雰囲気をしっかりと出しています。機関車は鹿児島機関区のC5772号機。廃車になった21号機からK-7デフを譲ってもらった直後です。71年12月18日の撮影。


この日は一日雨が降ったり止んだりというスッキリしない一日でしたが、撮影旅行に出たからにはそんなものは物ともせず、予定通りの撮影です。日豊本線での撮影は、午前中の2列車のみ。力行シーンも撮りたいということで、頑張ってトンネルが続くサミットのところまでいって撮影しました。雨中で派手にドレンを切ってますから、力行を始めたところでしょう。緑の山も得意なシーンですから、手堅くまとめています。周りの景色が得意だと、機関車もけっこう力を入れてらしく塗ってくるところがAI君は妙に憎めません。下りの貨物列車、牽引機は鹿児島機関区のC57122号機。霧島神宮-南霧島信号場間、71年12月18日の撮影。


そして肥薩線方面に移動です。移動途中に肥薩線の下り貨物列車と交換します。牽引する機関車は鹿児島機関区のC57127号機。これどこの駅でしょうか、全く記憶にないですし手元に当時のダイヤもありませんので想像でしかないですが、山の迫り方からすると嘉例川でしょうか。雨の中ですが、さすがに山と森は得意ですね。雨に霞む感じも良く出ています。バックが決まると気合が入るのか、機関車も中々良い感じです。点灯中の前照灯が雨に滲んでいるところもウマくまとめています。ぼくが乗っているのはバス窓からキハ17系とおもわれますが、色は微妙。腰板はちょっと赤みが感じられるので良しとしましょうか。71年12月18日撮影。


これからは次の日に撮影を開始する前の朝に、吉松機関区に見学許可を取って撮影したカットです。この日もまた雨でした。まずは給炭台の脇で仕業を待つ人吉機関区のD511058号機。これも生のシーン自体が色味の少ないカットなのですが、ウェザリング中心の色付けでカラー感をうまく出しています。元が雨中でそもそも彩度が低かったのが功を奏したのでしょうか。地面のテカりも中々のものです。でも、なんか赤ナンバーっぽいですね。色を入れてきています。なんか赤ナンバーの機関車を学習しちゃっているのでしょうか。前にもありましたよね。71年12月19日撮影。


続いて朝の吉松区名物の「勢揃い」。これから朝の仕業につく機関車がずらりと並びます。手前は鹿児島機関区のC5782号機、真ん中は人吉機関区のD511151号機、奥には鹿児島機関区のC57191号機がいます。ということは山線の上り列車は1058号機と1151号機の戦時型ゴールデンコンビのお出ましですね。C5782号機の前部ステップに乗った誘導係は、肘でつかみ棒をしっかり挟み込む、伝統の「九州乗り」を披露しています。北海道のデッキ上に乗るスタイルと好対照ですね。これがあるから、九州ではデフの手摺りをつかみ棒に改造したりしています。71年12月19日撮影。



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