シルクロードの片隅で -カラーネガの端っこから 番外編 1993年2月-


前回が最後のはずの、90年代シリーズ。諸般の事情により、というか、09年8月はあまりに忙しく、新ネタの仕込みができなかったので、前回ついでにスキャンしておいたデータでお茶を濁させていただきます。とはいうものの、これはなかなか貴重なカットです。1993年2月、蘭新鉄道の嘉峪関-玉門間でのカットです。万里の長城の西端が嘉峪関ですから、そこから西の砂漠の中。敦煌とかに行くほうなので、一応シルクロードのはしくれといえるのではないでしょうか。90年代初頭の中国は、沿岸部こそすでに改革開放が進んでいましたが、内陸部では、まだまだいにしえの中国が残っていた時代です。



そこにやってきたのは、蘭新鉄道の貨物列車。拡大してみると、機関車は丸妻で、二車体連結になっているので、旧国鉄のDD50形式のように、片運転台の機関車を二台連結して運用する「北京型」ではないかと思われます。バックには、雪化粧した青海省からチベットへと続く山脈が、雄大な光景を繰り広げています。このスケール感は、アメリカの西南部の砂漠をもしのぐ迫力。模型では再現しようがありません。


同じ列車が、もう少し近くにやってきたところでワンカット。ほとんどシルエットでしかありませんが、よくみると編成には、有蓋車とタンク車が見られます。このあたりには、砂漠の中に油田がけっこうありますから、タンク車の輌数が多いのもうなづけます。まあ、列車は写っているのですが、山の写真なのか、砂漠の写真なのか、なんとも言いづらいものがあります。大自然に比べれば、人間の営みなんてちっぽけなもの。「地平線」が見えるエリアは、そんな気持ちにさせてくれる迫力があります。



(c)2009 FUJII Yoshihiko


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