なんちゃってジオラマ

ぼくの模型の原点は、かつて中学・高校時代のSLブームの頃に何度も撮影に行き、「汽車のある景色」として心に染みついた、昭和40年代の九州の風景を再現したいというところにあります。ということで、その中でも北九州の筑豊地区と、南九州の亜幹線が、模型的にはコダわりたいところです。かつて25年前の16番では、北九州の9600とC11にコダわりましたが、12mmでは、より思い入れの強い南九州をキーワードにしました。
ということで、トミックスのパネル一枚と、ヒルマ社を中心とする、ストラクチャキットで、亜幹線のジャンクションになっている、南九州の鉄道の街の、架空の機関区のイメージをでっち上げました。ほんとは、もうちょっと作りこんで、人形や小道具で演出した写真を撮ってからご披露すべきなのでしょうが、ひとまずこの状態でお許しください。なんか「ショーティー」的、「プラレール」的なジオラマですが(笑)。昔のネガを見ながら、オジさんが、ティーンズの頃の撮影旅行を懐かしむ調子で行きたいと思います。



はじめて撮影旅行にいった中学生のぼくは、先輩に聞いた通り、前もって往復はがきを出し、その機関区の入構と撮影の許可をもらっていた。そこには、うつくしい南国のライトパシフィックC55、C57と、D51が貨客両用で出入りするとともに、入れ替え用のC56も配置されている(って、これじゃ全然架空の機関区ではないじゃないか(笑))。ハガキの入構章を見せながら、機関区に入ってゆくと、いるいる、パシフィックばっかり。あ、スポートの向こう側にいるのはC55流改じゃないか。標準型のC55は北九州で見たことがあったものの、はじめてみた流改に、思わず興奮しながらシャッターを押した。


はじめて見た流改に興奮してしまったものの、落ち着いて見ると、庫にいるC55、C57も、南九州のカマらしく、実にキレイで黒光りしている。そこで、流改に近づく前に、まず揃い踏みのカットをモノにする。あとで考えると、もっと近づいて撮るべきだったかもしれない。足が半分流改のほうに向いちゃっていたんだな。


さあ、憧れのC55流改とご対面。優雅に湾曲したデフ・ステイを持つ34号機だ(実は、ぼくのはじめて見た流改は、ホントに吉松区(あ、書いちゃった)の34号機だったりします。しかし、初対面の場所は門石信号場付近)。給炭台がある関係で、公式側はちょっと撮れるポイントが確保できない。ということで、非公式側から、ちょっと正面よりの形式写真を撮った。


と、思うまもなく、小さい汽笛とともに、C55流改は、ターンテーブルのある機関区奥のほうへバックしていった。そこで、庫までもどる。この間に、標準型のC55は、仕業につくべく機関区を出て行った。庫の中を見学させてもらっていると、また、ドラフトの音が聞こえてきた。D51が、ついで他区配置のC57が給炭線に入ってきていた。入れ替え仕業の途中で、C56も構内に姿を見せた。


C56がいるうちに、一枚揃い踏みを押さえておこう。そう思って、今度は正面よりから、C56とC57の並びを撮る。これで55、56、57とグランドスラムだ、と意味もなく喜んでしまった。


と思っていると、流改34号機が、仕業につくべくターンテーブルで向きを換え出庫線に現れた。ポイントの切り替えを待つ間、一時停止。構内踏切のところで狙うと、ウマい具合に、特徴ある動輪とドーム、キャブの三点セットが、バッチリ押さえられる。雑誌に出ているようなカットをモノにできてワクワクものだ。


ぼくは喜び勇んで、この日の次の目的地たる、名撮影地に向かった。別れの名残に、給炭台のところにいたD51を撮る。次の日も、朝早起きすれば、撮影地に向かう列車まで、若干時間が取れるので、前日「明日もまた見学させてください」と機関区の方に頼んでおいた。その日は、その鉄道の街のひなびた駅前旅館に泊まった。夕飯には「鯉のあらい」がついていた。ぼくは可愛くないコドモで、「鯉のあらい」とか「鰍の柳川」とか、クセの強い川魚が大好きだったんで、うれしかった。


次の日の朝は、昨日よりも日差しが明るい感じだ。運用の順番か、昨日とは逆の並びで、標準型C55とC57が庫のところにいた。こんどは流改もいないので、落ち着いて「寄って」撮る。並びも逆なら、撮るサイドも昨日とは逆に、非公式側から撮ってみた。


給炭線のほうに行ってみると、この庫に一輌だけ配属されている、いわゆる「ナメクジ」の一次形D51が走っていった。一瞬だったので、顔を押さえるのがやっとだった。


機関区には、昨日、ずいぶん長居したので、撮れるカットはだいたいモノにしてしまった。そこで、今日は機関区の裏手の丘から、一枚俯瞰で撮って見ることにした。お世話になった人にお礼を言うとともに、駅とは反対側の丘の上に登って、ワンカット。ファンにも、とても親切な機関区だった。帰ったら、写真を添えてお礼の手紙を出そう。



ということで、お口直しといってはなんですが、ぼくの「心象風景(死語(笑))」ともいうべき、実物の写真をお見せして、「おあとがよろしいようで」ということにさせて頂きます。とかいって、全部バラしてますね、結局(笑)。

吉松機関区 1971年12月20日 右からC5772 鹿、D511058 人、C57151 吉。ミノルタSR-T 101、MCロッコール35mmf2.8、1/60 f5.6(ぐらい)、TRI-X。


(c)2003 FUJII Yoshihiko


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