60年代、新幹線の車窓から(先史遺跡発掘シリーズ その9) -1966年夏-


まだまだ続く、60年代、ハーフ判カメラの思い出シリーズ。今回は、名古屋まで乗車した新幹線ひかり号の車窓からみた鉄道風景です。名古屋には父の実家がありましたから、前にホビー日記の中で紹介したように、6ヶ月の赤ん坊の頃、まだぶどう色1号の「特急はと」で行って以来、毎年に近く里帰りをしていました。子連れなので、それぞれの時代の最速列車を利用していたので、当然のように、青大将、151系、そして新幹線が開通ルればひかり号です。そんな中でも、自分で興味を持って写真を撮り出した、小学校5年生、10歳の夏休みの思い出です。



新幹線の車窓といっても、霊峰富士山とか、普通に風景を撮ったのでは「鉄道風景」にはなりません。ということで、車窓から見えた、鉄道を撮ったカットなのです。まずは、DD13形式を改造して標準軌にした、912形式。番号は、912-6と読めます。続いて、912形式のよきパートナー、ワキ1形式から改造された、救援車兼緩急車の935形式がチラリと見えます。それにしても、この時はプログラムEEのオリンパス・ペンでしたが、よくぞ止まっていますね。プログラムの最高速シャッターが切れていた(それでも1/250ですが)ということは、余程天気が良かったのでしょう。


続いて現れたのは、これは一体なんでしょうかね。バラスト交換車でしょうか。そのワリには、938形式とちゃんと車籍がありますね。番号は938-1となっていますが、多分この1両のみなんでしょう。バックに在来線の貨車が見えますが、貨物駅のようです。ということで、この写真は今の東静岡駅付近、当時の東静岡貨物駅に隣接する柚木保守基地で撮影されたものとわかります。しかしこの車輛、鉄道マニアも建機マニアも食指をひかれそうな感じですね。それにしても、今ならどう考えても機械扱いになるのでしょうけど。


さて、段々とディープな世界に入ってきます。さすがにこやつらは車籍はなく、機械扱いのようです。一番手前はTL-711と読めますが、何ですかこれは。ほとんどナローのディーゼル機関車のような外観。それも、レーマンとかエッゲルバーンとか、いわゆるメルヘンナロー(メンヘルナローじゃないぞ)か、遊園地の遊具のようなアンバランスさ。その次のヤツときたら、ユニック付きのトラックを陸軌車にしてしまったような感じ。MO-716となっていますが、これまたゲテモノマニア向けです。その先にチラりとVC-701なる輩が止まっていますが、これはどうやらマルタイのようですね。


さらに怪しい世界が広がります。TC-204、206となっていますが、散水車でしょうか。しかしよく見ると、タンクは自動車用のタンクローリーのタンクを流用したようですね。照明用ライトもついています。もしかすると、除草剤や融雪剤といった薬品も散布したのかもしれません。新幹線用なんで標準軌なのですが、なんともナローっぽい車輛が続きます。1960年代のTMSによくあった、ミニレイアウト用のナローっぽいフリーランスの16番車輛みたいですね。バックの東静岡貨物駅にならぶ、レ12000とレム5000が一点の清涼剤という感じに見えてきます。


こいつは一体何なんでしょうか。GW-108という型番のようですが、それではわかりません。メカとしては、自由に上下・回転するアームの先に、作業用のゴンドラと照明がついた、一種の高所作業車のように見えます。架線や饋電線関連の作業車なのでしょうか。さすがにこういう世界は、鉄道趣味の範疇を超えています。そういう意味では、「見たこともない変なモノがあるから、撮ってしまった」ということなのでしょう。今見てもわからないんですから、子供だった当時ではなおさらわからなかったでしょう。その分、こんなのの記録もそんなにないと思います。


さあ、ゲテモノシリーズもこれで最後。ゴンドラがセリあがるタイプの高所作業車ですね。これならまだ、比較的常識の範囲という感じもします。しかし、そこはそこ。キャブのデザインが、ほとんどナローのモーターカーそのものですね。森林鉄道とかの。サイズ的にも、そんなものではないのかな。まあ、これがその時代のデザインということなのでしょうね。よく見ると、内側台枠ですね。ほんとに広げちゃったのかな。仲間内に、ナローのモーターカーを12mmに改軌したヤツがいますが、この体で行くと、16.5にしてもいいのかもしれませんね。それでも16番じゃなくてスケールという。


やっと、魑魅魍魎の世界を脱して、俗世間に戻ってきました。車窓に見えたのは、静岡鉄道の2輌編成の電車。場所は、先程の続きとも言える、静鉄でいえば柚木-春日町間の、国道一号線と並行しつつ、東海道線、東海道新幹線に再接近する付近、東海大学短期大学部のあたりです。まあ、ここで電車に出会えるというのは、運が良かったのでしょう。残念ながら、電車の形式はわかりません。静鉄に詳しい方、教えてください。ノーシル・ノーヘッダーの湘南顔のワリに、DT10系のイコライザ台車を履いていますので、静鉄お得意の自社製造の鋼体化車輛のようです。


最後は、名古屋に着いてから。親戚の家にでも行くのでしょうか、市内を移動するタクシーの中から撮ったカット。名鉄瀬戸線の電車です。これも、なんせ600V時代のことでもあり、詳しいことはわかりません。同じく、お分かりの方がいらっしゃったら、お教え頂きたく存じます。場所は、市内でこれだけ幅の広い道が、瀬戸線とクロスするところというと、森下駅のところか、清水駅のところかということになりますが、写真を見ると直角にクロスしていますので、清水駅のところと思われます。正面はセドリック、右前はパブリカバン、その前はスズライトと、クルマも時代を感じさせてくれます。


(c)2012 FUJII Yoshihiko


「記憶の中の鉄道風景」にもどる

はじめにもどる