線路端で見かけた変なモノ その8 -ホームでお駄賃(拾遺編)1970年7月〜1974年7月-


今月も、またまた暴走の続きです。「ホームでお駄賃」も三回目。とにかく、駅で撮った未発表のカットの中から、それなりに面白そうなものを拾い集めてきました。年月日を見ていただければわかりますが、これは最初に九州に撮影旅行に行ったときから、最後に九州に撮影旅行に行ったときまで。75年に北海道に行っていますが、この4年間は、いわば現役蒸気機関車を撮影しに旅行した全期間です。ということで、このシリーズは今回で打ち止めにし、次回からはこの「記憶の中の鉄道風景」も、心機一転、新たな企画・構成でお送りしたいと思います(が・・・)。



まず最初は、鹿児島本線肥後田浦駅で交換待ち中の、下り貨物列車を牽引する出水機関区のD51206号機。1970年7月31日の撮影です。実はこのカット、最初に九州に撮影旅行に行き、撮影地に近い駅に降り立って最初に撮影したカット。つまりこれから4年間浸りまくる、九州の蒸気機関車を初めて撮ったカットなのです。最後のカットというのももちろんありますので、これもいつかはお目にかけるでしょう。206号機は九州では珍しい標準型試作車の一輌で、半流型のような鋳鋼製テンダ台車を履いているのが特徴です。妙に高い位置に取り付けられた正面のナンバーも、一度見たら忘れられません。九州蒸気の再末期まで若松機関区に残っており、現在も佐賀に保存されています。


続けて、八代駅に進入する、肥薩線川線上り貨物列車。牽引機は、人吉区きっての人気者、C579号機です。9号機は、個人的に好きなカマですが、人吉時代の「砂撒管2本、製造銘盤あり」という姿のほうが懐かしいです。1970年8月2日の撮影です。午前中から球磨川河畔で、肥薩線と鹿児島本線の両方を狙い、午後になって帰りの列車に乗るまでの間、八代駅で撮影しました。八代駅で撮影したカットは、ここでもすでに何度か載せましたが、分岐駅で機関支区もあり、専用線や貨物駅もあるという、ほどほどの規模感が好ましく、比較的資料写真が多い駅の一つです。特に、ここでも後方に移っているテルハは、どのカットにも写っており、ランドマークの一つといえるでしょう。


これまた、1970年の撮影です。まあ「ホームでお駄賃」なカットは、初期に撮影したものが多いので、どうしてもそうなってしまいますが。1970年8月20日、二条駅で追越待ちのところを撮影した、福知山区のD51254号機の牽引する、山陰本線上り貨物列車です。この日は、万博見物をヤメて山陰線京都口の撮影に、保津峡に行きました。その時の様子は、「京の夏、保津峡の煙」に収めています。その最後のカットと同じ列車です。かなり長時間の停車なのか、機関士・機関助士は降りてなにやらダベっていますが、逆転機のリバーは前進に入りっぱなしですね。後ろの建物は「京都魚市場株式会社」となっていますが、二条には卸売市場があり、梅小路から貨物線がありました。


さて今度は少し時間があいて、1971年12月16日の撮影。これが、都合3回目の九州撮影旅行でした。高鍋駅で退避中の、宮崎機関区C5765号機の牽引する下り貨物列車です。このコンテナ車とワムフ100が特徴の運用は、南延岡から鹿児島までのロングランで、なぜか65号機の充当が多かった記憶があります。長距離を停まり停まりしながら走ってゆくので、撮影地を選べば、列車で追い抜いても複数回撮影できました。多分65号機は、宮崎の機関車の中では、一番多く撮影しているのではないかと思いますが、そんな理由もあったのかと思います。停車列車が缶替えをするらしく、アスがらが山になっています。それだけでなく、本線側も埋まってしまって、バラストが見えない状態です。

また少し時は過ぎて行き、1972年7月30日。小海線の撮影にやってきました。信濃川上駅に佇む、小淵沢行きの貨物列車。牽引するのは、中込機関区のC58150号機です。これも、一つ前の駅舎から見返りで撮ったカットを前に使いました。それにしても、この線路。これ、30kgでさえないんじゃないのかな。とにかく、簡易線の面目躍如。サブロクナローそのものです。当時としても、こういうの見ると、侘しくていたたまれなかったんですよね。だから、比較的人気があったんですが、小海線はこの時一度しか行ってません。ワム20000、ワム2000、ワラ1、ワフ22000という編成は、ワビサビと、昭和47年という時代感と、微妙にバランスさせた、模型的な選択ともいえます。


最後は、1974年7月22日。最後の九州撮影旅行の中の一コマです。とはいえこれは蒸気機関車ではありません。この時はもう熱意もうせた状態でしたので、何度も九州に来た割に行ったことのない名所旧跡も見たりと、半分観光旅行で廻っていました。南都城駅に停車中の、志布志機関区所属の珍車、キハユニ16601号です。九州では人吉のキハユニ15と並び、ちょっとした名物でした。ぼくは、あまり湘南顔は好きではないのですが、モと電気式の湘南顔DCだけは、けっこう魅力を感じます。編成も、キハユニに加え、キハ20のバス窓、一般型の200番台と、なかなか魅力的なバリエーションです。まあ、マニアならやっぱりキハユニに乗りたいですよね。



(c)2013 FUJII Yoshihiko


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