JFK
〜テレビ版吹き替えより 裁判シーン-2〜
     

ギャリソン:あの日本当は何があったのか、皆さんと一緒に推理してみましょう。
 まず12時15分に男性が発作で倒れ警察を慌てさせ、狙撃犯が配置につくのを容易にした。しかし患者は後で消えている。病院で治療を受けた記録もありません。
 Aチームが教科書ビルの6階に到着。その週は床の張り替え工事が行われていて、名前も分からない作業員が自由にビルに出入りしていました。 狙撃の数分前に全員が素早く配置につく。無線で他の2チームに指令を送る連絡員は、一番見通 しのいい位置を確保。眺めは最高です。
  Bチームは狙撃手と連絡員の二人一組で、同じで出入り口のダルテックスビルのずっと下の階に陣取る。そしてCチームは芝生の丘を上りつめた柵の裏手に移動。連絡員と狙撃手の二人は、鉄道の監視塔にいたバウアーさんに見られています。ここが最高の狙撃地点です。ケネディが接近したとき低い弾道で狙える。 このチームには他に整理係が一人。警備を装い身分証明をちらつかせて、駐車場周辺の人払いをする。たぶんエルム通 りの群集の中にも2、3人見張りがいたでしょう。全部で11人か12人。3チームで狙撃手3人。

  2ヶ月前クレイ・ショーとデビッド・フェリーが話し合った、三角地点からの交差射撃です。無論下見は十分、隅々まで知り尽くしている。照準器は完璧に修正、動くターゲットを撃つ訓練も積んだ。準備は万全だ。
 ケネディの行列がメインストリートからヒューストン通りへ。この狙撃は成功率100%です。彼らはヒューストン通 りでは狙わない。教科書ビルから一人で狙撃するならここで狙うのが一番だ。だが彼らはじーっと待つ。三角交差の狙撃地点にくるまで。
  ケネディが最後のコーナーを曲がってエルム通りへ入ってくる。時速20キロにスピードダウン。デイリー・プラザと向き合って緊張する狙撃手たち。照準器の狙いを定め、無線機の指令を待つ。ゴー、ゴーか、それとも中止せよか。


  最初の銃声が鳴った。車のバックファイやーのように空しく響き狙いは外れた。
  フレーム161、ケネディが何か音を聞いて手を振るのをやめた。知事が右を向く。
  フレーム193、2発目は前からケネディの喉に当たる 。
  フレーム225、道路標識の影から出てくると、撃たれた様子が分かります。喉に手を当てている。
  3発目はフレーム232、ケネディ後ろから撃たれ、崩れるように前に倒れこむ。知事はまったく撃たれた様子はありません。手に帽子を握っており、手首がまだ無事なのがわかります。後ろを振り向くコナリー知事。
  フレーム238、4発目。ケネディを外れコナリーの背中に当たる。銃が2丁あったことをこのショットが証明しています。知事が叫んでいる、オーゴット!皆殺しだ。
  このあたりで車からまったく狙いの外れた1発が、立体交差下にいたテーグさんの頬を掠めた。車がブレーキをかける。
  6発目は運命の弾。フレーム313、前方からケネディの頭に命中。これがカギを握るショットです。大統領は左後方へのけぞる。弾は前方右から飛んできた。教科書ビルとはまったく反対の方向から。もう一度。後ろの左側へ。後ろの左側へ。後ろの左側へ。後ろの、左側へ。
  それからどうなったか。 まるで地獄です。

男:仕留めたぞ、早いとこ引き上げよう

ギャリソン:狙撃班達は素早く武器を片付けた。オズワルドのライフルだけを残して。
  警官のジョン・スミスは柵の後ろ側の駐車場へ急行した。火薬の匂いに気づいて。

スミス巡査:そこにいた男はシークレット・サービスだといって身分証明を見せました。

スミス巡査:身分証明は?誰か見なかったか?
男:いや、探してみよう。

スミス巡査:私は信用してそのまま行かせ、捜査を続けました。でも後悔した。あれはたぶん整備工かなんかだ。
  服装はわりとラフだったけど爪が油で汚れてた。あとで考えると妙なんだけど、そんときはね。気持ちばかりあせってて。

ギャリソン:この日のダラスのシークレット・サービスの動きはなんとも不可解です。暗殺の前にも後にも、デイリー・プラザの周辺には誰もいなかった。
  ソルズ局長がどっからか戻ってきたのが12時55分。この日少なくとも12人がダラス警察に連行されました。でもその記録はありません。
 またオズワルドはどこにいたのか。
  12時15分ごろパレードを見に行こうと出てきた女事務員が、2階の食堂にいるオズワルドを見かけました。彼は飲み物を買いに降りたと。

事務員:あの人食堂の右手の奥のイスに座ってました。例によって一人でお昼を食べてたみたい。
  声は掛けなかったけど彼だったことは確かです。

ギャリソン:ちょうど同じ頃、バーニーさんも6階でフライドチキンの弁当を食べてました。彼はそこに12時15分か20分ごろまでいたけど、誰も来なかったと言っています。
  通行人のアーノルドさんは偶然見上げて6階の窓に二人の男を見た。たぶんバーニーさんが食事を済ませて出ていった後でしょう。拘置所の6階にいた囚人もその二人を見ています。

囚人:誰も気がつかねーの。パレードが通 るってんで大騒ぎしてたからな。
  警備の奴らだと思った。

ギャリソン:オズワルドが暗殺犯だとしたら呑気な話です。持ち場はいったいどうしたのか。警察の調べにはずっと2階の食堂にいたと言っています。おそらく上からの連絡を待ってんいたんでしょう。
  でも電話は掛からなかった。そしてケネディが狙撃された90秒後、警官のベイカーが2階の食堂でオズワルドとはち合わせ。

ベイカー巡査:止まれ!こいつはここの従業員か!
ビル関係者:えぇ、そうです。大統領が撃たれたんだよ。

ギャリソン:もしウォーレン報告の通 りだとすれば、オズワルドは5.6秒間に3発撃った後、落ちた3個の薬きょうをキチンと揃えて床に並べておき、銃の指紋をふき取り倉庫の奥の見えない所にライフルを隠し、それから2階まで一気に階段をかけ降りる。途中女性二人と合うが、彼女たちが気づかないほど早く。
  そして何食わぬ顔で警官の前に立ったことになります。しかもこの間わずか90秒です。

ベイカー巡査:止まれ!こいつはここの従業員か!
ビル関係者:えぇ、そうです。大統領が撃たれたんだよ。

ギャリソン: 息を切らしていたか。それはまったくなかったと警官は証言しています。 もし暗殺犯なら、彼はこの時すぐに逃げることができました。時間が経てばやがて警察の手でこのビルは封鎖されるでしょう。彼が犯人ならすぐ近くの階段から逃げたはずです。
  ところが彼は自動販売機で飲み物を買った。そしてゆっくりと、2階で彼を見ていたリード夫人によれば、遠い正面 出口へ降りていった。警察のいるほうへ。そこから3発も銃弾が発射されたのに、教科書ビルが封鎖されたのはそれからさらに10分後でした。オズワルドは何なく正面 出口から外へ出た。


  もちろん大統領が殺されて、やっかいな事になったとは思っていたでしょう。まずい事になりそうだと。自分が生贄になると直感的に感じていたかもしれない。
  大統領は殺された、危険を知らせたのに。電話もかかってこない。恐らく彼は初めて恐怖に襲われた。


  そして1時頃一人で借りている下宿に戻った。暗殺から30分後です。 上着を着て38口径の拳銃を掴み、1時4分にそこを出た。管理人は2度クラクションが鳴るのを聞いています。何かの合図だったのか、オズワルドいる間パトカーが家の前に止まっていたと言っています。
  ティピット警官が殺されたのは、1時10分から15分の間で1.6キロ先です。誰もオズワルドが走ってるのを見たものはいないが、とにかくそこまで行ったと当局は言っています。当局の言う通 りならオズワルドは1.6キロを6分から11分で走っていったことになる。そこで殺人を犯し、また同じ道を引き返し、さっきの半分以上の距離を戻って、テキサス劇場に着いたのが1時30分ちょっと前。

 ここでもやはり都合の良い結論がひとつ。
  オズワルドは大統領を殺したから、逮捕を恐れて警官を殺したのだと。目撃者のドミンゴさんは、事件をすぐ近くで見ていたが、オズワルドを犯人と確認することを拒み面 通しはしていません。もう一人の目撃者クレメンス夫人は、犯人は二人組で別 の方向へ逃げたと言っています。でも彼女はウォーレン委員会に証言を求められていません。
  現場捜査にあたった警官のパウェルは、証拠確保のため薬きょうに自分の頭文字を書きました。でも調査委員会で見せられた証拠の薬きょうに彼の頭文字は無かったのです。


  12時44分、暗殺からわずか14分後に警察の無線がオズワルドの体格、風貌を流し手配していました。オズワルドがジェファーソン街をうろついているのを靴屋の店員が目撃しています。
  オズワルドは怖くなり、何か大きな陰謀のようなものを感じ始めていた。そしてテキサス劇場へ入った。たぶん誰かと落ちあう約束で。その証拠に彼は14ドル持っていたのに、75セントの切符を買わずに入っています。
  切符売り場の女性が警察に通報。その通報に応えて少なくとも30人の警官がパトカーを連ね大挙して映画館に押し寄せたのです。警察がこんなに早く対応したことが、こんな大げさな出動がかつであったでしょうか。待っていたとしか思えません。オズワルドがそこに行くことを誰かが知っていたのです。
  靴屋のブリューワさんが映画館の中に警官を案内し、オズワルドを指差しました。

ブリューワ:あいつです。
警官:彼だね。
 すいません、立ってください。
オズワルド:ちくしょーっ!やめろー!
 俺は何も抵抗はしない!抵抗はしていないぞー!

ギャリソン:犯人逮捕。すでに決まっていたことです、ワシントンでは。
 映画館から引き出される男に、取り巻く野次馬が罵声を浴びせる。
 オズワルドはきっとカフカの審判の主人公の心境だったでしょう。逮捕の理由も告げられず、自分に襲いかかる巨大な力の存在も知らない。


  警察に着くともう殺人犯です。容疑は警官殺し。弁護士もつけてもらえず、取調べを受けたのに調書すらない。そして一夜明けると彼の容疑は、大統領暗殺に変わっていた。
  国中がマスコミに煽られるままに彼を有罪と思った。ジャクリーン・ケネディの法廷証言に強行に反対する、見せかけの愛国者達。
  ジャック・ルビーは普段から通じている警察内部の者の手引きで、楽々と地下駐車場へ入り込んだ。そこへ生贄のオズワルドが連れ出され、国民の敵として首尾よく始末された。

ルビー:オズワルドー!
〜銃声〜

ギャリソン:誰がオズワルドの死を悲しむでしょう。暗殺者にされ葬むられた男を悼むものは誰もいません。
  あっという間にオズワルドに関するごまかしの公式発表が世界をかけ巡った。当局の創作、マスコミの脚色と拡大。堂々たる嘘とジョン・F・ケネディの葬儀に圧倒されて、人々は見る目を失い、考える力を奪われました。


  ヒットラーが言っています。嘘は大きいほど人々は信じると。
  オズワルドは大統領を殺した目立ちたがり屋の孤独な異常者。これが暗殺者の条件なら彼は最初の生贄です。
  数年後にはロバート・ケネディが、キング牧師が、変革と平和を望む人達が戦争を好む人々に危険視され、そのたび同じような孤独な異常者の手で倒されてきました。一匹狼の無意味な犯行に見せかけて、不都合なものを取り除く。


  我々はみんなハムレットの心境です。父親を惨殺された息子です。殺人者はまだ王座に居座っている。
  ケネディの亡霊が我々に恐るべき犯罪だと訴えています。アメリカの理想が踏みにじられたと。また亡霊はこうも問うています。憲法の基本はいったい何か。この国に市民の幸福、生きる喜びがあるのか、民主主義の将来は。 大統領が公然と殺されたり、陰謀と疑惑が渦巻いている中で、我々の法律はまったく正常に機能していない。
  政治的な殺人がまだ続くでしょう。
 心臓麻痺や自殺や麻薬中毒死に見せかけて、あといくつ偽装の飛行機事故や車の事故が起きればその実態が暴かれるのか。


  反逆は栄えずとある詩人は言いました。なぜでしょう?
  栄えれば反逆とは呼ばないのです。
  市民はあのザプルーダー・フィルムを見ていません。なぜでしょう?
  アメリカ市民でもX線写真や検死写真を見ることは適いません。なぜでしょう?
  この陰謀を証明できる書類が山ほどあるのに、政府は隠したり焼き捨てたりします。なぜでしょうか?
  いつも我々地検や市民が重要証拠について聞いたり閲覧を求めると、返ってくる答えは決まってます。国の安全の為。
  自分達の大統領を奪われて、何が国の安全でしょうか。国家の安全の為という名目なら市民から基本的人権を奪ってもいいのか、陰の政府の支配を認めろというのか、このアメリカで。
  そういうたぐいの国家の安全と言えばひとつしかありません。ぷんぷん臭うその正体は、そうずばり、ファシズムです。

 ここではっきり言ってしまえば、63年11月22日に起きたのはクーデターです。それが生んだ最大の悲劇は、ケネディのベトナム撤退の約束が覆されたことです。
  戦争はアメリカでは最大の商売です。年間8千億ドルの金が動く。ケネディ大統領の暗殺は共同謀議によるものです。政府の最高レベルで前もって計画され、訓練された冷徹な戦士達によって実行されました。国防省とCIAの秘密工作機関を中心にです。その中にこのクレイ・ショーもいたのです。
  いうならば公開処刑でした。手を貸したのは同じ志を抱くダラス警察の有志達。シークレット・サービスにFBI、それにホワイトハウス。さらに辿っていけばフーバーとリンドン・ジョンソンが見えてきます。この二人は事後共犯ですがね。

 あの暗殺以来大統領も格が落ちて、臨時職員になってしまった。本来大統領の使命はできるだけ機会をとらえて、国民の平和への願いを訴えること。 しかし、一方で軍と軍事産業の代理人として、議会で商談もしなきゃならない。


  私がクレイジーだと言う人もいる。野心と売名行為の固まりだと。
  私がでたらめを言っているかどうか調べるのは簡単です。このケネディ暗殺でもっとも得をした二人、ジョンソン前大統領とリチャード・ニクソン新大統領にオズワルドとジャック・ルビーに関するCIAの資料の公開を請求してごらんなさい。ついでにCIAの極秘資料、オズワルドのソ連での活動報告メモもね。こっちはたぶん破棄されていますが。
  資料はすべて皆さんのものです。国民の財産だ、税金払ってるんです。でも政府はこの現実を純真な子供達に見せるのは酷だと考えたのか、あるいは皆さんが関係者をリンチすると恐れてか、この資料はあと75年間公開禁止です。

 私はもう40を超えました。ま、逆立ちしたって拝めそうにありません。だからいつも言っているんです、うちの8才の息子に。体を鍛えて長生きしろよって。
  そして2038年9月、栄光の朝を迎えたら息子は公立公文書館に行ってCIAの資料を見る、FBIの記録もね。もしその時先送りになったら、我が家の世襲の事業にすればいい。じゅんぐりに伝えて父から息子へ、母から娘へ。いつの日かどこかで誰かが真実を見極める。

 いっそのこと、新しい政府を作って出直すべきかもしれません。独立宣言の中にもこんな言葉があった。古い社会がもし行き詰まったら、さらに西へ行けと。
  ある作家が書いています。愛国者は国を守る覚悟が必要だ、自分の政府からも。 気の重い役目だとは思いますが、国民が見ることができない証拠をお見せしたんです。そこをよく考えてください。

 子供の頃を振り返ってみると、たぶん私達はみんなこう思っていた。正義は自然に生まれてくるもの、美徳は常に報われ、善は必ず悪に勝つと。でもそうとばかり言えないことを今は知っています。
  正義は人間が苦労して作りだすもので、そりゃ容易ではない。真実は権力にとって脅威になることもある。でも権力と戦うのはいつだって命がけです。
  鉄道職員のホーランドさん、バウアーズさんにヒルさんやオキーフさん、勇気を出して語った証人はみんな死にました。


  ここに8千ドルの寄付とたくさんの手紙があります。全国から寄せられた善意と励ましです。硬貨や1ドル札で、家庭の主婦とか配管工、セールスマン、教師、闘病中の人からも。みんな無いところからやりくりしても気持ちを伝えたいからです。徹夜で働いているタクシーの運転手や、病院の看護婦、息子をベトナムに送った親もいます。なぜか。
  みんな気にかけてるんです。真実を知りたいと願っているんです。国を取り戻したいと。まだ私達の国だから。信じるものの為に戦う勇気が持てるうちは。
 真実は我々にとって最も大切なもので、もし真実が力を失って政府が真実を殺し、我々がもはやそんな政府を信じられなくなったら、私はこの国に生まれても、この国で死にたいとは思わないでしょう。

 テリソンの言葉です。死にゆく王に権威なし。
 他でもないケネディが一番それを痛感したでしょう。彼の死は恐らくわが国の歴史上、最悪の瞬間です。

 クレイ・ショーを裁く席に座った陪審員の皆さんは、権力に立ち向かう人間性の希望の担い手です。この混沌とした状況に最初の有罪評決を、クレイ・ショーに対して出していただきたい。国の為に何が出来るか、自分自身に問うてください。
  死にゆく王を決して忘れないで。

 世界に示しましょう。人民の人民による人民のための政府は健在だと。これほど重要な決断は二度とないでしょう。

 考えてください。

 
     
 
― BACK ―
 
   
   
>>> top