中国占術の基礎知識


■ はじめに

 中国占術あるいは日本の占術をやろうと思えば、五行、十干、十二支および暦の知識は欠かせません。
 ここでは、最低限のことを述べるにとどめますが、ある程度の知識を得たい方には、
   「現代こよみ読み解き辞典」(岡田芳朗、阿久根末忠編著 柏書房)
   「五行大義」(中村璋八著 明徳出版社、これは抄訳です)
をお薦めします。これらの本は、私にとって非常に勉強になった本です。


- このページの項目 -
  1. 五行説
  2. 十干
  3. 十二支
  4. 六十干支

1.五行説

 五行説とは、世の中のもの(物質だけではなく、感情とか味とか非物質のものまで含む)はすべて5つの要素で 成り立っているという説です。
 5つの要素とは、木、火、土、金、水 で、通常、「もく、か、ど、ごん、すい」と読んでいます。
やまとことばで、「き、ひ、つ、か、み」と覚えてもよいでしょう。
 全然関係ない話ですが、以前吉備津神神社に行って、吉備津神とはまさに木火土金水だと思ったことがあります。
 それはともかく、この5つの要素を五行と呼んでいますが、それらは互いに関係があります。
 以下、比較的わかりやすい例を使って説明します。

生と洩

 例えば、木は火を生じます。木をこすり合わせると火が起こることから類推できるでしょう。この関係を「木生火、木は火を生ず」といいます。逆に火によって木は炭になってしまうので、木の本来の特性は失われていくことになります。 この関係を「火洩木、火は木を洩らす」といいます。その結果、生じられる五行は強くなり、生じる五行は弱くなります。 この例では、木は強くなり、火は弱くなります。

剋と分

 金は木に勝ちます。木材はのこぎりや斧などで切られます。この関係を「金剋木、金は木を剋す」といいます。逆に、のこぎりは使っているうちに刃こぼれしていきます。つまり、金の本来の特性は木に対することで、失われていきます。この関係を「木分金、木は金を分ける」といいます。ただこの言い方はあまり一般的ではなく「被剋」すなわち剋されるという方が多いでしょう。この結果、剋される五行は非常に弱くなり、剋する五行も弱くなります。この例では、木は非常に弱くなりますし、金も木ほどではないにしろ弱くなります。

 同じ五行は互いに助ける関係にありますので、「木助木、木は木を助ける」といいます。この関係の結果ですが、一般的には強くなりますが、金の場合には弱くなることがあります。

 以上は五行関係ですが、五行自体にはその意味するものがあります。それを象意といいますが、そが中国占術を行う上で非常に重要です。五行の象意の解説については、先にあげた『五行大義』でもいいですし、市販の四柱推命の入門書にもありますので、詳しくはそれらを参照してください。

 五行相互の関係や象意を表にして下にあげます。なお、五行の象意については各書で違いがあります。 ここでは、『星平会海』にある「論情性」や「干元受剋得病訣」などの説を採用しています。

五行関係
生ずる五行
洩らす五行
剋す五行
分ける五行
助ける五行

五行
季節土用
方位中央西
五色
五常
(性格)
五臓肝臓心臓脾臓肺臓腎臓
五感

2.十干

 十干、十二支とは、俗にいう干支(えと)のことです。この前者の十干とは、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸 です。
 私は、「こう、おつ、へい、てい、ぼ、き、こう、しん、じん、き」と読んでいます。
 普通の読み方は、「きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと」 です。
 「きのえ」とは「木の兄(え)」であり、「きのと」とは「木の弟(と)」であります。
 「ひのえ」とは「火の兄」、「ひのと」とは「火の弟」です。以下、「つち」は「土」、「か」は「金」、「みず」は「水」で、同様に考えます。
 さらに、「兄」とは「陽」であり、「弟」とは「陰」です。  十干は、前ページの五行と陰陽とを組み合わせたものです。

 表にしますと、

十干
読みこうおつへいていこうしんじん
呼び方きのえきのとひのえひのとつちのえつちのとかのえかのとみずのえみずのと
五行
陰陽

 四柱推命では、十干の意味とその関係が非常に重要です。それについては、四柱推命編で説明することにします。

3.十二支

 十二支は、自己紹介などでよく使われます。曰く、「うま年生まれです」とか「えとはねずみです」とか。
 順にいうと、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥 で、読み方は、普通「ね、うし、とら、う、たつ、み、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、い」 です。音読みすることはあまりありません。(もちろん中国では中国語読みをするわけですが)

 さて、この十二支にも、五行や陰陽、季節、方位、時間が割り当てられています。
 中学、高校で古文を習うわけですが、そのときに方位や時間を覚えさせられることでしょう。例えば、「丑の刻」といえば、午前1時から午前3時ぐらいまでで、午前2時頃を指します。「丑の刻まいり」とはその時間に行うのが正しいのです。夜中の12時では「子の刻まいり」になってしまいます。
 それらを表にしましたので、参考にしてください。

十二支
陰陽
五行
季節土用土用土用土用
方位正北 北北東東北東正東 東南東南南東正南 南南西西南西正西 西北西北北西
西暦月12月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月
時刻0時2時4時6時8時10時12時14時16時18時20時22時

(注)1.西暦月は目安である。例えば寅月は立春から啓蟄までで、2月4日頃から3月6日頃までを指す。
   2.時刻はおよその時刻で、例えば子の刻は前日23時頃から1時頃までである。

 十二支の象意と関係は、大六壬で非常に重要です。そのあたりは大六壬で解説します。

4.六十干支

 六十干支とは、干と支を組み合わせたものです。六十花甲と呼ぶ人もいます。
 ちなみに干支は和風の読み方では「えと」と呼びます。「えと」というと、子、丑、寅~のことだと一般には思われていますが、正しくは十干十二支のことです。もっとも、今は「えと」といえば、生まれ年の十二支のことというのが普通ではあります。
 六十干支は、甲子から始まり、順に乙丑、丙寅、、、と干支を組み合わせていきます。すると、六十番目に癸亥となり、六十一番目はまた甲子になります。数学的にいえば、干と支の組み合わせは10×12で120通り考えられますが、順に賦すことで、陽の干と陽の支、陰の干と陰の支の組み合わせになるわけですから、120の半分の60通りとなるわけです。
 六旬を表にしてみましょう。

甲子旬甲子乙丑丙寅丁卯戊辰己巳 庚午辛未壬申癸酉/戌亥空亡
甲戌旬甲戌乙亥丙子丁丑戊寅己卯 庚辰辛巳壬午癸未/申酉空亡
甲申旬甲申乙酉丙戌丁亥戊子己丑 庚寅辛卯壬辰癸巳/午未空亡
甲午旬甲午乙未丙申丁酉戊戌己亥 庚子辛丑壬寅癸卯/辰巳空亡
甲辰旬甲辰乙巳丙午丁未戊申己酉 庚戌辛亥壬子癸丑/寅卯空亡
甲寅旬甲寅乙卯丙辰丁巳戊午己未 庚申辛酉壬戌癸亥/子丑空亡

 この表は横の干支が甲○旬という同じ旬に属するということを示しています。また同じ旬の干支は空亡が同じです。例えば丙申は、甲午旬に属し、空亡は辰巳であることを示した表です。
 奇門遁甲では、この旬の始め(すなわち甲〇)を六儀といいます。
 この横並びの旬において、甲についている十二支を旬首、癸についている十二支を旬尾と呼びます。例えば、甲午旬の旬首は午、旬尾は卯です。


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   作成  2008年 5月19日
   改訂  2021年 6月 3日  HTML5への対応、一部修正

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