中国占術あるいは日本の占術をやろうと思えば、五行、十干、十二支および暦の知識は欠かせません。
ここでは、最低限のことを述べるにとどめますが、ある程度の知識を得たい方には、
「現代こよみ読み解き辞典」(岡田芳朗、阿久根末忠編著 柏書房)
「五行大義」(中村璋八著 明徳出版社、これは抄訳です)
をお薦めします。これらの本は、私にとって非常に勉強になった本です。
五行説とは、世の中のもの(物質だけではなく、感情とか味とか非物質のものまで含む)はすべて5つの要素で
成り立っているという説です。
5つの要素とは、木、火、土、金、水 で、通常、「もく、か、ど、ごん、すい」と読んでいます。
やまとことばで、「き、ひ、つ、か、み」と覚えてもよいでしょう。
全然関係ない話ですが、以前吉備津神神社に行って、吉備津神とはまさに木火土金水だと思ったことがあります。
それはともかく、この5つの要素を五行と呼んでいますが、それらは互いに関係があります。
以下、比較的わかりやすい例を使って説明します。
例えば、木は火を生じます。木をこすり合わせると火が起こることから類推できるでしょう。この関係を「木生火、木は火を生ず」といいます。逆に火によって木は炭になってしまうので、木の本来の特性は失われていくことになります。
この関係を「火洩木、火は木を洩らす」といいます。その結果、生じられる五行は強くなり、生じる五行は弱くなります。
この例では、木は強くなり、火は弱くなります。
金は木に勝ちます。木材はのこぎりや斧などで切られます。この関係を「金剋木、金は木を剋す」といいます。逆に、のこぎりは使っているうちに刃こぼれしていきます。つまり、金の本来の特性は木に対することで、失われていきます。この関係を「木分金、木は金を分ける」といいます。ただこの言い方はあまり一般的ではなく「被剋」すなわち剋されるという方が多いでしょう。この結果、剋される五行は非常に弱くなり、剋する五行も弱くなります。この例では、木は非常に弱くなりますし、金も木ほどではないにしろ弱くなります。
同じ五行は互いに助ける関係にありますので、「木助木、木は木を助ける」といいます。この関係の結果ですが、一般的には強くなりますが、金の場合には弱くなることがあります。
以上は五行関係ですが、五行自体にはその意味するものがあります。それを象意といいますが、そが中国占術を行う上で非常に重要です。五行の象意の解説については、先にあげた『五行大義』でもいいですし、市販の四柱推命の入門書にもありますので、詳しくはそれらを参照してください。
五行相互の関係や象意を表にして下にあげます。なお、五行の象意については各書で違いがあります。
ここでは、『星平会海』にある「論情性」や「干元受剋得病訣」などの説を採用しています。
五行関係 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
---|---|---|---|---|---|
生ずる五行 | 水 | 木 | 火 | 土 | 金 |
洩らす五行 | 火 | 土 | 金 | 水 | 木 |
剋す五行 | 金 | 水 | 木 | 火 | 土 |
分ける五行 | 土 | 金 | 水 | 木 | 火 |
助ける五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
---|---|---|---|---|---|
季節 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 |
方位 | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 |
五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
五常 (性格) | 仁 | 礼 | 信 | 義 | 智 |
五臓 | 肝臓 | 心臓 | 脾臓 | 肺臓 | 腎臓 |
五感 | 目 | 口 | 歯 | 鼻 | 耳 |
十干、十二支とは、俗にいう干支(えと)のことです。この前者の十干とは、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸 です。
私は、「こう、おつ、へい、てい、ぼ、き、こう、しん、じん、き」と読んでいます。
普通の読み方は、「きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと」
です。
「きのえ」とは「木の兄(え)」であり、「きのと」とは「木の弟(と)」であります。
「ひのえ」とは「火の兄」、「ひのと」とは「火の弟」です。以下、「つち」は「土」、「か」は「金」、「みず」は「水」で、同様に考えます。
さらに、「兄」とは「陽」であり、「弟」とは「陰」です。
十干は、前ページの五行と陰陽とを組み合わせたものです。
表にしますと、
十干 | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
読み | こう | おつ | へい | てい | ぼ | き | こう | しん | じん | き |
呼び方 | きのえ | きのと | ひのえ | ひのと | つちのえ | つちのと | かのえ | かのと | みずのえ | みずのと |
五行 | 木 | 木 | 火 | 火 | 土 | 土 | 金 | 金 | 水 | 水 |
陰陽 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 |
四柱推命では、十干の意味とその関係が非常に重要です。それについては、四柱推命編で説明することにします。
十二支は、自己紹介などでよく使われます。曰く、「うま年生まれです」とか「えとはねずみです」とか。
順にいうと、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥 で、読み方は、普通「ね、うし、とら、う、たつ、み、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、い」 です。音読みすることはあまりありません。(もちろん中国では中国語読みをするわけですが)
さて、この十二支にも、五行や陰陽、季節、方位、時間が割り当てられています。
中学、高校で古文を習うわけですが、そのときに方位や時間を覚えさせられることでしょう。例えば、「丑の刻」といえば、午前1時から午前3時ぐらいまでで、午前2時頃を指します。「丑の刻まいり」とはその時間に行うのが正しいのです。夜中の12時では「子の刻まいり」になってしまいます。
それらを表にしましたので、参考にしてください。
十二支 | 子 | 丑 | 寅 | 卯 | 辰 | 巳 | 午 | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
陰陽 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 |
五行 | 水 | 土 | 木 | 木 | 土 | 火 | 火 | 土 | 金 | 金 | 土 | 水 |
季節 | 冬 | 土用 | 春 | 春 | 土用 | 夏 | 夏 | 土用 | 秋 | 秋 | 土用 | 冬 |
方位 | 正北 | 北北東 | 東北東 | 正東 | 東南東 | 南南東 | 正南 | 南南西 | 西南西 | 正西 | 西北西 | 北北西 |
西暦月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
時刻 | 0時 | 2時 | 4時 | 6時 | 8時 | 10時 | 12時 | 14時 | 16時 | 18時 | 20時 | 22時 |
(注)1.西暦月は目安である。例えば寅月は立春から啓蟄までで、2月4日頃から3月6日頃までを指す。
2.時刻はおよその時刻で、例えば子の刻は前日23時頃から1時頃までである。
十二支の象意と関係は、大六壬で非常に重要です。そのあたりは大六壬で解説します。
六十干支とは、干と支を組み合わせたものです。六十花甲と呼ぶ人もいます。
ちなみに干支は和風の読み方では「えと」と呼びます。「えと」というと、子、丑、寅~のことだと一般には思われていますが、正しくは十干十二支のことです。もっとも、今は「えと」といえば、生まれ年の十二支のことというのが普通ではあります。
六十干支は、甲子から始まり、順に乙丑、丙寅、、、と干支を組み合わせていきます。すると、六十番目に癸亥となり、六十一番目はまた甲子になります。数学的にいえば、干と支の組み合わせは10×12で120通り考えられますが、順に賦すことで、陽の干と陽の支、陰の干と陰の支の組み合わせになるわけですから、120の半分の60通りとなるわけです。
六旬を表にしてみましょう。
甲子旬 | 甲子 | 乙丑 | 丙寅 | 丁卯 | 戊辰 | 己巳 | 庚午 | 辛未 | 壬申 | 癸酉 | /戌亥空亡 |
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甲戌旬 | 甲戌 | 乙亥 | 丙子 | 丁丑 | 戊寅 | 己卯 | 庚辰 | 辛巳 | 壬午 | 癸未 | /申酉空亡 |
甲申旬 | 甲申 | 乙酉 | 丙戌 | 丁亥 | 戊子 | 己丑 | 庚寅 | 辛卯 | 壬辰 | 癸巳 | /午未空亡 |
甲午旬 | 甲午 | 乙未 | 丙申 | 丁酉 | 戊戌 | 己亥 | 庚子 | 辛丑 | 壬寅 | 癸卯 | /辰巳空亡 |
甲辰旬 | 甲辰 | 乙巳 | 丙午 | 丁未 | 戊申 | 己酉 | 庚戌 | 辛亥 | 壬子 | 癸丑 | /寅卯空亡 |
甲寅旬 | 甲寅 | 乙卯 | 丙辰 | 丁巳 | 戊午 | 己未 | 庚申 | 辛酉 | 壬戌 | 癸亥 | /子丑空亡 |
この表は横の干支が甲○旬という同じ旬に属するということを示しています。また同じ旬の干支は空亡が同じです。例えば丙申は、甲午旬に属し、空亡は辰巳であることを示した表です。
奇門遁甲では、この旬の始め(すなわち甲〇)を六儀といいます。
この横並びの旬において、甲についている十二支を旬首、癸についている十二支を旬尾と呼びます。例えば、甲午旬の旬首は午、旬尾は卯です。