大六壬大全 課目 解説


はじめに

 今回「課経」のエッセンスというべき『大六壬大全』中の「課目」をとりあげます。
 「課経」は課式を64に分類してその特徴を書いたものですが、それをさらに凝縮して各課を14文字にしたものが、課目です。さらに一部を除いてその課式に易卦が割り振られています。
 なお、テキストによっては、64課ではなく、そのうちの2つを合体させたりして、課の数は多少違います。
 「課目」もまず原文を紹介し、さらに「課経」を参考にした解説を付け加えます。なお、原文をさっさと紹介して、訳と解説はその後加えていくことにします。これは「畢法賦」のときと同じです。
 和訳はとりあえずの訳で意味は全くわからないと思いますので、実際には解説を参考にしてください。




「大六壬大全 課目」和訳および解説


 1. 元首一上剋其下、天地得位品物亨  乾卦
 2. 重審一下賊乎上、以臣諍君詳審行  坤卦
 3. 知一上下二相剋、択比而用允執中  比卦
 4. 渉害倶比倶不比、度難帰家深浅逢  坎卦
 5. 遥剋神日互相剋、蒿矢弾射勢為軽  睽卦
 6. 昴宿四課無剋遥、陰伏掩目陽転蓬  履卦
 7. 別責無剋三課備、剛三柔六九為宗
 8. 八専二課倶無剋、日陽辰陰順逆従  同人卦
 9. 伏吟天地倶不動、乙癸有剋法不同  艮卦
10. 返吟有剋往来取、井欄丑未丁己辛  震卦
11. 三光用神與日辰、時旺将吉万事通  賁卦
12. 三陽日辰與用旺、日辰貴前貴順登  晋卦
13. 三奇子戌尋大吉、申午辰寅子亥承  豫卦
14. 六儀六甲旬頭発、日儀午逆未順宮  兌卦
15. 時太発用歳月方、龍合財徳最為強  泰卦
16. 龍徳太歳與月将、天乙発用致福祥  萃卦
17. 官爵歳月與年命、駅馬魁常発用香  益卦
18. 富貴天乙乗旺気、日辰年命相生良  大有卦
19. 軒蓋三伝午卯子、正七両月正相当  升卦
20. 鋳印発用戌加巳、戌印巳炉鋳太常  鼎卦
21. 斫輪太冲申上行、卯輪庚斧乙庚歓  頤卦
22. 引従三伝引干支、又有貴引干年吉  渙卦
23. 亨通三伝逓生日、天生地生有両般  漸卦
24. 繁昌夫妻年為用、徳合旺相卦応咸  咸卦
25. 栄華貴旺禄馬発、干支年命吉将伝  師卦
26. 徳慶天徳與月徳、干支二徳為用先  需卦
27. 合歓日上逓干合、吉将三六合用兼  井卦
28. 和美専言四課事、各合互合皆為歓  豊卦
29. 斬関魁罡日辰用、重土塞門斬関行  遯卦
30. 閉口旬尾加旬首、又有武陰逆四従  謙卦
31. 遊子季用又乗丁、再遇天馬走西東  観卦
32. 三交四仲来加仲、三伝皆仲陰合逢  姤卦
33. 乱首支加干剋干、干加支上被剋同  
34. 贅婿支臨干被剋、干加支上剋支通  旅卦
35. 冲破日辰冲為用、更兼歳月破神並  夬卦
36. 淫佚後合乗卯酉、狡童佚女此中情  既済卦
37. 蕪淫三課有剋取、交車剋下男女争  小蓄卦
38. 解離日辰互剋上、年命互剋亦同称
39. 孤寡四季之前後、如春巳孤丑寡星、
    地盤為孤天盤寡、陽孤陰寡三般呈  
40. 度厄三課上下剋、上下相剋長幼驚  剥卦
41. 無禄四上来臨下、以尊制卑君子凶  否卦
42. 絶嗣四下賊乎上、小人無礼肆縦横  
43. 迍福八迍兼五福、吉凶参駁此為名  屯卦
44. 侵害日辰六害兼、年命発用最凶残  損卦
45. 刑傷干支三刑用、又兼本命與行年  訟卦
46. 二煩日月加四仲、斗系丑未此為言  明夷卦
47. 天禍四立絶神用、昨日之干加今干  大過卦
48. 天獄墓作死囚用、天罡日本之宮躔  噬嗑卦
49. 天寇分至前一日、月加離辰発用先  蹇卦
50. 天網時用倶剋日、物孕有損病纏綿  蒙卦
51. 魄化死囚帯白虎、干支年用凶禍連  蠱卦
52. 三陰貴逆日辰後、死囚玄虎時剋年  中孚卦
53. 龍戦卯酉日兼用、年立卯酉事迍邅  離卦
54. 死奇月躔天罡用、再遇鬼墓事熬煎  未済卦
55. 災厄喪吊遊魂用、丘墓歳虎伏殃辺  帰妹卦
56. 殃咎三伝剋日因、神将剋戦乗墓真  解卦
57. 九醜子午與卯酉、配合乙戊己辛壬  小過卦
58. 鬼墓日辰鬼作墓、鬼剋墓覆禍宅身  困卦
59. 励徳日辰看前後、天乙立在二八門  随卦
60. 盤珠歳月與日時、伝課倶全此為云  大壮
61. 全局三合之課是、水火木金土中存  大蓄
62. 玄胎三伝皆四孟、玄中有胎名義深  家人
63. 連珠聯茹兼進退、間伝順逆此中論  復卦
64. 六純十雑兼物類、三課之説最紛紜  革卦

[注]
21.斫は原文の字と異なるが、意味と発音は同じ。
31.この課のみ4句から成る。


 前に掲げた原文にそって、訳と解説を加えますが、通常は一つの課式に対して、いくつかの課名が割り振られます。例えば、甲子日で干上神が寅の場合は、伏吟課であり、玄胎課であり、三刑課でもあります。で、これはこの課式がこの3つの特徴を併せ持っているということでもありますが、占的や昼夜の別、あるいは年命、行年、季節等々で、この課名のどの特徴がより強く出るかが変わってきます。場合によっては、全く逆の判断もありうるのです。ですから、課名のみから判断するのは間違いを招くおそれがあります。
 しかし、一見逆の判断のようでも、その底流にはやはり課式のもつ独自の意味があるわけで、「課経」を勉強することは、その課式のもつ意味を知るためには不可欠だと思っています。
 以下は単に課目の説明だけでなく、課経にも触れつつ解説を加えていきます。
 「 」内は課目の和訳で、そのあとに解説を加えています。


1. 元首課
 「元首は上剋下が一つだけで、天地が位を得て万事順調である。」

 四課のうち上から下を剋すものが一つだけの場合を元首課といいます。
 上から下を剋す、つまり君が一人だけで、君臣の関係が正しいため、元首と名づけます。
 この課は大人の課といわれ、えらい人がこの課を得ればいい部下を得、普通の人がこの課を得ればいい上司にあう、とされます。男女関係においては正しく、また仲がよいとされます。


2. 重審課
 「重審は下賊上が一つだけで、臣が君と争う課だが詳しく審査せよ。」

 重審とは下から上を剋すので、君臣が争うという形です。いわゆる下克上です。
 しかし物事を進めるためにはある程度のあつれきはつきものですし、悪い君であればそれは倒さねばなりません。重審と名づける理由は、自分のやろうとしていることが本当に正しいのかを重ねてよく考えるべきである、ということです。よって、重審は単純に吉とか凶とかは言えません。


3. 知一課
 「知一は上下の剋が二つ以上あるが、比を選んで発用とし中を執るのがよい。」

 複数の上剋下、下剋上があった場合に、日干支の陰陽と同じものをとるというのが、知一法でした。複数の剋関係から一を知る(この場合は治めるという意味の方が適切か)ということで知一課といい、それは日干支と同じですから比卦が割り振られています。剋が多いことから物事は善悪が混雑していて、そのなかから一つを選ぶという課です。選ぶにあたっては同類がよく違うものはよくない、物事は和するによく、探しものは近くを探せとあります。


4. 渉害課
 「渉害は比か不比がともにあり、渡って本家に帰るのが困難な最も深いものを発用に選ぶ。」

 課目は渉害法を示したものですが、「九宗法」は別に解説してますのでそれを見てください。渉害課には、見機、察微、綴瑕、比用の4つの格がありますが、いずれにしても上下の相剋が多いわけですから、艱難が多く物事は遅滞してなかなか進みません。この課には坎卦が割り振られています。苦難のあとに成果があるという課ですが、必ず成果があるかどうかは十二天将や日干支の強弱などよくみきわめねばなりません。


5. 遥剋課
 「遥剋は日干と相剋のものであり、蒿矢と弾射があるが勢いは徐々に軽くなる。」

 遥剋というのは日干との相剋関係ですから、主体に対する直接的な関係になるわけです。すなわち、事のおこりは自分に直接降りかかるということで、「雷吼の如く」驚くことになるとされます。しかし、上下の剋関係はないわけですから、事はやがていい悪いは別として収まることになります。この課には蒿矢格と弾射格があります。蒿矢格は日干が剋される場合であり、弾射格は日干が二、三、四のいずれかの課を剋す場合です。この場合、直感的な感じとは逆に、蒿矢格の場合が主体に利があり、弾射格の場合が客体に利があるといわれます。いずれにしても吉将が乗っていないとよくありません。


6. 昴星課
 「昴星は四課や日干との剋もなく、陰は冬蛇掩目、陽は虎視転蓬という。」

 発用を酉の上神もしくは下神(地盤支)をとるので昴星といいますが、この課は上下の剋がなく遥剋もありません。ただ初伝のみが酉の上神か下神かだけで、中伝末伝は日上神か辰上神ですから、初伝のみが日干や課との剋関係になる可能性があるわけです。つまり、発用のみ何か事件が起こりますが、その後はどちらかというと閉塞感というか変化に乏しいと推察されます。そのゆえ「課経」には驚き恐れることがあり、慎重にしていれば吉、妄りに動くと凶とあります。二つの格、冬蛇掩目格と虎視転蓬格がありますが、いずれにしても十二天将や凶殺がくれば、災いが大きいとされます。


7. 別責課
 「別責は剋なく三課しかない場合で、剛日は三例柔日は六例、計九例しか別責はない。」

 別責課というのは、課目にあるとおり9つの場合しかありません。実は、私は長らく「剛三柔六九為宗」の意味が全くわかりませんでしたが、「大六壬預測学」にしっかり9例しかないと書かれていました。それは、戊午日、戊辰日、丙辰日で干上神が午、丁酉日で干上神が巳、辛酉日で干上神が酉、辛丑日または辛未日で干上神が丑か未、の場合です。四課がそろっていないということで、不完全不備の状態であり、剋もありませんから物事が進まないという意味があります。初伝は必ず干支の合をとり、それは干と支の合ではありませんから、これは婚姻を占えば、夫妻合せず初伝と合するわけですから、別の人と結婚するのか、または夫婦関係乱れるの象ということになります。


8. 八専課
 「八専は剋なく二課しかない場合で、陽日の場合は一課、陰日の場合は四課で、その超進の支をとるが、順逆は陰陽に従う。」

 八専課というのは2つの課しかなく、別責よりもさらに不完全ということになりますが、日干の寄宮支が日支と同じ場合ですから、干支相助ける、つまり自分と相手が協力する象意があります。また失物などは近くにあると判断します。八専課のうち三伝が酉酉酉と酉が3つ重なる場合を独足課といいますが、事に変化がなく、自分にとって得るところはほとんどありません。


9. 伏吟課
 「伏吟とは天地盤が動かないもので、乙癸日は剋となるので、伏吟法は使われない。」

 伏吟というのは四課すべて同じ場合ですから、基本的に動きはないはずですが、静が極まれば動に転ず、ということで、中末伝は必ず刑や冲を採るため動きが出てきます。刑や冲なのですから、原則として凶の変化となります。「課経」には「旧を守り新を待つ」とありますが、とにかく旧いものを打破するためには、影響の大きい凶神を使う方がいいのかもという気がします。
 伏吟課には大きく分けると自任格と自信格の2つの格があります。自任格というのは陽日で上下に剋がないもの、自信格というのは陰日で上下に剋がないものであります。その他に特殊なものとして杜伝格があり、これは発用が自刑である場合をいいます。いずれにせよ、凶に変ずる危険性があるので、柔順で動かないのが吉とされます。杜伝格の場合は、当初の目的を変更する方がよいとされます。


10. 返吟課
 「返吟は剋があれば賊剋法をとる。賊剋がない井欄は丑未と丁己辛の組合わさった日である。」

 返吟というのは四課が対冲で、おおむね剋となりますから、課式の中でもっとも動きが激しい課といえるでしょう。易卦でいえば震卦であり、驚くことが重ねて起きるという卦になります。返吟は上下対冲なので一見悪そうですが、必ずしも凶とはいえない場合もあり、十二天将や空亡などをよく見る必要があります。「課経」には三伝ごとに象意が書かれていますが、あまりあてにならないのでここでは省略します。
 返吟課はおおむね剋となるといいましたが、上下に剋がない場合があり、それを井欄といい、格の名称では井欄射格といいます。この場合は四課とも土支となります。土支ですので、墓になることが多く、異変や不安、上下阻隔の象意があります。


11. 三光課
 「三光は初伝と日干支が旺じており、吉将である場合で、この場合は万事うまくいく。」

 課目の訳のとおりで、この課は何事も順調で、災いも吉となるという課です。
 例えば、戊寅日で干上神が酉の場合、初伝は丑で貴人です。初伝と日干は助、日干は支上神から生じられています。また日支は生や助をうけてませんが、辰上神午を生じています。初伝や日干がつよく、発用もいい十二天将が着いていますから、三光課になるとみます。


12. 三陽課
 「三陽は日干支と初伝が旺じており、日干支が貴人の次にあって順貴人である場合である。」

 これも課目の訳のとおりの課の構成で、吉事を求めればみな実現するという課です。
 例えば、乙丑日で干上神が巳の場合、三伝は寅卯辰となります。これが、戌が月将で占時が酉の場合だとすると、夜貴人ですから貴人は子となります。貴人の地番は亥ですから順貴人です。子の次は丑でこれは日支にあたります。また、この場合、季節は春ですので、乙、寅は季節に旺じ、さらに方局を為しますし、日支土も一課二課が火支ですからやはり生じられます。ただし、木から剋されるわけですから、多少は弱くなりますが、財というのは剋されてこそ使い道があるというもの。このぐらいであれば、旺じていると考えていいでしょう。
 ただし、発用が官鬼であったり、貴人が働かないようだと、なかなか事は成就しないとあり、やはり全体的に吉凶を判断すべきでしょう。


13.三奇課
 「三奇というのは、甲子甲戌旬は大吉丑とし、甲申甲午旬は子、甲辰甲寅旬は亥とする。」

 旬奇というのは、課目のとおりで、各旬から求められる支です。この旬奇が発用に来るのを三奇課といいます。あるいは、三伝に入っている場合もそういうことがあります。そのいわれは省略します。占ってこの課を得れば、災いはすべて消え去り、凡事には吉とされます。ただし、これも空亡とか凶星とかよく関係を見ないと単純に判断するのは危険です。
 己酉日で干上神が申の場合、発用は亥となります。己酉は甲辰旬ですから、三奇課となります。


14.六儀課
 「六儀というのは六甲旬の旬首を発用とする。日儀というのは午から逆、未から順に付す。」

 六儀というのは、六甲旬の旬首で、日儀というのは、子の日儀は午、丑の日儀は巳、寅の日儀は辰、というふうに巳までは逆になり、午からは午の日儀は未、未の日儀は申、申の日儀は酉というふうに順に付していきます。
 この六儀または日儀が発用にある場合を六儀課といいます。
 例えば、丙辰日の場合は六儀は寅ですから、発用が寅の場合は六儀課ということになります。
 このような場合も吉事はよく凶は除かれるといいます。ただし、六儀または日儀が行年を剋すと凶となるといいます。私見では、この課も課名だけにもとづく単純な判断は避けるべきだろうと思います。


15.時太課
 「時太というのは発用が太歳支か月支であって、青龍六合財徳が三伝にあるのが最も強い。」

 時太課には泰卦が割り振られていることもあってか、時泰課と書かれることもあります。
 課目のとおり、発用に大歳支か月支があって、三伝に青龍、六合、財、日徳がある場合を時太課といいます。時太課は万事に利益があるといいます。青龍や財があれば金銭面の喜びでしょうし、六合があれば和合の喜びということができるでしょう。
 例えば、戊寅日で戌が干上神で夜占いの場合、三伝は子巳戌で、子が青龍、戌が六合となります。仮に占ったのが子年であれば、時太課ということになります。子は財で青龍ですから、とくに財での喜びがあると考えられます。


16.龍徳課
 「龍徳は太歳と月将が初伝で貴人がのっている場合で、幸福吉祥の課である。」

 貴人が発用でしかも太歳支、月将とも同じ支である場合で、このような場合が起こる場合を数学的に計算しますと確率は0.04%、約2300分の1です。
 大歳支と月将と貴人が同じ支ですから、貴人が強いということになり、吉課ということができるでしょう。この課では凶神があっても凶とならない、と言われます。  例えば、癸酉日で干上神が酉の場合、三伝が巳丑酉となりますから、年支と月将が巳で夜占いならば龍徳課となります。この場合は三伝が金局で日干の助となりますから、日干は強められるのでまず吉であるといえるでしょう。


17.官爵課
 「官爵は年月支と年命の駅馬が共通で発用となり、天魁と太常が三伝にある場合をいう。」

 課については課目のとおりです。天魁とは戌のことです。
 例をあげると、丁亥日で干上神が子で昼占の場合、三伝は巳戌卯となり、戌があって卯が太常になります。占う人の年命が巳年で占った日が巳年巳月ならば、官爵課ということになります。この場合、駅馬は日支からとっています。亥日の駅馬は巳です。
 「大六壬大全」には、天魁は印であり太常は綬であり駅馬は使命であるから、官爵と名づけるとあります。したがって、官爵課は、名誉とか地位の喜びがあるとされます。ただし、駅馬が発用ですから、訪問占いなどは訪問しても不在だと判断することもあり、全面的によいわけでもありません。まして駅馬が空亡であれば、地位を失うと判断することもできます。


18.富貴課
 「富貴は貴人が気に旺じており、日干支と年命か行年が相生する場合をいう。」

 課経には、貴人が発用であって旺相していること、と書かれています。貴人が強いということは地位や名誉が高いことであり、日干や年命、行年が相生するということは、官が来ても恐れず財が来ても壊されないということで、富貴に堪えうる課ということになりましょうか。
 象意はそのものずばりで富貴であることです。
 例えば、辛巳日で干上神が未で夜占ならば、発用は寅で貴人です。これが春占いなら寅は季節に旺じていることになります。また、日干辛は干上神未から生じられ、日支巳は支上神寅から生じられます。また行年が巳であったり寅であったりすれば富貴課ということになります。


19.軒蓋課
「軒蓋は三伝が午卯子である場合をいい、正月と七月の場合は天馬でまさに相当する。」

 軒というのは車の高いところで、この課は馬車のイメージです。卯は天車、午は馬、子は天蓋を示すといいます。正月と七月は午が天馬であるので、その月の場合が軒蓋課にふさわしいといえます。
 例えば、甲子日で干上神が亥である場合は、三伝が午卯子となり軒蓋課になります。
 高貴な馬車のイメージですので、物事は早く進み、財を求めて高い地位に上る、病はすぐに治るとされます。しかし、三伝にトウ蛇や白虎が乗ったり、年命が空亡だったり、凶神があったりすれば、馬車から落ちるということで、吉課ではなくなります。


20.鋳印課
 「鋳印は発用が巳中伝が戌で、戌は印巳火は炉で鋳造を表し太常があるともっとよい。」

 課目には書いていないのですが、三伝が巳戌卯であり太常が乗ずるときを鋳印課といいます。四柱推命でいう有薪有火有炉のイメージでしょうか。
 この課は鋳印というぐらいですから、任官、昇進には吉です。それ以外ではあまり吉ではありません。三伝の火土木のバランスがよければいいのですが、火が強すぎるのは炉を痛め木を焼き尽くすのでよくありません。
 例えば丙子日で干上神が戌で昼占の場合、三伝は巳戌卯となり卯に太常がつきます。


21.斫輪課
 「斫輪は卯が申の上にあり、卯が車輪で庚が斧で乙庚を喜ぶ。」

 課経には卯が庚または辛の上にあって発用である場合をいうと書いてあるのですが、課目には申の上と書かれています。卯は乙で申は庚で、乙庚は干合です。酉上の場合は斫輪課と言わないほうがいいように思います。
 木が金によって切られて器となるイメージです。世の中の役に立つためには、金は切られなければなりません。したがって、世に出ること、任官とか昇進とかには吉とされます。また卯が財であれば、財的な喜びがあります。ただ、これは木を痛めるわけですから、病占や出産占、訴訟占にはよくないとされます。総じて、この課の成就は遅いと課経には書かれています。


22.引従課
 「引従は三伝が干支から引かれ、また貴人があって日干年命行年を引くのは吉である。」

 引従とは、「畢法賦」の最初の句の中の前後引従と意味は同じで、干上神の前後、あるいは支上神の前後が初伝と末伝にある場合をいいます。それが、貴人であって日干や年命、行年であればさらに吉です。
 例えば、壬子日で干上神が辰で夜占の場合、三伝は巳戌卯で、巳と卯は干上神辰の前後の神となります。またこの課では巳が貴人であり、さらに年命とか行年が巳であれば、大吉疑いなしといってもいいかと思います。


23.亨通課
 「亨通は三伝が日干を生じており、天地生じるときは両般あり。」

 「逓生日」というのはめぐりめぐって日干を生じるということです。例えば丙戌日で干上神が申のときは、三伝は申亥寅となります。この場合、申金は亥水を生じ、亥水は寅木を生じ、寅木は丙火を生じるというふうに三伝から順に日干を生じる構成となっています。これを「逓生日」と言っています。なお逆に末伝から中伝、初伝、日干の順に生じる場合もあります。
 もう一つは「天生地生」という場合ですが、これは日干日支と干上神支上神が相互に生じたり旺じたりする場合をいいます。干上神が日干を、支上神が日支を生じる場合を倶生格、干上神が日支を、支上神が日干を生じる場合を互生格といいます。また、日干が干上神に旺じ、日支が支上神に旺じるときを倶旺格、日干が支上神に旺じ、日支が干上神に旺じるとき互旺格といいます。例えば、辛巳日で干上神が未の場合、支上神と寅です。未土は辛を生じ寅木が巳を生じますから、これは倶生格ということになります。これも「畢法賦」を参照してください。
 亨通の名のとおり、功名を得、婚姻は和合、財利は成るとされます。ただし逓生の場合、三伝に空亡があると、亨通とはいえず凶です。


24.繁昌課
 「繁昌は夫妻の行年を用とし、徳や合、旺相していれば、咸卦に対応する。」

 課目の訳のとおりです。咸卦については「易経」を参照してください。夫婦和合、出産は貴子を生み、謀は利あり、家は栄えるとされます。ただし行年に凶神がついていれば、凶意があります。
 例えば、夫の行年が卯で妻の行年が亥の場合は、亥卯が三合となります。課式が甲申日で干上神が巳で昼占の場合、三伝は申亥寅です。もし季節が春であれば、亥卯は木局であり、合を強めます。また行年上神はそれぞれ、午と寅であり、旺相の気となります。


25.栄華課
 「栄華は貴人が旺じて禄馬が発用となり、日干支年命三伝が吉将である場合である。」

 禄とは日禄、馬は駅馬のことです。この課は名前のとおり栄華を表します。ただし貴人が獄に座していれば、退くによく、進むのはよくないとされます。
 例えば、丙申日で干上神が寅で昼占であって、年命もまた寅だとすると、三伝は巳寅亥で貴人は亥となります。亥は日支に生じられており、巳は丙の禄です。また年命寅は六合で吉神であり、日支は玄武で凶神ですが、日干丙は寅から生じられますから、栄華課といえるでしょう。季節が春であればなおさらです。


26.徳慶課
 「徳慶は天徳と月徳、干支二徳が発用となる場合をいう。」

 課の形は訳のとおりですが、このような場合は結構あるのではないかと思います。課経には、天徳、月徳、干徳(日徳)、支徳のうち、日徳が一番いいと書いてあります。
 発用が壊されていなければ、まさに徳の慶びということで、諸事に吉といえるでしょうが、そうでない場合、つまり発用が壊されていれば、吉とはいえないでしょう。私の考えでは、この課だからといって大喜びすることはないように思います。
 戊子日で干上神が戌の場合、三伝は巳戌卯となります。巳は日徳であり、太陰がついており、巳が壊されるということもありませんから、徳慶課といえます。


27.合歓課
 「合歓は干上神の遁干と日干とが干合し、発用に吉将がつき三合六合があるものをいう。」

 わかりにくいと思いますので、例から挙げて説明します。戊申日で干上神が丑で夜占の場合、三伝は子申辰となります。まず、丑の遁干は癸ですから日干と干合します。これではじめの条件は成立です。次に発用は子で青龍がつき、さらに子は干上神丑と六合で、三伝自体が三合水局となります。これで合歓課の条件はそろいました。
 合歓課は合の歓びということですから、万事に吉でもとくに婚姻に吉、訴訟は和解ということになります。ただし合が多いのは物事の進行が遅いということで、出産や病気は長引くとされます。


28.和美課
 「和美はもっぱら四課のことをいい、各課が合し互いに合しているのは皆歓びとする。」

 訳のとおりですので、さっそく例を挙げます。例えば、壬午日で干上神が未である場合、二課は卯、三課は寅、四課は戌となります。この場合、日干一課二課は木局であり、日支三課四課は火局です。さらに、日支と一課、日干寄宮亥と三課、二課と四課は六合になってます。ちなみに寅には六合がついています。
 象意は、ほぼ合歓課と同じです。


29.斬関課
 「斬関は魁(戌)[ゴウ](辰)が日辰上にあって発用となり、土が重なって門をふさぎ関を切り開いて行く。」

 干上神と支上神が辰か戌であって、それが初伝になる場合を言います。この場合、土によって塞がれているのを乗り越える(発用となる)イメージです。遯卦とはまさに逃げる卦であり、逃亡や隠遁、旅行には吉とされます。逆に盗賊は捕まらず、病は凶、謀はなかなか実現しないといえます。ただし、土を取り除くことができれば、その逆になります。
 課経にはいろいろと書かれていますが、原則は上のとおりです。
 例えば、甲寅日で干上神が戌の場合は、支上神も戌となり、さらにそれが発用ですから、斬関課となります。


30.閉口課
 「閉口は旬尾が旬首に加えられ、あるいは玄武があって旬尾が干上や支上にある場合をいう。」

 課目の訳文の後半がどうしてこんな訳になったかを説明します。「大六壬心鏡」に「度四是終陰」とあります。注釈にはここでいう陰とは旬尾のことと書かれており、この句は旬首から逆に四つ数えると旬尾になるということです。(例えば寅が旬首であれば、寅丑子亥で、亥が旬尾となる)課目の後半は陰逆四とは旬尾のことであり、従うとは日辰上にあることだと解釈しました。旬首と旬尾が日辰上にある場合を一旬周遍格といいます。
 閉口課には大きく二通りあって、一つは旬尾が旬首の上神であるばあい、もう一つは旬首が発用で玄武がついている場合です。
 例えば、甲申日で干上神が亥の場合は、旬首が申、旬尾が巳ですが、巳が支上神で申の上にきますので、閉口課といえます。また、丁酉日で辰が干上神のときは、初伝は午となり旬首です。夜占ならば午に玄武がつきますので、やはり閉口課といえます。
 閉口というぐらいですので、物事ははっきりせず、端緒を閉ざしている状態です。しかしながら、口を閉ざすということで謀略にはよいかもしれません。病占は凶です。


31.遊子課
 「遊子は季(土支)が発用で遁干が丁であり、また天馬があれば東西奔走する。」

 遁干が丁であるということは、丑か未が発用ということになります。天馬があれば、東西奔走するということで、静かにしているのは利がありません。大体動揺して定めなき象と言われてますから、旅行とか以外はあまりいい課ではありません。  例えば、乙巳日で干上神が未の場合、三伝は未戌丑で、未の遁干は丁であります。もしこれが辰月の占いであれば、戌が天馬となります。


32.三交課
 「三交は仲(子午卯酉)に仲が加わり、三伝が皆仲で太陰六合がある場合をいう。」

 四仲は十二運では沐浴、また神殺では咸池桃花です。さらに太陰、六合があるのですから、男女間あるいは隠し事の意味が想像されます。実際、課経でもいい意味が書かれていません。
 戊子日で干上神が申で昼占の場合、三伝は卯午酉です。発用に太陰がありますので、三交課となります。日支からの咸池桃花は酉です。


33.乱首課
 「乱首は干に支を加え干を剋すのと、支に干(寄宮)が加わり同じく剋される場合をいう。」

 干上神が日支であって日干を剋す場合と、支上神が日干寄宮であって同じく日支を剋す場合があります。
 例えば、庚午日で干上神が戌の場合、支上神は申で庚の寄宮であり、日支午を剋します。
 乱首というぐらいですので、上下関係は乱れ、小事が大事となり、事は成就しにくくなります。


34.贅婿課
 「贅婿は支が干に臨み剋されて、干が支の上に加わり支を剋す場合をいう。」

 日支が干上に来て日干が日支を剋して発用となる場合と、日干寄宮が支上に来て支を剋して発用となる場合と二つの場合があります。
 例えば、丙申日で干上神が寅の場合、支上神は巳で発用となり、巳は丙の寄宮であり申を剋します。
 贅婿とは入り婿のことです。これは、主として後者の場合であり、一般に日干は夫で日支が妻ですから、日干が妻の家に入るということから贅婿というわけです。
 病占はややよく、日支が干上神に来る場合は財運はまずまず。結婚は入り婿なら成立するとされます。しかしその他の場合は凶とされます。


35.冲破課
 「冲破は干支の冲が発用となり、さらに兼ねて年月破神が並ぶ場合をいう。」

 日干支の冲が発用であって、歳破や月破、またそれらの六破が三伝にある場合をいいます。
 例えば、庚子日で干上神が亥の場合、三伝は午酉子となります。さらにこれが子年の占いだとすると、発用の午は日支の冲ですし、また年の冲でもあります。また年支子の破は酉で中伝にありますから、冲破課ということになります。
 この課においては、吉事は凶、凶事は吉となります。およそ、吉神は冲したり破したりするのはよくなく、凶神は冲したり破したりするのがいいと言われますから、それと同じ理屈です。


36.淫佚課
 「淫佚は天后と六合が卯酉に乗り、狡童佚女がその中で情を通じるということである。」

 初伝が卯か酉であって、初伝と末伝に天后、六合が乗じる場合をいいます。
 天后は女性であり、六合とは交際、結び合うことですから、中伝をはさんで情を通じるというわけです。
 例えば辛未日で干上神が午であって昼占いの場合、三伝は卯亥未で初伝に六合、末伝に天后が乗じます。
 課名のとおり、淫乱の意味があります。当然結婚はよくなく、逃げたものはつかまえることができません。その他の占的に関しては他の条件をよくみる必要があります。


37.蕪淫課
 「蕪淫は三課だけで剋が有る場合を取り、または日干と日支が剋にある場合で男女の争いを表す。」

 四課のうち二課が同じで上下に剋や遥剋がある場合をいいます。上下に剋がない場合は別責課です。
 三課だけですから、陰陽の数が合いません。まあ三角関係ということになります。このような場合は男女の争いになり、多くは淫乱という意味になると古書にはあります。
 淫乱かどうかは占的によりますが、多くの場合は凶だということになっています。しかしこれも他の条件をよくみてみる必要があるでしょう。
 例えば、乙卯日で干上神が巳の場合は、一課と四課が巳となり、二課が午、三課が辰で、三つしかありません。この場合三課辰は日支に剋されますから、別責課ではなく蕪淫課ということになります。


38.解離課
 「解離は日干支が互いに上神を剋し、年命が互いに剋のときもまた解離と称する。」

 課経においては、この解離課は、蕪淫課の中の一パターンとして位置づけています。
 課目にははっきりと書いていませんが、24.繁昌課と同様、この課は夫婦に関わる場合のみ成立する課です。蕪淫課であって、夫婦の年命が互いに剋の場合の場合を解離課といいます。
 ただし、課目にも書いてあるとおり、日干支がその上神と互いに剋になる場合を真の解離課といい、この場合は蕪淫課である必要はないようです。
 例えば甲子日で干上神が午の場合、支上神は辰となり、干が支上神を、支が干上神を剋すことになります。そのうえ夫婦の年命が寅と申だったりすると、いよいよ解離課ということになります。
 解離課はその名のとおり、別離であり、反目であります。だいたいにおいて凶であります。


39.孤寡課
 「孤寡は四季の前後、例えば春ならば巳を孤、丑を寡とする。あるいは、地盤が孤で天盤が寡、陽が孤で陰が寡、三つの考え方がある。」

 孤寡課も蕪淫課の中の一パターンとしてあげられています。
 課目ではよくわからないと思います。課経に書かれているのも、いくつか考え方があるのですが、「訂訛」の項をみると、 ①発用が空亡で陽のときを孤、陰のときを寡という場合、②発用の地盤が空亡のときが孤、天盤が空亡のときが寡という場合、③発用が空亡のときを孤、末伝が空亡のときを寡という場合の三つがあり、さらに④季節にも孤寡があり、例えば春ならば巳が孤で丑が寡という場合である、と書いてあります。
 「大六壬現代応用学」では、③の場合が省かれ、①②③の三つの場合を孤寡課と言っています。これは課目の内容と合致します。
 例えば、庚午日で干上神が戌である場合、四課は順に戌子申戌となり蕪淫課ということになります。三伝は申戌子です。この占が夏に行われたとすると、発用申は④パターンの夏季の孤になりますから、孤寡課ということになります。
 孤寡課はその字のとおり、孤独、離散、喪失を意味します。ただし、三奇課や六儀課や三光課など吉課にあたる場合は、吉とします。


40.度厄課
 「度厄は三課に上下の剋がある場合で、上下相剋は長幼が驚く。」

 この課は、長幼が驚く、とありますが、老人や幼児が災いにあったり、病気になったりするとされます。上下の剋が多いのですから、概して不利であり、とくに家庭の不和、ごたごたがあります。
 例えば、甲子日で干上神が酉の場合、四課は順に酉辰未寅となります。一課は酉が日干を剋し、三課は未が日支を剋し、四課は寅が未(三課)を剋します。二課は辰が酉を生ずることになっています。つまり四課のうち三課までが、上神が下神を剋すことになりますので、度厄課ということになります。


41.無禄課
 「無禄は四課の上が来て下に臨み、尊大を以って卑しいものを押えるもので君子には凶である。」

 四課とも上が下を剋す場合をいい、日干支とも剋されるわけですから、自分にとっても相手にとってもいいことがありません。また、上が下を一方的に剋すわけですから、慈しみの心がないというわけで、君子には凶である、というわけです。およそ孤独を意味し、傷病は必ず死、訴訟や兵事は後れるのが吉、事は静かだと思っていても必ず動く、とあります。
 例えば、己巳日で干上神が寅の場合、四課は寅酉子未となり、すべて地盤を剋す形となっています。


42.絶嗣課
 「絶嗣は四課の下が上を剋す場合で、小人は無礼で勝手放題である。」

 41の無禄課の逆で、四課とも下が上を剋す場合をいいます。下が上を剋すとはまさに下克上であり、礼儀がないという象意があります。病気は死にやすく、兵事や訴訟は先んずるのが吉、事は動いていても必ずおさまる、とあります。
 例えば、庚辰日で卯が干上神の場合、四課は卯戌亥午となり、地盤に剋されることになります。


43.{チュン}福課
 「{チュン}福は八{チュン}と五福を兼ねる場合で、吉凶が行ったり来たりでこの名をつける。」

 {チュン}はしんにょうに屯という字です。中国では普通に使う字なのに日本のフォントでないのが残念です。(Shift-JISでは出ない)
 課目の訳のとおり、八{チュン}と五福を兼ねている課です。
 八{チュン}は、八遁とも八屯とも言われますが、凶の8パターンです。列挙しますと、①月令の死気が発用となる、②発用の地盤支が月令旺気に勝つ、③発用が日墓である、④下より上を剋すものを発用とする、⑤発用に凶の十二天将が乗る、⑥中伝が刑や害になるもの(何の支との関係かははっきりしない)、⑦下剋上が多い場合、⑧干上神、支上神に凶の十二天将が乗る、という8つの場合が八{チュン}といわれます。
 五福は、①末伝が旺相となる、②末伝に吉の十二天将が乗る、③日徳が干上または支上にあり三伝にある、④年命上神が初伝を剋す、⑤干上、支上神が相生して、剋を受けない、の5つの吉課のことをいいます。
 この両者をかねるので、吉凶行ったり来たりというわけですが、課経では先凶後吉と言われます。
 例えば、癸酉日で午が干上神の場合、三伝は未子巳となります。これが春の占いであれば、八{チュン}と五福を兼ねている課となります。それぞれの条件を満たすどうかは詳述しませんので、みなさんで考えてみてください。非常に厳しい条件なのですが、これだけ条件を満たすのであれば、これは凶というよりは吉といっていいかもしれません。


44.侵害課
 「侵害は日辰(上神)が六害であって、年命は発用であれば最も凶である。」

 課目の訳のとおりです。
 例えば、癸丑日で干上神が午のとき、三伝は午亥辰となります。日干寄宮は丑で午が害となり発用です。この上、占った人の年命が午であれば凶となります。
 一般的には凶となりますが、発用に吉の十二天将が乗れば、害はなく、物事は成就するといいます。これから考えると、六害というのは作用としては小さいといえるでしょう。


45.刑傷課
 「刑傷は干支の三刑が発用となり、またそのうえ本命と行年が刑となる場合をいう。」

 課目に書かれているとおりです。  例をあげると、甲申日で干上神が亥のとき、三伝は巳寅亥となります。巳は申の合でもあり、また刑でもあります。刑は六壬では作用が大きいとされます。が、あまりそう重大に考えなくてもいいでしょう。
 刑の象意をとればいいと思いますが、だいたいにおいて不安定な状況といえます。とくに本命や行年と刑であれば、なおさらです。


46.二煩課
 「二煩は日月宿が四仲に加わり、斗が丑未につながる場合をいう。」

 課目にもある宿とは、二十八宿のことですが、日宿については、太陽の行度で、月将のことと考えてよいと説明されています。月宿は太陰の行度のことで、七政とかでは正確に天球上の位置で求めるのですが、課経では次のように二十八宿を求めるように書かれています。
 まず、二十八宿の順序は、室壁奎婁胃昴畢觜参井柳鬼星張冀軫角亢{テイ}房心尾箕斗牛女虚危、となります。
 {テイ}は氏の下に横棒、底という字のまだれがない字です。
 二十八宿の十二宮への配当は、室壁が亥宮、奎婁が戌宮、胃昴畢が酉宮、觜参が申宮、井鬼が未宮、柳星張が午宮、冀軫が巳宮、角亢が辰宮、{テイ}房心が卯宮、尾箕が寅宮、斗牛が丑宮、女虚危が子宮、となります。
 太陰の位置は、旧暦正月一日が室、二月一日が奎、三月一日が胃、四月一日が觜、五月一日が井、六月一日が柳、七月一日が冀、八月一日が角、九月一日が{テイ}、十月一日が尾、十一月一日が斗、十二月一日が女となり、前の二十八宿の順序で推移していきます。通常は一日ひとつずつ進むのですが、奎井張冀{テイ}斗は二日でひとつ進みます。例えば、九月一日は{テイ}、{テイ}は二日でひとつですから九月二日も{テイ}、九月三日は房、九月四日は心、・・・となります。九月三日は房ですから、太陰は卯宮にいるということになります。
 しかし、この方法では閏月はどうするのかがわかりません。私はやはり、太陰の天球上の位置を天文学的に求めて、方位を求めた方がよいと思います。では、太陰の天球上の位置を求める方法ですが、実際に月を観測するか、天文年鑑等を使うか、計算でもとめるかでしょうけど、ここでは長くなるので省略します。
 二句目の「斗系丑未」の斗というのは課経によると、辰のことだということです。この文は丑未の上に辰が来るという意味です。  少しわかりにくかったと思いますが、例をあげましょう。旧暦九月三日、丙午日で干上神が寅の場合、月将は卯で卯の地盤は午ですから、四仲(孟仲季の仲のこと)にあたります。また九月三日はさきほど房宿で卯宮に属しますから、これも地盤が午で同じです。さらに辰の地盤を見ると未ですから、二句目の条件もあてはまり、二煩課ということになります。
 この課は戦にいけば怪我をし、病気は治らず、胎児は育たない、刑罰に問われるという、きわめて凶と言われます。春夏占いは少しましで、秋冬は救いなし、とあります。また、十二天将が吉であっても吉意はないとされます。
 しかし、この課では月宿を求めるのがめんどくさく、そういう意味では煩わしい課ではあります。


47.天禍課
 「天禍は四立日に絶神が発用となり、昨日の干が今日の干に加わる場合をいう。」

 この課については、課目の説明と課経にある説明とが違っています。
 四立日とは、立春、立夏、立秋、立冬の四日をいいます。この課はこの四立日に占った場合をいいます。課目では、昨日の干が今日の干に加わり、さらに絶神が発用になる場合と言っています。しかし、このような条件にあう課が見当たりません。
 では課経はどう説明しているかというと、四立日の前日を四絶日といい、四立日に占った場合、四絶日の支が日支の天盤または地盤に来る場合をいう、と説明しています。
 例えば、甲申日が立春として、干上神が卯であった場合、日支申の地盤は未となり、四絶日にあたります。ちなみに発用は辰であり、これはいわゆる十二運の絶にはあたりません。
 天禍課はその字のとおり、天から災禍が降ってくるいわれ、非常に凶が激しい課といわれます。まあ、四立日に占うというのは、約九十分の一の確率であり、しかもその中の十二分の一の確率ですから、千八十分の一の確率であって、その確率は低いといえます。


48.天獄課
 「天獄は墓となし死囚を発用とし、天[ゴウ]辰が日干の長生の上神になる場合をいう。」

 課体は、課目の説明のとおりです。
 例えば、甲申日で干上神が未の場合、三伝は未子巳となります。甲日の場合未は十二運は墓にあたり、土の季節は囚にあたります。さらに木日の長生は亥で亥の天盤支は辰となりますから、天獄課ということになります。
 天獄課というぐらいですから、刑罰を受けたり、旅先で災いに遭ったり、病気になったりします。心配ごとの尽きない課とされます。


49.天寇課
 「天寇は分至の前一日で、月宿が離日支に加わり先を発用とする。」

 課目の訳ではわかりにくいと思いますので、少し説明を加えましょう。
 分至というのは、季節のもっとも頂点の時期、すなわち春分、秋分、夏至、冬至のことです。その一日前を離日といいます。月宿とは46の二項課で説明した星宿のことです。さらに先を発用とするというのは四課を発用とするという意味だと思いますが、課経ではそこまでは言っていません。
 例をあげてみます。旧暦八月五日秋分の日、丁酉日で干上神が寅とします。離日というのは、分至の一日前ですから、丙申日です。八月五日の月宿を求めますと、八月一日は角宿で、二日が亢宿、三日と四日が{テイ}宿で、五日が房宿となります。房宿は卯宮にあたります。離日支は申で、その天盤支はちょうど卯にあたりますから、この課は天寇課ということになります。さらに、この課においては亥が四課で発用となっています。  天寇課は、破壊を意味し、物事はすべて壊れます。したがって、この課は行動を起こさないのがよいとされます。また発用が月宿の場合には、災いはすぐにやってくるといわれます。
 分至は一年に四回しかありませんから、非常に特殊な課ではあります。


50.天網課
 「天網は時支と発用がともに日を剋す場合で、物や胎孕は損ない病はずっと続く。」

 課体の説明は課目の訳のとおりです。この課はやはり物を壊す課であり、妊娠は死産、病は長期化するとされます。ただし、中伝、末伝が吉であれば、終わりは吉に変わると判断します。日干が剋されるのですから、原則としてはあまりよくない課ではあります。ただこのような課はごく普通にあります。
 例えば、庚辰日で干上神が午の場合、初伝は午となり庚を剋します。さらに占時が午なら天網課となります。


51.魄化課
 「魄化は死囚が白虎を帯び、干支や年命、行年が発用であれば凶禍は連なる。」

 課経によると、魄化課というのは、白虎が死神や死気を帯びて、一課、三課または行年や年命の上神が発用の場合をいいます。死神や死気については、神殺表の中の”暦月神殺”を参考にしてください。
 この課は、病は致命的であり、訴訟ごとは刑罰をうけ、胎児は死産か子を傷つけ、旅行は厳に慎まなければならないとされます。
 例えば、壬戌日で干上神が戌の場合、発用は戌になります。戌の十二天将は白虎であり、仮に六月の占いであれば死神となりますから、魄化課ということになります。


52.三陰課
 「三陰は貴人が逆布で日支の後にあり、死囚に玄武や白虎が着いて時支が年命行年を剋す場合をいう。」

 十二天将を逆に配布する課式であって、日支の後に貴人があり、発用が死囚である場合を三陰課といいます。ちょうど12.三陽課の逆になります。課目にあるように、とくに発用に玄武や白虎があって時支が年命行年を剋するのは悪い課式となります。
 例えば癸丑日で干上神が戌の場合は発用が戌となります。貴人は巳であり地盤は申であり逆貴人となります。巳は丑から数えて五番目です。ちょっと離れていますが、日支の後ろにあたります。
 この課は公私交わり、物事は成立せず、病は長引き、地位は長続きしないといわれます。飛魂や喪魄(神殺表を参照してください)などの凶殺があれば、とくに病占は必死といわれます。


53.龍戦課
 「龍戦は卯酉日で卯酉が発用となり、年命行年が卯酉であれば事はうまくすすまない。」

 課体は訳のとおりです。
 例えば、丁卯日で干上神が丑の場合は、三伝は卯酉卯となり、初伝は卯となります。
 では、なぜ卯と酉なのかということが課経には解説が書かれていますが、卯とは時刻は朝6時で方位は東、酉は夜の6時で西ですから、日の出入りするところであり、昼と夜の境であります。この二支には陰陽のせめぎあいという特別な作用があると考えられたためです。
 この課を得れば、事は思ったように運ばず、物事が意に反して推移するとされます。


54.死奇課
 「死奇は月の躔度が天[ゴウ]辰があって発用となり、さらに官鬼や墓となれば事は悩み苦しむ。」

 課経で死奇課というのは、支上神が辰であって、それが発用となる場合をいいます。課目でいう、月の躔度(十二宮上における角度)が辰がある場合とは違いますが、一般には課経で説明されているのを死奇課といいます。
 例えば、甲子日で干上神が午の場合は支上神が辰となり、初伝は辰となります。
 死奇課は名前のとおり凶でありますが、吉神が三伝に乗じていたり、吉の神殺があったりすれば、「憂いの中にも喜びを望む」といい、救いがあります。


55.災厄課
 「災厄は喪吊、遊魂、丘墓、歳虎、伏殃などの凶神が発用となる場合をいう。」

 課目の訳のとおりで、凶の神殺が発用に来る場合をいいます。凶の神殺はいろいろありますので、災厄課には比較的なりやすいのです。したがって、この課にあまり重きをおいてもしかたがありません。初伝が凶殺なのはもちろん悪いのですが、他の条件をよくみて判断すべきでしょう。


56.殃咎課
 「殃咎は三伝が日を剋し、神将の剋戦があってその上墓に乗ずれば真である。」

 課経によると、三伝が日干を逓剋して、神将の剋戦がある場合を殃咎課と言っています。さらに干上支上あるいは日干支の地盤が墓であれば、さらにその意味は深くなります。
 逓剋というのは、初伝が中伝を剋し中伝が末伝を剋し、さらに末伝が日干を剋す場合と、末伝が中伝を剋し、中伝が初伝を剋し、さらに初伝が日干を剋す場合があります。神将の剋戦というのは十二天将の五行とそれが乗じている十二支とが剋関係にあることをいいます。例えば、白虎が卯に付いている場合、白虎は金の十二天将ですから卯を剋します。
 例をあげると、丙日で干上神が子の場合、三伝は子未寅となります。三伝は寅が未を剋し、未が子を剋します。さらに子は丙を剋しますから、日干を逓剋しています。また夜占いの場合、干上神子には{トウ}蛇が付き、{トウ}蛇は火将ですから、神が将を剋します。さらに、丙の寄巳は巳で、巳の地盤は戌で日墓です。よってこの課は殃咎課といえます。
 殃咎課は、名前のとおり災いが発生したり咎めを受けたりします。


57.九醜課
 「九醜は子午と卯酉が、乙戊己辛壬日で配合されている場合をいう。」

 醜は丑のことです。中国語辞典を引いてもらうとわかるように、丑には醜いという意味があり、その二つは同じ字として扱われいます。子午卯酉は四仲であり絶神です。乙戊己辛壬は刑殺不正の位とされます。この九つの干支と丑との関係で九醜課というのが成立します。ちょっとわかりにくいですね。
 具体的には、乙卯、乙酉、戊子、戊午、己卯、己酉、辛卯、辛酉、壬子、壬午の十日で、支上神と発用が丑の場合を言います。例えば、乙卯日で支上神が丑ならば、三伝は丑亥酉となります。
 この課は凶であり、とくに陽日は男性に、陰日は女性に悪いとされます。


58.鬼墓課
 「鬼墓は日辰の官鬼が墓となり発用である場合で、官鬼墓が多い場合は家や身に災いが起きる。」

 課体は訳のとおりです。
 例えば、壬申日で干上神が辰の場合は、発用が辰となります。辰は壬を剋し、また辰は壬の日墓ですから、鬼墓課となります。
 官鬼というのは、もちろん日干を弱めるのですが、官職という象意もありますから、就職や昇進の占いについては吉となる場合があります。その他は概して凶とされます。官鬼や墓が多いというのは、日干の気が弱くなるわけですから、吉将があってもだいたいはよくないといえるでしょう。


59.励徳課
 「励徳は日干支の前後を見て、貴人が二八門(卯酉)上神にあるものをいう。」

 励徳課は一般的には、卯か酉の上神に貴人が付く場合をいいます。日干支の前後支であることは必ずしも必要条件とはなっていません。二門とは卯、八門とは酉のことです。
 戊子日で干上神が卯で昼占の場合、丑が貴人となります。丑の地盤は卯ですから、励徳課となります。この場合は、日支が子ですから、丑は日支の前ということになります。(前というのは先のことです)
 この課は名前のとおり徳を奨励する課で、君子に吉、小人に不利、とされます。君子という人はごく少数ですから、およそこの課を得ればあまりよくありません。機会を失い福を逃し、不安を生じるとされます。徳を修めることによって、凶をさけることができるといわれる課です。


60.盤珠課
 「盤珠は年月日時支が、三伝四課にともに全部出ているものをいう。」

 この課は面白い課で、三伝四課に年月日時支が全部あるということで、めったにあることではありません。この課は遠大なる計画はうまくいくとされ、易卦でも大壮卦が割り振られています。しかしながら、ちまちました謀事はかえって悪い結果となります。また発用が凶将だったり凶の神殺だったりするのは、よくありません。
 例えば、甲子日で丑が干上神の場合、四課は丑子亥戌で三伝は子亥戌となります。ここには4支しかありませんから、この4支が年月日時支(子は日支ですが)に当たっていればいいわけです。


61.全局課
 「全局は三合の課がこれであり、水火木金土それぞれある。」

 全局課というのは、土支を除き三伝が三合会局をなす課です。また土の場合は、できれば戊己日であって三伝が全部土支の場合をいいます。
 この課は珍しいようですが、以外と成立しやすい課です。占時と月将が三合の関係にあればいいわけですから。
 この課は三合ですから、結婚などにはいい課だとされますが、実占上はそうでもありません。三合となる五行の象意が強く出ると考えた方がいいでしょう。例えば、水局であれば、雨になるとか。もっともそう単純ではなく、総合的に判断する必要があります。
 五行別に名前がついていますが、四柱推命でいう一行得気格と同じで、木火土金水は順に、曲直、炎上、稼穡、従革、潤下と呼ばれます。

62.玄胎課
 「玄胎は三伝が皆四孟である場合で、玄中に胎ありということで名づけ意味深い。」

 三伝が四孟すなわち寅申巳亥で成っている場合です。寅申巳亥は長生であり、また胎でもあります。四孟支というのは季節の初めであり、物事が生じる象意があります。良いことにしろ悪いことにしろ、物事が起きる、変化していく課です。吉の神将があれば吉だし、凶の神将があれば凶となります。妊娠占いで胎が空亡であれば死産となるとされます。
 甲寅日で干上神が巳であれば、三伝は申亥寅となり、玄胎課となります。


63.連珠課
 「連珠は連茹で進退を兼ねる、間伝は順逆あるがこの中の論である。」

 連珠課というのは、名前のとおり、三伝が連なっている場合をいいます。例えば三伝が子丑寅となっているような場合です。また間伝は連珠の変形で、ひとつおきに連なっている場合で、例えば子寅辰となっているような場合です。子丑寅というのは順で寅丑子となっているのは逆です。このような課もよく見かける課です。
 この課は吉凶ともに連続して起こる課だとされます。ところが間に空亡が入ればその時点で逆になるといわれます。


64.六純課
 「六純、十雑、それと物類、三課の説は最もごたごたと入り乱れている。」

 この課目の言わんとすることは、六純課、十雑課あるいは雑状課、物類課というのがあるが、これら三つの課を独立して分けることは単に煩雑であって意味がない、というようなことです。「六壬鑰」の巻三の結論にも、その三課は実は同じ、とあります。
 さて六純課ですが、これは四課三伝がすべて陽支であるか、またはすべて陰支であるかのいずれかです。例えば、己卯日で干上神が卯の場合は、四課は卯亥亥未で三伝は未卯亥ですから、すべて陰支となります。こういう課を六陰課といいます。陽支の場合は六陽課ということになります。
 六陽課の場合は公事によく私事に悪い、職業については昇進、妊娠ならば男児出産、六陰課の場合は私事によく公事に悪い、病気は長引く、妊娠ならば女児出産、とされます。




あとがき

 この解説は課経の内容のごくごくわずかなことしか紹介していませんし(課経の内容の1%もないでしょう)ところどころ疑問点をそのまま残しています。ですから、非常に不完全だということは私もよくわかっております。
 「課目」および「課経」は、大六壬をやる者、必ずその内容を体得すべきだ、とは先人のご意見ですが、実は課経の内容は非常に多く、私も読んだ先から忘れる始末です。今後は、実例を見るたびに、課経を常にひもとくぐらいのことをしなければいけないかな、と考えています。誰か課経の全和訳をやってくれないかな、と思っているのですが、私もやれないぐらいなのに、そういう奇特な方はいそうにありません。
 なにはともあれ一段落です。みなさんの参考になれば幸いです。



   作成  2008年 5月19日
   改訂  2019年 4月14日  一部修正およびHTML5への対応