三伝の出し方を懇切丁寧に解説した本は少ないと思います。(実は三伝の出し方にも諸説ある)
だいたいは、巻末に一覧表をつけて、表を参照してくださいということになっています。よって、この章は他書にはないものです。
といいましたが、実は、このページを書いたころに「六壬演課断三伝」という阿藤大力氏の著書を入手しまして、そこには出し方が詳しく解説されています。ただし、「六壬大法」による出し方の解説であり、一般に流布している「九宗法」ではありません。また、本のお値段がちょっと張ります。
他書との差別化をするために、前項のように”コツ”を出したいのですが、三伝については、なかなか覚える”コツ”というものがありません。覚えやすいような方法は適宜紹介したいと思いますが、覚えることが多いので覚悟してください。
三伝が”そらで”出せるようになれば、半ば(ほとんどと言ってもいいかも)大六壬のプロといってもいいでしょう。
日本で占いを趣味としている人が1%として、そのうち大六壬を知っている人が10%、さらに本格的に勉強を積んで課式の出し方まで覚えている人をそのうちの1%とすれば、その数は1000人程度ということになります。このパーセンテージはあくまで勘ですが、日本で本格的に大六壬をやっている人で、三伝を表を見ずに出せる人は、その人数以下でしょう。これは国会議員の人数並みです。(さらに言えば、専門的な大六壬の本を書いたとして、売れる見込みは千部以下ということになりましょうか。いつかは大六壬についての本を書こうと思っていたのですが、千部以下では慈悲?出版ですな。)
さて、余計な話はさておき、三伝の求め方ですが、ここでは九宗法の歌訣をもとに、解説していきたいと思います。
ただ単なる訳ではなく、できるだけ具体的に説明を加えるつもりです。
まず賊剋からです。私の実占経験では、賊剋だけ覚えておけば、70%ぐらいはOKです。四課を求めて賊剋がないことは珍しいですから、賊剋法だけ知っていても充分役に立つと思います。
下賊とは、四課をみたときに、下の十二支が上の十二支を剋する場合を、とくに下賊と呼んでいます。
下から上を剋すとは、日干が一課を、一課が二課を、日支が三課を、三課が四課を剋する場合をいいます。
また、ここでの上剋とは、四課をみたときに、上の十二支が下の十二支を剋する場合を、上剋と呼びます。
すなわち、一課が日干を、二課が一課を、三課が日支を、四課が三課を剋する場合をいいます。
さて、十二支の五行への配当は、どうだったでしょうか。今度は土用も含めた季節を考えると、次のようになりますね。
春:寅卯 春の土用:辰 夏:巳午 夏の土用:未
秋:申酉 秋の土用:戌 冬:亥子 冬の土用:丑
春は木、夏は火、秋は金、冬は水、土用は土でした。そしてそれぞれの相剋関係は、
木剋土 土剋水 水剋火 火剋金 金剋木
ですね。この順番に注意してください。水剋火ですが、火剋水ではありません。ここまでは問題ないでしょう。
三伝を出すときに、まず優先されるルールは、
「下剋上」を優先する
ということです。下剋上という言葉は歴史で習ったと思います。しかし、ここでの「下剋上」とは、六壬では「賊」のことで、地盤が天盤を剋するという意味です。まずはこれを記憶しましょう。
例でみてみましょう。四課のみあげると、
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
子 | 酉 | 寅 | 亥 |
酉 | 午 | 亥 | 庚 |
日干庚の上には亥があります。庚は金、亥は水ですから剋ではありません。注意してほしいのは、日干の場合は寄宮の申ではなく、干の五行をとります。この場合は金で同じですが。
二課は、寅は木で下の亥は水ですからやはり剋ではありません。
三課は、下の支の午は火で上の支の酉は金ですから、火剋金で下剋上(下賊)の関係になっています。
四課は、子は水で酉は金ですから、そもそも剋の関係にありません。
この文章を書いているときがたまたま庚午日未時だったために例としましたが、ま、幸いにこの例で、四課にはただ一つだけ「下剋上」が存在しました。この唯一の「下剋上」の「上神」をとって「酉」を初伝とします。
賊剋においては、中伝は初伝の上神、末伝は中伝の上神ですから、中伝は酉から4つ数えて「子」、末伝は中伝子から4つ数えて「卯」ということになります。
次の例は、同じ日で巳時の場合で、これは上剋が一つだけの場合です。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
子 | 卯 | 寅 | 巳 |
卯 | 午 | 巳 | 庚 |
一課の巳は火ですから日干庚金を火剋金と剋します。これは上剋下ということになります。
二課の寅は木で下(一課)は巳で火ですから、剋ではありません。
三課の卯は木で下(日支)は午で火ですから、同じく剋ではありません。
四課の子は水で下(三課)は卯で木ですから、やはり剋ではありません。
以上で、「下剋上」(下賊)はなく、一課だけ「上剋下」になっています。下賊がなければ上剋をとりますので、この課式の初伝は巳となります。
中伝は地盤巳のときの天盤支である寅で巳から数えると10数えることになります。末伝は中伝寅から10数えて亥となります。地盤寅の天盤支です。
2番目に覚えることは、
「下剋上がなければ、上剋下をとる」
ということです。
では、次の例はどうでしょうか?
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
辰 | 酉 | 未 | 子 |
酉 | 寅 | 子 | 戊 |
さっきと同じようにみてみましょう。一課は戊は土、子は水ですから、土剋水で「下剋上」(賊)です。
二課は、未は土ですから、一応剋の関係ですが、「下剋上」ではありません。
三課は、酉は金、寅は木ですから、剋の関係ですが、やはり「下剋上」ではありません。
四課は、辰は土、酉は金ですから、剋の関係ではありません。
で、この課には剋はあるが「下剋上」を優先しますから、初伝は「子」です。
この場合は巳から子まで数えると8つありますから、子から8つ数えて中伝は「未」、末伝はさらに8つ数えて「寅」となります。
では、賊や剋が2つ以上あるときはどうするのでしょうか。それが次です。
ここでいう用とは、発用のことで、初伝のことをいいます。
この歌訣の意味は、「下賊や上剋が2つ以上あるときは、日干と陰陽が同じものを初伝にとります。」ということです。
次にその例です。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
辰 | 酉 | 戌 | 卯 |
酉 | 寅 | 卯 | 庚 |
同様にみてみると、「下剋上」(賊)の関係は、一課と二課であることがおわかりでしょう。この場合どちらを初伝とするのでしょうか。
で、3つ目に覚えるべきことは、
「日干と陰陽が同じものを優先させる」
ということです。これが、「日干と比なるもの」ということです。この場合だと、庚は陽干ですから、陽の十二支を優先させるとわけです。
十二支の陰陽は、陽から始まって陽陰陽陰と交互にくることはご存知でしょう。すなわち、子は陽、丑は陰、寅は陽、卯は陰、(以下省略)
この場合、「下剋上」(賊)の関係のうち、一課は上神が卯で陰、二課は上神が戌で陽ですから、初伝は陽である「戌」ということになります。このような三伝の取り方を「知一法」と言います。
さらに剋が入り乱れて、「知一法」では判定できない場合があります。その場合は「渉害法」によるべきです。次にその説明をします。
この訣の意味は、「渉害をまず初伝にとるが、決まらない場合は孟、仲、季の順にとる。それでも決まらない場合は、陰日は三課(辰上神)を、陽日は一課(干上神)を初伝とする。」ということです。
では渉害とは何でしょうか。例を挙げた方がわかりやすいと思います。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
巳 | 酉 | 亥 | 卯 |
酉 | 丑 | 卯 | 己 |
賊剋をみると、一課が木剋土で上剋、四課が火剋金で上剋です。日干をみると己で土の陰ですから陰日ですが、一課の卯も四課の巳も陰支で、どちらを初伝にとっていいかわかりません。よって渉害で判定します。
渉害の意味ですが、渉というのは渡り歩くということで、害というのは、障害すなわち賊や剋をさします。
そして、歌訣の「行来本家止」とは、下の支または干を進めて上の支に到るまでということです。
といっても、まだわかりにくいですので、例によって説明します。
今の例でいえば、一課は上の支が卯で下が己です。己の寄宮支は未でした。下の支または干を進めるというのは、己すなわち未で、その次は申(庚)、次は酉、次は戌(辛)、と進めていくことです。なお、進める場合に必ず寄宮の干を入れるというのが注意点です。
表にしてみます。なお下の行は各干支と卯との関係で、剋というのは上剋下であり、賊というのは下剋上の場合で、賊剋のみ書いています。
まずは一課の場合、
卯 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
己 | 未 | 申 | 庚 | 酉 | 戌 | 辛 | 亥 | 壬 | 子 | 丑 | 癸 | 寅 | 甲 | 卯 |
剋 | 剋 | 賊 | 賊 | 賊 | 剋 | 賊 | - | - | - | 剋 | - | - | - | 本家 |
次に四課の場合、
巳 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
酉 | 戌 | 辛 | 亥 | 壬 | 子 | 丑 | 癸 | 寅 | 甲 | 卯 | 辰 | 乙 | 巳 |
剋 | - | 剋 | 賊 | 賊 | 剋 | - | 賊 | - | - | - | - | - | 本家 |
実は、この例はまぎらわしい例をわざと挙げました。この例は、古来の方法と透派の方法と違うところです。中井瑛祐氏の「大六壬占術」では初伝は巳であり、佐藤文栞氏の「干支六壬占法」では初伝は卯となっています。
今の例では、一課の場合は賊が4つ剋が4つ、四課の場合は賊が3つ剋が3つです。
で、同じ渉害でも、術者や流派で方法がいろいろとあります。
透派の方法、すなわち
(方法1)「干支六壬占法」などは賊剋にかかわらず数の多い方をとります
ので、一課の卯の方を採ります。
とある書によると、
(方法2)「下賊上の場合は賊、上剋下の場合は剋をとる」
となっています。この例の場合は上剋下ですから、剋をとってもやはり卯の方ということになります。
さらにややこしいことに、名著といわれる「大六壬探源」では、
(方法3)「上剋は我を剋す者(つまり賊)の多い方をとり、下剋は我が剋する者(つまり剋)の多い方をとる」
となっています。
この部分は、以前書いたものが間違っているようなので、謹んで訂正させていただきます。確かに「大六壬探源」の本文では、上のように書いてあるのですが、同項の例をみると、下剋上の場合はやはり賊をとっています。これは、”我”という言葉の解釈が間違ったせいといえるでしょうが、私は、「上剋」と「下剋」を入れ違ったのではないかと疑っています。いずれにしても、(方法3)についてはなかったことにしてください。この項については、「渉害論集」で諸説をあげてますので、参考にしてください。
また、別の本では、渉害課といいながら、このめんどくさい手続きを全く無視し、
(方法4)単に孟仲と柔剛で初伝を決めている
書もあります。「大六壬占術」はこの方法です。この場合は、地盤が仲である酉上の巳を初伝ととっています。
渉害については、ことさように、本によって違うので、ここのところを理解していないと、いたずらに混乱するだけだろうと思います。それで、とくにここで渉害について、説明しました。もっともこの説明では混乱を助長するだけかもしれませんが…。
今のところどちらが正しいかは私には何ともいえません。というのは、私の実占経験のなかになぜか渉害課がないからです。それもそのはずで、720課のうち、渉害法の食い違いで差が出る課は数えてみると22課あります。出会う確率は3%ですから、まあ低いといえます。
渉害、すなわち、
賊剋の数で決まらない場合は、地盤の孟仲季で決めます。
孟とは、寅、申、巳、亥の四支で、仲とは、子、卯、午、酉の四支、季とは、辰、戌、丑、未の四支です。地盤の支をみて、孟、仲、季の優先順位で初伝をきめます。
それでも決まらない場合は、「陽日の場合は一課、陰日の場合は三課を初伝とする」
となっていますが、実は残りの場合は一つしかなく、それは
戊日ですので、一課
ということになります。
中伝、末伝の決め方は賊剋法と同じです。
さっそく例を挙げて説明しますと、
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
酉 | 丑 | 申 | 子 |
丑 | 巳 | 子 | 乙 |
各課の上下では賊剋はありません。この場合、日干との関係で剋になっている上神を探します。
次に覚えておくべきは、
「上下に剋なければ、日干との剋を探す」
ということです。
で、見てみると、日干乙木と剋の関係になっている上神は、申金、丑土、酉金があります。
この優先順位は、歌訣にあったように、
「日干を剋するものを優先」
これで決まらず、2つ以上ある場合には
「日干と同じ陰陽をとる」
ということです。
日干乙木に対する官、すなわち日干を剋する五行は金ですから、申か酉のいずれかとなります。
日干は乙木で陰で、申は陽、酉は陰ですから、結局初伝は「酉」ということになります。
中伝、末伝は賊剋と同じで、その天盤支を採るので、この例では、中伝は「巳」、末伝は「丑」となります。
この方法をなぜ昴星というかといえば、スバル星は酉方位にあるので、昴星というのです。
この歌訣で十分わかると思いますので、昴星の例をひとつ。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
亥 | 申 | 酉 | 丑 |
申 | 子 | 丑 | 戊 |
課式をみると、各課の上下に賊剋なく、日干との剋の関係もありません。こういう場合、昴星を使います。
戊日ですから、陽日です。陽日は酉の上神を採ります。ところで、この課の上下の関係はといいますと、子を1として順に数えると申は9番目です。酉の上神は酉を1として順に数え9番目を求めると巳です。初伝は巳とします。
中伝は辰上神ですから申、末伝は日上神ですから丑、となります。
で、私の覚え方ですが、
「昴星は、陽は酉上、三一、陰は酉下、一三」
と覚えたのですが、昴というのが酉であるということを覚えていれば、あとは自然と出てきます。というのは、昴星課というのは、上下に剋がないので、物事がドラマチックに変化するということがない。結論はそうそうは得られず、一課、三課のいずれかを事態の推移と考えればよいということになるでしょうか。
では、なぜ初伝は酉の上神または下神なのでしょうか?これについては、課経などには、「酉は西方で秋分であり、生死の境である」という説明がされていますが、やはり何のことかわかりません。まあ、ここでは深く考えることはやめて、出し方を憶えることにしましょう。
さて、次からは特殊な課式で、これらにはそれぞれの三伝の出し方があります。
別責という方法の名前の由来ですが、三課しかないので、別にひとつ支を取り出しましょうということで名づけられています。
なぜ、干合や三合会局をとるのかは、よくわかりません。とりあえず、出し方を例で説明します。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
午 | 巳 | 未 | 午 |
巳 | 辰 | 午 | 戊 |
まず、五行が火と土しかありませんから、賊剋も遥剋もありません。で、昴星かとおもいきや、一課と四課が午で同じで、3つの課しかありませんから、別責をとります。
戊は陽日ですから、干合する干をみますと、戊と干合するのは癸です。癸の寄宮は丑ですから、丑の上神をとって寅とします。中伝末伝は一課ですから、三伝は順に寅午午となります。
こんどは、陰日の例です。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
丑 | 辰 | 辰 | 未 |
辰 | 未 | 未 | 辛 |
この場合も五行が金と土の2つしかないので、賊剋も遥剋もありません。二課と三課は辰で同じですから、別責法を使います。
陰日は日支の三合支をとります。三合支(会局)は、自分を1とすると、5番目と9番目の支です。そのうちすぐ前の支ですから、5番目の方をとります。未から「未申酉戌亥」と数えて5番目は亥です。中伝末伝はやはり一課ですから、三伝は亥未未ということになります。
別責の覚え方のコツというのは難しいですね。先に八専を説明してからにしましょう。
ここで、まず言っておきたいのですが、二課しかない場合は、8、9で述べる返吟、伏吟もそれに当たります。「九宗法」では八専がその両者より先にあげられているのですが、課を選ぶ場合には、
まず返吟、伏吟をとり、そのあと八専をとります。
この点はこのHPの読者からのご指摘で気づいたことです。その方にはこの場を借りてお礼申し上げます。あらためて言いますが、八専は返吟、伏吟でないことを確認したうえで決めることになります。(結果的には最後に判断することになる)
さて、八専の話に戻りますと、この歌訣の意味は、「陽神」と「陰神」という言葉の意味を知らないとわかりません。
ここでは、陽神と陰神の細かい説明はしませんが(陰神はとっても重要な概念ですが)、簡単にいえば、日干の陽神とは一課、日支の陰神は四課のことです。3つというのは、自分も含めてのことで、例えば子の三位前とは、子丑寅と3つ数えて、寅のことであり、子の逆三位とは、子亥戌と3つ数えて、戌のことです。なぜ3つなのかは、理由があるのでしょうが、私は寡聞にして知りません。
ちょっと注意してほしいのは、八専の場合は、遥剋はとらない、すなわち上下の関係だけみて日干との剋はとらないということです。
例をあげましょう。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
申 | 亥 | 申 | 亥 |
亥 | 寅 | 亥 | 甲 |
この場合は申と亥しかありませんし、上下の剋はありませんから、八専ということになります。
甲は陽ですので、1課の3つ先の支を初伝とします。つまり、亥子丑と3つ数えて、初伝は丑となります。
中伝末伝は一課ですから、三伝は、丑亥亥、となります。
さて、別責と八専を続けて解説しましたが、別責は課が3つしかなく、八専は課が2つしかない、さらに賊剋や遥剋(八専は別)もありませんから、まあ普通の課に比べて不完全な課といえるでしょう。賊剋がないというのは、外からの作用がなく、動きにとぼしいわけで、事態の収束は結局自分次第ということなのでしょう。(「課式の構造」を参考にしてください)よって、別責にしても八専にしても、中伝末伝は干上神(一課)ということになるのだと思います。
「不完全な課の中末伝は干上神」
というのが一つのコツですが、初伝については、理由がよくわからず、私としても覚えるしかないというところです。
まあ、別責、八専というのは、実占でもめったに見かけないので、あまり気にする必要はないかもしれません。経験を積めば次第に覚えるでしょう。
次の2つはさらに特殊な課ですが、これは結構実占でもお目にかかります。
タイトルにも書きましたように、返吟というのは上と下が支冲となっている場合です。これは、月将と占時が支冲であるからおこるわけで、確率的には12分の1で起きることになります。
支冲というのは、六つあるので六冲ともいいます。並べてみると、子午、丑未、寅申、卯酉、辰戌、巳亥の6つで、丑未と辰戌以外は剋の関係にあります。よって7割方は賊剋法と同じとりかたをします。それが、「返吟有剋亦為用」ということです。
剋がないのは丑未と辰戌の場合です。いずれも五行は土ですので、剋にならないわけです。その場合を「井欄」と呼んでいます。「井欄」とは井桁のことです。四支が引っ張りあっているのでそう呼ぶのだろうとおもいます。(確証はありません)
さて、剋がないのは土支の場合だけですから、土の寄宮をもっている日干だけを想定すればいいわけです。すると、乙、丁、己、辛、癸ですが、このうち乙と癸は土と剋の関係ですから、結局、丁、己、辛の3つの場合のみが「井欄」ということになります。丁と己の寄宮は同じですから、結局土の支は丑と未しかありません。よって「井欄」になる可能性があるのは、丁丑日、丁未日、己丑日、己未日、辛丑日、辛未日の六日です。
この場合の初伝は、
「丑日は亥、未日は巳」
と、歌訣はあっさりと説明しています。
この部分をいろいろな本では、「返吟で剋がないときは駅馬を発用とします」(『大六壬占術』)と書いています。これはこれで重要なのですが、なぜ駅馬かを書いていないので、あまり意味のある説明ではありません。しかもご丁寧に駅馬のとりかたを次に解説しているのですが、少なくとも陽日で「井欄」になる可能性はないのですから、「寅午戌日の駅馬は申」などの説明は返吟にとっては余計なことです。単に覚えるだけなら、この歌訣の方がスッキリしていていいと思うのですが…。
さて、この場合の中伝末伝は、辰上神つまり三課が中伝で日上神すなわち一課が末伝です。ちょうど昴星と逆になります。これもまた不思議なところです。しいて意味づけができないことはないのですが、「課式の構造」のところに譲りたいと思います。ただし、「課式の構造」は未完成でそこまで述べてませんが。
「井欄」の例をあげましょう。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 |
丑 | 未 | 戌 | 辰 |
未 | 丑 | 辰 | 辛 |
伏吟というのは、月将と占時が同じ場合です。上下同じなので、剋は基本的にないのですが、返吟と同じように考えると、乙日と癸日は剋になります。この場合の初伝はそれぞれ辰と丑ということになります。
なお、伏吟の場合も遥剋はとりません。
その他は、陽日は干上神(一課)、陰日は支上神(三課)が初伝となります。
初伝が決まれば中伝ですが、中伝は初伝の刑をとります。刑というのは、支刑のことです。表にしますと、
支 | 子 | 丑 | 寅 | 卯 | 辰 | 巳 | 午 | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
刑 | 卯 | 戌 | 巳 | 子 | 辰 | 申 | 午 | 丑 | 寅 | 酉 | 未 | 亥 |
このうち自刑というのは、もとの支と刑される支が同じものをいいます。つまり、辰、午、酉、亥の4つです。
これ以外が初伝の場合は、中伝は初伝の刑、末伝は中伝の刑をとります。
では、自刑である場合ですが、本文には「中伝顛倒日辰尋」とあります。この意味は、「中伝は逆に、陽日の場合は支上神、陰日の場合は干上神をとります。」ということです。さらに中伝が自刑の場合は、末伝は中伝の冲をとるということになっています。
では互刑(子卯)の場合はどう考えるか?これはHPの読者から指摘されて気づいたことです。原文には自刑については記載がありますが、互刑については記載がありません。これについては『大六壬精解』に、「丁卯、己卯、辛卯日、卯子午、皆柔日、用辰、取卯支刑子為中伝、子卯両刑、不復再伝、以子冲午為末伝也」とあります。互刑の場合も末伝は中伝の刑ではなく中伝の冲をとります。すなわち三伝は卯子午となります。
ということで、気が付いたかもしれませんが、
伏吟の場合は三伝が同じになることはありません。
以上をまとめると、
(1)初伝は、甲乙丙戊庚壬癸日は一課、丁己辛日は三課をとる。
(2)中伝は、
①初伝の刑をとる。
②初伝が自刑なら、一課、三課のうち初伝と違うものをとる。
(3)末伝は、
①中伝の刑をとる。
②中伝が自刑なら、中伝の冲をとる。
以上で九宗法の解説を終わります。これで三伝は求められることになります。
最後に思考の順をまとめると、次のように考えればいいと思います。
特殊課その1(返吟、伏吟)ではないか
↓
特殊課その2(八専、別責)ではないか
↓
四課の上下に賊、剋があるか
有↓ 無↓
賊剋法を使う 上の特殊課(1,2)か?
↓ 否↓ 是↓
知一法を使う 遥剋法を使う 特殊な課の方法に従う
↓ ↓
渉害法を使う 昴星法を使う
「透派六壬大法」(『六壬演課断三伝』)には、「分九最不該」とあります。意味は、「九宗法はもっともとるべきでない」ということです。しかし、大六壬の解説書には九宗法が採用されており、むしろ「六壬大法」の方法が異説というべきでしょう。(どちらが正しいと言っている訳ではありません)
いずれにせよ、九宗法のエッセンスをここまで短く解説しているものは少ないと思います。私の経験からは、何度か自分で三伝を求めようと練習しているうちに自然に覚えてくるものであります。トライしてみてください。
長い章でしたが、最後に例題を。
例題2 2006年9月6日午前8時に占う。
この時刻は、これは、さきにあげた悠仁親王の誕生日時です。
これでまず日干支の表を作ると、
日干支 | 戊戌 |
占時 | 辰 |
月将 | 巳 |
そして、前章の例題により、次の表が得られました。
四課 | 三課 | 二課 | 一課 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
子 | 天后 | 亥 | 太陰 | 未 | 天空 | 午 | 青龍 |
亥 | - | 戌 | 日支 | 午 | - | 戊 | 日干 |
さて、三伝を求めましょう。まずは、これは特殊(伏吟、返吟、別責、八専)ではありません。
次に賊剋があるかみてみますと、一課は火生土、二課は火生土、三課は土剋水(賊)、四課は水、ですから三課のみ賊となります。三課亥を初伝とします。
中伝は三課の上神、すなわち四課であり、末伝は四課上神で丑となります。十二天将は丑は貴人です。
遁干は甲午旬ですから、亥の遁干は己、子の遁干は庚、丑の遁干は辛となります。ちなみに空亡は辰巳です。
初 伝 | 己 | 亥 | 太陰 | 妻財 |
中 伝 | 庚 | 子 | 天后 | 妻財 |
末 伝 | 辛 | 丑 | 貴人 | 兄弟 |
表はうまくできましたか?これは賊が一つだったので簡単ですね。この表と六壬推命で悠仁親王が占えるのですが、ここでは単に課式作りの例題にとどめておきます。
おつかれさまでした。