3.貴人と十二天将の求め方

■ はじめに

 貴人、十二天将というのは、例題の表にある貴人とか六合とか玄武とか白虎とか書かれているもので、それが十二種類あるので、十二天将と言っています。天将というのは、もともとそれらの名称が天の各部署を守護する神(将軍)から来ているところからそう呼ばれます。
 その十二天将とは、貴人、螣蛇、朱雀、六合、勾陳、青龍、天空、白虎、太常、玄武、太陰、天后、の12です。これはこの順序で覚えなければいけません。そのあたりの話はまたのちほどとします。
 この十二天将を求めるためには、次の2点が明らかにならなければなりません。
   ①昼貴人か夜貴人か・・・貴人のつく支が決まる
   ②順貴人か逆貴人か・・・十二天将を十二支に割り振る
 まずは、昼貴人か夜貴人かを求めるために昼と夜の概念を明確にします。

■ 昼と夜

 その前に昼と夜をおさらいしておきましょう。
   昼とは、卯の刻(午前5時頃)から申の刻(午後5時頃)まで。
   夜とは、酉の刻(午後5時頃)から寅の刻(午前5時頃)まで。
 ただし、これには異論がありまして、昼とは日の出から日没まで、夜とは日没から日の出まで、とする術者もいます。(普通の感覚としてはしっくりきますね)
 とくに、占時を抽籤(おみくじみたいなもの)で求める術者は、日の出から日没を昼とするようであります。
 私は、通常はピンク色の文字での方法でとっており、日の出や日没を意識したことはありません。今のところ、多くの術者が、卯から申を昼、酉から寅を夜としているようです。

■ 貴人にあたる十二支

 さて、昼夜が決まったら、いよいよ貴人にあたる支を求めます。貴人にあたる十二支は日干から求めます。
 実は、貴人も古い方法と新しい方法(明の時代に変わったようです)があります。ただ最近の本はほとんど新しい方法なので、その覚え方のコツを紹介します。
 なお、古い方法とはどのような方法かは、六壬古今論集の中に貴人論集として、貴人起例の方法を取り上げていますので、興味のある方はそれをみてください。

 まず、貴人を表にしてみます。

日干支
昼貴人
夜貴人

 昼貴人(日貴人ともいう)とは占った時刻が昼の場合に使う貴人の十二支であり、夜貴人とは占った時刻が夜の場合に使う貴人の十二支です。
 では、前章で使った例題1の四課の表を再度載せますと、次のようになっていました。

四課三課二課一課
白虎太陰貴人六合
-日支-日干

 この四課の表をみてみますと、亥に貴人がついています。
 さて、この例題1の日干支は丙戌、占った時刻は酉でした。すると丙の夜貴人ということになりますから、前の表を見てみますと「亥」となっています。貴人の表があれば、貴人の十二支を出すのは簡単です。

 ではこの表はどうやって作るのでしょう。まあどうやって覚えたらいいでしょうか。
 私の作った覚え方のコツは二通りありますが、ここでは、私が普段使っている簡便な方法を紹介します。
   ①「辰戌は貴人にならない」
 辰戌は天羅地網といい、もともとよくない十二支ですので、貴人とはならないと覚えておいてください。
   ②「昼貴人は順行、夜貴人は逆行」
と覚えます。このことはあとで説明します。
 最後に、昼貴人の歌訣の一行目、
   ③「甲羊(未)戊庚牛(丑)」(コウヤン ボコウギュウ)
を覚えます。歌訣とは、秘伝などを覚えやすいようにごろのよい詩にしたものです。これを私は”コウヤン ボコウギュウ”と日本語と中国語のチャンポンで覚えています。”ヤン”というのは中国語読みです。
 ちなみに夜貴人の歌訣の一行目は「甲牛戊庚羊」ですから、ちょうど逆になりますので、昼貴人だけ覚えておけばいいわけです。

 以上の三項目を覚えておけば、貴人の支が求められます。
 頭の中では次のように表を作っていきます。もちろん最初は紙に書いてもかまいません。

 まずは、十干を順に並べます。

 次に、占った時間が昼の場合は「甲羊戊庚牛」”コウヤン ボコウギュウ”ですから、甲、戊、庚のところに、わかっている3つだけ埋まります。すなわち

 次に、占った時間が昼の場合、順行ですから、甲乙丙丁は、順に申酉戌と行きたいところですが、戌は貴人にならず跳ばして亥。

戌×
        ↓

 戊は丑、己は寅と行きたいところですが、庚が丑ですので、その前ということで子。

 庚辛壬癸は、庚が丑ですから、順に寅卯辰と行きたいところですが、辰は貴人にならず跳ばして巳。

辰×
                ↓

 これで昼貴人ができあがりました。

 夜貴人の場合は、丑と未が逆で、逆行です。表の十干は記載を省略します。

       

 甲乙丙丁は、甲が丑ですから、逆に子亥戌と行きたいところですが、戌は貴人にならず跳ばして酉。

    

 戊は未、己は午と行きたいところですが、庚も未でこれに引きずられて、その前ということで申。

   

 庚辛壬癸は、庚が未ですから、順に午巳辰と行きたいところですが、辰は貴人にならず跳ばして卯。

 夜貴人の表ができあがりました。

 表をみてわかると思いますが、昼の場合は午が貴人になりません。夜の場合は寅が貴人になりません。
 己がちょっと苦しいのですが、まあ覚えてしまえばどうということはありません。
 私が貴人の支を求める時は、例えば癸の場合、昼であれば、庚は丑ですから、指を折りながら「丑寅卯辰は跳ばして巳」と言って、貴人は巳だと出しています。

■ 貴人位置(貴人地盤支)と十二天将の順逆

 さて、貴人の支が決まったら貴人位置を求めます。貴人位置とは貴人の支が天盤にあるとして、その地盤の支を求めることです。
 例題の場合は、亥が貴人でした。その地盤は亥の下ですから貴人位置は申ということになります。天地盤を作れば一発です。慣れると手のひらで天地盤を作れるようになります。
 手のひらを使わず頭の中でやるとなると、ちょっと器用さが必要。十二支を逆に言えなければなりません。普通の人は、十二支の順番はよく覚えていて、「子丑寅卯辰巳~」と言えますが、逆に「亥戌酉申未午~」とはなかなか言えないようです。これができるようになると、地盤支を求めるのは簡単です。まあ練習しかないですね。

 貴人位置が決まれば、十二天将の順逆が決まります。
 貴人位置の十二支が
   ”冬春”、すなわち亥子丑寅卯辰の場合は順に配布、すなわち順貴人
   ”夏秋”、すなわち巳午未申酉戌の場合は逆に配布、すなわち逆貴人
 なぜ冬春が順で夏秋が逆なのか、これについては、別に論じたいと思いますが、ここでは、冬春は徐々に暖かくなるから順、夏秋は徐々に寒くなるから逆と覚えておいてください。

■ 十二天将の順序

 十二天将の順序ですが、これはもう覚えるしかありません。
   「貴蛇雀合陳龍 空虎常武陰后」
と私は覚えています。

 何度も言っているうちに覚えるものですが、ただ覚えるのも大変でしょうから、少しばかりコツというより、私流の変な覚え方を紹介します。
 貴人というのは大変よい十二天将です、その反対側(十二支でいう六冲ですな)には天空という悪い(むなしい)十二天将が来ます。

   ①「貴人の反対は天空」
というふうに貴人と天空をセットで覚えます。
 貴人の次には螣蛇が来ますが、これは驚かす十二天将です。
   ②「貴人が驚く」
と覚えます。そして、朱雀、六合と続きます。
   ③「蛇が雀(の卵)を呑む」
少し苦しいのですが、呑むという字は合という字に似ています。中国語では「合」は「he」で、飲むと意味の「喝」も「he」です。六合の次は勾陳ですが、
   ④「合と勾」(ゴウとも読みます)
と引っ掛けて覚えます。次は青龍、天空、白虎ですが、天空は貴人の反対側でした。
   ⑤「竜虎の争いは空をはさんで大丈夫」 と覚えています。大丈夫とは太常、玄武と続きで覚えるのにひっかけてます。
 あとは残り二つで、これらは女性を示す天将です。
   ⑥「貴人の前に貴人のきさき、女の人は陰である」
とここは天后、太陰と逆に覚えました。ただ私もやっているうちに「太陰天后」と語呂で覚えたので、あまり理屈をこねないほうが覚えやすいでしょうか。
 これで十に天将を一周しました。この覚え方で私は覚えましたが、これがベストとも思えませんので、皆さんで工夫してみてください。

 この順番で、貴人位置によって順逆に配布していきます。順の場合は貴人が子なら、螣蛇は丑、朱雀は寅といった具合。逆の場合は貴人が子なら、螣蛇は亥、朱雀は戌というように配布します。

 以上をまとめると、貴人、十二天将を出す手順は、

   昼夜 → 昼夜貴人 → 貴人位置 → 順逆貴人 → 十二天将

 ちょっとややこしいですが、ここまでは、5、6回ぐらい課式の出し方を反復すれば、覚えられます。

 ここまでのところをちょっと例題をかえて、次の例題2を使って出してみましょう。

例題2  2006年9月6日午前8時に占う。

 この時刻は、悠仁親王の誕生日時ですが、2006年のビッグイベントでしたから、この時刻を例題2として使います。
 さて、2006年9月6日は暦をめくると水曜日で、干支は戊戌です。
 占時は午前8時です。午前0時ごろが子時で、2時ごろが丑時、4時ごろが寅時、6時ごろが卯時、8時ごろが辰時と続きますから、占時は辰時です。
 月将は、2月1日ごろを子として逆行しますから、3月1日ごろは亥、4月は戌、5月は酉、6月は申、7月は未、8月は午、9月は巳、と続きます。月将は午です。
 これでまず次の表が埋まります。

日干支戊戌
占時
月将

 次に、四課を求めます。
 日干戊の寄宮は、戊で丙火と同じです。丙は夏で孟の十二支をとりますから、寄宮支は巳となります。
 占時は辰で月将は巳ですから、占時から月将をみると、次の支ということになります。
 日干寄宮は巳ですから、一課はその次の午、二課はその次の未、となります。
 日支は戌ですから、三課はその次の亥、四課はその次の子、となります。
 天地盤はどうなるかというと、天盤は地盤の次の支を置けばいいのですから、

天盤
地盤

となります。これは簡単。

 貴人と十二天将を求めましょう。
 まず、占時が辰ですから昼貴人です。昼貴人歌は「甲羊戊庚牛」(コウヤンボコウギュウ)でした。戊日ですからすぐに昼貴人は丑ということがわかります。つまり丑に貴人がつきます。
 次に貴人位置ですが、昼貴人丑の地盤は子ということが上の表でわかります。すなわち貴人位置は子です。
 貴人位置子ということは、これは順貴人ですから、十二支の順番に十二天将を配置すればいいわけです。その順番は、丑が貴人、寅が[トウ]蛇、卯が朱雀、辰が六合、巳が勾陳、午が青龍、未が天空、申が白虎、酉が太常、戌が玄武、亥が太陰、子が天后、となります。
 以上で十二天将が求められました。さて、ここまで日干支を求める場合を除いて、表を見ないでできたでしょうか?で、次の表が例題2の課式で完成です。

四課三課二課一課
天后太陰天空青龍
-日支-日干


4.遁干と空亡

 さて、以前の例題1について、解説されていない表が残りました。それは下の表です。

初 伝六合妻財
中 伝貴人官鬼
末 伝玄武父母

 これは三伝といい、物事の推移を見るためのものです。まずこの表に示した遁干について説明します。

 遁干とは何か。遁というのは逃げるとか隠れるとかいう意味です。遁干というのは”隠れている干”ということですが、実際には求められた十二支に十干を付けるという作業になります。
 遁干の方法は大きく二つあるのですが、普通は旬干を使います。その旬干を求めるには旬干を示す表が便利です。それは、「中国占術の基礎知識」にも載せてますが、それをここで載せますと、

甲子旬甲子乙丑丙寅丁卯戊辰己巳 庚午辛未壬申癸酉/戌亥空亡
甲戌旬甲戌乙亥丙子丁丑戊寅己卯 庚辰辛巳壬午癸未/申酉空亡
甲申旬甲申乙酉丙戌丁亥戊子己丑 庚寅辛卯壬辰癸巳/午未空亡
甲午旬甲午乙未丙申丁酉戊戌己亥 庚子辛丑壬寅癸卯/辰巳空亡
甲辰旬甲辰乙巳丙午丁未戊申己酉 庚戌辛亥壬子癸丑/寅卯空亡
甲寅旬甲寅乙卯丙辰丁巳戊午己未 庚申辛酉壬戌癸亥/子丑空亡

 この旬干表の使い方ですが、まず日干支がどの旬に属するかを探します。この例題では、日干支は丙戌でした。覚えてましたか?丙戌はどこにあるかと探すと、甲申旬の行にあることがわかります。これを右にたどると、”午未空亡”と書いてあります。
 これで遁干と空亡はわかります。例題の場合、三伝の支の出し方は次の章で説明しますが、とりあえず三伝がわかっているとしましょう。
 まず、初伝は申です。甲申旬ですから申に付く遁干は甲です。
 中伝は亥です。甲申旬の行をたどると丁亥が見つかります。亥には丁が付きます。
 末伝は寅です。甲申旬の行をたどると庚寅が見つかります。寅には庚が付きます。
 例えば午の場合は遁干はどうなるのでしょう。甲申旬は午は空亡とあります。すなわち午の場合、あるいは未の場合は遁干はないのです。この場合は、亡午とか亡未とか書くことがあります。

 これを覚える方法ですが、別にこれといった方法がありません。愚直に覚えるしかありません。ただ空亡は比較的出しやすいです。日干支が丙戌の場合、丙丁戊己庚辛壬癸と8つ指を降ります。この数だけ十二支をたどると、戌亥子丑寅卯辰巳、となり、次の2つが午未です。こうやって空亡を午未と出します。私はこれを指を折るのではなく、指の腹を使ってやっています。

 さて、次から三伝の出し方です。これは何かと規則が多く、真剣に覚える覚悟がいります。


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作成  2008年 5月19日
改訂  2021年 4月14日  HTML5への対応、一部修正

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