「不見之形」については、「命理一得」にその解説があります。簡単にいえば命式中に明確に出ていない支をもとにした格局と考えていいと思います。しかしそういう格局を認めるかどうかは議論のあるところで、一つ一つ検証していく必要があると思います。
最後の句でいう神殺とは、註によれは貴人と七殺のこととあります。以前は正官と七殺と訳したのですが、やはり六親や俗にいう神殺のことでいいと思います。
もちろん正官と七殺ととっても意味は通りますが、この部分は全体のイントロダクションのようですので、一般的な干支六親でいいのではないでしょうか。
時上偏官格の説明です。この格は、日主が強く、七殺が時柱に一つだけあり、その他の柱には(地支蔵干は別として)官殺があってはいけません。また、七殺を制するのは食傷で、月干に食傷があればよいというわけです。
其殺反為権印の例 『三命通会』
辛 乙 丙 甲 : 4? 3? 2? 1? ?
巳 卯 寅 寅 : 辛 庚 己 戊 丁
- - 甲 - : 未 午 巳 辰 卯
『三命通会』に載っている史丞相の命式です。「淵海子平」の註にも命式例はありますが、それは年支が寅ではなく申となっています。その例だと年月は冲になりますが、この『三命通会』の例だと寅が並ぶことになり、乙日主は非常に強いです。辛七殺は巳に通根していますが、それほど強くはありません。日主が強く七殺は時柱にのみあり、さらに春生まれの乙日主は丙を喜びます。さらに順運ですので、この命式は貴命です。しかも大貴といっていいでしょう。この場合の丙は七殺を抑えるというよりも調候的なよさとなります。喜神は財官であり、早年から財官運がめぐってきますので、若くして頭角をあらわします。ただ庚運は官殺混雑となるので、多少苦労することになると思います。
時逢七殺為凶の例 1963年3月13日 『星命術語宝鑑』
辛 乙 乙 癸 : 42 32 22 12 2
巳 卯 卯 卯 : 庚 辛 壬 癸 甲
- - 乙 - : 戌 亥 子 丑 寅
七殺が時柱に一つだけなのですが、日主が強すぎです。木水は忌神ですが、行運が逆運ですぐに木水運となります。これは夭折してもおかしくない命だと判断します。
雑気財官印綬格のことです。「命理正宗格局解説」を参照してください。
財官印綬全備の例? 『淵海子平』
己 甲 壬 戊 : 4? 3? 2? 1? ?
巳 午 戌 戌 : 丁 丙 乙 甲 癸
- - 戊 - : 卯 寅 丑 子 亥
『淵海子平』に雑気財官格の富貴両全の命として挙げられている命です。戌中の辛正官が戊己土に生じられており、また財(土)が強いですから、富貴両全としているわけです。
しかしこの命の場合、甲と己が干合して土化し、いわゆる従旺的な化土格といえます。雑気財官格の例としては不適当だと考えます。しかしながら、この命は化土格で丑運以降は喜神運が続きます。また地支は巳午戌と印(土に対する火)が強く、また命中に財(土に対する水)がありますから、財印兼備で富貴の命と判断されます。ただし丁運では壬を合去しますので、その期間はよくないでしょう。
鎮居というのがどういう状態なのかはっきりわかりません。鎮は抑える、安定するというような意味ですから、上のように訳しました。
もとより四孟支というのは活動的な支ですから、この句の意味は、財官が地支長生にあるとき、天干で財官がめぐってくると発達する、というような意味だと解釈しています。次の例は、『命理正宗』の「喜忌篇」の註にある命式です。
官星財気長生の例 『命理正宗』
庚 癸 乙 壬 : 4? 3? 2? 1? ?
申 亥 巳 寅 : 庚 己 戊 丁 丙
- - 丙 - : 戌 酉 申 未 午
官は戊土、財は丙丁火です。寅巳に戊土(私はあまり採用しませんが)と丙火があるということでしょう。この命式では壬癸水が強く、財官を喜ぶ命式で、地支が財官長生ですから、丙丁戊己運では発展する命です。しかし以降は金水運に入るのでよくありません。
註によるとこれは専旺食神格の説明ということです。庚申はいわゆる八専の一つですから、戊日庚申時は通常食神が強くなります。食神が旺じるときは、“多くは”財を喜び官殺を嫌います。したがって甲乙寅卯となりそうですが、乙は庚と合して金化するということでここにはないのでしょう。また丙が入っていますが、これはいわゆる偏印倒食ということでしょう。しかし丙は『窮通宝鑑』などではほとんどの季節で調候喜神となっていますし、また戊が強すぎれば官殺が必要な場合だってあります。すなわち、あくまで“多くは”であって、必ずこの句がいつも成立するというわけではありません。
この命式の例は貴命賎命いろいろありますが、例は省略します。
前の句は印綬格、後の句はいわゆる日禄帰時格(帰禄格)です。説明は「命理正宗格局解説」を参照してください。以下に註にある命式例をとり上げます。
印綬格の例 1512年11月12日 『命理正宗』
(なお生年月日はグレゴリオ暦で計算したものです)
己 乙 辛 壬 : 49 39 29 19 9
卯 未 亥 申 : 丙 乙 甲 癸 壬
- - 壬 - : 辰 卯 寅 丑 子
亥卯未の方局もあり乙は非常に強い日主です。したがって財官を喜びます。財官があり地支に通根していますから貴命に入ります。乙卯運で職を辞めるとありますが、どちらかというと丙運の方が職を辞すにふさわしいように思います。もちろん乙卯運も忌神運ですからよくありません。
帰禄格の例 『淵海子平』
壬 癸 丙 甲 : 4? 3? 2? 1? ?
子 丑 子 子 : 辛 庚 己 戊 丁
- - 癸 - : 巳 辰 卯 寅 丑
傷官と財がありますが、冬生まれで地支が全部水ですから、従旺格です。戊己丁巳などが忌神ですが、その他はあまり影響ありません。傷官生財で時柱も喜神ですから子供に恵まれます。
上から順に、壬騎龍背格、六乙鼠貴格、井欄叉格、傷官格の説明で、最後の行は註によれば飛天禄馬格、倒冲禄馬格を指すということです。
喜忌等は「命理正宗格局解説」を参照してください。
刑合格です。とくに説明の必要はないでしょう。
刑合格の例 『淵海子平』
甲 癸 辛 癸 : 4? 3? 2? 1? ?
寅 卯 酉 酉 : 丙 丁 戊 己 庚
- - 辛 - : 辰 巳 午 未 申
傷官が強く日主が弱いので、金水を喜びます。刑合格は時柱が傷官で強くなるので、金水が喜神です。月支酉は卯と冲するのですが、月干に辛、年柱に癸酉といずれも喜神ですから、家柄がよく、高い地位に昇ります。
子遥巳格、丑遥巳格です。同じく「命理正宗格局解説」を参照ください。
子遥巳格の例 『淵海子平』
甲 甲 甲 甲 : 4? 3? 2? 1? ?
子 子 戌 申 : 己 戊 丁 丙 乙
- - 戊 - : 卯 寅 丑 子 亥
子遥巳格格というよりは、天元一気格です。甲木の天元一気は申亥を喜びます。戊寅運は申を冲しますし、乙丑年は子を合しますので、この年罷免されました。
順に拱禄拱貴格、時上偏財格、六陰朝陽格です。
拱貴格の例 『淵海子平』
甲 甲 丙 丁 : 4? 3? 2? 1? ?
子 寅 午 巳 : 辛 壬 癸 甲 乙
- - 丁 - : 丑 寅 卯 辰 巳
時支子と日支丑の間に甲の夜貴人丑をはさみ、その他の柱に丑がないので、拱貴格となります。しかしこのような格をとる必要はないと私は考えます。
甲日主で木が強いのですが、それ以上に火が強い命式です。したがって木水を喜神、火金を忌神とします。幸い初運から木水運となりますが、辛丑運から金運となります。辛は丙を合するのでよいので、この期間は昇進しました。庚子運になると、忌神の官がめぐってきますので、突然職を解かれます。
この場合丑運が特別凶であることはなく、拱禄拱貴格については格局の意味がないと考えています。
以前の訳とだいぶ変更しました。以前の訳よりは長くなりましたが、論旨はすっきりしているかと思います。『命理約言』に官殺去留法についての論があり、それを紹介すればいいのでしょうが、長くなるのでまた後日。上の訳でも意味はわかるでしょう。
羊刃というのは実は陽刃であり、陽干の帝旺のことです。しかし戊は四季が配当されていませんから、火か水のどちらかを暫定的に採用しています。戊の場合は丙火と同じにするのが一般的ですが、帝旺を即羊刃として月刃格とせず、印綬格とすべきだといっているわけです。
註を読むと、この禄とは正官のことのようです。すなわち建禄とは月令正官の場合のことを指します。月令正官では地支に殺と会する支を忌むということです。例えば甲日の場合酉月が月令正官で七殺支は申ですが、申と会する子辰があると申を生じるので忌むという説明です。後の句の説明は暗冲合会や暗拱という考え方(格局)であり、さらにわけわかりません。私思うに、こういう考え方は、五行の原則にあてはまらないような命式に対して、無理やり喜忌をこじつけた説明であると思います。
このへんの話はまた別のテーマにするとして、この句を私なりに解釈すると、月令が建禄であるのは日主が強いわけですから通常官殺が喜神になるわけですが、七殺というのはやはり凶意を含み、また官殺が混雑している場合は七殺を合して取り去るとよい、という意味にとればいいのではと思います。しかしそれではあまりに面白くなさすぎではあります。
今まで七殺が悪く正官がよいと言ってきたわけですが、正官が強すぎるのは天元贏(イン)弱といい、この場合は行運で正官を制する方がいいです。
無依とは財官のことをさします。年をとり財官があったのがなくなったりすると、隠居して出家すると註にはあります。しかし、若いころから出家して高僧と呼ばれる人には、財官があるものです。高僧ともなると地位やお金が入るということでしょうか。
ところで、以前の注にも書きましたが、僧道の命には、だいたいにおいて印があります。印によって旺になることが多い気がします。
僧道之命の例 1890年6月6日 『八字応用学宝典』
丁 戊 壬 庚 : 50 40 30 20 10
巳 午 午 寅 : 丁 丙 乙 甲 癸
- - 丙 - : 亥 戌 酉 申 未
地支は寅午の会もあり火が強く、時干に火があり、日主戊を生じています。月干に壬財があるのですが、丁亥運に入ると丁が壬を取り去ったため出家しました。印による日干旺無依の典型例です。
月令印綬ですと日主が強いので通常は財を喜ぶところですが、この場合は財が忌神ということですから、日主が弱い場合です。日主は貪財壊印(財を貪り印を壊す)で弱くなり印は財によって壊され、印は官職の意味がありますから、身を退くのがよいというわけです。
例として「淵海子平」の註に下の命式が挙げられていますが、これは例としては適当ではありません。それで原註とは違う解釈をしています。
印綬生月歳時忌見財星?の例 『淵海子平』
丁 癸 甲 庚 : 4? 3? 2? 1? ?
巳 丑 申 戌 : 己 戊 丁 丙 乙
- - 庚 - : 丑 子 亥 戌 酉
註には己丑運丙寅年に亡くなっているとありますが、丙寅年は16歳であり、己丑運にはなりえません。己丑運ならば壬寅年か丙午年でしょう。
この命においては、癸日は強いのですが、庚金がそれ以上に強くなっています。したがって財や食傷は喜神であり、時柱の財は喜神です。『造化元鑰』には癸日申月生まれは丁甲を用神とされています。まさに時柱の財、月干の傷官は喜神なのですが、月干はいかにも弱すぎです。己丑運では甲が合されて取り去られます。壬寅年ならば丁を取り去り、庚の制を失い、この年に亡くなるというのはうなづけます。丙午年は喜神年でそのようなことはないと思います。
以前は時に逢うというのを時柱だと思っていましたが、この場合の時は季節、月令と考えた方がいいと思い直しました。歳運併臨とは大運と流年が同じ干支の場合をいいますが、私は上のように解釈しました。
劫財羊刃切忌時逢?の例 『淵海子平』
己 甲 乙 癸 : 48 38 28 18 8
巳 子 卯 未 : 庚 辛 壬 癸 甲
- - 乙 - : 戌 亥 子 丑 寅
『淵海子平』の註にある例ですが、『淵海子平』の例はどうも適当でないものが多いような気がするのですが・・・。
この命は、甲が強く癸印があり官殺がありませんから、旺格とみるべきで、この場合の劫財羊刃は喜神です。壬子運までは喜神運が続き順調です。しかし辛運は正官で従旺格の忌神であり、さらに流年辛酉では月柱との天剋地冲です。この年獄中で死亡しました。
これは南宋の岳飛将軍の命です。
背禄の禄は正官のことで、背禄とは禄に背く、すなわち食傷のことをいいます。註ではもっぱら食神のことを指しています。食傷が強い命式においては財を喜ぶというのは、これまでも何度か述べてきています。馬というのは財のことで、行運で比肩(劫財)がめぐってくると財を剋しますから、馬を逐う、というわけです。
ただし、『三命通会』その他の詩賦でいう背禄逐馬はまた別の意味があります。ここでは省略します。
貴をどう解釈するかですが、貴は貴人ではなく、いわゆる喜神の財官印(しいていえば食神も)だろうと思います。喜神について、刑冲剋破が悪く合会がよいというのは一般論です。ただし合が多ければいいというわけではないというのは、いろいろな術者が言っている通りです。
訳にとくに問題はないと思います。
五句めの「内に弱処有りてまた生ずる」というのは、註によると、例えば甲に対する申をあげています。(申は甲の絶です)申は庚金ですが、申中の蔵干には壬水があり、その水が甲を生じるということのようです。
六句めの「柱中七殺全彰」の例として、乙酉乙酉乙酉乙酉、という命式を挙げていますが、この句はそうではなくて、従殺格のことを指しているものと思います。従殺格で身旺になれば貧賎の命です。
昔の女性は貞淑さを求められましたので、こういうことになるのだろうと思います。
貴衆合多の例 1952年9月23日 『八字応用学宝典』
己 壬 己 壬 : 45 35 25 15 5
酉 申 酉 辰 : 甲 乙 丙 丁 戊
- - 辛 - : 辰 巳 午 未 申
酒廊の女主人の命。まあスナックやキャバレーのママというところでしょうか。正官が二つあり、年月は辰酉の合があります。壬水が適度に強く(すなわち精力が強い)また酉は日干からみて沐浴です。己壬の悪い干関係もあり、男女関係で乱れやすい命といえます。
これも以前は、「偏官時に遇う」を時柱としていましたが、月令ととった方がいいかもしれません。しかし時上一位貴格であると考えても、理屈は通ります。
偏官時遇制伏太過の例 『淵海子平』
乙 癸 甲 丙 : 4? 3? 2? 1? ?
卯 亥 午 午 : 己 戊 丁 丙 乙
- - 丁 - : 亥 戌 酉 申 未
これは月支午中に己をみてその己を木が抑えると考えたわけですが、私は少し違う見方をしています。これは癸水日主で食傷の洩が強すぎる命です。食傷生財ですから聡明ですが、亥がなかったり戊が来て日主と合して化火したりしてしまうと、命式は燥に過ぎていわゆる木焚火烈の命になります。大運は申運を除けば亥運になるまでずっと忌神運です。財が忌神で日主が弱く貧乏でした。乙や午は眼であり、木焚火烈では眼をわずらい盲目になります。文章はうまく聡明でした。
五行の絶は、木は申、火は亥、土は巳(水と同じ場合)、金は寅、水は巳です。申中には金、亥中には木、巳中には火、寅中には土、巳中には金があり、それぞれに印を含みます。また土金を除けば父母五行の長生にあたります。気を受けるというのは、絶といっても生の作用もあるということなのです。
こう書かれると、果たして私の解釈はよかったのか、と自問自答してしまいます。