「命理正宗」格局解説 抄訳その4

印綬格


はじめに

 その4ということで、印綬格を訳します。




印綬格

 楠曰く、正印偏印格とは、父母が自分を生じるということで、おおよそ日主がその助けを得るということである。
 書にいう、
 印綬が生月にあるのは官運によく、財の行運を恐れると。それは、財が印を破る気であるからだが、これもまた死格というべきで、通変の道ではない。しかして四柱に印星が強すぎるのは、日主に気があれば印がさらに身を生じることになるかというと、ちょうど人が元気でもともと強いのに、さらに補薬を飲むようなもので、ほんとに効き目があるだろうか。この場合は必ず財をみて用とし、印を破る方がいい。四柱に財が少なければ、かならず行運で財にあえば吉である。日主が弱く、また印星も弱ければ、最も財星を恐れる、これを「財を貪り印を損なう」と言うが、これはそのとおりである。
 また真印と仮印というのがあり、もし丙日亥月生まれなら、ある場合は亥月の蔵干甲木を用いるがそれは仮印であって、十月の木気は根は枯れて葉は落ち、これは衰木であるから、行運は東方木旺の地に行くのがよく、それでその根気を補助するのである。つまりは、枯れた苗も雨を得ればまた生えてくるというわけだが、巳酉丑運は木を冲剋するため恐れるし、最も恐れるのは西方庚申辛酉運に行くことである。天干地支がそろえば損傷も最も甚だしい。もし天干に壬癸甲乙丙丁の蓋頭(蓋頭説を参照)を得れば、禍があっても浅い。また、もし丙丁日主で、寅卯の多い場合は、これは真印という。もし印多ければ財星を恐れない。もし日主が軽ければ、ただ一つ二つの印があってもやはり財を恐れる。たいてい木は金には勝たず、「印綬傷を被る」という。もし栄華が長く続かないならば、真仮の印を分けて考えるべきである。財官印殺食傷傷官、この六根はすなわち日干と月令から出るところであり、正格の他陽刃格があり、これは日月があい通じるもので、ここでは論じない。あるいは虚邀財官、あるいは刑合財官、あるいは暗拱財官、あるいは遥冲財官、これらもまたほとんど同じような考え方をするが、後述することにする。(雑格で論じるということでしょう)
 継善篇にいう、
 官刑不犯は、印綬と天徳が同宮する場合である。
 補して曰く、
 一説に官府刑憲を犯さないのは、けだし印綬天徳により、年月日時支が同一宮分にあるということで、もとより格を通じて解釈すると、ただ四柱の中に印綬と天徳があって、これは同一命宮分ということで、必ずしも同一支である必要はない。例えば、甲寅丙寅丙寅丁酉、という命式では丁に天徳がつき、月徳は丙にあり、印綬は寅にある。また、庚申庚辰庚子壬午、という命式では、天徳月徳は壬にあり、印綬は辰にある。これを天徳と印綬が同一命宮にあるということで、これはもっともなことである。厳陵命書には、天月二徳星が、日上にあるのをいうとあるが、他でもこのような間違った徳の論をなすものもある。
 古歌にいう、
 月が印綬に逢えば官星を喜び、官運に入れば福は必ず清、死絶運が身に臨むのは利あらず、後に財運に行っても何も成さない。
 補して曰く、
 甲乙日亥子月生まれ、丙丁日寅卯月生まれ、戊己日巳午月生まれ、壬癸日申酉月生まれ、庚辛日辰戌丑未月生まれ、あるいは巳午月生まれ、これらは月が印綬に逢うということになる。もし四柱中にもともと官星があれば、すなわち官印相生でまさに貴人であり、まことに印綬格の最も喜ぶ命式である。もし官運に行けば発福は必ず清く厚い。死絶運に行けば、軽ければ災禍疾病損傷であるし、重ければ死亡で喪に服することになる。もし財の行運なら、財を貪り印を壊すということで、災いが多い。
 また曰く、
 重重生気でもし官がなければ、常作清高技芸の者、官殺がこなければ地位も俸禄もなく、総じて技芸をなし孤独で貧乏である。
 補して曰く、
 月が日干を生じ、年時ともに印綬があるのは、これを重重生気という。官が有ればまさに貴となすと推すが、官殺なければ、技芸の者ではなく、人に雇われる普通の者で、総じて清高の芸となす。また孤独で苦労し貧乏であるのは免れないだけでなく、いわゆる印綬が旺じるは子息が少ないということもある。
 また曰く、
 印綬干頭重ねて比を見るは、もし運助に行けば必ず身を傷つける、この格はすばらしくないわけではなく、財運に行けば福禄は真である。
 補して曰く、
 印綬の生月で天干に印が多ければ、一見印綬の比肩でまた印旺の運に行けば、必ず身を傷つける。いわゆる木が水の生に頼り、水が盛んであれば木は漂い、木が壬癸に合えば漂流する。日主に根がなければ、秋になれば終わりである。印が強く財に遇えばすぐに発するとは、すべからく財の行運ではすなわち発福発禄することができ、もし水盛んで木が漂うなら、必ず財運に行かなければならない。これは土が木を制するということで、木が根をつけることであり、福となし、いわゆる歳運もし財の強い運に行けば、反って凶は吉となし王侯に遇うというのはこういうことである。格を解いていわゆる印綬が財の行運を恐れるという句は、これに拘泥してはならないのである。
 また曰く、
 印綬官星の旺気純にして、傷官多く遇うは精神転ず、もし死絶に併せて財の地に行けば、救いなければかえって黄泉の国の人となる。
 補して曰く、
 印が官星に逢って良い場合というのは、印も官も強く純な状態であり、傷官が多い行運を忌み、良い状態から一転して悪い状態になり、精神も痛める。旧文はもともとこのようなことであるが、ある人は旺気を運気と改め、傷官を偏官に改めて、精神転ずを精神有りに改めているが、これは正しくない。
 また曰く、印星が偏する場合を梟神とし、柱内では最も財があるのを喜ぶ。身旺で財に逢えばまさに福となるが、身が弱く梟神が強いのはいっそう良くない。
 補して曰く、
 印星が偏するとは、例えば甲日亥月、乙日子月生まれの類である。食神がなければ偏印というが、食神があれば梟神という。柱中に偏財や正財があれば吉であり、ゆえに偏印が財にあえば発福するというのである。また偏財はよく寿命を延ばすというが、これも身旺で偏財にあえばいいが、もし身弱で梟神が強いのは、(財に逢えば)すなわち災いとなる。いわゆる梟神興るのは、早くして夭折するというのはこのことである。
 絡繹賦にいう、
 印が子の位に臨むは、子の繁栄を受ける。梟が年柱にあるのは、祖先からの基礎を破ることになる。
 補して曰く、
 ある人がいうには、梟が年柱にあるのは、祖先からの基礎を破るというのは、非常に確かであるということである。六親論をみていうと、日時に殺と刃があって梟にあうのは、一家離散の憂き目にあうとある。梟が年柱云々という句については、再度詳しく検討する必要がある。
 玉匣賦にいう、
 華蓋と文星がともにあるのは、よい役人になる。
 補して曰く、文星とは印綬のことである。故に通明篇にいう、印綬文華は文昌の文ではない。
 寸金鑑にいう、
 印綬は臨官をみて喜ばないし、帝旺もまたよろこばない。命式に財があって用をなさないなら、財の行運でもよくないしかえって何事もない。
 補して曰く、
 臨官は日干がその地に行って印に逢うのはすなわち病であり、故に臨官帝旺を見るのは喜ばずというのである。そして、日干が帝旺の地に行くと印は死にあうことになり、故にこれにあうのもまた喜ばないという。命式中で最も忌むのは財星を見るときで、官星を見て喜ぶ。もし行運が財の強いところの場合、財を貪り印を壊すといい、災いが次々と起こるとする。いわゆる死絶財旺の地に行けば、救いなくかえって命を失う。
 万金賦にいう、
 第一限に印綬に逢い、行運が生旺であれば必ず栄える。官があって合されるのは、転職するし、死絶運となるば災禍となる。
 淵源歌にいう、
 印あって財がないのは福をとりもつし、官位にあえば喜び財に臨むのは恐れる。その人は非常に文章に優れ、一挙に宮殿の前に行き帝に謁見することになる。
 元理賦にいう、
 水あふれて木が浮くのは活きた木である。
 補して曰く、
 この水あふれて木が浮く格というのは、けだし甲木が亥に生まれるのは咎がないが、乙木が亥に生まれるのは、水あふれて木が浮き、集まって生えていないのを恐れる。
 また曰く、
 水盛んであれば木は漂い定めなし、もし土運に行けばまさに栄える。
 補して曰く、
 この文は陰木を論じており、けだし甲木が子に帰すのは、水敗の郷という。命式中に水の印が強すぎ、土のおさえを失う命式では、漂蕩して定めがなく、風流、酒を好み、何も成さない命であり、行運で土に遇って水をおさえれば、発福して栄える。
 また曰く、
 食を貪り疑い別れるのは、用神が梟神でそれにより病ありとなる。
 補して曰く、
 日支が梟神であるのは、あるいは干支に偏印が多い場合は、行運が食神ならば、かならず貧乏で病気になり、さらに刑冲があれば、不測の災いがある。故に奥旨賦にいう、年月時中に偏印があれば、吉凶は明らかではないが、大運や流年で食神に遇うのは、災いに追い込まれる。
 また曰く、
 用神が梟神であるのは、家を富まし何とかやりくりする。(原文は「富家営弁」)
 四言独歩にいう、
 六甲が申に坐して、三重子を見る。運がが北方に到れば、必ず横死を防ぐべし。
 また曰く、天干二丙、地支全寅、さらに生印が加われば、死を見て凶が臨む。
 また曰く、壬癸多くの金で、生気酉申があれば、土が強ければ貴命、水が強ければ貧命である。
 また曰く、癸日で月支が申、年時に卯寅があれば、年は月の劫を殺し、林の下で孤独に暮らす。
以下は命式例となるので省略。


訳者のあとがき

 印綬格は短いのですが、短い解説しかなく、それぞれの句に解説をつけないといけないように思いますが、その作業はおいおい行っていきます。


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