2004.05.10
『死の壁』を読み終えた。

 『バカの壁』は読んでいない。
 とんでもなくヒットして「流行の本」となってしまったので手を出せないでいる。流行りに乗るのがイヤ。私は天の邪鬼だ。
 次いで登場したこの本もすでにたいそう売れているらしい。
 書店で躊躇した。しかしついには買ってしまった。
 テーマが「死」となれば無視するのは辛い。興味が勝った。天の邪鬼破れたり。
 で、読んだ。

 「死の文化」「死の定義」「死体とは何か」「人工妊娠中絶」「脳死問題」「戦争」「安楽死」など、死に纏わるさまざまな話の詰め合わせパックだった。医者、解剖学者である養老さんならではのエピソードもたくさん。
 全編わかりやすく語ってくださっているおかげでサクサク読み進められた。ただしそのぶんあっという間に「あとがき」まで辿り着いてしまい、ちょっとがっかり。まだ読める、もっと読みたい、なのにもう終わり? 気分は腹五分目ってところかな。

 「死体には三種類ある」とした「死体の人称」の話にいたく感じ入った。
 「一人称の死体」=自分の死体。自身では見ることのできない、存在しない死体。「ない死体」。
 「二人称の死体」=親しい人の死体。死体に見えない、特別な存在。「死体でない死体」。
 「三人称の死体」=アカの他人の死体。簡単に死体と認識できる死体。「死体である死体」。
 そして養老さんは言う。
 「(自分の死について悩むのは)そもそも「一人称の死体」が存在していると思っているからでしょう。死ぬのが怖いというのは、どこかでそれが存在していると思っている、一人称の死体を見ることができるのではという誤解に近いものがあります。」
 「自分の死というものには実体がない。それが極端だというのならば、少なくとも今の自分が考えても意味が無いと言ってもよい。」
 「考えるべきは「一人称の死」ではなく「二人称の死」「三人称の死」です。」

 ひとつ、答えをもらったような気がした。
 「自分の死には実体がない」。
 けだし名答。
 もう趣味だとか好みだとかしか言いようがないけれど日頃つらつらと「死」について考えている、そんな私の頭のなかで、もやもやの塊の1コがキレイに消えてなくなった、ような気がしている。
 

新潮新書『死の壁』
著/養老孟司 発行/新潮社
2004年4月15日発行 ¥680 ISBN4-10-610061-4


2004.05.06
『働くことがイヤな人のための本』を読み終えた。

 タイトルから推して、萎えた労働意欲をビンビンに奮い起たせようとして読むならば、この本は不適格。選択を誤っている。
 なにせ、中島義道氏。
 さぁ元気出して頑張りましょう明日はきっといいことがありますよ、なんてことは当然言ってくれない。
 そして言ってほしくもない。

 仕事に生きがいを見いだせない人へ向けた本であることは確か。けれど本題に入る前の「はじめに」で、早くもこんなご挨拶に出会う。
 「私は私の分身にきわめて近い人々にメッセージを送りたいだけである。」
 「本書は私と異なった感受性をもつ膨大な数の人には何も訴えることがないのかもしれない。それでいいのだ。そうした一人であるあなたは、この本を読む必要はない。/さようなら。またいつか、どこかでお会いしましょう。」
 ああ排他的。でもそこが素敵。

 で、結局どんな内容の本なのかというと、これは説明が難しい。
 この世の理不尽さを見据えつつ「仕事とは何か?」をとことん考えてみよう、な本?
 う〜む。乱暴にかいつまんだらそんなところかなと思うのだけれど、どうだろう、自信なし。
 はっきりしてるのは、何らかの明確な指針が示されている本ではないということ。むしろ読めば読むほどに思索の渦の中に引きずり込まれてしまい、下手すると出口のない迷宮をぐるぐるするハメに陥る、そういう危険性を孕んだタイプの本だということ。

 中島氏と同じ感受性をもっているかどうかは怪しいものの、仕事に生きがいを見いだせない人間であるという自覚はありすぎるほどある私は、今日もまた「仕事したくねぇ!」と叫んでしまった。
 繰り返すが、本書を読んだからといって「働くことがイヤじゃなくなりました!」とはならない。
 当然だ。「労働好きになれ」などとはこれっぽっちも書かれてないし、たとえ書かれてたとしてもそんなふうにあっさりと自己を変革できてたまるか。
 ただ、昨日と同じく「仕事したくねぇ!」と叫びつつも、「仕事」に対する認識は昨日からはやや変化した模様。
 生きていくためには放棄できない「仕事」を一体どう捉えたらいいのか、仲良くしがたいそれとこの先どのように付き合っていけばよいのか、それらを考えるにあたってのヒントはこの本から多く得られたように思う。
 あとは自分で考えるよ。自分で考えるしかない。「仕事したくねぇ!」と叫んでるだけじゃ、何も変わらないもんなぁ。
 

新潮文庫『働くことがイヤな人のための本』
著/中島義道 発行/新潮社
2004年5月1日発行 ¥400 ISBN4-10-146723-4


2004.04.28
『フェチ楽園考──超官能の世界』を読み終えた。

 性産業に精通した著者の書下ろしルポルタージュ。
 フェチな店、フェチな人、フェチ絡みの事件などを取り上げて、「フェティシズム」の実態を考察する。

 私自身は何フェチでもない(そもそも女性にフェチは少ないそうだ)から、異性の身体の一部や身に着けてるモノを見て激しく欲情したりはしないし、それ系プレイへの参加もご免だけれど、まぁそういう性癖の方々の存在そのものには寛容でありたいと思っていた。
 思ってはいたものの、フェチの世界の実際は私が考えていたより遥かに広く奥深く、そして謎に満ち満ちていた。

 靴、下着、パンスト、制服、縄、黒髪、陰毛、ラバー、メガネ、刺青、尿、おなら……。
 はぁ〜。世の中には実にいろんなフェチがいるもんだ。
 他人のおならで勃起する「おならフェチ」がいるなんて、想像したこともなかったよ。
 おならで勃起……不思議だねぇ。

 って、こういう本を手にとって真剣に読んでる私のこの趣味や行動も我ながら不思議だと、途中ちょっと思ったんだけどさ。
 どうよ? どうなの?
 う〜む、ま、いっか。
 

ちくま文庫『フェチ楽園考──超官能の世界』
著/いその・えいたろう 発行/筑摩書房
2004年4月7日第1刷発行 ¥780 ISBN4-480-03946-5


2004.04.23
森都市未来研究所で『イノセンス・都市の情景展』を観た。

 映画『イノセンス』の関連イベント。
 作中に描かれた都市像に焦点を絞った企画。

 『イノセンス』において、都市の描写は確かに圧倒的だった。
 ストーリーや人物の動きより何より私は、靄に煙って妖しく光る重工業チックな高層建造物群とか、中華風のド派手な山車と紙吹雪に埋め尽くされる祭礼の最中の街路とか、そういうヴィジュアルに真っ先に惹かれた。
 だから面白かったよ。
 映画『スワロウテイル』『不夜城』『キル・ビル Vol.1』などで手腕を発揮してきた美術監督・種田陽平氏による『イノセンス』アートワークの細密さに驚き、『イノセンス』特別編集版の映像では完成した美術背景の壮大さ重厚さに映画を観たときと同様、やはり釘付けになった。

 アニメじゃなくても、絵画でもマンガでも小説でもゲームでもいい。
 架空の都市をディテールに懲りつつ創造するのって、ものすごく楽しそうだよなぁ。
 

『イノセンス・都市の情景展』
2004年4月10日〜5月9日 森都市未来研究所
主催/森ビル 監修/押井 守 展示監修/種田陽平 展示協力/樋上晴彦 協賛/EPSON・鹿島建設・プロダクションI.G 協力/ブエナビスタホームエンターテインメント・日プラ 企画協力/プロダクションI.G・スタジオジブリ


2004.04.23
森美術館で『クサマトリックス』を観た。

 現代アーティスト草間彌生さんの作品展。

 水玉や網目が無限に増殖する空間に身を置くと、不思議と気持ちいいんだな、これが。
 なかでも「水上の蛍」とかいう、四方八方鏡張りの真っ暗な部屋と明滅する光を用いた仕掛けにもっとも惹かれたよ。空中に浮遊して小さな光を放つ無数の擬似螢。人工的でもあり、また幻想的でもあった。
 

『クサマトリックス』
2004年2月7日〜5月9日 森美術館
主催/森美術館 後援/朝日新聞社・テレビ朝日・J-WAVE 企画協力/草間彌生スタジオ・児島やよい・内田真由美


2004.04.23
『アンジェラの灰』を読み終えた。

 1997年度ピュリッツァー賞(伝記部門)受賞作。
 どーしようもない飲んだくれの父親と、嘆くことしかできない母親。幼くして死んでいく弟や妹たち。──著者の少年期を綴った回想録。アイルランドのリムリック市に暮らす極貧一家の物語だ。

 逆境にも屈せず逞しく生き抜いた著者のユーモアを含んだ語り口が、私にはかえって哀しく感じられた。
 貧しいにもほどがある。
 笑えねぇ。
 読んでて辛いばかりだった。
 

新潮文庫『アンジェラの灰』(上・下巻)
著/フランク・マコート 訳/土屋政雄 発行/新潮社
2004年1月1日発行 各¥629 ISBN4-10-202511-1 ISBN4-10-202512-X


2004.04.10
新宿タカシマヤで『海洋堂大博覧会』を観た。

 フィギュアのトップブランド、海洋堂の創立40周年記念イベント。
 1. 海洋堂の軌跡(館長秘蔵コレクション)、2. ガレージキットの変遷、3. 原型士・制作過程の紹介コーナー、4. ボーメ・村上隆コラボレーションコーナー、5. 食玩・プライズの世界、6. 最新作品情報コーナー に合計約1,500点が展示された。

 食玩ブームの功績なんだろうな。フィギュアってもうマニアの専有物じゃないんだね。デパートが会場というせいも大いにあると思うけど、本当に文字どおり老若男女が集まってたよ。大賑わいだった。
 かくいう私も、そもそものフィギュアファンじゃないし、食玩も収集してない。
 でも抵抗なくすんなり足を踏み入れられた。楽しめた。

 精緻を極めた作品の数々。スゴイ!と純粋に感じて魅入った。
 

『海洋堂大博覧会』
2004年3月31日〜4月12日 新宿タカシマヤ10階
主催/創立40周年記念海洋堂大博覧会実行委員会 協賛/江崎グリコ、クインビーガーデン、タカラ、トミー、ドリームズ・カム・トゥルー、北陸製菓  協力/講談社・集英社ビジネスジャンプ編集部・小学館・ファミ通・ワールドフォトプレス


2004.03.24
渋谷シネフロントで『イノセンス』を観た。

 押井 守監督の脚本は難しいね。
 「?」に邪魔されて一発じゃ飲み込めないセリフがたくさんあったよ。
 でも楽しめた。
 なんたってビジュアル表現がハンパじゃなく凄かったから。
 終始見応えがあった。まったく目が離せなかった。

 『攻殻機動隊』の世界は好き。
 ヒロインの少佐が姿を消してしまっているので可能性は低そうだけれど、また続編を作ってほしいな。
 バトーの次は、ぜひトグサを主人公にしてね。
 

『イノセンス』
2004年 日本映画 99分
プロダクション I.G・徳間書店・日本テレビ・電通・ディズニー・東宝・三菱商事 提携作品
原作/士郎正宗(「攻殻機動隊」講談社刊) 脚本/押井 守  音楽/川井憲次 主題歌/伊藤君子「Follow Me」 プロデューサー/石川光久・鈴木敏夫 監督/押井 守  演出/西久保利彦・楠美直子 キャラクターデザイン/沖浦啓之 メカニックデザイン/竹内敦志 プロダクションデザイナー/種田陽平 レイアウト/渡部 隆 作画監督/黄瀬和哉・西尾鉄也 美術監督/平田秀一 制作/プロダクション I.G 製作協力/スタジオジブリ 特別協賛/エプソン 特別協力/ローソン・読売新聞社 配給/東宝
出演(声)/大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、大木民夫、仲野裕、竹中直人ほか


2004.03.23
『近代美術史テキスト─印象派からポスト・ヘタうま・イラストレーションまで─』を読んだ。

 アーティスト中ザワヒデキ氏の著書。
 先日『私はどこから来たのか/そしてどこへ行くのか』展を観た際に、お土産として買ってきた。

 タイトルに偽りはない。読んでタメになる本だった。
 ステキ。
 しかし書かれている内容以上に私がステキ!と惹かれたのは、実はこの本の有りよう。
 すべて手書きなのだった。

 表紙のタイトルも、目次も、各章の見出しも、本文も、巻末の索引も、奥付も──文字という文字は全部手で書かれている。ワープロもパソコンも知りませんってな風情。
 加えて絵も! 内容に即してふんだんに図版が添えられているのだが、あろうことかそれらのすべても手書き、いやここは手描きと書くべきか、違う?わからん、要するにラフな模写なのだ。ピカソ、セザンヌ、ルノワール、ゴッホといった巨匠の名作も容赦なく等しくペン描き。フリーハンド万歳。

 「さあ次はピカソと同じ時代を生きたマチスの作品を見ていきましょう。」「この絵の真上に描かれている裸婦をご覧ください。」(第3章 ピカソ「ゲルニカ」とマチス「ナスターチウムの花と《ダンス》」 より)。
 そういった解説に従って眺める絵が、ガシガシとペンで描かれたモノクロのイラストなのだから、いや〜もう愉快、痛快、ステキ、サイコー!!

 第8章 フォンタナ「空間概念」では、ルチオ・フォンタナの“キャンバスを切り裂いた”作品を説明するのに、ご丁寧にも実際に紙面がカッターで切り裂かれていたよ。
 これにもまたステキ!と拍手させられちゃった。ホント楽しいね、まったく!

 A6判の愛らしいサイズも気に入った。
 買ってよかったと心底思えた、ステキ満載のニクイ一冊。
 

『近代美術史テキスト─印象派からポスト・ヘタうま・イラストレーションまで─』
著/中ザワヒデキ 企画・発行/トムズボックス
1989年10月15日発行 ¥500


2004.03.10
東京都現代美術館で『私はどこから来たのか/そしてどこへ行くのか』を観た。

 MOT(東京都現代美術館)のシリーズ企画。日本の現代アートの作家たちを紹介する展覧会。

 最近あちこちでご活躍の山口 晃さんの作品がやはり気になった。
 絵巻の細密な描き込みを目を凝らして観るのも楽しかったが、それら以上に惹かれたのは「五武人圖」という大判の墨絵5点。武者絵SF版? 近未来チックな武人の姿をひとりひとり等身大(あるいはそれより大きく?)で描いた線画の作品で、たいそうクールだった。
 

『MOTアニュアル2004 私はどこから来たのか/そしてどこへ行くのか 〜Where do I come from ? Where am I going ? 〜』
2004年1月7日〜3月21日 東京都現代美術館
主催/財団法人東京都歴史文化財団・東京都現代美術館 助成/財団法人朝日新聞文化財団・アサヒビール芸術文化財団 協賛/資生堂・富士写真フイルム株式会社
出品/磯山智之、内海聖史、奥井ゆみ子、北島敬三、小瀬村真美、中ザワヒデキ、三浦淳子、山口 晃


2004.03.10
東京都現代美術館『球体関節人形展』を観た。

 球体関節人形ってエログロ・アートの最右翼かも。
 脱がされ、晒され、縛られ、バラバラにされ、暴かれ……。
 人形たちはなにゆえこんなにもエライ目に遭っているのだろうね。

 これが人間だったらと想像した。
 明らかに猟奇的犯行。最早アートどころの話じゃない。
 けれど誰かを脱がせたり、晒したり、縛ったり、バラしたり、暴いたりしてみたいという好奇心や欲求は、多かれ少なかれ誰にでもあるんじゃないかな。いや、ごめん、ない人にはないわな。ないだろうけど、私を含めた物好きや変態には、ある。申し訳ないが、ある。
 そしてそういう歪んだ願望を具現化するのに人形は最適な素材なんだ、きっと。
 なにしろ人形は玩具で、たぶん人間の代替物たり得る存在のはずだから。

 ところで。
 鑑賞途中、自分が奇妙な行動をとっていることに気が付いた。
 身を乗り出して見下ろしたり、屈んで見上げたり、そうやって私は人形の顔を覗き込んでは視線を合わせようとしていたんだ。実際に視線を合わせていたんだ。

 私の眼が人形の眼を捉える。
 人形のガラスの眼が私の眼を捉える。
 捉えられていると思った。見つめられていると思えた。
 人の形をした人ならぬ者の冷たい視線に、私はすっかり魅せられちゃったよ。
 絡み合う視線はエロス。
 眼と眼が合った瞬間に感じるのは、剥き出しの性器なんかが放つよりよほど濃厚なエロチシズムだ。

 人形相手のこんな行動もまた私の願望の顕われなのかね。
 はは、そうかも。
 怖ぇーな、人形は。

 映画「イノセンス」公開記念イベント。
 押井 守監督自らの選定により四谷シモン、吉田良、天野可淡ら人気作家の作品が170点以上展示された。
 またどこかでやってほしいな、こういう大規模な人形展。面白かった。
 

『映画「イノセンス」公開記念 押井 守監修 球体関節人形展〜DOLLS of INNOCENCE〜』
2004年2月7日〜3月21日 東京都現代美術館
主催/東京都現代美術館・日本テレビ・「イノセンス」製作委員会 協力/EPSON・日プラ 監修/押井 守
出品/秋山まほこ、天野可淡、井桁裕子、伽井丹彌、片岡昌、木立真佐美、月光社、恋月姫、土井典、中村寝郎、三浦悦子、三輪輝子、山本じん、山吉由利子、吉田良、四谷シモン、よねやまりゅう
写真出品/ハンス・ベルメール、マリオ・A


2004.03.04
『ONE PIECE』第32巻を読んだ。

 “空島編”完結。
 あー泣けた、この巻も。

 いやぁもう、こんなに気持ちよく泣けるマンガは、やっぱ『ONE PIECE』以外ないよなぁ。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第32巻(巻三十二 “島の歌声<ラブ・ソング>”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2004年3月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-873571-4


2004.02.24
『イヴの眠り』第1巻を読み終えた。

 『YASHA 夜叉』の続編、という説明は間違い?
 副題に「YASHA NEXT GENERATION」とある通り、『YASHA』の次世代─『YASHA』の登場人物の子供達がメインとなる物語だ。

 ああ、親となったケンがいるよ、ルー・メイがいるよ、そしてシン・スウ・リンがいるよ!
 んでもってケンとルー・メイの娘がいるよ、息子がいるよ! シン・スウ・リンの息子がいるよ!!

 『BANANA FISH』以来のシン・ファンとしては、彼の少年〜青年時代を彷佛とさせるジュニアの出現にウキウキ。
 しかし『BANANA FISH』『YASHA』同様、三たびハードな展開となりそうで、つーかすでになっていてドキドキ。

 いやーほんと、すっげードキドキ。
 序盤からこれじゃあ、この先身が持たないかも。
 

フラワーコミックス『イヴの眠り』第1巻
著/吉田秋生 発行/小学館
2004年2月20日初版第1刷発行 ¥390 ISBN4-09-138033-6


2004.02.20
『HUNTER×HUNTER』第19巻を読み終えた。

 また妙ちくりんな生き物が次々と。

 それより。
 キルアのゴンに対する思いを殊更に描くのはやめてー。
 泣けてしまうから。じゃなくて!
 作者の思惑を勘ぐってしまうから。
 これって後の展開に必要な演出なの? まさか、結局は絶望の淵に追い込むつもりで、だからそのとき与える悲痛を最大にするために今、こうしてキルアにさんざん願わせて叶えさせてやってるんじゃ…? もしかしてそうなの? え、どうなの?
 ああ、それが馬鹿な私の思い過ごしでありますよーに。
 ゴンとキルアが、どうか、いつまでも一緒にいられますよーに。
 

ジャンプ・コミックス『HUNTER×HUNTER』第19巻(NO.19 NGL)
著/冨樫義博 発行/集英社
2004年2月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-873562-5


2004.02.10
『飛ぶ教室』を読み終えた。

 映画公開に合わせて復刻した文庫版を手にとった。
 児童文学の巨匠ケストナーの最高傑作と謳われる作品で、ドイツのギムナジウム(高等中学校)で寄宿生活を送る仲良し5人組(ジョーニー、マルチン、マチアス、ウリー、セバスチャン)の物語。

 ほんわかだった。
 じんわりだった。
 たまにはこういう毒のない小説も悪くない、と思った。
 

講談社文庫『飛ぶ教室』
著/エーリッヒ・ケストナー 訳/山口四郎 絵/桜井 誠 発行/講談社
2003年12月15日第1刷発行 ¥495 ISBN4-06-273945-3


2004.01.30
『無限の住人』第15巻を読み終えた。

 帯にでかでかと「拉致監禁!」の文字。でもって表紙は緊縛・凛ちゃん。
 おわっ、思わせぶり〜。
 しかし実際には、拉致監禁され緊縛されているのは凛ではなく卍なのだった。

 捕らえられ、閉じ込められて、鎖で繋がれ……始まっちゃったよ、世にも恐ろしい実験が!

 切り離されたり。
 繋ぎ合わされたり。
 卍さん、まるでウチのプラナリアみたいだ……。
 

アフタヌーンKC『無限の住人』第15巻
著/沙村広明 発行/講談社
2004年1月23日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-314337-6


2004.01.29
渋谷区立松濤美術館で『谷中安規の夢─シネマとカフェと怪奇のまぼろし─』を観た。

 谷中安規(たになかやすのり)は、「風船画伯」と呼ばれた伝説的な版画家。
 昭和初期の東京の街に生き、夢とも現とも区別のつかない不思議な世界を数多く描いた。

 ホラーファンタジー風味とでも言えばいいのかな。
 次々と登場する奇怪な空想的生物はどれもみな、恐怖より哀しみや愛らしさを纏っている。
 ザックリとした線と面とで作られたモノクロの画は、至極モダンでポップだ。

 無性に惹き付けられる。
 愛しいという思いが沸き上がる。
 ああ、いいなぁ。うん、いいよ。

 熱狂的ファンが多いと聞いた。
 この展覧会もずいぶん盛況だったようだ。
 カタログ買おうと思ってたのに、売り切れてた。残念。
 もっと早くに観に行けばよかった。あー残念。
 

『谷中安規の夢─シネマとカフェと怪奇のまぼろし─』
2003年12月9日〜2004年2月1日 渋谷区立松濤美術館
主催/渋谷区立松濤美術館


2004.01.18
『EDEN』第10巻を読み終えた。

 テロを阻止しようとして命を散らしたひとりの女性を思い、涙する傭兵ケンジ。
 自身の感情に戸惑う彼に母性をくすぐられた。

 さて物語は新章に突入。
 数年の時を経て、主人公の少年もすっかり青年になっていた。
 もうメソメソ泣いたりしないんだ、当然か。
 哀しみを堪えて冷静に、そして強かに行動する頼もしいその姿に見愡れちゃった。
 いや〜、いいオトコになったねぇ、エリヤくん。おばさんは嬉しいよ。
 

アフタヌーンKC『EDEN』第10巻
著/遠藤浩輝 発行/講談社
2003年11月21日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-314334-1


2004.01.17
森美術館で『ハピネス──アートにみる幸福への鍵』を観た。

 東京の新名所「六本木ヒルズ」内にできた美術館の開館記念展。
 明日で終わりというところで慌てて駆け込む。

 印象に残ったのはまずやはり、本展の目玉作品のひとつである伊藤若沖「鳥獣花木図屏風」。
 構図も色遣いも強烈だけれど、それより何より間近で実際に観て改めて驚嘆させられたのが“升目描”で、極小の正方形で絵を構成しようなどと思い立ったその奇天烈ぶりと、細心の筆遣いでもってそれを成し遂げてしまった偏執狂ばりの根気に、ただもう圧倒されてしまった。

 ふたつめは、チベットの古いマンダラ。
 顔や手足をいくつも持つ神たちのさまざまな姿から私が嗅ぎとったのは、性と暴力と死の匂いだった。
 彼の地の神々についての知識は皆無なので、私のド派手な見当違いかもしれないが。

 性といえばコレ、勝川春章「春宮秘戯図巻」。
 江戸春画史上最高傑作のひとつと称されるだけあって、それはそれは見事なエロ画だ。
 セックスシーンというだけでなく、男女の性器も生々しく描写されていたせいか、若い女のコなどは俯きがちで足早に通り過ぎて行ったが、あーもったいない!じっくり観ようよ、めちゃくちゃイイ絵だよ、ねぇねぇ! と声かけて呼び止めたくなってしまった。
 大胆な体位やグロテスクな性器にばかり気を取られちゃホント損だと思ったよ。
 筆致といい、構図といい、着物の柄といい、女性の艶っぽい表情といい、実は上質な美に溢れていて、見応えがあった。

 そしてオノ・ヨーコの「リンゴ」。
 彫刻台にリンゴがひとつポンと置かれただけのもの。
 ジョン・レノン縁りの、1966年作品。
 オノ・ヨーコのアートって、なんだかしんみり泣ける。

 おまけとしてこんなのも。
 美術館と同フロア(52F)にある大展望台「東京シティビュー」からの「東京の夜景」。
 ライトアップされた東京タワーを真正面に大きく捉えられる点がかなりグー。
 この美術館に行くときは、次も日没後にしようっと。
 

『ハピネス──アートにみる幸福への鍵』
2003年10月18日〜2004年1月18日 森美術館
主催/森美術館 後援/NHK・読売新聞社・日本経済新聞社・J-WAVE 協賛・協力/SAMSUNG・ディーエイチエルジャパン・日本航空・損害保険ジャパン・東京海上火災保険・BMW Group Japan・ヤマトグローバルフレイト


2004.01.16
『ビギナーズ・クラシックス 源氏物語』を読み終えた。

 亡き母の面影を求めて慕った継母と通じ、不義の子を身籠らせてしまったり。
 偶然見つけた美少女を手元に置いて年頃になるのを待ち、当然のごとく妻にしてしまったり。
 自分の不倫は棚上げにしたくせに、妻の密通には手厳しく、相手の男を死に至らしめてしまったり。

 おいおいおいおい、光 源氏さんよぉ。なんなんだ、アンタは!
 どれほどの美丈夫なのかは知らんが、身勝手で強引で感傷的で鬱陶しいこと甚だしいわ。
 「うっわ、こんな男イヤだーっ」と、いったい何度思ったことか!
 源氏に目を着けられ翻弄された女性たちが、ああホント可哀想だー。

 しかしまったく知らなかったよ、光 源氏がこんなに情けない男だったとは。
 なにしろ古典は大の苦手科目だった。
 『源氏物語』もそうだが、『古事記』や『日本書紀』や『枕草紙』もまともに読んだことがない。
 けら、けり、ける、けれ、けろ?……けろ、けろ、けろ、けろ、けろ………うみゅ〜。
 チンプンカンプンの古語に恐れをなし、憎いとまで思っていたので、それらの現代語訳にすら近づこうとしなかった。

 “ビギナーズ・クラシックス”と題されたこのシリーズは、そんな私のような人間のために企画されたに違いない。
 「はじめに」のページに
 『本書は、注釈書でもいわゆる現代語訳でもありません。むしろ、それらと読者のみなさんとの間を取り持つ前座のような案内役をつとめるのが目的です。』
とあって、読んだら本当にそのとおりの内容だった。

 『源氏物語』を構成するそれぞれの帖ごとに、“あらすじ”と、ところどころから抜粋された“原文”&その“通釈(意訳+説明)”、さらに“寸評”が置かれ、実にわかりやすく親切なガイドとなっていた。
 “総ルビ”や、巻末の関係系図や年表にも助けられ、全54帖の大長編がだいたいどのような物語なのかを、私は初めて知った。理解した。

 源氏の生涯を描いた作品だと思っていたが、彼の死後も話は続くんだね。
 「薫」や「匂宮」といった次世代の若者たちが主人公となる後半のほうがむしろ、私には面白そうに思えたよ。

 ちょっと興味が湧いたので、もう少し歩み寄ってみてもいいかな。
 源氏はイヤな野郎だが、『源氏物語』はイヤな作品じゃなさそうだ。
 

角川ソフィア文庫『ビギナーズ・クラシックス 源氏物語』
編/角川書店 発行/角川書店
2001年11月25日初版発行 ¥952 ISBN4-04-357405-3


[過去の記録]