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『一人の男が飛行機から飛び降りる』を読み終えた。
「賭けをした男が牛の体内にもぐり込む。」(“牛乳”より)
「私は世界で最後の一箱の煙草を持っている。」(“宿命の女”より)
「一人の女の子が鼻血をどくどく流しながら私のところにやって来る。」(“血”より)
「私の父がゴリラに変身する。」(“動物たち”より)
「友人たちが私の舌を取って隠してしまった。」(“舌”より)
例えばこういう一文で唐突に始まる超短編が149本。
奇妙奇天烈なストーリーが次々と、あたりまえの顔して進んでは終わる。
なんじゃこりぁー!と思った。
なにしろ不条理で、そのくせ日常的な空気濃厚。
カフカの小説を思いきりよくエイッ!と縮めに縮めたら、あるいはこんなふうな作品になるだろうか。
それともこれって夢日記?
そう、各話ともまるで夢の記録だわ。
小説集だと思って手にしたのに、えーっ、日記だったのー? と一瞬本気で疑ってしまったほどに見事な、夢の世界の写しだわ。
読後に確認した著者プロフィールによれば、“シュールで、悪夢的なショート・ショートを得意とする”作家なのだそうだ、このバリー・ユアグローさんは。
“自分の夢を題材に使うことはない”というから、驚くことにこれらの物語はまったくの創作であるらしい。
夢じゃないのに夢のような奇想天外なお話は、適度にエロで、適度にグロ。
適度に楽しい一冊だった。
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