1997.5.10
私は3体のプラナリアを3つずつに切り分けた。それはそれで何の問題もないのだが、チャプチャプと水に戻してからハッと気付いた。ここにあるのは頭が3つと胴が3つと尾が3つ。はて、どれとどれとどれを組み合わせたら元の一体になるんだ? もう分かんないや〜。
ま、いっか。とにかく頭が3つと胴が3つと尾が3つ。これが9体のプラナリアになってくれれば万事OK。そういうことにしておこう。
ところで彼ら、破片となってもちゃーんと前後を判断しているから偉い。頭を失ったプラナリアたちも、かつて頭があった方向を前として進むことに迷いがない。まるで自身の頭が消えた事実に気付いてないみたいだ。いや〜、たいしたもんだなぁ。
1997.5.11
1日経過。
とりあえず、みんな生きている。傷口もだいぶ丸みを帯びてきた。
1997.5.13
3日経過。
エサをあげてみた。誰も食べてくれなかった。
1997.5.14
4日経過。
個々の体長が伸びたように感じるのは気のせい? 傷口の先の半透明の白い部分の面積が昨日より少し拡大。よくよく見ると、体全体が半透明の白いもので覆われている。真新しい表皮? 透け具合がきれい。
1997.5.15
5日経過。
胴だけプラナリアのうちの2体、頭方向の白い部分に眼を確認! ポチッポチッと、まだまだ極小の点状態だけど、これは紛れもなく眼だ。その白い部分の形も頼りないながら頭らしく見えるぞ。
1997.5.17
7日経過。
頭だけプラナリアたち、体の真ん中に咽頭がはっきり確認できるようになった。そして全員に眼! やったね、おめでとう。
1997.5.19
9日経過。
エサをあげてみた。お、今度は食べてる。しかし胴のみチームと尾のみチームだけ。頭だけチームの咽頭はまだ未完成?
1997.5.21
11日経過。
日に日に形が整っていく。胴のみ尾のみだったチームも石の裏に隠れたがるようになった。光を感知しているってことだよね。眼が正常に機能している証拠。よしよし。
1997.5.31
21日経過。
色味が薄く小さいながらも、みな立派に本来の形を取り戻した。貪欲にエサに食らいつく様を観て、頭だけチームの咽頭もすでに完成していたことを知る。よかったね。さあ、仲間大勢のところへお帰り。ひとまずここで一段落。見事再生した9体のプラナリアを隔離されたシャーレから大部屋へと移す。
1997.5.25
輪切りばかりじゃ能がない。今度は縦に切ってみよう。
まず1匹目。頭から尾へとカッターの刃を滑らせる。真ん中で分けて左右対称だぁと思っていたんだけど、あっ、ちょっと失敗。手元が狂った。眼が2つの半身と、眼のない半身ができあがっちゃった。ま、いーや。
次、2匹目。頭から咽頭上部あたりまでを裂き、そこでストップ。ああ、これもまた中央からズレた。眼と眼の間に刃を入れるのは難しい。
さて、水に戻してみよう。
あらら。くるんと丸まっちゃった。ぐるぐると同じ場所で回転している。のたうちまわってるようにも見えるよ。輪切りプラナリアとは違うのね。ビヨ〜ンでスーッができないんだ。
1997.5.27
2日経過。
半身の2個体は相変わらずくるるんと丸まったまま。傷側の皮がつれて伸びが効かないといった状況か。一方頭部を裂かれたプラナリアは傷口部分がつながりかけてる。これじゃ再生というより治癒だな。しかし動きはぎこちなく、直進することができないでいる。傷を負った側に引っ張られているような感じで、あるいは本人は真直ぐのつもりなのかも知れないが、進めど進めど円軌道を描くばかり。
1997.5.29
4日経過。
半身2個体の傷側、半透明の白い部分が日増しに面積を広げていく。しかし相変わらずくるくる状態。
1997.5.31
6日経過。
エサを与えた。前進がままならず自身じゃエサに近付くことすらできないでいるのを見かねて、エサのほうを体に寄せてあげた。反応したのは頭部裂きプラナリアのみ。咽頭を失った半身2個体は無関心にくるくる。
1997.6.1
7日経過。
頭部裂きプラナリア、かなり真直ぐ進めるようになった。眼が2つのほうの半身も丸まってるだけじゃなくなっている。円を描くように、ではあるものの、いちおう前進可能。一方眼なしの半身はというと、相も変わらずくるくる状態なのだけど、傷側の半透明の白い部分に点ひとつを発見! 眼ができたよ!
1997.6.3
9日経過。
体にはまだ傷の痕がくっきり残っているけれど頭部裂きプラナリアったらすっかり真進できるようになってスイスイ。眼が2つの半身の動きもだいぶスムーズになってきた。眼なし半身の白い部分は成長が著しい。シルエットだけならもう立派に普通のプラナリアだ。ただし未だに丸まりやすい体だけどね。頭部に現われた点がかなり眼らしく見えるようになった。
1997.6.5
11日経過。
眼なしだった半身に2つめの眼。最初の眼よりも傷に近い側。
1997.6.7
13日経過。
眼なしだった半身に現われた2つの眼もだいぶはっきりくっきり。未だ体のラインがカーブしているために直進は無理だが、描く円の直径が日に日に大きくなっていく。エサをあげた。おおっ!全員が食べてくれたぞ。いつのまに咽頭が出来上がってたんだろ。気がつかなんだったよ。
1997.6.9
15日経過。
頭部裂きプラナリアの傷はほとんど完治状態。跡も消えつつある。眼が2つの半身も体のカーブが緩やかになってスイスイ自在に動き廻っている。眼なしだった半身だけがちょっと遅れをとった感じだが、まあこれもあと数日中には円描きの呪縛から解放されて真直ぐ進めるようになるだろう。
1997.6.14
20日経過。
眼なしだった半身もほぼ完全体に戻った。まるで何事もなかったかのような顔で優雅にスーッと前進、前進。あんなにくるくるぐるぐるだったのにね。たいしたもんだわ、偉いわー。さ、キミたちも大部屋にお帰り。そのうちまた切らせてね。