19.もっともっとプラナリア

1997.8.23
 プラナリアたちがいなくなってから2ヵ月近くが過ぎた。
 無理やり捕まえてきて満足に育ててやることもできず死なせてしまった、そんな加害者としての罪の意識を少なからず覚えた。何でも自分の支配下に置こうと容易に考え行動してしまう私、というより人間は、ああなんて傲慢な生き物なんだろう、とも思った。
 が。だからといって、じゃあこれでプラナリアとはきっぱり縁を切ろう、もう飼うのは止めよう、などとは私は言わない。再び捕獲に出向き家に持ち帰ってくるつもりでいる。
 罪だろうが、傲慢だろうが、それでも私はプラナリアのこと、もっともっと知りたいし、プラナリアと、もっともっとおつきあいしてみたいんだよ。


20.私はここ、彼らはどこ?

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▲動物界の系統図〜動物を綱(class)に基づいて門の段階でまとめたもの
※『三省堂 生物小事典 第4版』(監修:猪川倫好 監修:三省堂編修所 発行:三省堂)に基づき描きました


21.肛門様の謎

1997.8.29
 ヒトが哺乳類だということは知っていた。カラスが鳥類で、トカゲが爬虫類で、カエルが両生類で、マグロが魚類で、しかもそれらがみな脊椎動物だというのも知っていた。けれどプラナリアが扁形動物渦虫類だとは知らなかった。調べて初めてわかったことである。
 ところでそもそも、扁形動物っていったい何? 私たちの身体とはどこがどういうふうに異なるの?
 そこでちょっと学習してみることにした。
 本屋で購入した「三省堂生物小事典 第4版」(監修:猪川倫好/三省堂/1200円)によれば、

  扁形動物とは──
   ▽動物界の一門
      (門は生物分類上の一段階。界と鋼との間に位置する。
       便宜上、動物界には19、植物界には16の門が設けられており、
       これらに則って記するなら
       例えば哺乳類は動物脊椎動物哺乳
   ▽からだは円柱状か楕円状、左右相称で腹側に偏平なものが多い
   ▽体節構造はみられない
   ▽体表は繊毛で密に覆われる
   ▽口はからだの先端部の腹面にあるが肛門はないものが多い
   ▽寄生性のものでは消化管が退化する
   ▽排出器官は原腎管
      (後生動物(=原生動物以外の動物群の総称)の排出器官のなかでは
       最も原始的なもの。浸透圧の調節器官も兼ねる。
       細い管状で体内に樹枝状に伸び、末端には炎(ほのお)細胞があって
       老廃物はこの細胞から細い管の中に分泌され、
       特別な開口部から体外へ出される)
   ▽神経系ははしご形、血管系はない
   ▽おおむね雌雄同体
   ▽最も下等な後生動物
   ▽3鋼(渦虫類、吸虫類、さなだむし類)からなる

だそうだ。ついでに渦虫類も引いてみよう。

  渦虫類とは──
   ▽扁形動物(門)の一鋼
   ▽吸盤や片節を備えていない点で
     吸虫鋼や、さなだむし鋼とは区別される

   ▽からだは卵円形か棒状で、腹側は偏平なものが多い
   ▽体表は繊毛で密に覆われるが腹側にはないものもある
   ▽口はからだの前端部か中央部の腹側にあり食道に続く
   ▽肛門はなく、おおむね雌雄同体
   ▽再生力はきわめて強い
   ▽コウガイビル、ナミウズムシ(プラナリア)など

えっ? 肛門がない? 咽頭口って口&肛門じゃなかったの? 「切っても切ってもプラナリア」には「たまに咽頭を外にだしたプラナリアを観察することができれば、それが口であり、こう門であることに気づくだろう」って書いてあるが…。……?…!! そっか、私たちの感覚で言うところの肛門だけれど、生物学的には“肛門”って呼んじゃいけないってことだね。前述、原腎管の説明のところで、老廃物を体外に排出する口を“特別な開口部”としていたのもそういう理由からかしら。ええい、ならば“肛門”とは何ぞや?

  肛門とは──
   ▽消化管の末端の開口部

は? これじゃ、プラナリアの“特別な開口部”をどうして“肛門”と呼んじゃいけないのかわかんないよー。だって咽頭口も一応は“消化管の末端の開口部”にあたるわけだし…。んー。んー。消化管の形状によって差別されてるのかなぁ? じゃあ次、消化管ね。

  消化管とは──
   ▽消化・吸収のために食物の通路となる器官
   ▽動物により違うが、
     消化管の一方が開口せず、口部と肛門部とが同一のもの
               (腔腸動物・扁形動物
     両方が開口した管状で口から肛門に続くもの
               (腔腸・扁形より上の動物群)
    の2つに大別できる

へ? …ということは、つまり、実質的には口でもあり肛門でもあるのだが、いったんそれを“口”と呼んでしまった以上はもう、同じ部分を“肛門”という名で呼んではいけません、ってな話? こういう解釈でいい?
 うーむ。なんだかいまひとつ合点がいかないな。“渦虫類には肛門がない”──ホントはあるけれど、そこは“口”でもあるから“肛門”という名を禁じられており、だから彼らの身体にはもはや“肛門”と呼べる箇所はない、渦虫類に“肛門”はないのだー! ってか? すっきりしないなー。うん、すっきりしないよ。


22.プラナリア再捕獲!

1997.9.27
 プラナリアを捕まえに出かけた。前回と同じ場所へ。雨続きだったせいか、川の水量がやや増えていたが、それでも石を裏返したら、いた、いた、彼らが。
 もう手慣れたものである。前回、捕まえたプラナリアをペットボトルに入れるのに難儀したので、今回はちょっと大きめのタッパーを用意。水を入れ、その中で石をジャブジャブしてプラナリアを振り落とし、それで終わり、楽ちん楽ちん。ただしプラナリアの他にも小さな水中昆虫などが混じって 振り落とされちゃったけどね。まぁ、気にしない、気にしない。
 さて。どういう理由か前回よりは見つけにくく、30分ほど頑張って10数匹しか手に入らなかったが、どういう理由か今回のプラナリアたちはみな体がデカイぞ。体長2、3cm級の立派なものが何匹もいた。なんでだろう。偶然かな。
 ま、とにかくそうして再びプラナリアを手にしたからには、今度こそ殺すことなく飼って増やそう。ふふふ。実はこの日のために新たに水槽セットを買って待機していたんだ、私。「カメのお部屋」なる、その名のとおりのカメ飼育セットなのだけれど、無論カメなど飼う予定はなく、ハナからプラナリア用にと思って、東急ハンズのセール日に購入。ガラス製水槽に、砂利、エアポンプなどが付いて、希望小売価格7000円のところが2450円だった。
 この水槽に天然水2リットルを注ぎ入れ、早速持ち帰ったプラナリアたちを放った。居心地はどうだい? 広くてなかなか快適だろ? 今日からこの部屋のなかで、達者で暮らしてくれよな。

1997.10.5
 天然水2リットルを注ぎ入れ……と書いたけれど、水槽に水中フィルターを置くためには、それでは全然足りないことが判明。結局さらに4リットルが必要だった。水槽には今6リットルの水が入っている。
 さて。今日はエサを放り込んでみた。新鮮な鶏レバー。腹で食らいつくプラナリアたちの姿が見られるはず…。ところが私は大きな過ちを犯してたんだなぁ、これが。
 私は水底に砂利を敷き、その上にところどころ、いくつかの大きめの石を配しておいたんだが、う〜ん、失敗! 石を手に取ってめくっても、そこに張り付いてない。プラナリアったら砂利の下に潜っちゃうのよ。普段はもうどこにいるのかさっぱり姿が見当たらず、たまにどこからともなく現われてガラス面を這ってたりするんだけれど、果たしていったい今何匹生き残っているのか、それさえもよくわからん。
 とまぁそのような状態で、しかも水槽が大きすぎるせいで気付いてもらえなかったのか(そもそもコイツらエサの在り処を実際どうやって見つけてるんだろね?)、エサを放り込んだのに、誰ひとり顔見せないぞぉ。ええい、こうなったら無理やり食わせてやる〜! と、ガラガラ砂利をかき回してやっとこさ2匹見つけ、レバーを押し付けてやった。おお食べてる。よし、もっと探すぞー! しかしその後は1匹しか見つけられなかった。おまけにヤツはレバーを無視。くそォ。
 ホントに何匹無事でいるのか? まさか3匹? みんな死んじゃったの? なんだかちょっとブルーになりながらレバーを始末し、水の交換作業にとりかかった。汚れた水をポンプで汲み出し、新たに6リットルをドボドボドボドボ。すると! まったくどこに隠れていたのか、1匹また1匹と現われたじゃあないの! 何故だか解らねど、みな側面のガラスを何食わぬ顔でスーッスイーッと這い始め、そしてまた砂利の下に消えて行った。1、2、3、4、5、6。うん、6匹は確認できたぞ。少なくとも6匹は生きているんだね。他のプラナリアたちの安否が気になるところだけれど、うん、6匹でもとりあえずはホッとした。よかったぁ。
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水槽、横からと上から。サイズはW360×D224×H175mm。
プラナリアが姿を現わすのは稀なので、普段はまるで単なる水桶。

jari.gif (左)砂利に消え行くプラナリア。(下)超デカ級の一匹。ビヨ〜ンと伸びると優に3cmは超える。下方が頭。
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