署名2

ひきつづきの客が
エントランスから入ってきた。
フロント係は台帳を広げた。

「ご署名を・・・」

男はふところから
透明な液体が入った
小ビンを取り出すと、
ガラスのペン先をひたし、
署名した。

フロント係は辛抱強く待った。

「お名前が見えませんが・・・」
「いや、これでいい。これがおれの名だ」
「では、下のところにもう一度お名前を・・・」

「この透明がおれなのだ」

 
署名3