『真・女神転生 II TRPG 誕生篇』は、現在にきわめて近い近未来を舞台とした、ホラー、ファンタジー、ヒーローものなどの要素を併せ持った、かなり欲張りなTRPGです。
元々は、家庭用ゲーム機(スーパーファミコンなど)で「メガテン」の愛称で親しまれていたコンピューターRPGのシリーズ作品であり、今では次世代機にもその流れを汲むソフトが登場しています。
その世界観を元に、TRPG版の第1作目が「真・女神転生RPG 基本システム」としてアスキーから刊行されたのが、1993年でした。しかし、これがただでさえ煩雑な上に誤植は多いわルールブックに矛盾はあるわ、ぶっちゃけた話、とても遊べるシロモノではありませんでした。実際、家庭用ゲーム機のシリーズからの大ファンである私自身ですら、本棚の奥底に埋もれさせる結果となったのです。しかし、「『真・女神転生』の世界をTRPGで遊んでみたい」という欲求は、心の奥で根強く生き延びていました。
その欲求を満たしてくれたのが、このホームページで取り上げている『真・女神転生 II TRPG 誕生篇』だったのです。ゲーム・デザイナー朱鷺田祐介氏の手によって「基本システム」の改訂版として発行された本作品は、データ的に大幅にシェイプ・アップされ、(誤植の多さは前作とあまり変わりませんでしたが)少なくとも、ちゃんと「遊べる」ゲームになっていた点で、前作とは雲泥の差があるといってよいでしょう。
しかし、これにも不満点はいくつかあります。その大きなもののうち2つが、悪魔データの絶対量的な不足と、悪魔合体ルールの欠如です。
『真・女神転生』の世界の大きな特徴として挙げられるのが、第1に、敵として出現する悪魔と会話し、交渉することで「仲魔」(『真・女神転生』の世界では、仲間にした悪魔のことをこう呼びます)にして、戦いに協力してもらうことができる、という点。第2に、複数の仲魔を合体させることによって、前とは異なる(通常は、より強力な)悪魔を誕生させることができる点です。 ところが、ルールブックに添付されていた悪魔データは、わずか63体。悪魔の中には、ダーク属性(簡単に言えば、「悪」の属性と思ってください。仲魔として信用しない方がいい連中です)の悪魔も半数近く含まれていることを考えると、キャラクターが仲魔にして共に戦ってもらうにしては、やや頼りない感じが否めません。ましてや、たとえ合体ルールがあったとしても、ゲーム機のシリーズにあったような多彩な悪魔合体の楽しみは得られません。
辛うじてその要求に応えていたのが、アスキーから発行される月刊誌「ログアウト」でした。マンスリー・サポートとして、数体の悪魔データを掲載したり、追加ルールの発表を行なったりと、一応のサポートは行なわれていたのです。また、サプリメントにおいて悪魔合体や追加悪魔データの発表をするという情報も掲載され、今後の展開に期待を寄せていました。
ところが、さらなる試練が降りかかりました。「ログアウト」の休刊、そしてアスキーのTRPG業界からの事実上の撤退です。
これによって、もはや細々ながら続けられていたサポートも途絶え、サプリメントの発売すら覚束ない状態となってしまいました。
メガテンを愛好する者の一人として、この現状を見過ごしにするにはあまりに忍びなく、自分にできる何かをしたいと思う中、ある考えが頭から離れなくなりました。
「足りないものを補う」
つまり、悪魔データと合体ルールの自作です。
ただし、自作すると言っても、元のシステムのゲームバランスを著しく崩すようなデータでは、作る意味がありません。そこで、まず手始めに、ルールブック添付の悪魔たちのデータを分析して、その傾向を知ることから始めてみました。
こうした自作のルールを、TRPG(あるいはゲーム全般)の世界で「ハウスルール」と呼びます。ハウスルールとは、言ってみれば方言のようなもので、それを知っている人の間では通用しますが、当然ながら知らない人には通用しません。ところが、それをわきまえずに、コンベンションなどの一般に開かれた場所でそれを持ち出す人がまれにいるらしく、問題を引き起こすこともあるようです。
最終的に、このホームページで取り上げていこうと考えている「自作悪魔データ」や「悪魔合体の法則」は、あくまでハウスルールです。ですから、もしご自分の周囲で『真・女神転生 II TRPG 誕生篇』のマスターをする時にそれを利用してみようとお考えの場合は、以下の2点にご留意ください。