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シナリオソース1:海龍の幻影

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はじめに

 このシナリオは、ファミコン版「魍魎戦記 摩陀羅」に登場する「海龍の村」でのイベントをモチーフにしています。
 ファミコン版「摩陀羅」で、マダラたちのパーティはこの地を訪れますが、ここでは毎年夏になると、沖の「海龍の島」に棲む龍王に、村の若い娘を一人生け贄に捧げていました。その年は村長の娘が生け贄に捧げられることになっており、たまたま訪れたマダラたち勇者の一行に、村長が海龍を退治してくれるよう頼み込んできます。そしてマダラたちによって龍王は倒され、村は毎年生け贄を捧げなくてもよくなったのでした。

1.設定

 シナリオの時代は千年王国暦30年頃、マダラたちの冒険は既に伝説になりつつある時代です。金剛国が倒れて以来、一時はなりを潜めていた魍鬼たちでしたが、なぜか最近になって活動を開始しているようです。
 舞台は、黄地大陸の東の半島に位置する「ハイロンの村」です。
 PCたちは様々な背景を持っています。マスターはそれらを眺めて、PCに何らかの目的を持たせ、うまくハイロンの村へと誘導してください。例えば:親の仇がハイロンの方へ向かったという噂があった、行方不明の母が以下同文、などなど。
 旅の途中には魍鬼が出現する可能性が高く、一人では無理でしょう。PCたちは(おそらく大都市バントウあたりで知り合って)共にハイロンまで旅をすることになります。

2.ハイロンの村の暗雲

 村に入る前に、ワンダリング魍鬼との戦闘をやってもよいでしょう。ただし、複数の魍鬼を出すとPCが必要以上に傷ついてしまう恐れがありますので、1体程度の方がよいでしょう。
 PCたちが村に入ったら、「観察力が鋭い」などの特徴を加えて判定をさせます。成功すれば、村が暗く重苦しい雰囲気に包まれているのに気づきます。
 「交渉」技能を加えた判定などで村人に話を聞くと、「かつて、沖の海龍の島に棲みついていた龍王が復活して、生け贄を要求してきた」ことがわかります。さらに細かい話は長老に聞くように言われます。
 長老の話を……年寄りの話しなので長くなります……要約すれば、以下の通りです。

 沖の島は、かつて伝説の勇者によって龍王が倒されて以後、村にとって重要な漁業の拠点として活用されていた。ところがつい先日、漁のために島を訪れた村の漁師たちが、かつて龍王が棲んでいた洞窟の中から恐ろしい声が響くのを聞いた。恐る恐る覗き込んだ彼らは、頭だけで人の大きさはあろうかという巨大な龍の目が光るのを見た。(龍の頭を見た、というのは重要なポイントです。漁師たちが見たのは、頭だけなのです。しかし、これはシナリオのオチに関わりますので、必要以上に強調する必要はありません。)龍は漁師たちに、自分はかつてこの村を支配していた龍王であり、再び生け贄を捧げるようにと要求してきました。

 長老はPCたちに、何とか龍王を倒してくれないかと依頼してきます。
 もし、漁師たちの話に出たような巨大な魍鬼が本当にいるとしたら、とてもPCたちでは勝てないだろうことは、直感的にPCたちには分かるでしょう。ここでPCたちには「動物知識」(もしあれば「魍鬼に関する知識」)を加えた判定を行わせます。成功すれば、「ミロクが倒されて以後、そんな強力な魍鬼が現れたという話は聞かない。何かカラクリがあるのではないか、と感じる」と告げてください。
 PCたちが報酬を要求してきた場合、「交渉」で長老と対抗判定を行なってください。長老の交渉技能は+5、基準成功値は4です。これに勝ったら、長老は全部で1000ゼニーをPCたちに差し出します(一人あたり、ではありません)。これは長老の全財産であると同時に村の全財産です(貨幣経済が未発達で、物々交換が主流のため、必要が少ないのです)。これ以上はどう揺さぶっても出てきません。もちろん、判定に負けたら「貧乏な村ゆえ、出せるのはこれだけ……」といって、干物や野菜を山ほどもらえるだけです。


3.調査

 PCたちは、漁師たちが何かの目的で(あるいは誰かに操られて)嘘をついているのではないかと考えて調査を考えるかもしれませんが、いくら調べても漁師たちは純朴で善良であるとしか見えません(事実、そのとおりなのです)。また、最近になって訪れた怪しいやつはいないかと尋ねても、心当たりはないという答えしか返ってきません(交渉の判定で失敗すれば、PC自身が指差されてしまうでしょう)。
 生け贄を捧げる約束の満月の晩は、明日に迫っており、調査の時間は丸1日しかありません。そして、その調査は無駄に終わります。

4.龍王の正体

 沖の島までは、1km程度の距離ですが、毎年この時期の満月の晩には最も大きく潮が引き、村から島まで歩いて渡れます。少し足元が濡れるのを承知で行けば、大潮の時間を中心に1時間半程度は時間があるでしょう。
 洞窟の中は基本的に1本道で、徐々にらせん状に下っており、足元にはたくさんの水溜まりがあります。奥に行くと、恐ろしい声が響き、「生け贄はどうした」と問い掛けてきます。もし、PC(女性)の誰かが生け贄のふりをしているようなら、声は生け贄だけ置いて他の者たちは下がるように言います。PCが下がるふりだけをしても、声はそのことに気づいており、「だまそうとしても無駄だ!」と怒声を上げます(声の主は五行パック術のうち水の術を習得しており、「水鏡翠響」を使って監視しているのです。
 あくまでPCが下がらなければ、「龍王の首」が洞窟の奥に姿を表します。「龍王の首」は2点の恐怖点を持っており、恐怖判定に失敗したPCは隙ポイントを2点失います。しかし「観察力が鋭い」を加えた判定に成功すれば、「龍の首の後ろには身体がついていない」ことに気づきます。そう、この魍鬼の姿は「龍の首だけ」なのです。このことに自力で(他のPCから教えられたりせずに)気づいたPCは、恐怖点の影響を受けずに済みます。
 正体がばれた「龍の首」奔海龍頭(ホンカイリュウズ)は、PCたちに戦いを挑んできます。

 上記のデータは、PC4人を想定した数値です。もし、それより少ない場合には、戦闘能力の数値のうちポイント上限を減らし、逆に多い場合にはポイント上限を増やすとよいでしょう。瞬間戦闘力は、そのままで構いません。
 ホンカイリュウズに勝利すれば、シナリオは終了です。洞窟の奥には、ホンカイリュウズが持ち込んでいた宝石類が少し見つかります。売れば2500ゼニーくらいにはなるでしょう。
 もちろん、喜んだ村人たちは早速漁に出て、翌日の晩には取れたての魚介類を肴に、PCたちに感謝の意を表す大祝宴が催されます。


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