RPGリプレイ小説

『ナイトメア・バスターズ』

第4話  ラグナレク


 
プレイヤーズ・キャラクター紹介
 
  • アンディ・ノーマン
    アメリカからの留学生。実は男装の麗人。得意技は、マ
    ジックと魔球。今回は、敵の弱点を次々に見破って大活
    躍。
     
  • 知場 法久(ちば・のりひさ)
    東江戸川大学(通称「ヒガ大」)雑学部雑学科3年。2
    2才。ミリタリーマニアの彼が、今回、マスター泣かせ
    であった事は言うまでもない。
     
     
  • 瀬賀 亜梨沙(せが・ありさ)
    紅一点、聖カミニート女学院高等部3年。18才。他の
    メンバーの性格の悪さに毒気を抜かれ、あまり活躍の場
    がなかった。
     
  • 石見 信介(いわみ・しんすけ)
    ヒガ大雑学部雑学科3年。21才。今回、性格の悪さを
    露呈し、敵をいじめることに情熱を燃やす。その挙げ句、
    得意の剣を一度も使わずじまいであった。
     
     
    ノン・プレイヤー・キャラクター
  • 紀田 順一(きだ・じゅんいち)
    ヒガ大雑学部雑学科助教授。32才。1話、2話の外道
    ぶりとはうって変わって優しくなり、学生たちに気味悪
    がられているが…?
    「とうとうこの時がきたか。先生との対決、それに迷い
    はない。しかし、果たしてお前たちは、私の選択を許し
    てくれるだろうか…。
    さよならは言わない。待っている。」
     


      第1章 急変
     
     前回(第3話『ゴルディアス』参照)の戦いで深く傷
    ついた石見達三人は、一週間の間、岐阜で静養していた。
    その間、紀田助教授は一睡もせず、三人を献身的に看護
    してくれ、三人を驚かせた。
     看護の最中、帰国したアンディを含めた四人を前にし
    て、紀田助教授は平井教授について沈痛な面持ちで語っ
    た。
    「平井先生は…いや、平井太郎は、私にとっては師であ
    り、同時に、共に夢魔と戦う同志でもあった。だが、あ
    る事件で共に傷つき、それ以後は互いに後進の育成に力
    を注ぐ事を誓い合って、それぞれ東江戸川大と西荒川大
    とに別れていたのだ。しかし、その後何が彼の身に起こ
    ったのか…ともかく、今や彼はすっかり変わり果ててし
    まったらしい…」
     また、石見達の出発前に紀田が忙しそうだった理由も
    解る。各大学に存在していたナイトメア・バスター組織
    が、何者かによって(今やそれが西荒川大の悪夢研究会
    であると判明したのだが)次々に壊滅させられていたた
    め、その調査をしていたのだ。余談ながら、先日開かれ
    たICAの臨時総会も、こうした事態を憂慮し、対策を
    立てるために開かれたものだったのだ。
     紀田の必死の調査の結果、次の様な事が解っていた。
    これらは主として、壊滅される直前に早稲田オカルト同
    好会(早オ同)が遺した記録による情報だったが、その
    大略はこうだった。
     平井教授配下の敵のメンバーは、フルートを武器に使
    う男(武田明宏)をリーダーとして、総勢六人。それぞ
    れ得意の楽器を武器とし、その楽器を使わせると無敵で
    ある。だが同時に、それぞれ何かに対する恐怖症を有し
    ており、そこをうまく突いて攻めれば彼らを打倒する事
    も可能であろう…
     やがて全快した三人は、紀田、アンディと共に、一路
    東京へ戻ろうとする。朝一番の列車で名古屋へ向かい、
    そこから新幹線で東京へ向かったが、列車が横浜を過ぎ
    たあたりでなぜかストップし、しばらくすると今度は、
    横浜へと引き返し始める。
    「何があったんです?」
     横浜駅の構内で駅員を呼び止める知場。
    「東京の様子がおかしいんですよ。詳しい話はTVでも
    見て下さい」
    「なんだか心配だわ…あたし、家に電話かけてみます!」
     亜梨沙は我が家に電話をかける。
    『ツー・ツー・ツー…』
     通じない。
     石見は、警視庁猟奇課にかけてみる。
    『…この回線は、現在大変混みあっております。しばら
    くお待ちになって…ブツッ!』
     途中で切れた。かけ直したが、今度は全くの不通であ
    る。
     そのうちプラットホームが閉鎖されてしまい、外に出
    た一同は、待合室でTVのニュースを見る。
    『…これは、取材ヘリからの生の映像です。決して合成
    ではありません。現在、山手線に囲まれた東京都の中心
    部は、突如出現した謎の黒い壁に覆われているのです。
    繰り返しますが、これは決して映画ではありません。今
    まさに起こっている現実なのです…』
     ヒステリックにまくしたてるTVを見ながら、紀田助
    教授は呟く。
    「うかつだった…まさか私が東京を離れた隙に、彼らが
    ここまでやるとは…」
    「心当たりがあるんですか、この現象に?」
     石見が問うと、紀田助教授は頷いた。
    「おそらくこれは『逆衛星の法』だ」
    「それは一体どういう?」
    「私にも詳しい事は解らない。以前、平井の元で学んで
    いる頃に、名前だけチラッと聞いた事があるという程度
    だ。だが、こうなるとうかうかしてはおれん」
     紀田助教授は、ICAを含むありとあらゆるコネを総
    動員して、必要な武器や道具を揃えてくれた。その内訳
    は次の通り。
    知場:完全装備の米軍兵士一個分隊(八名)、Mー16
    アサルトライフル、サブマシンガン。
    亜梨沙:桜の代紋入り伝説の麻宮サキのヨーヨー(!!!)、
    おいしいお弁当(???)
    石見:ワルサーPPK、名刀虎徹、手甲、鉄ハチマキ
    (………)
     この他にも、アンディは伝説の(こればっかりや)星
    飛雄馬の血染めのボールを要求したが、残念ながら手に
    入らなかった。
     細かい情報を整理すると、黒い壁は地上数千メートル
    の高さに伸びており、地上からでは侵入不可能である事、
    地下道沿いかあるいは空からならば侵入できるが、出て
    きた者はない事などが解った。
     米軍の装甲車部隊の護衛つきで、第一京浜を北上し、
    品川に近づいたあたりで、車がプスンプスンと止まった。
    壁の力場の影響で、外からはこれ以上近づけない。
     いよいよ壁の中に踏み込もうという時、知場が突然言
    い出した。
    「俺達がこの戦いから生きて帰れる確率は、どの位だと
    思います?」
     一瞬、言葉に詰まる助教授。だが、やがて再びゆっく
    りと口を開く。
    「少なくとも、今、彼らに立ち向かえるのはお前達四人
    をおいて他にない。それだけは確かだ」
     知場は苛立ったように言い放つ。
    「お前達、か!事ここに及んでも、まだあんたは俺達に
    指図するだけかよ!一度くらい、共に戦おうと言ってく
    れたっていいじゃないか!それとも、怖じけづいたのか
    よ!」
     それはもちろん、あまりにも巨大な敵に立ち向かわね
    ばならない恐怖感ゆえに、心ならずも出た言葉であった
    ろう。紀田助教授はグッと唇を噛んだ。
    「すまん…だが、私には…出来んのだ」
    「平井ヲ倒ス事ニ、迷イガアルノデスカ?」
     アンディが聞くと、助教授は首を横に振った。
    「そんな事はない。既に私も覚悟は決めた。平井とは対
    決せねばならん。しかし、あの黒い壁の中には、私は恐
    らく入れまい。怖じけづいたと思われてもしかたがない。
    だが、何と思われようと、私には…出来んのだ」
     なおも問い詰めようとする知場を押しとどめて、石見
    が言った。
    「先生は確か、岐阜で俺達に話してくれましたね。『平
    井と共に、ある戦いで傷つき、それ以後は後進の育成に
    当たってきた』…と。ひょっとして、先生があの壁の中
    に入れないのは、その傷ってのと何か関係があるんじゃ
    ないですか?」
     紀田は少しためらったが、やがて頷いた。
    「その通りだ」
     石見は少し考えて、再び口を開いた。
    「解りました。その辺の詳しい話は、帰ってきてからゆ
    っくりと聞かせてもらいますよ」
    「石見…!」
     ニヤリと笑って親指を突き出す石見。
    「じゃっ!」
     深刻ぶるのが苦手な亜梨沙は、軽く手を振って別れを
    告げる。
     八人の米兵と共に、四人のバスター達は黒い壁に踏み
    込んだ。
     途端に、全員弾き出される。血気にはやった米兵の一
    人が、走って突っ込んだが、突っ込んだ勢いそのままに
    弾き出されてすっ転び、悪態をつく。
    「いけね!地上からは入れなかったんだっけ」
     急遽進路を変更し、五反田まで回り込んで地下道から
    侵入する。
     地下道の中にも黒い霧らしきものはあったが、地上と
    違ってそれはごく薄く、弾き出される事なく通り抜ける
    事ができた。ただ、米兵のうち三人が入った途端に眠り
    込んでしまう。バスター達は平気なのだが、残った五人
    の米兵は、しきりと頭を振っている。なんだか頭がボー
    ッとするらしい。
     ドーン、ドーン、ドーン…
     耳を済ますと、地下道沿いに何か重々しい音が聞こえ
    る。高輪台の方角からだ。とりあえず地上に出て、そち
    らを目指す事になる。
     地上に出た途端、石見は愕然とする。
    「でかすぎる…」
     石見が茫然と指さした先には、巨大な黒い月が。新月、
    と呼んでよいのだろうか。果たしてそれが何を意味する
    のか、その時の彼らにはまだ解らない。
     


      第2章 異音
     
     地上では音が聞こえず、再び地下に戻った一行は、音
    を頼りに地下道沿いを進んで行く。
     ドーン、ドーン、ドーン…
     音は次第に激しさを増し、やがて大地を揺るがす大音
    響となる。
     ドゴオーン!
     瞬間、爆風かと思われるほどの轟音が鳴り響き、先頭
    を歩いていた二人の米兵がふっ飛ばされ、昏倒した。か
    ろうじてかわした一同は、思い思いに身を伏せ、あるい
    は壁の凹みに身を隠す。
     大手町の地下街、百メートルほど前方に、第一の敵は
    いた。敵は巨大な太鼓を叩く手を休めて、話し掛けてく
    る。
    「よく来たな、ヒガ大の落ちこぼれバスター諸君。私は
    西荒川大学悪夢研究会の小川敏明。ここが君達の墓場と
    なるのだ」
    「えっ?」
    「ここが、君達の、墓場となるのだ!」
    「何だって?」
    「ここがぁ、きみたちのぉ、は・か・ば・となるのだ!」
    「えっ?遠すぎてよく聞こえなあい」
     ちょっとからかいすぎた。怒りに燃えた小川は、太鼓
    の連打を繰り出してくる。だが、全員かろうじて身をか
    わすことに成功する。
    「ふん、相変わらず運だけはいいようだな」
    「相変わらず?どういう意味だ!」
    「お前達は気づいていないようだが、お前達には前にも
    一度、魔王復活を邪魔されている」
    「魔王?…!あの事件は貴様らが裏で糸を引いていたの
    か!」
     石見が思い出したのは、『タンタロス』事件(第2話)
    の事であった。
    「その通り。そしてまた先日は、武田先輩がお前達をゴ
    ルディアスの罠に掛けようとしたのだが、先輩ともあろ
    うものが何を間違えたのか、これも失敗してしまった。
    だが、今度はそうはいかん。『逆衛星の法』によって集
    めた強大なエネルギーを使って、今度は平井先生御自身
    が魔王となられるのだ」
    「そんな事を、許してたまるか!」
    「ふん、お前達ごときに何が出来る。さあ、おとなしく
    ここで死にたまえ」
    「死ぬのはてめえの方だ!ふぁいやーっ!」
     知場の号令一下、米兵の一斉射撃。しかし、小川の太
    鼓から発生する音波に弾き返されてしまう。
     嘲笑う小川。
     きききいいいいいいい。
     いきなり、歯にしみる音が響いた。
     途端に太鼓の音がやむ。
     小川がスティックを放り出して耳を押さえ、のたうち
    回っている。
    「なんだあ?」
     アンディの仕業だった。アンディが手近にあった黒板
    を思いっ切り引っ掻いたのだ。
    「音楽得意ナ奴ラト聞イタノデ、ヒョットシテ変ナ音苦
    手カモ、思イマシタ」
    「よおーしアンディいいぞ、そのまま続けろ!ふぁいや
    ーっ!」
     再び知場の号令一下、一斉射撃!小川はあえなく蜂の
    巣になる。だが、ズタズタに引き裂かれながらも小川は
    叫ぶ。
    「これで勝ったと思うな!土佐先輩がもう一つの高層ビ
    ル街を必ずっ…!」
     これで次の敵が新宿にいる事が判った。
     地上に出ると、月が少し太っている。三日月より少し
    太いだろうか。何かが引っ掛かるのだが、それが何なの
    か解らない。一人目の敵を倒したとはいえ、謎はますま
    す深まるばかりだ。
     一行がその場を後にして間もなく、背後でガラガラと
    すさまじい音がする。振り返ると、小川の最後の執念だ
    ろうか、大手町のビルの一つが音を立てて崩れて行くと
    ころだった…
     
     
     
     
     
     
     
     


      第3章 潔癖
     
     新宿へ向かう前に、警視庁に寄った。荒れ果てた都内
    で、ここだけはかなり活気にあふれている。葵や吉沢警
    視は不在だったが、顔なじみの刑事に話を聞くと、ここ
    も一度はパニックになりかけたのだという。だが、その
    時みんなに喝を入れたのが葵だったらしい。
    「葵さんに渡しといてくれ。俺が持ってても使いもんに
    ならん」
     銃は向かないと悟った知場が、持っていたマシンガン
    とライフルを刑事に預け、これから新宿に向かう事と、
    敵には必ず何かの恐怖症がある事を知らせてから、再び
    行動再開。
     新宿では、高層ビル街の一角で、一人の男がパイプオ
    ルガンを弾いていた。
    「今度ノハ潔癖症ジャナイデスカ?」
     およそ当てずっぽうとしか思えないアンディの言葉だ
    ったが、なるほど観察してみると、時折神経質そうに手
    をウェットティッシュで拭いている。恐らくあのウェッ
    トティッシュも普通の物ではなく、消毒液にでもひたし
    てあるのだろう。
    「どっか近くにゴミ箱はないか?」
     石見達はあたりを見回したが、さすがに自分の弱点に
    なる物はあらかじめ片付けたらしい。あたりには汚い物、
    不潔なものは何一つ置いてない。
     ごちゃごちゃやっているのを気づかれて、相手は演奏
    の手を止め、こちらを見た。
    「ほう、やっとお客様がいらしたか」
     男は土佐光司と名乗り、何やらキザったらしい事を言
    っているが、一行は一切無視。アンディは泥ダンゴを
    (精神力ではなく泥で)作って投げる。土佐の奏でるメ
    ロディーに動きを妨げられ、ダンゴは惜しくも土佐には
    当たらなかったが、パイプオルガンにヒット。途端に、
    迷惑そうな顔をして、パイプオルガンの汚れを拭き始め
    る土佐。
     それを見た石見は墨汁のビンを作って投げる。だが音
    楽の干渉で動きを妨げられるのと遠すぎるのとで、墨汁
    のビンはあらぬ方向へ飛んで行く。
     知場は、パイプオルガンを取り巻く白いシーツの上に
    脚を一歩踏み入れる。
    「うあっちちち!」
     ジュッと煙が上がり、知場が飛び跳ねて一歩下がった。
    あの白いシーツは、一種の結界の役割を果たしていて、
    土佐の周囲に汚れたものが侵入するのを防いでいるらし
    い。
     亜梨沙はゴミ入りのゴミ袋を作り、シーツぎりぎりの
    位置までダッシュして接近し、ゴミ袋を思いっきり放る。
     命中!白の三つ揃いを着た土佐の腕に、玉ネギの半分
    腐った皮やら魚の骨やら、ともかくいろんな生ゴミが出
    てくる。土佐は悲鳴を上げた。
    「今だっ!てぇーっ!」
     知場の号令一下、一斉射撃する米兵達。だが、一瞬早
    く土佐は逃げ出して、射線をかわす。銃弾はパイプオル
    ガンを打ち砕いただけで終わった。
     京王プラザホテルに逃げ込もうとする土佐を、即座に
    追いかける石見達。だが、今一歩というところで追いつ
    けず、土佐はエレベーターに乗り込んでしまう。
    「俺は階段から追う!」
     米兵を一人連れて、階段を駆け登り始めた知場。相変
    わらず突撃な奴だ。
     石見達は、エレベーターが最上階まで昇ったのを確か
    め、知場に無線で連絡すると、一階に米兵を一人残して
    別のエレベーターで後を追う。
     知場を追い越して最上階に出ると、屋上への扉が開い
    ていて、汚れた服が脱ぎ捨ててある。少し待って知場と
    合流し、用心深く屋上を覗く。
     土佐が何かの機械の前に立って操作している。だが銃
    で狙うのは無理な位置だ。
    「ボクニ任セテ」
     アンディ得意の魔球が、土佐の背中にヒット!続いて
    飛び出した亜梨沙のヨーヨーで、土佐はぐるぐる巻きに
    されてしまう。
     よく見ると、土佐の脇に何か透明なチューブのような
    ものが口を開けている。そして…
     ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
    「おい、このビル、崩れるぞ!」
     下に逃げる暇はない。慌てて一階に残してきた兵士に
    ビルを脱出するように伝え、土佐を問い詰める。
    「おい!どうやって脱出するつもりだったんだ?答えな
    いとゴミを…」
    「い、言う!そのチューブが脱出口だ!そのチューブの
    先が彼女のところへ…」
     どうやらこの先には新たな敵が待ち構えているらしい。
    だが、迷っている暇もなければこれ以上土佐を問い詰め
    る余裕もない。
    「俺に続けっ!」
     石見は落ちていた土佐の服を拾い上げて、ジタバタす
    る土佐の頭にひっかぶせ、突き飛ばすようにして一緒に
    チューブへ飛び込んだ。
     全員がチューブに飛び込んだ直後、後ろで京王プラザ
    ホテルが崩壊して行った…
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     


      第4章 高所
     
     チューブは新宿から、フジテレビ、市ケ谷駐屯地の近
    くを通り、やがて後楽園遊園地を正面に見ながら降りて
    行く。
    「なるほど、次は東京ドームか…!」
     だが、到着直前に罠が張ってあった。チューブ内に槍
    が仕掛けてあったのだ。頭から汚れた服をかぶせられ、
    石見に押さえつけられてもがいていた土佐が、串刺しに
    なった。
     だが当の石見は、難なくこれをかわす。まさに悪魔つ
    きの強運である。
     やがて全員が放り出されたのは、ビッグエッグの屋根
    の上。
     下から琴の音が響いてくる。
     あたりを見回すと…
    「げーっ!」
     亜梨沙が気味悪そうに声をあげた。
     ドームの中からゾロゾロ出てくる、カエル、ミミズ、
    ヘビ、クモ、ナメクジ…しかも、そのどれもが人の大き
    さほどもある巨大生物なのだ。
     一匹がドームの屋根の上に這い上がってきた。巨大な
    クモだ。
    「てえーっ!」
     知場の命令で(今回こればっか)米兵がクモの脚を狙
    い撃つ。続いて亜梨沙のヨーヨーがクモの顔面に命中。
    とどめは石見のワルサーだ。さしもの巨大グモも、砕け
    散った。石見が呟く。
    「初めての射撃だったんだが、意外と当たるもんだな」
     ドームの屋根に穴を開けて下を覗くと、緋色の巨大な
    絨毯の上で、振袖姿の長い黒髪の女が、一心に琴を弾い
    ている。よく見ると、振袖の柄が虫やカエルで、音楽に
    合わせてその柄が立体化し、巨大化して表へ這い出して
    行くのだ。
    「何だか身体がムズムズしてきたぞ」
    「私モデス」
     知場とアンディがもぞもぞし始めた。見ると、体内の
    大腸菌やミトコンドリアが巨大化して体外に這い出して
    来ている。どうやら米兵達も二人と同じ運命のようだ。
     下に降りなければ話にならないが、下に降りればムシ
    の襲撃を食らうのは目に見えている。さて、どうする?
    「おおかた高所恐怖症だな、こいつは。面倒だ、吊り上
    げよう」
     石見が無茶苦茶を言い出した。下まで充分届くロープ
    と強力なトリモチ弾を『製作』して、女を吊り上げると
    いうのである。
     だが、米兵達があの有り様で射撃を任せられる状態で
    はない以上、石見が射撃するしかない。さりとて屋根の
    上からでは、やや自信がない。
    「…やむをえん。米兵さんの持ってるロープと亜梨沙の
    ヨーヨーのチェーンをつなげば三十メートル位にはなる
    だろう。そいつで俺の身体を吊り下げて、降りられると
    こまで降りて、そこから狙う」
     かくて荒唐無稽な大作戦が展開される。
     屋根から吊り降ろされた石見。幸い、女は石見にまる
    で気づいていない。シュート!
    「しまった!」
     地に脚が着いてない状態での射撃で、反動を殺せない
    事を計算に入れてなかったためか、狙いが微妙にそれる!
    失敗か?
     べちゃ。
     まさに石見の強運は悪魔的だった。トリモチは狙った
    背中からはそれたが、代わりに女の髪の毛にベットリと
    張りつく。
    「今だっ、知場!引けぇーっ!」
    「おうっ!」
     ロープの反対の端を身体にくくり付けた知場が、屋根
    から飛び降りる。もちろんロープは屋根の上の避雷針に
    巻いてある。
    「キャアアアア、痛いイタイいたい!」
     わめきながら女が吊り上げられてくる。
    「知場!」
    「石見!」
     空中で腕を伸ばし、がっしりとつかみ合う。三人の身
    体は、ちょうど真ん中あたりで宙ぶらりんになり、止ま
    った。
     演奏が止まると、ムシの出現も止まる。やがて、ドー
    ムの中は空っぽになった。
     もがく女を、石見がツボを突いて眠らせる。石見がま
    ず引き揚げられ、次に女の番。反対側の知場は、逆に下
    に降りて行く。
    「行きがけの駄賃だ」
     知場は手榴弾を琴に仕掛け、ピンに糸をつけて、ロー
    プで引っ張り上げられながらピンを抜く。
     それだけ慎重にして正解だった。
     琴を爆破したとたん、琴の下に敷いてあった緋色の絨
    毯が、まるで生き物のようにめくれあがって知場に襲い
    かかったのだ。
     間一髪、知場は絨毯をかわす。絨毯は一度めくれあが
    ると、その後はへなへなと崩れ、やがて琴の火が引火し
    て燃え尽きてしまった。
     屋根の上に戻り、女を縛り上げると、トリモチは消え
    る。石見は女を穴から吊り下げて、目を覚まさせる。
     女の名前は富永明子。無論、西荒川大の闇バスターの
    一人である。
    「殺すんなら一思いに殺しなさいよ」
     青ざめながらも強がる富永。緊張しているようだが、
    高い所を人並以上に怖がる様子はない。
    「石見、コノ人本当ニ高所恐怖症デスカ?」
    「…責め方を変えてみるか」
     再び女を眠らせ、連れて行った先は後楽園遊園地。
     イベントのコーナーでは、『法人戦隊ランダマン』シ
    ョーが行なわれている最中だったらしい。五色のコスチ
    ュームを着たのやら怪獣の服を着たのやらがゴロゴロ倒
    れている。
     機械は全部止まっていたが、またも石見が強運を発揮。
    主電源盤を見つけて、スイッチを片っ端からONにする。
     石見は何を思ったか、女をスカイフラワーに乗せ、目
    を覚まさせた。知場が疑わしそうに石見に聞く。
    「こんなんで効くのか?」
    「やってみれば判る」
     実際、動く前から女はブルブル震え出し、青ざめてい
    る。そして動き出した途端、みっともないほど激しい叫
    び声を上げる。
    「イヤァァァ、止めてトメテとめてぇぇぇ!」
    「止めて欲しかったら、後の二人の名前と居場所、それ
    に恐怖症を教えろ」
     ほとんど悪役ノリの石見。女は必死に口をつぐむが、
    それも一度だけ。二度目に昇る途中で、耐え切れずに降
    伏した。
    「言う、言うわよ!言うから止めてっ!」
    「よし。おーいアンディ、止め…あ、いけね。ここで止
    めたら下に戻れないや。悪いけど、もう一回我慢してち
    ょうだい」
    「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
     下に降りた時には、富永は精も根も尽き果てたといっ
    た有り様である。
     聞けば、残る二人のうち一人は的場といい、恐怖症は
    閉所。もう一人の河村は、何かの色に対する恐怖症らし
    い。
    「何色なんだ?」
    「それは判らないわ。あの先輩はそれを仲間の私達にも
    隠していたから」
    「なるほど…で、その二人は今どこにいる?」
    「一人は東京タワーにいるわ。もう一人は…」
     その時、地面がモコッと盛り上がり、巨大ナメクジが
    出現した。ナメクジは富永に襲いかかり、石見達が助け
    る間もなく富永は食われてしまう。
    「平井先生、私のエネルギーをお役立て下さいっ…!」
     最後の叫びを遺して、ナメクジに飲まれる富永。米兵
    の火炎放射器で、ナメクジは焼きつくされ、後には黒焦
    げの塊が残るのみ。
    「エネルギーを役立てる?…!まさか!」
     ハッとなって月を見る石見。
     半月になっている。
    「しまった!こいつら闇バスターの強大な精神エネルギ
    ーで、あの月が急速に太ってる!こいつらを死なせては、
    平井の思う壷だ!」
    「!すると、あの月が満月になった時、平井は魔王にな
    る…?」
    「ああ。そして恐らく、俺達が死んでも、その精神エネ
    ルギーであの月は太る」
     仕事はさらに難しくなった。残る二人の活動を止め、
    しかも彼らを殺してはならず、なおかつ自分達も必ず生
    き残らなければならないのだ。
     


      第5章 閉所
     
     色恐怖症に備えて、戦隊ショーの服を奪って着込むと、
    一行は東京タワーへ向かう前に、通り道にある警視庁に
    寄った。
     今度は警視庁に葵が戻っていた。葵は彼らの姿を見つ
    けて、二人で歩み寄ってくる。
     二人…?
    「何とかしてちょうだい、お願いよ!」
     二人の葵の声がハモる。
     葵が二人いるのだ!
     何でも不定形のモンスターに絡みつかれて転げ回って
    いるうち、こうなったらしい。つまり、どちらかはモン
    スターなのだ。
     正体を見極めるにはどうしたらいい…?
     離れて耳打ちをし合う四人。やがて、知場とアンディ
    が二人の葵を引き分けて、離れた所でそれぞれ囁いた。
    「オバサン」
     反応は瞬時に起こった。
    「オバサンなんてひどおーい!」
    「あなた記憶力ないようね!(バシッ!)」
     泣き出されたのがアンディ。ひっぱたかれたのが知場。
    「アンディ、離れろ!そっちがニセ者だ!」
     うまい手だったが、一瞬遅かった。瞬時に不定形に戻
    ったモンスターは、アンディを押し倒し、転げ回るうち
    に今度はアンディが二人に。
     振り出しに戻る。しかも、先刻と同じ手は使えない。
    「魔球、投ゲテミマショウ」
     なるほど、特技までは簡単には真似できまい。それを
    悟ったらしく、アンディの一人が逃げ出した。
    「正体現わしたな!逃がすかっ!てぇーっ!」
     またも知場の号令で一斉射撃。モンスターはグジュグ
    ジュの塊になった。
     余計な手間を食ってしまったが、一行は次の目標、東
    京タワーに向かう。
     東京タワーの頂上には、的場と思われる男が一人、二
    丁バイオリン(!!!)を弾いていた。
     エレベーターで昇る、階段で昇る、ヘリコプターで昇
    る…散々もめた末に、何と全員翼を作って飛ぶことに。
     陽動作戦を機動隊に頼み、人形をエレベーターに乗せ
    てもらって敵の注意を惹きつけておく。その間に、四人
    は大きな麻布の四隅をもって、少し離れた場所から離陸。
    充分高空に上がり、東京タワーの真上から一気に急降下
    して、敵を包み込んでしまおうという作戦に決定した。
     音もなく空に舞う四色の影(五色でないのが残念)。
    予想以上に上空の風は強く、精神エネルギーに余裕のな
    い亜梨沙や石見は苦戦するが、それでも何とか無事にタ
    ワー上空へ。
     真下に敵の姿が見える。血気にはやって階段を昇って
    いた機動隊員達が、何かの攻撃にやられて転げ落ちてい
    く。後で解ったのだが、的場の攻撃の正体は電気だった
    事が、かろうじて生き残った兵士の証言やエレベータに
    乗せた人形を調べた結果判明した。
     四人は狙いを定めて急降下を開始した。
     が、予想を越えた突風にあおられる!亜梨沙と知場は
    バランスを保つために、やむをえず手を離してしまう。
    「やり直しはきかない!アンディ、行くぞ!」
    「OK!」
     残った石見とアンディの力で、何とか強引に的場を包
    み込むことに成功!麻布ごとグルグル巻きにして、問い
    詰める。
    「お前達の最後の仲間はどこにいる!」
    「いつものとこだよおー、だしてくれよおー」
     ヘタに出してしまっては、何をされるか解らない。警
    戒した石見達は、東京タワーの上部を熔断して降ろすと
    いう暴挙に出る。
     これが完璧な失敗だった。降ろすのに時間がかかりす
    ぎて、とじ込められていた的場は、精神崩壊を起こして
    しまっていた。
     月を見上げると、月は再び膨らんでいる。
    「肉体だけ生かしても、精神を殺してしまっては同じ結
    果か…くそっ!」
     歯がみしたが後の祭り。最後の敵を探すしかない。だ
    が、的場が言っていた『いつもの所』とは一体…?
    「西荒川大ッテ、ドコニアリマスカ?」
     突然のアンディの言葉に、一同ボーゼン。
    「そうだよ。当たり前じゃないか。やつらの本拠が、他
    のどこだってんだ?」
     おのれの間抜けさ加減に軽い自己嫌悪を感じながらも、
    四人のバスターは二人の米兵と共に西荒川大へと向かっ
    た。
     


      第6章 赤
     
    「最後の相手、河村の恐怖症が、何かの色に対する恐怖
    症だって事は判ってるんだ。こうなりゃ、一気に勝負を
    決めてやる!」
     石見の考えた短期決戦策はこうだった。まず、タンク
    車を八台用意して、赤、青、黄、緑、ピンク、紫、金、
    銀の八色のペンキを満タンにしておく。そして、河村の
    恐怖症が何色だか見定めた上で、その色のペンキを一気
    に放出しようと言うのだ。
     八台のタンク車と共に、西荒川大へと向かうバスター
    達。正門から入った先の、時計台の手前に続いている銀
    杏並木の向こうに、シンセサイザーを操る河村の姿が見
    える。
     不思議な事に、時計台の文字盤が鏡に映ったように裏
    返しだ。
     そして流れるメロディーは、谷山浩子の…
    「サクロンのCMソング…どーゆー趣味してんだ、こい
    つは?…ともかく、奴のお気に入りは緑か。よおーし、
    思いっきし対色をぶつけてやれ。赤ペンキ車、前へ!放
    出!」
     ボボボボボボボボボボボ…
     ドロッとした赤ペンキが、一挙に流れ出して、銀杏並
    木の通りを覆い始めた。
     それに気づいた河村は、演奏を変えた。途端に、銀杏
    やつる草がモゾモゾと動き出し、ペンキの流れを阻止し
    ようとする。
     だが、それも無駄なあがきだった。木々や草達は、圧
    倒的なペンキの流れに覆われ、真っ赤に染めつくされて
    しまう。
     シンセサイザーに突っ伏してしまった河村を、悠々と
    近づいて行った知場と石見が縛り上げた。月は膨らんで
    いない。となれば、まだ彼らの野望を阻止する事も可能
    かも知れない。四人はホッと息をついた。
     だが、その時…
     

     
      第7章 復讐鬼
     
     響きわたる澄んだフルートの音色。
    「まさか…!」
     石見の悪い予感は的中した。
     現われた男は…!
    「武田…生きていたのか!」
     そう、『ゴルディアス』事件で、石見の剣を受け、植
    物に食われて死んだと思われていた武田明宏が復活した
    のだ。それも、石見に受けた腕の傷とプライドの傷との
    恨みを晴らすべく、復讐鬼となって…
    「久し振りだね、ヒガ大のバスター諸君。そして、よく
    ここまでたどり着いたと賞めてやろう。だが、平井先生
    の邪魔はさせないよ。断っておくが、先端恐怖症は既に
    克服した。もはや私に恐れるものはない!」
     そう言って武田は、おもむろにフルートを四人に見せ
    るように持ち上げた。
    「このフルートは、この夢の世界では銃になる事はこの
    間体験済みだろう。だが、肝心な事を言い忘れていた。
    このフルートはね、一発しか撃つ事が出来ないが、その
    代わり狙った的は決してはずさない。文字通り一発必中
    というわけだ。君達にはここで全員死んでもらう事にな
    るが、まず最初に、このフルートによって処刑される栄
    誉を…」
     武田はフルートを構え、狙いを石見にピタリと定めた。
    「君にあげよう」
     知場が石見の前に立ちふさがる。
    「知場、どけ!奴の狙いは俺だ!」
    「俺達の中じゃ、お前の剣の腕が一番頼りになる。俺が
    倒れたら、奴を切れ!」
     武田はニヤリ、と笑った。
    「いい度胸だ。だが、果たしてそううまく行くかな?
    死にたまえ」
     轟く銃声!
     だがその時、懐かしい声が、石見達の耳に響いた。
     
    「秘技、『実はそこにいた』!  
     
     武田のフルートから発射された銃弾を受けて倒れたのは…
    「紀田先生!?」
     突如、現われた紀田助教授が、知場と石見をかばって
    胸に銃弾を受けたのだ。
     思わず茫然とする石見達を、苦しい声で紀田が叱咤す
    る。
    「何をしている!早く、お前達の手で奴を倒さんか!そ
    んなことでは、次の成績も…」
     ゴフッ、と血を吐く紀田。
     チッ、と舌打ちをして、武田はもう一つの武器、組み
    紐を繰り出してくる。狙いはまたも石見だ。
     亜梨沙はヨーヨーで組み紐を叩き落とそうとするが、
    うまくいかない。石見は剣で払いのけようとするが、逆
    に剣をもぎ取られてしまう。
     だが、アンディが武田の周辺に砂糖の雨を降らせて、
    戦局は急変した。
     武田は驚きのあまり、組み紐ごと剣を取り落としてし
    まう。先端恐怖症は克服したらしいが、甘い物恐怖症は
    治ってないらしい。
     そこへ亜梨沙のヨーヨー攻撃が決まる。チェーンでグ
    ルグル巻きにされたところに、知場が『製作』したパイ
    を顔面に叩きつける!
     亜梨沙は紀田助教授に駆け寄る。石見は剣を拾い上げ
    て武田にとどめを刺そうとしたが、知場のパイ攻撃でそ
    の必要がないと悟り、紀田助教授の元へ。助教授は二人
    の顔を見て、弱々しく微笑んだ。
    「お前達…よくやった…よくここまで…成長したな…私
    はお前達を…誇りに思う…」
     他人に紹介する時はいざ知らず、面と向かって紀田助
    教授が賞めてくれるのは初めての事だ。
    「しっかりして下さい、先生! 帰ったら……俺達が生
    きて帰ったら、昔の話を詳しく聞かせてくれる約束でし
    ょう!」
     石見が必死に叫ぶ。
    「さよならは、言わない…待っている…」
     それだけ言い残すと、助教授の姿が次第に薄れ…消え
    た。
    「!…実体じゃなかった…?」
     その頃、知場は武田のフルートを拾い上げ、アンディ
    は武田の口許についたパイを拭い取っていた。だが、遅
    かった。武田は、バニラエッセンスのあまーい匂いを吸
    い込むのが死んでも嫌だったらしい。自分で息を止め、
    本当に死んでしまっていた。
     やり切れない思いで、空を見上げる4人。
     月は、満月に…!
     やがて、都心を覆っていた黒いベールは消滅する。だ
    が、それと同時に、裏返しの時計台も、掻き消すように
    消滅してしまう。
     無線が復活し、外と連絡が取れるようになった。即座
    に、紀田助教授がいるはずの品川の米軍キャンプに連絡
    する。
    「ヒガ大のステューデントか?」
    「Yes」
    「大変だ。ミスター紀田が自殺した」
    「!…いつ!?」
    「ついさっきだ。それに君達、いまどこにいる?連絡は
    1時間後のはずだろう。まだあれから三十分と経ってな
    いぞ」
     途中で寝込んだりしているはずの同僚を拾いながらキ
    ャンプに引き返す、と言う米兵二人と別れ、四人はキャ
    ンプへ直行する。
     キャンプには、見間違いようのない、紀田助教授の遺
    体があった。
    「…急に部屋から叫び声が聞こえた。よくは判らないが、
    『ジヅワゾゴニイダ』と聞こえた。変に思って駆け込ん
    でみると、ミスター紀田はもう毒を飲んだ後だった…」
     第一発見者の兵士の話を聞きながら、四人は助教授の
    遺体を茫然と見降ろした。だが、助教授の遺体の表情は、
    決して人生に敗北して死を選んだ者のそれではなく、強
    い決意を秘めて戦いに赴こうとする戦士の表情だった。
     亜梨沙が突然叫ぶ。
    「こうなったら、あたしたちも闇バスターになっちゃお
    う!あたし、『ゴルディアス』の時のイノチグサの種を
    持ってるんだ!だから、他のバスターたちを殺して、そ
    れで…」
     アンディが悲しげな表情で遮った。
    「STOP、亜梨沙。YOUダッテ、ソレ本気デ言ッテ
    ル訳デナイデショウ?第一、ソンナ事シテ、紀田ガ喜ブ
    思ウカネ?」
    「だって…だって…」
     突然、石見が呟く。
    「紀田先生、ホントに死んだのかな」
    「何言ってんだよ。お前だって見たじゃないか、先生の
    遺体を。あれのどこが死んでないって言うんだ?」
    「いや、そうじゃない。確かに、肉体的には死んでるだ
    ろうさ。ただ、俺が気になってるのは、先生のあの表情
    だ。あれは決して、人生の敗北者の顔じゃなかった。ま
    るで、今から戦いに赴こうとする…」
     石見はハッとなった。
    「まさか…!いや、多分そうだ!先生は、夢の世界には
    入れないと言っていた。だが、俺達が武田にやられそう
    なあの時、先生は外の世界からジャック・イン(他人の
    夢世界に侵入する事)してきたんだ。つまり、先生が死
    を選んだのは、夢の世界に入る方法がそれしかなかった
    からじゃないのかな?」
    「それじゃあ、先生は俺達のために…?」
    「いや、多分そうじゃない。俺達を助けてくれたのは恐
    らく、行きがけの駄賃ってとこだろう。先生は今頃、平
    井と戦ってるんだ。消えた時計台にいるはずの平井と…」
     だが、消えた時計台は果たしてどこに?
     そして、紀田助教授の過去に隠された秘密とは?
     紀田助教授の、四人のバスター達の、そして世界の運
    命は?
     多くの謎を孕んで、事件は今、驚くべき終末へと向か
    って走り出していた。
     
    最終話に続く
  • はみ出しリプレイ漫談

    『ないとめあ・ばすたあず』

    第4回  らぐなれく


     
    キャラクターズ・プレイヤー紹介
     
  • 小川 敏明(おがわ・としあき)
    「日本人は精神力に頼りすぎる!ここは悪知恵と勇気で
    勝負だっ!」
    (注)根性は?…ねじ曲がってます。
     
  • 的場 良平(まとば・りょうへい)
    「どちらかと言うと、軍用航空機ファンなのだが…ま、
    ダテにゴルゴ13とパイナップルアーミーは愛読しとら
    んわい。」
    (注)そーか、それが元ネタか。
     
  • 富永 明子(とみなが・あきこ)
    「ああ…な、何かしなければ…ああっ、かっ、河村さん、
    そんなムゴイこと…あああ、終わってしまった。」
    (注)実話です。
     
  • 河村 克彦(かわむら・かつひこ)
    「ぼくは別にいぢめようとしてたわけじゃないんですよ。
    ただ、仲間の犠牲と無駄な精神エネルギーを、少しでも
    減らすために仕方なく…」
    (注)調子のいいヤツ。
     
    ゲーム・マスター
  • 武田 明宏(たけだ・あきひろ)
    「はい、ドンパチです。市街戦です。飛び散る血と硝煙
    です……と思ったら何だこのプレイはー!まあいい。奴
    がラストで格好良く再登場して、締めてくれるだろう。
    ふっふっふっふっふ。」
    (注)奴って誰だろう?…白々しいか。
     
     
     


     
     
     
    亜:わーい、学校さぼれて、しかも一週間も紀田先生や
    みんなといっしょにお泊まりだー♪
     
    小:いやーさすが謎の留学生。便利な設定だなー。
    ア:オカゲデ経験値ガナカナカタマリマセン。
    小:だから途中で必死にかせぐんだろっ!
     
     
    富:平井は別に傷ついとらんのでないかい?
     
     
     
     
     
    富:こ…こんなんが各大学にあるのか、この世界は。
    亜:あたしも知らんかったなー。
    紀:オイオイ、教えたはずだぞ。
     
    亜:そーゆーことは、最初に言ってくださらなきゃあ…
    富:そーそー、こっちにも心の準備ってもんがあるんだ
    から。
    小:「必死」って、何やってたんです?
    紀:徹夜でコンピュータを動かし、全世界に電話を掛け
    ていたんだ。
    ア:一人ダケ、ノウノウト寝テイナカッタンデスネ。
     
    富:早オ同には六人がかりで行ったんかしらね?
    亜:あたしらナメられてんのかなー。まー、だました手
    口は凝ってたけど。
    河:六人ね…ワクワクするほどいやーな予感がするぞ。
     
    亜:ういろうを買おう!こないだ買いそこねたし。
    富:ま、楽しめるとこで楽しんどかないとね。
     
     
    亜:とりあえず東京までは無事帰れると思ってたのにぃ
    ー。もーですかぁ?
     
    【キャラクター・データ・ファイル】
    No.15  小川 敏明
    性別:♂   年齢:20才
    筋 力:13  体 格: 7
    知 識:15  魅 力: 7
    敏捷性:12   運 : 3
    器用さ:12  精神力:18
    体力ポイント:16 精神エネルギー:54
    技能
    パーカッション:10 服従:1 社会心理音楽:10
    その他:弱点1つ
      戦闘データ不足のため以下不明
    (注)プレイヤーのデータにあらず
     
    富:どっひゃー!
    亜:これはまた…
    富:ここまでハデにやるのかー。もはやもみ消しのきか
    ない大事件だぞ。
     
    平:まだまだ甘いな士…いや順一。これも又教えておい
    た筈だぞ。この日時は十年前に定められていたのだ。
     
    マ:しまった、何にも考えてない。いーや、作っちゃえ。
    小:物体Oじゃないんですか?
     
    亜:ちゃんと聞いといて下されば…
    紀:すまない。あの頃ぼくは…
    恵:ハイ、そこまで。以下は次号のお楽しみ。
     
    富:どーゆーコネだろね、まったく…
     
    知:ナパームパイナップル2コ、C4プラスチック爆薬、
    雷管、40ミリランチャー、赤外線スコープ、ガスマスク
    も要る!
    マ:5つ振って運以下…出すかぁ〜!?
    亜:やったー!!あこがれのサキ様のヨーヨーだーい!!
    米兵ヘッケル:日本人ニハ、ツイテ行ケナイナァー…。
    マ:CMネタはすぐ風化…もうしてるか。
    小:欲しかったのに欲しかったのに (C)田中圭一。
     
     
     
    富:ムチャクチャでんな。
     
     
     
     
    亜:先生を問い詰めるとは、知場さんもなかなか…でも、
    あんまり先生をいじめると後ろからサキヨーヨーでぶん
    殴っちゃいますよぉ。
    紀:いや、知場の質問は正しい。
    石:しかし、人にはそれぞれ言いたくない事があるでし
    ょうし…
    亜:ちょっと!いつまでシリアスしてんの。慣れない事
    しても、似合ってませんよ。
    富:他のICAのメンバーとか、いないわけ?
    亜:いーじゃん、あたしらで十分だって。
     
    マ:いいなあ…
     
    亜:いや、知場さんの目はマジだった。
    ア:ヤダヤダ、ドコガこみかるほらーRPGナンダロ。
     
     
    小:ああっアンディ、お前までシリアスに…。
    恵:私の強権発動だ!あんなセリフ、認めてたまるかっ!
    河:プレイの時アンディは、よりにもよって「平井先生
    ヲ愛シテイルンデスネ?」なんぞと言いやがったんだ。
    ア:ワタシ日本語、ワカリマセーン。
     
    《紀田順一の無用の雑学知識》
    第4回 ラグナレクとは
    その1
     
     北欧神話に登場する言葉で『神々の黄昏』と訳される
    が、正確には『神々の滅亡』と訳すのが正しい。神話に
    よれば、この滅亡の日には神々ばかりでなく、この世の
    全てのものが滅亡する。そして、それには前兆があると
    言う。              (その2に続く)
     
    亜:石見さんずるいー!いいセリフ取っちゃってぇー。
    マ:おいしいセリフ、持ってくよなー。
    河:ヘッヘッヘッ。
     
    富:この頃の亜梨沙には、深刻にならなきゃいかんよー
    な事は何にもなかったのさ。
    亜:紀田先生も、あんまり深刻にしても似合いませんよ
    ー。もっと気楽にいきましょーよ、ね☆ 大丈夫ですよ、
    あたしら運がいいから。
    石:誰かさんを除いてね。
     
    富:まぬけ…
    マ:実は一瞬、マスターも設定を忘れてたりして。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    亜:あー、東京の地理ってわかんない。頭がうにーっ!!
    富:亜梨沙も私も、茨城生まれの茨城育ちだからねー。
     
     
    恵:4本目までくると、この表現なしじゃあ落ち着かな
    い感じになりません?
    全:ならないならない!
     


     
     
     
     
    マ:『ツァラトゥストラはかく語りき』。
     
     
    マ:さあ、アクションだ!
    ア:ソーハサセマセンヨ。
     
     
     
     
     
     
     
    富:いきなりこの名前かぁ〜っ。聞いた瞬間にHPが5
    くらい減りそう…。
    小:ヘイヘイ、どーせどーせ。
    ア:Oh,イジケル、ヨクアリマセーン。
    小:うんにゃ、こーゆー悪いヤツをやっつけられるかと
    思うとうれしくてねー。
    ア:ジャ、遠慮ナク。(ばきっ!)
    マ:魔球のダメージは1Dね。
    河:うるさいぞ音響効果!
    富:こーゆー反応示すとこ見ると、プレイヤーの小川さ
    んとは似てないようだね。
    亜:ほーら、やっぱりみんな運がいいでしょ?
     
     
     
     
    マ:おおう、まるでキャンペーンシナリオのようでは
    ないか。
    河:あのね…
     
    富:いやー、あの人わりとドジで、けっこーかわいいと
    こあるよ、うん。
     
     
     
     
     
    亜:出た!知場さん必殺のアイテム『米兵』!
    的:ひらがなで叫ぶな!
    亜:かわいいからいいんじゃない?
    小:おおっ、かっこえーなー。
     
    亜:ほんっと、いきなりでしたね。
    富:自分のことはよくわかるんですねー…。
     
    マ:黒板?『作る』なら6Dで精神力以下ね。
    小:地下道でしょ?伝言板がありますよ。
    全:あざとい…
     
    マ:そう簡単にひょっとするなよー。今後、ひょっとす
    るのは禁止ね。
    小:女の直か…もがが。
    的:だーかーらぁ!
    恵:だって知場は、英語の技能持ってないし。
    亜:にしても、これは無残だなー。
    亜:こいつ、さっきから言わなくてもいい事ペラペラよ
    くしゃべるわねー。
    富:トップバッターは、つらいね。
    小:いいなー。悪の美学だ。
    ア:コレダカラ日本人ハ…
    石:お前、そんなに日本人嫌いなら、なんで日本にいる
    んだよ。
    ア:(ぽんっ)ソウカ!
     
    《紀田順一の無用の雑学知識》
    第4回 ラグナレクとは
    その2
     
     第一に、三年の間冬が続き、その次の三年の間凶作が
    続き、世界は争いで満たされる。「あらゆる欺瞞と悪行
    の考案者」たるロキ、そしてその子である巨狼フェンリ
    ル、ミッドガルドの大蛇、ヘル(死)を始めとする神々
    の敵が、虹の橋ビフロストを渡って神々の園アスガルド
    に攻め寄せる。          (その3に続く)
     


     
     
     
    マ:ナイトメア・バスターには及ばないが、精神の強い
    人が多いんやね。
     
     
    知:俺が銃を持っていたとしてだ、射って当たると思う
    かね?
    亜:知場さんもいちいちカッコいいですねー。
    富:それにひきかえ、亜梨沙のヤツは…。
     
     
    マ:『白色彗星のテーマ』ね。
    プレイヤー全員:さらヤマと来たか!
     
    マ:当てずっぽうも禁止!!
    小:ニュータイプと呼んで下さい。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    富:ここらへん、精神エネルギーを節約して相手の弱点
    を突く事しか考えてなかったもんな。
    亜:ムダ使いして大切な時に使えなかったら困ると思っ
    て…。
    小:単なるケチという話もあるけど。
    河:それは言わない約束でしょ。
     
     
     
     
    亜:あたたかい。(C)カールビンソン。
     
     
     
     
    富:ああー、なんつー情けない戦い…。
     
     
     
    ア:オオッ!こみかるほらーダ☆るんるん。
     
     
     
     
     
     
     
    マ:おい、八十階建てだぞ。
    知:なせばなるッ!
    富:し、正気か、的…もとい知場くん!米兵もいいめー
    わくだな。
     
    富:こうして、一人一人脱落して行く米兵…さあ、最後
    には何人残ってるかなっ?
     
     
     
     
     
     
    亜:やっとサキ様のヨーヨーが使えたわ。
     
     
     
     
     
     
     
     
    亜:どーゆーおどし文句ですか。
     
    亜:おっ、『彼女』か…。
    小:T嬢ですね。
    知:なにぃ?知ってるのか!さては貴様…!!
    小:こ、こら、プレイヤーに何をする!!
    (どかべきぼこ)
    ア:(冷ややかな眼)
     
     
    的:これって、もしかして…
    河:ダーティ・ペ×…
    マ:とーぜん。
     
    【キャラクター・データ・ファイル】
    No.16  土佐 光司
    性別:♂   年齢:20才
    筋 力:12  体 格:10
    知 識:15  魅 力: 6
    敏捷性:12   運 : 3
    器用さ:12  精神力:18
    体力ポイント:17 精神エネルギー:54
    技能
    パイプオルガン:10 服従:1 都市音楽:10
    その他:弱点1つ
      戦闘データ不足のため以下不明
     


     
     
     
     
     
     
     
     
    亜:む、むごい…
    富:何が何でも土佐を殺したいらしーな、このマスター
    は。
     
     
     
    マ:♪手のひらに太陽を…あれ?
     
    《紀田順一の無用の雑学知識》
    第4回 ラグナレクとは
    その3
     
     これに対し、オーディン、その子トール、ビフロスト
    の番人ヘイムダルといった神々が立ち向かう。そして遂
    には双方とも全滅し、最後に残った炎の巨人スルトの投
    げた火炎により、全宇宙は焼きつくされ、時すら存在し
    なくなる。            (その4に続く)
     
    亜:なーいすチームワーク!
     
    亜:まーたまた一人でカッコつけちゃってー。
    小:石見って自分に酔いやすいから…。
    知:俺も酔っとるぞ、ヒック。
    石:別の意味でな。
     
    亜:ひぇぇぇぇ。
    富:これまたプレイヤー富永とは似ても似つかぬ…。
     
     
    亜:どひーっ!じょーだんじゃないよぉっ、そんなのっ!
     
     
     
    亜:すさまじい発想ですねー。
    富:マスターの頭を抱える姿が眼に…見えてるか。
    マ:…ロープは長いから6D、トリモチ弾も特殊だから
    6Dで精神力以下。共同『製作』も、まあ許そう。
    知:よーし、じゃあ精神力の高いオレとアンディで3D
    ずつ振って…あ、こりゃもうほとんど出てるわ。
     
     
     
    ア:男装用ノさらしヲ使エバ、モット長クナリマスケド。
    小:いかーん!!それはシリアスをぶち壊す最後の武器
    なんだぞーっ!
     
     
    マ:4Dで敏捷性以下。
    河:14以下ね…アチャ!15、惜しい!
    マ:ま、1ポイント足りないだけだから、狙いと違うど
    っかに当たったかもね。4Dで運以下なら成功。
    河:運は高いんだ、頼むよ…よし、成功!
    マ:さらに1D振って、1なら髪の毛、2なら…げ!
    河:(既に振っている)へっへっへ。1です!
    全:キャ〜〜〜!!!(頭を抱えて喜ぶ)
    富:ムチャクチャだよ、この人。よりによって、キッチ
    リ出すもんなー、1を。
    マ:4、5、6はハズレで、2か3なら振袖に当たって、
    服だけ脱がすつもりだったのに…。
     
     
    亜:ひえー痛そー。同情してしまう…。
    河:ちなみに振袖の下は?
    マ:野戦服。
    河:なんだ、つまらん。
    富:がっしりと抱き合う…。
    知・石:抱き合わん抱き合わん!!
    ア:ヤタッ!こみかるほらーネ。
     
     
     
     
     
     
    亜:あまりにも知場さんらしくない慎重さ…
     
     
    亜:…が、正解なんですねー。
     
    マ:さーよい子のみんな、お待ちかねゴーモンの時間だ
    よ。
    紀:みんな、この技はとっても危険だから、決して真似
    してはいけないよ。
    平:この鬼、悪魔、サディスト!
    石:貴様に言われる筋合いはないっ!!
    亜:このリプレイ、いつからこーゆー世界になったの?
    マ:第1話、第1ページを見てごらん。このゲームのテ
    ーマは、何かな〜?
    亜:…ホラーとアクションと…コメディです。
     
     
    亜:い、石見さんて…。
     
    恵:説明しよう!『法人戦隊ランダマン』とは…
    知:よくある特撮戦隊ものである。
    恵:こらこら、はしょるな…あ、おい、何をする、もっ
    としゃべらせ…
    (ばきどかぼくっ)
    河:どうも最近、このオチが多いな。
     
     
     
     
     
    知:…よく判ったな、石見。
    石:俺じゃないよ。河村さんに言ってくれ。
    河:誰とは言わんが、知り合いに実例がいるんだ。
     
     
     
     
     
     
     
     
    亜:い、石見さんて!!
    石:…俺だって好き好んでやってるわけじゃない。ただ、
    味方の犠牲は最小限にとどめようとして…
    ア:私モ、少シデモ有効ナでーたヲ得ヨウトシテ…
    知:お、オレは、オレは、てぇーっ!…あ、相手がいな
    い。
    紀:こーゆーのを、モンティ・ホラーと名づけよう。
    マ:…お、俺、今までこんな奴ら相手にマスタリングし
    てたのか。…前回で、武田を一発で消しといて、ホント
    ーによかった。
     
     
     
     
     
    富:うーん、一番かっこいー死に方だなー、こいつ。仕
    方ねぇ、今までの事は許してやろう。
     
     
     
     
    亜:こーなるまで気づかないなんて、あたしたちもけっ
    こう…。
     
     
    的:色恐怖症か…どうしよう?
    河:五色揃ってりゃ、何とかなるだろ。戦隊の服を奪い
    ます。
    マ:い!?…あ、あれは単なる点景…
    河:でもあるんでしょ。奪います!
    マ:ト、トリプル・クロス・カウンターだ…勝手にして。
    もーいやっ。
     


     
     
    石:(電話にて)あ、葵さんですか?これから、後楽園
    の車に乗って、派手な原色のコスチューム着た姿で行き
    ますので、撃たれないように手配よろしく。
    葵:………は?
     
     
     
     
     
     
     
     
    亜:あれしかないわね。
    富:おう。
    石:当然だな。
     
     
     
     
    富:…ムゴイ。
     
     
     
     
    知:ええい、面倒だ!このまま二人とも連れてっちまう
    か?味方になってくれれば役に立つかも知れんぞ。
    石:バカ言え!ヘタに連れてって、敵に化けられたらど
    うする!ただでさえ手ごわい連中なのに。
     
     
     
     
     
    石:どーやって弾いてるんだ?
    マ:そんなの聞かれたって知るもんか。
    富:ちょっとまたんかこら!!
     
    亜:いやホント、もめたもめた。
    富:だってー、マスターがシブーい顔してるんだもの。
    亜:ま、一番美しい案に落ち着いたけどね。
    石:あんなに簡単に飛べると思ってなかったからなー。
     
     
     
    亜:まいったー。でも気持ちいーよ、飛ぶのは。
     
    富:ザコが言う事聞かないでムリするから…。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    マ:こいつは空中戦には強いのにー!!
    的:なんか言っとるぞー。
     
     
    富:ほんと、かあいらしいな、こいつら。
     
     
     
     
    亜:あぁ〜ん。ズルいよぉマスター!
    富:どーすりゃいいのさ、まったく。
     
     
     
     
    富:しかし、あまたの情報を無視して、いきなり西荒川
    大に直行してたら、どーするつもりだったんですか?
    マ:実は西荒川大はキャンパスが5つに分かれていてだ
    な…。
    富:そっ、それはまさか!
    マ:もちろん、大手町キャンパス、新宿キャンパス、タ
    ワーキャンパス、ドームキャンパス、そしてさすらいの
    キャンパスだ。
     


     
     
    亜:今回の石見さんって、まるで知場さんがのりうつっ
    てるみたい…。
    石・知:こんなんと一緒にすなっ!
     
     
     
     
     
    【キャラクター・データ・ファイル】
    No.17  富永 明子
    性別:♀   年齢:20才
    筋 力: 9  体 格: 6
    知 識:16  魅 力:14
    敏捷性:15   運 : 2
    器用さ:13  精神力:19
    体力ポイント:13 精神エネルギー:57
    技能
    琴:10 服従:1 生物音楽:10
    その他:弱点1つ
      戦闘データ不足のため以下不明
     
     
     
     
     
    亜:ああ、これではあまりにかわいそう…。
    ア:名乗ル暇サエ与エナイ…。
    河:当たり前だ!人の名前を勝手に使われた上に、ヘン
    なセリフを吐かれてたまるか!おいしいセリフは俺のも
    んだ!
    マ:おめーはなー、少しは相手がかわいそうとか思わん
    のか!
    石:だから犠牲を最小限に…
     

    マ:はい、そこのラジカセ、スイッチ入れて。
    的:は?
    マ:スイッチ入れる!!
    河:こ、これは…!
    富:銀英伝の!
    マ:いやまーそーだけど、これはラヴェルのボレロとゆ
    ー曲だ。とにかくフルートのソロね。死体は見つかって
    なかったろ?
    的:誰も死んだなんて思ってないって。
    富:やったぜ武田くん、私は君を応援しているぞっ!!
    河:武田さん、お待ちしてましたわ!
    亜:とんでもないことを言うんじゃなーいっ、この大バ
    カプレイヤーどもーっ!!
    マ:いやー、美形悪役はいつやってもいい!
     
    マ:特製の防護眼鏡をかけてるんだよー。
    知:それで克服とはおこがましいわ。
    河:ホント、よくこんな風に言い切れるよ。一体どこか
    ら出てくるんだろうね、この根拠のない自信は?
     
    富:こーやってベラベラしゃべってる間に、みんなでパ
    イでも作って投げりゃよかったと思わない?
     
     
    的:待て。お前のセリフには…ギャグがない!
     
     
    亜:ち…知場さんかーっこいい!!!どうしちゃったん
    ですか今回は。
    知:なーに、いざとなったらよける。
    石:お前の敏捷性でか?
     
     
     
     
     
     
    プレイヤー全員:キャハハハ!
     
    河:し…しまった!あの技能を、こんな使い方されると
    は!
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    富:こら、そんなムダな事してるヒマあったら、紀田先
    生のとこに行かんかい!!
    亜:だ、だって紀田先生に限って、あれくらいの事でど
    ーこーなるワケないと思って…。
    的:パイを作ります。
    マ:やっぱ、そー来たか。3Dで精神力以下。
    的:はい、成功!
    マ:じゃあ、そこの冷蔵庫開けて。
    的:?…!こ、これは…!
    マ:パイが出現した。
    全:おお〜〜!!
    マ:マスターというのは、実に様々な事を予測する。P
    Cが何を作るか予測して、このように…あっこら、俺の
    分残しとけ!
    富:もー残ってませんよー。
     
    亜:よくやってなんか、ないです…。
     
    【キャラクター・データ・ファイル】
    No.18  的場 良平
    性別:♂   年齢:21才
    筋 力:11  体 格:11
    知 識:16  魅 力:13
    敏捷性:15   運 : 2
    器用さ:13  精神力:19
    体力ポイント:17 精神エネルギー:57
    技能
    バイオリン:10 服従:1 航空音楽:10
    その他:弱点1つ
      戦闘データ不足のため以下不明
     
    亜:こんの根性なしっっ!
     
    富:結局、一般市民のエネルギーでまかなわれるはずだ
    ったものを、武田くんたちにやらせたってだけで、『逆
    衛星の法』は防げなかったんだね…。
    亜:うん…。
     
     
     
     
     
    亜:へ………?
     
     
     
     
    富:よく生き残ったなー米兵サン。ホント、よくがんば
    ってくれた。Thanks!
     
    亜:遺体………。
     
     
     
     
     
     
    亜:だからどーだってゆーのよ?死んでるのには、変わ
    らないわ。
     
     
     
     
     
     
    亜:本気なんだけどなぁ…。
    富:大マジだよ、私ら。
     
    【キャラクター・データ・ファイル】
    No.19  河村 克彦
    性別:♂   年齢:22才
    筋 力: 8  体 格:11
    知 識:17  魅 力:11
    敏捷性:16   運 : 1
    器用さ:15  精神力:19
    体力ポイント:16 精神エネルギー:57
    技能
    シンセサイザー:10 服従:1 数理音楽:10
    その他:弱点1つ
      戦闘データ不足のため以下不明
     
     
     
    亜:もーちょっと穏便な方法がなかったの?先生。
     
    《紀田順一の無用の雑学知識》
    第4回 ラグナレクとは
    その4
     
     そうした事の後に、アルフォヅル(全能の神)が現わ
    れて新たな天地を産み出し、そこでは不正も悲惨もなく
    神々と人間とが共に楽しく暮らすのだという。    
     
    富:たしかに、たしかにおどろくぞおぉ。
     
    マ:待て次週!!…実は三日後。

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