Let it be  心の話 Vol.2     信じる力
    
 お金のことを考えるとき、人の信じる力のすごさを感じる。
       
 かつては物々交換だった市場は金を単位にお金という概念を生み出す。時がたつと
単位であった金はいつしかお金に対しての影響力を失い、お金が単なる約束によって
動くようになった。
     
 お金はなぜ信じられるかというと、いや、正確には疑われないでいるかと言うと、
国の基盤だからである。円を疑わないでいることはつまり日本を疑わないことに通じ
る。中南米の国々がドルを欲しがるのは自国への不信の現れであり、中国で金とお金
の交換が流行るのは中国の人々が自国の貨幣に不満を抱いているからであろう。
    
 ところでこのところ日本、つまりは日本の政治や金融、警察機構を国民が疑わざる
を得ない事件が続発している。
     
 銀行は何兆ものお金を政府から預かり、そのお金を中小企業に貸し付けるのかと思
いきや、いわゆるマチキンに流し、利子収入の確保をねらい、直接の融資にはほとん
ど使わなかった。マチキンは年利約30%もの高利で貸すことが出来る。野党はこの年
利約30%を下げるべく新しい法案を作ろうとしたが、連立与党がこれをつぶしてしまっ
た。中小企業が次々と倒産するなか、本当に国民のためを思うなら、年利を下げるこ
とは当たり前のように感じるのだが、なぜか与党は高金利を確保した。言い訳はいろ
いろあるだろうが、政治献金が少なくなるのを恐れてであることは間違いない。
    
 警察の失態には枚挙にいとまがない。
    
 日本の根っこには宗教がない。極端な言い方をすれば被実験国家だ。アメリカが神
という概念を奪い、信じるものが何もない国家にした。信じるべきコアのない民族が
果たして国家を存続できるのか、それがアメリカが日本に課した実験内容だ。アメリ
カでさえ、国家運営に宗教を利用している。人の信じる力がいかに大事かを知ってい
るからだ。
     
 日本は戦後、なんとかうまく切り抜けてきた。のらりくらりと問題をクリアしてき
た。それは日本人が日本人を信じていたからに他ならない。日本人が日本人を信じて
きたのは互いの仕事に誇りがあったからだと思う。
   
 現在、日本人は日本人を信じているだろうか?
   
 胸を張って「はい」とは言い難い。
    
「はい」と言えるためには政治、金融、警察機構がこれ以上国民の信頼を裏切るよう
なことはしてはならない。自らの仕事に誇りを失ってはならない。
       
 日本人が信じる力を持ち続ける限り、日本は不滅だ。

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