| Let it be 心の話 Vol.3 恋とイリンクス ロジェ・カイヨワの著書「遊びと人間」に遊びの分類が示されている。そのなかに 「イリンクス」と呼ばれ分類されている遊びがある。イリンクスとは急速な回転や落 下運動によって自分の器官の内部に混乱と惑乱の状態を生じさせて遊ぶ遊びのことを 言う。子供の頃、意味もなくクルクルと回り、目が回るのを楽しんだ。そんな遊びを 指している。 スキーやサーフィンは代表的なイリンクスだろう。明らかに急速に落下し、回転す る。その後の酩酊状態が楽しい。他にも踊り、車でのドライブ、オートバイ・ライデ ィング、ジェット・コースターなどがイリンクスに含まれる。 こうして見るとイリンクスはどれも恋愛を生み出す遊びだとは言えないだろうか。 スキーやサーフィン、ドライブで恋が生まれるのはユーミンの歌を待たずとも納得で きる。踊りも間違いなく恋を生むだろう。「Shall we dance?」の監督と女優は、あの 映画でなかったら結婚しなかったかもしれない。ま、勝手な推測だが。 オートバイも一緒に乗ればきっと恋が生まれる。片岡義男が小説に書きそうだ。 ジェット・コースターは恋を生み出すマジカル・ツールだ。ジェット・コースター に一緒に乗った後、すぐに告白すると成功率が高いという。 人は脈が上がったとき、理由を知りたければ考えるしかない。身体はなぜ脈が上が ったかを教えてはくれない。正しい理由が目の前にあれば良いのだが、間違った理由 を印象的に与えると判断が狂うことがある。ジェット・コースターに乗り脈が上がっ ていても、人は普段自分の脈など意識しない。ところが好きだと告白されると途端に 脈や呼吸が気になってしまう。このとき脈拍が高いと、つい相手のことが好きなんだ と解釈してしまうのだ。 媚薬というものがある。媚薬もたいていは単に脈を上げるための薬だ。ところが、 脈が上がったとき目にした相手に人は恋をしてしまう。身体感覚と感情を誤解をする からだ。媚薬を飲まされる人は自分が媚薬を飲まされたことを知らない。ところがな ぜか脈があがる。その理由を考えたとき、目の前にいる人に恋してると思いこむのだ。 酒も器官の内部に混乱を生み出すという点ではイリンクスと同じだ。 恋をしたいあなたはお目当ての人をそれとなくイリンクスに誘ってみては？ でも、クルクルと一緒に目を回しただけで恋ができるかどうかは、保証の限りでは ありません。他の要素もうまく組み合わせて成就させて下さい。 |