Let it be  心の話 Vol.6     言わぬが華

 ある心理カウンセラーとお話をした。彼女は最近御父様を亡くされた。彼女はお通
夜でずっと御父様の御遺体のそばで過ごしたという。叔母様が「ひとりじゃ寂しいで
しょ」と声をかけると「お父さんと一緒だから平気」と答えたそうだが、肉親でなけ
ればその言葉にぞっとしただろうと笑った。

 そんな彼女だが、葬式に対しての考え方は理性的である。

「お葬式は残された人の心を癒すためだと思う。だから遺族の気が済むようにやるの
が一番」

 こう思って葬式の準備を進めていった。しかし、彼女の母親を見て、「葬式は残さ
れた人の心を癒すため」とは言い難かった。夫のためにいろんなことに気を回そうと
して必死な母親に、さすがに「あなたのための葬式よ」とは言えなかった。

「これだけしてあげれば、お父さんもきっと幸せよ」

 現実的にはきっとお葬式は遺族や残された者のためにおこなうものだろう。しかし
亡き人を悼み悲しむ人にはそれは言わぬが華だ。残された人の心が癒されるためには
あくまでも「亡くなった方が成仏できる」ことが大切なのだ。

 ヒーリング・ライティングの講座をやっていても、この言わぬが華に度々出くわす。
言わぬが華は説明すると言わぬが華であることの効果が薄れる。しかし、言わずに単
なる思い込みのまま 生きていくのは正しくないような気もする。僕は相手を見て答
え方を考えている。

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