お香の思い出

 このところ毎朝インセンス(お香)を焚く。
 以前から好きだったのだが、
 部屋の模様替えをしてからは毎日になった。
 寝室からベッドとソファを出し、
 テレビと棚以外何もない部屋にした。
          
 僕は小さな香炉を持っている。
 小さな香炉でお香を焚きながら、
 ある日ふと大きな香炉のことを思い出した。
 父が持っていた。
 僕が小学生の頃、書斎で焚いていた。
 父の書斎は本の山でかび臭かった。
 そこで日本製の高級そうなお香を焚いていた。
 本の匂いと混ざって嫌だった。
 お香だけならきっといいのにと思っていた。
          
 いまは部屋をシンプルにしてお香を楽しんでいる。
 幼い頃の願いを知らずに叶えていたのだ。

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