桂林の璃河下り

     桂林の景色はとても美しい。
     鍾乳洞の石筍のような山がどこまでも続き
     湿度が高いので、まるで水墨画の世界に
     迷い込んだようだ。
     ゆるやかな河を観光船でのんびりと下っていく。
     確か五時間くらい船に乗っていたと思う。
     途中で昼食を食べ、ビールを飲み、
     紹興酒を飲み、中国語しか話せないガイドの
     女性と筆談し、ゆるやかに時は過ぎていった。
     昼食を食べ過ぎて窓にもたれて昼寝をした。
     翌々日、桂林から汽車で西安に行こうとしたら
     隣に座ったドイツ人のカップルに、
     「一昨日、船で昼寝していましたね」と言われた。
     彼らの乗っていた船がちょうど僕が昼寝していたときに
     抜いていったそうだ。
     よくもまあそんなこと覚えているなぁと当時は思ったが、
     二十年もたってそのことを覚えている僕も
     よくもまあそんなことを覚えているよなぁ、だ。

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