Silvan Note 18 自然の癒し
陽光が照りつける温室の中は、みずみずしい空気でいっぱいだった。
トマト、トウガラシ、カボチャ。
無農薬の自然農法で育てられている野菜たちは、
なんだかのびのびと春の日差しと戯れているようだ。
インドヒマラヤのザンスカールを歩いている時だった。
ふとしたことからひとりのラマ僧と、道連れになった。
彼は、道端に生えていた木から、
プチトマトをふたまわりほど小さくしたような野性の赤い実をもぎ取って、
私に手渡した。
口に含んだとたん、甘酸っぱい風味がいっぱいに広がった。
さっきまで、からからだった喉の乾きが、
ジューシーなその実の汁によって、いっきに癒されていった。
砂漠の気候に似ていて降水量が少なく、
標高の高いこのあたりでは、わずかな雑穀しか収穫できない。
ニャンケと呼ばれるこの小さな赤い実は、
厳しい環境の中の自然の優しい贈りものだった。
土の匂いのするとりたての野菜をサラダにして食べた。
舌の上で、野菜たちの朴訥とした風味が踊る。
「う〜、うまい」
奥の方からじわっと声がでる。
身体の細胞が、自然の癒しを喜んでいるようだ。