AI着色は昭和時代の夢を見るか(その19)


PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回も前回に引き続き、最初の北海道撮影旅行で1972年7月15日の午後に行った室蘭本線白老-社台間で撮影したカットをカラー化します。今回掲載したカットのモノクロ版は<「まっすぐな道」を訪ねて(その1) -1972年7月15日-><「まっすぐな道」を訪ねて(その2) -1972年7月15日->の中で掲載しています。今回もモノクロ発表時の4:3トリミングではなく、ほぼノートリミングの3:2で作画してみました。また今回もほぼ各カットともカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があり、<「まっすぐな道」を訪ねて カラー版(その5) -1972年7月15日->と<「まっすぐな道」を訪ねて カラー版(その6) -1972年7月15日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。



今回は、追分機関区のD51711号機の牽引する上り貨物列車からスタートです。次位にヨやワフがいないので、拠点間の直行貨物でしょう。711号機は密閉キャブにギースルエジェクター装備と、いかにも北海道らしいいでたちということもあり、けっこう北海道型D51の特定番号機模型化のプロトタイプにされていますね。ヘビーなウェザリングは北海道らしいともいえますが、給水加熱器からの排気まで茶色っぽくなっているのはちょっと。植生の表現はもう手慣れた感じですね。過度のウェザリングが逆に功を奏したのか、先頭に連結されたワム8はほんのり赤味がかかったように見えます。その次のレム5000も目の錯覚か青帯に見えるし。この辺の曖昧さが、カラー化のマジックですね。


続いて追分機関区のD51509号機が牽引する下りの返空セキ貨物。勾配がある上に空車のセキは空気抵抗が大きく、実車の上り室蘭行きより下りの返空の方が運転が大変というのは、リアルタイムのファンには知られたところ。実際に上りはスタート時ぐらいしか力行しないのですが、下りは結構力行する箇所も多く、カマを焚く量も多くなります。ここでも焚いていますし、ギースルエジェクターから立ち昇る煙の様子を見ることができます。これはモノクロ版で公開したカットのワンカット後のコマですね。走行速度が低いのとモノクロ版はトリミングしてあることと相まって、ほとんど同じカットのように見えますが、間に一呼吸置いています。夏の北海道らしい色合いが良く出ています。


岩見沢第一機関区のD51915号機が牽引する上り貨物がやってきました。とにかく次から次へと列車がやってきますので、移動時間がなくほぼ同じような地点での撮影が続きます。まあ、移動したところでこの地点より苫小牧側の直線区間はほとんど同じ景色なのですが。白老の駅を出て、直線区間に差し掛かるまでの間にはちょっとした丘があって、そこだけ雰囲気が変わる感じでした。915号機は最末期まで活躍していたので実際に撮影した人も多いのではないかと思いますが、実はこの時はまだ岩見沢第一機関区に移動して間もない時期だったりします。北海道のD51としては標準的な汚れでしょうが、ナンバープレートだけはよく磨かれ、光っているのが映えますね。


さてこのカットは、実はお詫びです。前回掲載した鷲別機関区のD51165号機が牽引する上りのワキ5000の貨物。元のネガの順序が入れ替わっていたままスキャンしてしまったため、あそこが順番と思い掲載しましたが、実はその前に続くカットが発見されてしまいました。ということで、シークェンス上の順番はここが正しい位置ということになります。前回の掲載した写真の一つ前のコマにあたるカットをここに掲載します。流石にほぼ同じ感じに仕上げてきています。この一カ月の間には、バージョンアップはなかったようです。とはいうもののこちらの方がウェザリングがキツ目の分、ワキにもほんのり赤味が感じられるところがミソでしょうか。


今度は岩見沢第一機関区のC57144号機が牽引する上り旅客列車がやってきました。またもや直線区間の端になるカーブで捉えます。よく見ると、本当に最小限の色入れで雰囲気を出していることがわかります。機関車など、このカットでは色味はウェザリングの錆色だけですね。それでもなんとなくそれっぽく見せてしまうところから、絵画的な色入れであることがわかります。水彩画みたいのも学習させているのでしょうか。Adobe特有のワザがこの辺に隠されているような気もします。全体の感じはこれでけっこういい線行ってますし。こういうセンスは模型作りでも行かせそうだし、学ぶべきでしょう。作り込むだけが「らしさ」ではありません。


同じ地点での撮影が続きます。続いてやってきたのは岩見沢第一機関区のD5198号機が牽引する下りの石炭列車。地点も一緒なら時間も一緒。光線状態もほぼ一緒なので、同じようなトーンで仕上げてきました。カラー化のアルゴリズムもかなり安定しているということでしょう。前回のモノクロ版では、ギリギリまで引き寄せて機関車をアップにしたカットを紹介しましたが、今回はその一つ前のカットをカラー化しました。前のC57ともほぼ同じポジションで、いかにもなバッタ撮りとなっていますが、それはここで撮ると決めた以上想定内です。セキの黄帯もうっすら黄色がかかっているようにみえるのは、錯覚でしょうか、それともAI君のトリックわざなのでしょうか。


今回最後のカットは、また白老の駅の方に少しもどった地点で、丘をバックに下り貨物列車を狙います。牽引機は岩見沢第一機関区のD5153号機。これはモノクロ版で使ったのと同じカット。ノートリミングなので、周囲の景色の入り方がちょっと違います。元の露出がアンダー気味で全体が黒っぽくなっているのに引っ張られて、暗くて彩度が低い描写になっていますが、これはこれで雰囲気は出ています。コキは返空と思われる冷蔵コンテナを搭載していますが、編成中の冷蔵車も含めワリとそれらしい感じを出しています。しかし、53号機はこの時まだ「皿付き」のクルパーを装着していたんですね。改めて発見しました。





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