AI着色は昭和時代の夢を見るか(その20)


PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回も前回に引き続き、最初の北海道撮影旅行で1972年7月15日の午後に行った室蘭本線白老-社台間で撮影したカットのカラー化の3回目。白老での撮影したカットは今回にて終了です。今回掲載したカットのモノクロ版は<「まっすぐな道」を訪ねて(その2) -1972年7月15日-><「まっすぐな道」を訪ねて(その3) -1972年7月15日->の中で掲載しています。今回もモノクロ発表時の4:3トリミングではなく、ほぼノートリミングの3:2で作画してみました。また今回もカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があるものは<「まっすぐな道」を訪ねて カラー版(その6) -1972年7月15日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。



まずは前と同じような直線区間始まりのカーブをインカーブ側から捉えた上り貨物列車。牽引機は鷲別機関区のD51894号機。これでも鷲別にしては比較的キレイかもしれません。このカマの昔からの特徴である、準戦時型の名残かのような「絞りのないまっすぐなデフ」をそのまま踏段改造してしまっています。踏段改造は現物合わせなので、いろんなバリエーションがあります。しかし、同一ロットの日立笠戸製の890番台のD51は全部通常の標準形で、ノーマルのデフやドームが付いています(本機もドームはノーマル)。かなり謎なのでが、北海道歴が長いので、事故とかで破損したデフを復旧する時に手抜きで作ってしまった可能性も高いです。カラー化はクセはありますが、なかなか自然な感じが出ていますね。


次に登場するのは、小樽築港機関区のD51756号機が牽引する下りのコンテナ特急列車フレートライナー。逆光とはいえ、側面の光の反射で築港区の手入れのよさが(北海道としては)がよくわかります。青函連絡船の航送容量一杯の17輌のコキを連ねてD51が単機牽引する姿は、山線におC62重連に匹敵する蒸機時代の北海道の見せ場の一つででしょう。未電化複線下でコキ5500だけを連ねて走る姿は、背景が夏の道南エリアの植生のということもあり、D51単機といえ未電化時代の東北本線の「北たから号」を彷彿とさせます。元のモノクロ版よりいい感じに上がったんじゃないでしょうか。しかしこのコンテナ。うっすらと緑がのっているような。さてはAI君、学んだのかな。こそっと彩度を下げて試すクセがあるからなあ。


続いてほぼ同じ地点で捉えた、岩見沢第一機関区のC5744号機の牽引する下り旅客列車。北海道のC57は、まだこの頃は踏段改造施工前ですので、44号機は密閉キャブ化されているのですが、正面から見た顔はLP405副灯が付いている関東や東北のカマとあまり変わりません。カラー化してさらに北海道固有の要素が薄くなっていますので、さらに東北っぽく見えますね。オハフ62-オハ62-オハ62-スハフ32-マニ60という、いかにも北海道らしく模型にも好適な編成がモデラー心をくすぐります。16番やHOスケールの場合、このぐらいの編成長が一般の家庭の室内で走らせられる限度ですからね。カラーもインパクトには欠けるところがありますが、手堅くまとめてきています。


下り列車が続きます。ギースル・エジェクタを装備した追分機関区のD51842号機が牽引する貨物列車。正面のナンバープレートがかなり低い位置で、なんか不敵な面構えになっていますが、北海道にはこういう位置にナンバーを付けたカマが結構いましたね。かなり白老駅のほうに戻ってきたところでの撮影です。モノクロ版はかなり大胆にトリミングして機関車をアップにしていますが、オリジナルはこんな感じ。夏の陽光がトップライトになっていて、かなり極端なライティングになっていますが、なんとか夏っぽくまとめてくれた感じです。それほど違和感もないですし、この時期の北海道らしい雰囲気もありますね。これはこれでいいんじゃないですか。


ざらに下りが続いてやってきます。岩見沢第一機関区のD51872号機が牽引する貨物列車。本輪西からの石油輸送用のタンカー列車です。この時期の北海道の石油製品の輸送は、海沿いの製油所から、全て鉄道経由で運ばれていました。オイルターミナルがある地域へは専用列車で、それ以外の地域へは車扱貨物で運んでいました。実際に撮影に行った人なら良く覚えていると思いますが、室蘭本線のこの区間はタンカー列車が頻繁に通る「石油街道」でもあったのです。まあ、石油も「4セ(石炭・石油・石灰・セメント)」の一つとして鉄道に有意性がある貨物の一つだったワケですから(今でも長野県に代表される内陸部では鉄道での輸送がメインなぐらいで)。


やっと上りがやってきました。岩見沢第一機関区のC57149号機が牽引する旅客列車。この頃岩見沢第一機関区に配置されていたC57形式は、1974年5月に廃車になりました。といい切りたいところですが、149号機のテンダーだけは廃車時にC57135号機に譲渡され現存します。135号機のオリジナルのテンダーに何らかの瑕疵が発生したため、修繕するより廃車になった149号機のものと振り替えたほうが、都合よく密閉キャブ対応だし手っ取り早いということになったものと思われます(こういう振替は、北海道では伝統的に多い)。鉄博の保存機は2次型用のテンダーになっていますが、実はこういう顛末で最末期になってからの振替の結果です。


これで白老-社台間は打ち止め、最後に「帰りがけの駄賃」もカラー化してみました。本輪西への返空タンク車の上り貨物列車。牽引機は小樽築港機関区のD51600号機ですので、札幌貨物ターミナル発だと思われます。これはすれ違ったから撮ったというカットなので電柱が被っていますが、一応列車として撮れただけめっけモノというべきでしょう。そういう雑なカットではありますが、カラー化してみるとそこそこ田園風景らしく、遠くの国道にはバスが走っていたりと、それなりにジオラマ感があって楽しめます。色味も悪くありません。心なしかタンク車に青味が入っているようにもみえるのですが、AI君はタキ43000を学んでいてそれと勘違いしたのでしょうかねえ。





(c)2025 FUJII Yoshihiko よろず表現屋


「記憶の中の鉄道風景」にもどる

はじめにもどる