ここはいわゆるまえがきです。「継善篇」においては、財官をまず見るという立場が示されています。
一部句の順序を変更しました。原文では「取用憑於生月~」の部分が後回しになっていますが、意味からして前に置いた方がすっきりすると思ったからです。
主というのは日主、本というのは本命(年柱)です。古い推命は生年を基準にしていたと考えられます。もちろん四柱推命では日主と基準に置きますが、年干支もそれなりに影響があるため、わざわざ本命と日主の関係を挙げたものだと思います。
正気というのは清であり、官殺混雑や傷官見官ではないことをいいます。
殺官混雜の例 1960年5月17日 『八字命批範例』
丙 乙 辛 庚 : 44 34 24 14 4
戌 巳 巳 子 : 丙 丁 戊 己 庚
- - 丙 - : 子 丑 寅 卯 辰
年に正官、月に七殺があり官殺混雑の命です。さらに時干には傷官があり、傷官見官殺の命でもあります。日主が弱いのですが、火金がともに強く従格とはとりにくく、年月時干支はほとんど忌神で、唯一年支の子が喜神です。しかし力がありません。この命は賎命であり、富貴とは縁がありません。官殺混雑ですから、男にだまされやすく、妾になりやすいといえます。
官星正気の例 1961年9月12日 『当代八字実務篇』
乙 戊 丁 辛 : 41 31 21 11 1
卯 申 酉 丑 : 壬 癸 甲 乙 丙
- - 庚 - : 辰 巳 午 未 申
戊日主は丑に通根して丁の生を受けています。この命で最も強いのは辛金ですが、丁火にうまく抑えられています。乙正官は卯に坐しておりそう弱くはありません。四行のバランスのとれた好命です。傷官見官ですが、早年に南方運で丁が強くよく傷官を抑えることになり、官星は正気(清)であるといえます。子午の行運では卯が刑冲にあうためよくありません。それ以外の運では発達します。
前の句は、印によって強くなる日主に対しては、日主がもともと強くなければ財が印を壊すのでよくないということです。
七殺は一般的には食神で制するのがよいとされます。もし強すぎればかえって従殺格になった方がよいです。
前は「傷官見官、為禍百端」で、比較的蓋然性は高いでしょう。羊刃の合冲については、必ずしもそうだとはいえないと思います。
財旺生官というのははっきりと富貴の命であるといえますが、財が壊されると命を落とすことがあります。後の句は内格の場合であり、棄命従格では必ずしも当てはまりません。ただし、身体は弱いことが多いです。
巳、午の蔵干に火(財)と土(官)があることからこういいます。ここでの禄とは官、馬とは財のことです。一般的には、禄馬同郷格は財官双美格と同じ格局をさし、日主が壬午か癸巳の場合をいいます。詳細は「命理正宗格局解説」を参照してください。
”財多身弱は富屋の貧人”とそのまま覚えましょう。財産があっても使えない人のことです。七殺があっても身が強くなったり、七殺を制したりすれば、運がよくなってくるということです。「寒門貴客」とは身分の低い家に身分の高い人物が訪問するという意味です。以上は命式例も多いので省略します。
財庫とは財臨墓庫ともいい、例えば辛日主で地支が未のような場合です。未は木財の墓です。この場合は未が冲に逢うのがよいとされます。
なお「納粟」とは漢代の納税制度に起源があるようです。
財庫居生旺之地の例 1762年5月7日?
丙 丁 乙 壬 : 50 40 30 20 10
午 丑 巳 午 : 庚 己 戊 丁 丙
- - 丙 - : 戌 酉 申 未 午
日主が非常に強いのですが、壬正官もあり従旺格とはなりません。巳丑は金の半会で丑は財庫です。丁運まではよくありませんが、未運は丑を冲しますが、残念ながら午と合で冲が成立しません。それでも戊運からは西方運に入り(とくに庚辛年は)発財します。
後の句の官印とは、註で述べていることを考えるに、雑気財官印綬のことを指しているように思います。
有官有印の例 『淵海子平評註』
丙 甲 辛 丙 : 4? 3? 2? 1? ?
寅 辰 丑 寅 : 戊 乙 甲 癸 壬
- - 己 - : 午 巳 辰 卯 寅
これは註にあった命式で、いわゆる雑気財官印綬格です。月支丑中に土金水があるというわけです。日主が強いですが、従旺とまではいかず、財は喜神となります。ただし辛は丙を合して忌神でしょう。丑辰は湿土であり、うまく火水のバランスがとれています。また丑は財庫でもあります。巳運以降は火土の喜神運であり、中年以降発達する命式です。
無官無印の例 『淵海子平評註』
庚 戊 壬 己 : 4? 3? 2? 1? ?
申 子 申 未 : 丁 戊 己 庚 辛
- - 庚 - : 卯 辰 巳 午 未
月支は申金で食傷であり、天干にも官印はありません。しいていえば未が火木土で官印を含みます。ところで、戊日庚申時生まれは合禄格で、秋冬生まれがよく、官印がないことを貴とします。ちょうどこの命式がそれに当てはまります。すなわち、無官無印有格ということになります。
しかし私は合禄格という格局に対しては懐疑的です。時上食神で財を含み、いわゆる食神生財で説明はつくのではないかと思います。食神生財では印は食神を壊すのでよくありません。さらに財が強い好命は官印がなくとも貴命になることが多いです。もちろん富命になりやすいわけですが・・・。合禄格については、「命理正宗格局解説」を参照してください。
註によれば、これは飛天禄馬格のことであるとされます。飛天禄馬格については、「命理正宗格局解説」を参照してください。その格の是非はともかくとして、この句を読む限りでは飛天禄馬とは私には読み取れません。むしろ飛天禄馬は合を忌むのですから、後の句には逢いません。私の訳文の方が素直だと思うのですが、どうでしょうか。
これはとくに問題ないでしょう。ただ、この句がなぜこの場所にあるのかは疑問ですが。
七殺帯羊刃は貴命になることもあります。ですから必ずしも性格が残忍というわけではないでしょう。ただ、意外と確率は高いです。
七殺羊刃の例 1958年8月15日 『八字応用学宝典』
丁 甲 庚 戊 : 48 38 28 18 8
卯 子 申 戌 : 乙 甲 癸 壬 辛
- - 庚 - : 丑 子 亥 戌 酉
甲木が秋生まれで庚七殺の剋を受けています。庚金は戊土に生じられており、また戌にも通根していますから強い七殺です。甲は羊刃である卯に通根していますが、丁に洩らされています。丁は庚金を剋することができるのですが、甲は湿木であり力がありません。しかも羊刃卯が子と刑です。七殺の剋を受けるため性格的には抑圧されるがゆえに、策を弄してやや残忍なところがあります。
印綬遂逢於天徳の例 1942年5月1日 『星命術語宝鑑』
戊 甲 甲 壬 : 42 32 22 12 2
辰 寅 辰 午 : 己 戊 丁 丙 乙
- - 戊 - : 酉 申 未 午 巳
この命は正直いって難解です。私なら財旺身強の命であり富命と判断しますが、実は貧命です。この点については、別のコーナーで分析することにします。ここで壬は辰月の天徳です。喜忌は微妙ですが、誠実で思いやりのある人柄です。これは天徳のせいというよりも、甲木が強く辰に通根して印があるためです。さらに財も強いので、人の行為に敏感です。
とくに解説の必要はないと思います。なお日主が弱いというのは従格を除きます。
正官と七殺(偏官)はいわゆる官鬼といいますが、強すぎるのは身を傷めるため正官七殺ともに悪いといっています。日主が相対的に強ければ官鬼の害はなく、むしろ七殺も正官的な作用になるといっています。
註によると、「日主無依」とは月令に旺じているが、財や官がない場合をいいます。
このあたりのことについては、「命理一得 日犯歳君」の章を参照してください。
いわゆる五行有救の話です。まとめると、
(1)官殺が強い場合は食傷が救いとなる。
(2)七殺を抑えるには食神がよい。
(3)七殺を合去するのもよい。
ということになるかと思います。
庚得壬男制丙の例 1752年6月21日? 『滴天髄徴義』
庚 庚 丙 壬 : 45 35 25 15 5
辰 午 午 申 : 辛 庚 己 戊 丁
- - 丁 - : 亥 戌 酉 申 未
日主は2干あって申に通根していますが、丙七殺の方が強いといえます。幸い壬が丙を抑えており、いわゆる食神制殺で貴命です。行運も喜神運が続きます。
説明の必要はないでしょう。
註によれば、ここでの三奇とは財官印のことです。
なお男女はそのまま訳しましたが、陰陽命(すなわち女は陰干日主、男は陽干日主)ととった方がいいかもしれません。
女人無殺帯二徳の例 1970年5月13日 「八字批論選集」
壬 癸 辛 庚 : 42 32 22 12 2
戌 巳 巳 戌 : 丙 丁 戊 己 庚
- - 丙 - : 子 丑 寅 卯 辰
地支には水がなく、印は四支ともに通根しています。しかし、季節は夏で地支は火が強く、印が十分強いともいえません。よって印の強い命式で、この場合は財を喜びます。したがって地支は喜神であり、また正官戊も喜神ですから、夫の助力というか寵愛を得ます。
年月に天徳、月徳がありますがこれらは忌神であり、この命においては天月二徳を重視すべきではありません。
一部原文と順序を入れ替えています。この句を並べた方がすっきりするでしょう。
甲己は中正の合、乙庚は仁義の合、丙辛は威制の合、丁壬は淫逸の合、戊癸は無情の合といわれます。これについては実占的に当たるという術者と当たらないという術者がいます。私は確率的には低いと思っていますが、時折うまくはまるときがあります。
なお、水は精であり、水が強い命式では往々にして男女関係の問題が発生することが比較的多いです。
丁遇壬而太過の例 1940年1月10日 「八字応用学宝典」
癸 壬 丁 己 : 41 31 21 11 1
卯 子 丑 卯 : 壬 辛 庚 己 戊
- - 癸 - : 午 巳 辰 卯 寅
冬生まれで水が強く、丁壬の合があります。月柱と日柱が干支ともに合です。子は桃花でもあります。子卯の刑もあります。行運も金水運が続き、男女問題が絶えません。
まとめると、七殺が強く七殺の長生が日支にあるのはよくないということですが、日主が強ければ問題はないということです。
丙臨申位逢陽水の例 「三命通会」
壬 丙 壬 丁 : 4? 3? 2? 1? ?
辰 申 子 未 : 丁 戊 己 庚 辛
- - 癸 - : 未 申 酉 戌 亥
地支に申子辰の水局があり壬が強く、丙は地支未にのみ通根しています。地支の未が冲や刑に逢うと命が危ないです。「三命通会」には、漂流して異郷にて死す、とあります。
庚値寅而遇丙の例 「三命通会」
丙 庚 戊 乙 : 4? 3? 2? 1? ?
戌 寅 寅 酉 : 癸 甲 乙 丙 丁
- - 甲 - : 酉 戌 亥 子 丑
丙七殺が強い命式ですが、幸い庚日主は酉に通根し戊土の生を受けています。いわゆる七殺羊刃。行運は西北運で日主を強め七殺を制しますし、正財も強いので、富貴の命です。
三犯というのは具体的な回数ではなく、数多くという意味でしょう。
註によると一木は甲乙日、独水は壬日だということです。甲乙木の場合は洩気が多いと木焚火烈となり貧命になります。ただ食傷が強いので聡明で文章はうまいということでしょう。壬日は金の生を喜ぶということです。
日主は季節に旺じて強い方が行運の変動に対して強いということがいえます。身弱だと行運の変動に左右されやすいので、非常に発達するときもありますが、忌神運だと命を落としやすく、運の上下が激しいという傾向があります。
基本的には身旺の方が比較的健康です。
五行の病症については、「疾病の見方」を参照してください。
註によると艮は寅、巽は巳のことだそうです。いずれも絶であり日主は弱いわけですが、印があれば救いとなるわけです。還魂とは生き返えることであり、不絶とは永続するということで、いずれも死絶運に生を得るということを表しています。
火郷とは午のことで、これはいずれも沐浴です。沐浴は別名で敗ともいい、中年で挫折することを表しています。ただこれも時と場合ですが、沐浴は咸池桃花にもなりますから、男女の問題をかかえやすいとは思います。
金木交戦、水火交戦は、互いに財官殺の関係ですから、必ずしも悪いわけではありませんが、悪い場合は木土や土水の剋よりも害が大きいように思います。
次の句は悪い印の関係であり、いわゆる浮木、埋金という関係です。
水盛而木則漂流の例 『淵海子平評註』
乙 甲 庚 辛 : 4? 3? 2? 1? ?
丑 申 子 亥 : 乙 丙 丁 戊 己
- - 癸 - : 未 申 酉 戌 亥
甲木は亥に通根していますが、庚金の剋を受けて極端に弱くなっています。また地支には水が多く、冬生まれで浮木、凍木のおそれがあります。また残念なことに乙木は甲木の力になりません。したがってこの命では日主を強めるための印は使えず、むしろ土火(火は地支)がいいでしょう。また乙木で庚を合去するのもよいです。しかし乙運に至る前、46歳申運丁酉年に溺死します。申酉は金の根となりますし、丁は木を洩らして弱めます。浮木で溺死というのはちょっと出来すぎの感はあります。
土厚而金遭埋没の例 1928年7月30日 『四柱推命学入門』(武田考玄著)
戊 辛 己 戊 : 47 37 27 17 7
戌 未 未 辰 : 甲 乙 丙 丁 戊
- - 己 - : 寅 卯 辰 巳 午
「元理賦」には埋金は庚のこととありますが、辛でもあり、この命がまさに典型的な埋金の命です。印というのは食傷を壊します。金日主の場合は食傷は水であり知を表します。また食傷自体が聡明さを示します。すなわち埋金は、夭折でなければ、弱智など知に関する障害が起こりやすいといえます。この命は水気が辰にしかなく、また行運でも水がめぐってきません。夭折でなければ貧命もしくは障害があります。この命はダウン症の命だそうです。詳細は原書をご覧ください。
あとがき兼この詩賦のコマーシャルといっていいでしょう。どの詩賦にもたいていは付いています。