大六壬苗公鬼撮脚中巻


■ はじめに

 上巻に引き続き中巻を訳します。
 中巻では射覆の基本的な考え方とその秘訣を述べています。「鬼撮脚」では中巻が最も役に立つと私は思います。
 上巻と同様のことを述べますが、機械的にあてはめてはいけません。
 訳がうまくなく、意味がよくわからないところもありますが、どうか原文を読んでニュアンスをつかんでください。



大六壬苗公鬼撮脚中巻


射覆起例訣:
剛日先看日上神、更於発用細詳明。柔日支神須先視、用神幹用両辺迎。
用伝訣:
月将加時專用初、中末総棄不須拘。用加日神兼旺相、其物可兼定非虚。
及時不可差訣:
用是水神送水物、泥経神火泥土居。金日金實木花果、五行射覆不多途。
及時過時物訣:
過時已発兼未発、用加干支正当時。假令正月丑已過、寅為目下卯前期。
可用否訣:
用神上下詳休旺、有気須知利用人。休廃無用不中物、天神地将察根因。
完不完物訣:
旺相神加用日辰、陰陽皆備物全形。此物堪為新且好、休囚刑克旧伶[テイ]。

 射覆起例訣:
 剛日(陽日)はまず干上神をみて、さらに発用を細かく詳しく明らかにする。柔日(陰日)は支上神を先にみて、発用と日干との関係をみる。
 用伝訣:
 月将を時に加えて初伝を用神とし、中伝と末伝はだいたい考えなくてよい。用神が日干支に旺相していれば、そのものは実体のあるものであると断じてよい。
 及時不可差訣:
 発用が水神であれば水物と送り、泥経神火は泥土に居るとし、金日で金は実、木は花果とする。五行で行う射覆はそう多くの方法はない。
 及時過時物訣:
 時が過ぎてすでに起きていることと起きていないことをみる。発用が日干支ならばまさに現在おきていることである。また、例えば正月で発用が丑ならばすでに過ぎたことであり、寅ならば現在、卯ならば将来のことである。
 可用否訣:
 用神の上下の休旺を詳しくみる。気あれば必ず使えるものである。休廃で用に気がなければ物にならない。天神地将ををみてそのおおもとを察する。
 完不完物訣:
 用神や日干支に旺相神が加われば、陰陽みなその形が完全である。それは新しくかつよいものである。休囚刑剋であれば古くて壊れている。

 最初に陽日と陰日で見方を変える訣がありますが、私は、日の陰陽に関わらず、干上神、支上神、発用をほぼ等しく重視した方がいいように思います。
 全般に翻訳が完全ではありませんが、字面で意味を捉えていただければ幸いです。


五行類訣:
金為銀器寶珍同、木為花草布帛中。水流土重分円曲、火明毛羽炭灰蹤。
又:
卦逢潤下近水物、曲直木器成灣行。伏吟近出返吟遠、過往今来卦内明。
又:
金為兵刃五金同、木竹草葉絵帛中。水珠流転行屈曲、火明毛羽炭灰蹤。
五色類訣:
旺為本色相従子、死妻休鬼母従休。月将加時辨顔色、木青水黒旺中求。火赤土黄従此定、金従白色論縁由。
又:
旺為本色相従子、死妻囚鬼母従休。春占甲子水加幹、木青水黒従旺求。火赤土黄従此定、五行従日見其由。又加春季当囚日、木定是旺赤中求。遇火卻黄金卻黒、五向日幹定源流。

五行分四季旺相休囚類訣:
生 旺 相 死 休 囚
木 青 紅 黄 白 黒
火 紅 黄 白 黒 青
土 黄 白 黒 青 紅
金 白 黒 青 紅 黄
水 黒 青 紅 黄 白

 五行類訣:
 金は銀器や宝物とする。木は草花布織物にあたる。水が流れ土が重いのは丸いものとする。火が明るいのは毛羽炭灰のあととする。
 また:
 卦が潤下ならば水物に近く、曲直は木器で曲がっている。伏吟は近くに出て返吟は遠くに出る。過ぎて入ったか今来たかは卦の内に明らかである。
 また:
 金は兵刃と金物とし、木は竹草葉絵織物にあたる。水は珠が流転して屈曲することで、火が明るいのは毛羽炭灰のあととする。
 五色類訣:
 旺ならば本来の色で相ならそれから生じる色、死ならば妻財の色で囚なら官鬼の色、休なら父母の色である。春に甲子で水が干に加わるのは、木は青水は黒で旺より求める。火は赤で土は黄色でこれによって定まる。五行は日よりその経るところをみる。また春で日が囚にあたるなら、木は旺じて赤を中に求め、火に遇えばかえって黄金かえって黒、この五つが日干に向かって源流を定める。

 意味はだいたいわかると思います。
 注意ですが、五色類訣と、その次の表の休と囚が逆になっています。

春木
夏火
土用
秋金
冬水

 「星平会海」では「我を剋する者が囚」となっており、囚は官鬼となります。すなわち、五色類訣の方があっており、表の方が間違いだと思います。


論物有無訣:
天空用起又空亡、時用空亡何處詳。用起空亡加日上、其中無物慢思量。
財物何知人誑詐、空亡為用且參詳。物自空方将到者、縦然有也為荒唐。
假令正月甲子日卯時、空亡在戌亥、以亥加卯。若人物従卯方来者、為空方是也。
論虚實生死水陸訣:
日辰発用火神居、所用物色必多虚。
若見木神虚又實、木神一云水神、伝空實内反成虚。
生死先看支上神、用兼旺相必然生。囚又兼刑克用、故知死物自分明。
水木相加用日辰、安裝生陸地最為真。巳酉丑金不在水石金火。申子辰為水内論。亥卯未木陸加水、木虎入水、寅午戌為陸路行。水中之物一般云。
論休旺訣:
五行用起日辰中、休旺用之始見真。木神旺相是木物、死囚草果定其因。金旺五金囚見石、土神囚廢見灰塵。水火休旺休量論、次第推詳理自明。
 論物有無訣:
 天空や空亡が発用であったり、占時が空亡であったり、発用が空亡で干上にあったりすれば、その中には何もなく、詳しくみてもむだである。
財物は何かと人がだまそうというのは、空亡が発用でさらに詳しく見なければならない。物が空方より来たのであれば、たとえそれがそれっぽくてもにせものである。
例えば正月甲子日卯時であれば、空亡は戌亥であり、亥は卯に加わる。もし人と物が卯方より来たのであれば、それを空方という。
 論虚實生死水陸訣:
 日干支、発用に火神があれば、所用物色必ず虚が多い。
 もし木神が虚または実であっても(一説には木神は水神とある)、三伝で空があれば実であってもかえって虚となる。
 生死についてはまず支上神を見る。発用が旺相であれば必ず生、囚または刑剋であれば死んだ物と知り、自からわかる。
 水木が発用、日干支に加わるのは始めは陸地で生まれて最も真とする。巳酉丑金は水はなければ石金火である。申子辰は水の内とする。亥卯未木が水に加われば(木虎水に入る)、寅午戌は陸路を行くとし、水中の物一般をいう。
 論休旺訣:
 日干支の五行を用いる場合、休旺を見極めてから初めて真であると判断する。木神が旺相であれば木物であり、死囚であれば草や果実であるとその因を決める。金が旺なら金物であり囚なら石とみる。土神が囚廃なら灰塵とみる。水火の休旺は休量を論じる。手順を踏んで詳しく推せば理は自ずから明らかである。

 この辺の実とか虚とか生とか死とかは、私には何となくニュアンスがわかるのですが、説明が難しいです。火神が虚というのは、木土金水が物質であるのに対して火というのは実体のないことからきています。生というのはまあ何というか物になるというか役に立つというか、そういうニュアンスです。死はその逆です。
 水についてもよくわからないところがありますが、水に関するものか、陸に関するものかということを見る方法でしょう。ざっといえば、火土金は陸に関するものであり、水木が水に関するものといえるでしょう。


論形状訣:
用起孟神物帶円、仲方四季碎並尖。旺神円軟相方嫩、死神其硬不虚言。囚神碎細推其義、休是輕形又不全。
論物可食否訣:
日辰発用互相生、吉将伝来食可評。不備昴星八專卦、物非食類別推情。
論物不可食味訣:
可食又詳何味物、用加孟上定其酸。仲上是咸季甘美、五行味内細推詳。
木酸、火苦、土甘、金辛、水鹹。
発用日辰比旺相、定知其物嫩而新。若見死囚並鬼賊、必然故旧不須詢。
用得長生新小訣、沐浴新而光澤鮮。冠帶顔色多枯槁、臨官新旺壮而堅。帝旺近貴急用物、従衰至養旧中言。
論雜類内訣:
渉害昴星並八專、二三四件非一言。連茹日辰相比及、季神為用色相兼。日辰相克為雜色、倣此推之見類元。

 論形状訣:
 発用が四孟神であれば丸みをおび、四仲神であれば四角、土支であれば形が不定でとがっていたりする。旺であれば丸くて柔らかく、相であれば四角で柔らか、死ならば硬くて虚とは言えず、囚ならば細かいものであるがその意味をよく推測せよ。休ならば軽く形は不全である。
 論物可食否訣:
 日干支発用が互いに相生し、吉将が三伝にくれば食べられるとする。昴星、八専課は不備の課であり、食べられるものかどうかは別に判断せよ。
 論物不可食味訣:
 食べられるかあるいはどんな味がするかは、発用が孟神に加われば酸っぱく、仲神上にあればしょっぱく、季神上なら甘美である。五行をみて味は細かく推測する。木は酸、火は苦、土は甘、金は辛、水は鹹(塩)。
 発用日干支が比旺相なら、おそらくそのものは若く新鮮である。もし死囚で官鬼賊であれば、必ず古いのでよくみなければならない。
 発用が長生ならば新しく若いもので、沐浴ならば新しいが光沢はすくない。冠帯なら色は多くは干からびており、臨官なら新しく元気なもので堅い。帝旺ならば貴重なもので急ぎ用をなすものである。衰から養は古いものだといえる。
 論雜類内訣:
 渉害課、昴星課および八専課は、二三四件あって一つとはいえない。連茹課は日干支が相比で、季神が発用で色を示す。日干支が相剋であれば雑多な色である。その他はこのような見方を参考にして類推する。

 念のために申し上げますが、例えば茸を取ってきて食べられるかどうかは六壬でみてはいけません(笑)。ここでやっているのはあくまで射覆です。


論物死活訣:
用逢生気及月厭、定為活物更無疑。被克死囚何以訣、不為活物數中推。
要知何物詳生死、飛来朱雀及従魁。四足功曹兼白虎、龍蛇六合定鰻[キ]。
(龍蛇合巳鰻蛇[キ]。)
論物表裏訣:
発用日辰皆入伝、物有表裏不虚言。
只如甲午日寅午、外青内赤見其源、一云外青内黒。
孟仲季訣:
要察孟仲季、陽孟為四角。陰孟不団円、陽孟不偏拓。陽孟加陰仲而方、陽仲加陰季而円。
又:
陽孟為四角、陰孟不団円。陽仲不偏起、陰仲無側堅。
論物形状訣:
旺気所乘円而新、相気所乘円而長、“円”疑“方”字。
死気所勝剛而硬、休気所乘小而尖。或是両頭不均者、推關孟仲季同量。
十幹物色訣:
甲青乙碧丙赤色、丁紫戊黄己紅同。庚白辛藍壬是黒、癸為陰水縁殷紅。
日辰上神訣:
神后勝光加日辰、其物有竅及瓜陳。太沖従魁支幹上、物有口腹最為真。
魁罡加之物帶黒、丑未物有眉目因。寅申其物有手足、巳亥物死青黒形。
生気言新死気旧、旺相言新囚旧論。用在陽生陰是死、初伝月厭活中云。

 論物死活訣:
 発用が生気および月厭に逢うのは、おそらくは生きているものと考えて間違いない。剋されていたり死囚であるのは言うことはなく、生きているものとはせずに課式中をよく見ること。
 要は何であるかを知り生死を明らかにすることである。朱雀や従魁酉は飛ぶもので、功曹寅や白虎は四足、青龍螣蛇六合はうなぎや蛇のような足のないものである。()内も巳が入るだけで同じような意味。
 論物表裏訣:
 発用日干支が皆三伝にあるのは、物には表裏があり虚ではないというべきである。
 例えば甲午日で寅午があれば、外は青で内は赤としその源を見る。一説には外は青、内は黒という。
 孟仲季訣:
 孟仲季をよく見なければならない。陽孟は四角、陰孟は丸くはない。陽孟は平たくはない。陽孟が陰仲に加わるのは四角、陽中が陰季に加わるのは丸いもの。
 また:
 陽孟は四角、陰孟は丸くない。陽仲は偏っておらず、陰仲は側面が固くない。
 論物形状訣:
 旺気が乗ずるところは丸くて新しい。相気が乗ずるところは円形で長い。(この円は方の間違い?)
 死気のまさるところは硬くて丈夫、休気の乗ずるところは小さくてとがっている。あるいは形が対称でない。孟仲季についても同じように考える。
 十干物色訣:
 甲は青、乙は碧、丙は赤、丁は紫、戊は黄、己は紅、庚は白、辛は藍、壬は黒、癸は陰水で色の濃い赤。
 日辰上神訣:
 子午が日干支に加わるのは、穴があって瓜陳(古く腐ったもの?)である。卯酉が干支上にあるのは、物は飲食物で最も真である。
 辰戌が加われば黒みを帯びたものである。丑未は顔に関するものである。寅申は手足に関するものである。巳亥は死んだもので青黒いものである。
 生気は新しいもので死気は古いものである。旺相は新しいもので囚は古いものである。発用が陽なら生で陰ならば死、初伝が月厭ならば活きたものであるとする。



貴神訣:
日辰之上見天乙、珍寶貴重可食物。青黒黄白色鮮明、一云方円黄白及光明、水木怪精魚類質。
日辰之上見螣蛇、殊方異類帶文華。或是蛇形其色赤、甘香可食味偏佳。
日辰之上見朱雀、光彩精明人灼灼。異物毛羽或文章、変異火煙或飛雀。
日辰之上見六合、其物光彩食味和。草木金石絲竹類、或是口傷鹽味多。
日辰之上見勾陳、其物破損必傷身。青黒文章草木実、勾陳尾上損傷真。
日辰之上見青龍、其物虚懸堪食供。絵帛銭財黄白色、或為草木悉皆同。
日辰之上見天空、其物遺棄塵穢中。或為印綬金石物、変異虚空醜形容。
日辰之上見白虎、其物刀傷堅似鉛。或為白虎物麦類、金玉剣鐵死亡言。
日辰之上見太常、其物可食色且黄。形状質実真希美、或為珠玉細推詳。
日辰之上見玄武、流転白色出水土。文章鱗甲及虚空、物取勾連君記取。
日辰之上見太陰、共物黄白生有心。金銀鐵剣銭野物、或然変異化飛禽。
日辰之上見天後、其物須経女人手。蚌殼水類細推詳、白色如銀占法有。

 貴神訣:
 日干支上に貴人があれば、珍しい宝、貴重なもの、食べられるもの、青黒黄白色で鮮明なもの、一説には丸くて黄白色で光っているもの、水木、怪しいもの、魚などの類や質をもつものである。
 日干支上に螣蛇があれば、丸い珠のようなもの、普通にないもの、文華を帯びたもの、あるいは蛇形、赤色、甘い香りで食べられるもの、味が非常によいもの。
 日干支上に朱雀があれば、光あざやかなもの、聡明な人、光輝くもの、変わったもの、毛や羽、あるいは文章、火や煙に変わるもの、あるいは飛ぶ雀。
 日干支上に六合があれば、光あざやかなもの、味は和やかな食べ物、草木、金石、糸、竹の類、あるいは口に痛みを与える塩味多いもの。
 日干支上に勾陳があれば、そのものは破損しているか必ず身を傷つける。青黒、文章、草木実、勾陳が四課にあればほんとうに損傷している。
 日干支上に青龍があれば、そのものは虚であり食べるには堪えないようなもの、絵のついた絹織物、銭財、黄白色のもの、あるいは草木などことごとくみな同じ。
 日干支上に天空があれば、そのものは棄てられているかごみの中、あるいは印綬金石物、空虚なものに変化する、あるいは醜いもの。
 日干支上に白虎があれば、そのものは刀、傷つけるもの、鉛のように堅いもの、あるいは白虎は麦類、金玉、剣鉄、死亡とする。
 日干支上に太常があれば、食べられるもので色は黄色、形や質は実質的なものでまれに美しい。あるいは珠玉とする。これらは詳細に検討すること。
 日干支上に玄武があれば、流転するもの、白色、水土から出るもの、文章、うろこや甲羅のあるもの、うつろなもの、曲がったりつながったりしたもの、君主の記したものとする。
 日干支上に太陰があれば、黄白色のもの、生きて心のあるもの、金銀鉄剣、銭、野にあるもの、あるいは変わったもの、飛ぶけもの。
 日干支上に天后があれば、そのものは女の手を経て得たもの、貝殻、水から生まれたもの、詳細は検討、銀のような白色のもの。このように占う方法がある。

 勾陳のところで、尾上を四課と訳しましたが、末伝とするべきかとも思います。
 玄武のところで、「物取勾連君記取」は上のように訳しましたが、自信がありません。


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■ あとがき

 訳してみて、訳はどうも適確、正確でないなとは自覚していますが、何となくニュアンスは伝わるのではないかと思います。
 そもそも、射覆には(射覆に限らないが)活断を要し、そのときの状況を分析推理して行うものですから、以上の象意をそのままは活用できません。その辺は、何度も繰り返しますが、十分理解してください。
 さらに下巻へと続きます。




   作成 :  2008年8月 1日  
   改訂 :  2021年1月24日  内容修正およびHTML5への対応

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