2005.01.29
『へんないきもの』を読み終えた。

 ヘンテコリン生物の紹介本。

 こんなにステキなテーマなのになぁ。
 ラインナップだってグーだよ。妙なカタチ、珍しい生態のオンパレード。
 書店で目にしたときはそりゃあ大喜びで、ああこれはウチの本棚の一角に鄭重にお迎えすべき本かも、なんて思ったよ。
 けど今は違う。いつ手放しても惜しくはない。

 なんかね、文章の調子が男性週刊誌かスポーツ新聞かって感じで、要するに「おじさんノリ」なんだよな。
 明日には褪せてしまうような芸能ネタなんかが織りまぜてあって、ひどく興醒めした。
 素材それ自体が充分ユニークなんだから、ことさら面白おかしく大袈裟に書く必要なんかないのに。

 いったい誰に向けて書かれた本なのだろう。
 やはりおじさんたちか?
 だとしたら、そうとは気づかず手に取ってしまった私が悪かったのかもな。
 

『へんないきもの』
著/早川いくを イラスト/寺西 晃 発行/バジリコ
2004年8月18日第1刷発行 ¥1500 ISBN4-1901784-50-1


2005.01.28
『魂がふるえるとき〜心に残る物語─日本文学秀作選』を読み終えた。

 宮本 輝さんが選んだ短編小説の名作が16篇。
 内訳は次のとおり。

 開高 健 『玉、砕ける』
 水上 勉 『太市』
 吉行淳之介 『不意の出来事』
 川端康成 『片腕』
 永井龍男 『蜜柑』
 堀田善衛 『鶴のいた庭』
 安岡章太郎 『サアカスの馬』
 井上 靖 『人妻』
 武田泰淳 『もの喰う女』
 尾崎一雄 『虫のいろいろ』
 幸田露伴 『幻談』
 永井荷風 『ひかげの花』
 川端康成 『有難う』
 國木田独歩 『忘れえぬ人々』
 樋口一葉 『わかれ道』
 泉 鏡花 『外科室』

 強く印象に残ったのは、川端康成『片腕』のこれぞ!というエロスと、井上 靖 『人妻』の400字の鮮やかさと、泉 鏡花 『外科室』の軽妙な文体リズム。
 

文春文庫『魂がふるえるとき〜心に残る物語─日本文学秀作選』
編/宮本 輝 発行/文藝春秋
2004年12月10日第1刷発行 ¥543 ISBN4-16-734817-9


2005.01.22
東京ステーションギャラリーで『国芳・暁斎 〜なんでもこいッ展だィ!〜 』を観た。

 幕末の人気浮世絵師・歌川国芳と、幕末〜明治に“画鬼”と呼ばれた河鍋暁斎。
 ともに幅広い分野で活躍した2人の作品を1.役者似顔絵、2.武者絵・風景画、3.戯画・風刺画・動物画、4.画稿類、5.美人画といったテーマに分けて比較。

 どで〜んとデカイ(横17m!)暁斎の「妖怪引幕」、国芳の有名な大作「宮本武蔵と巨鯨」をはじめ、かなり見応えのある品が並んでいてにんまり。
 初めて目にした絵もけっこう多くて、胸が踊ったよ。
 いや〜、この人たち、ホント何描いても魅せてくれるよなぁ。
 好奇心やらアイデアやらユーモアやらパワーやらがどの絵からも溢れんばかりで、キラキラと眩しい。
 展示室から廊下に出たときだったか、そばにいた若い女の子2人組のうちのひとりが「カッコイイ…」と漏らすのを聞いて、心中「うんうん」と頷いた。

 会場はたいそうな人混みだった。
 錦絵などを観るにはちと苦しい環境だったけれど、これだけ客が集まるということはすなわち好企画だっつーことで、ま、致し方なしか。
 面白かった。
 

『国芳・暁斎 〜なんでもこいッ展だィ!〜 』
2004年12月11日〜2005年1月23日 東京ステーションギャラリー
主催/東京ステーションギャラリー(財団法人東日本鉄道文化財団) 企画協力/財団法人河鍋暁斎記念美術館 協賛/東京海上日動火災保険


2004.07.04
『無限の住人』第17巻を読み終えた。

 ちょっと引っ張りすぎじゃあないか、沙村さん。
 と思っているのは私だけじゃないはず。

 卍さんを早く動かしてくれ〜!
 卍さんの大立ち回りが拝めない巻は、正直さびしい。
 

アフタヌーンKC『無限の住人』第17巻
著/沙村広明 発行/講談社
2004年11月22日第1刷発行 ¥524 ISBN4-06-314363-5


2005.01.05
東京国際フォーラムで『人体の不思議展』を観た。

 平日の昼間だというのに盛況だった。
 親子連れの姿も多く、小さい子供たちが楽しげな声をあげて走り回っていた。
 会場の照明は明るい。展示ケースのレイアウトも整然を避けてちょっとPOPだ。

 だがどう見ても、そこに並べられているのは人間の死体、もしくはその一部なのだった。

 骨格標本、筋肉標本、神経系標本、血管標本、臓器標本、脳標本、病変標本に胎児標本。
 人目に触れることを目的に加工され「標本」と名が付けられてはいるが、素材はどれもみなホンモノの人体だ。

 入口付近の注意書きに
 「本展で展示されているすべての人体プラストミック標本は、生前からの意志に基づく献体によって提供されたものです」
 とあった。
 それを読んだからか、いや読まなくても思考はそこに行き着いたに違いないと確信しているけど、それぞれの標本の「生前」ばかりが気になって妙に落ち着かなかったよ。

 今は鰺のひらきみたいにされているこの人体も、骨だけにされちゃってるこの人体も、ころんとした臓器パーツだけになってしまった人体も、かつては歩いたり走ったり笑ったり泣いたり喋ったりしてたはず。
 なんて名前だったんだろう。どんな人だったんだろう。どういう人生だったんだろう。

 そんなことばっかり考えちまって、結局何を観に行ったのかわからん状態で会場を後にした。
 人体解剖図好きの私とあろう者が、この顛末は自分のことながら意外。
 

『人体の不思議展』
2004年9月4日〜2005年2月28日 東京国際フォーラム1階
主催/人体の不思議展実行委員会 後援/日本赤十字社・日本医学会・日本医師会・日本歯科医学会・日本歯科医師会・日本看護協会・東京都・東京都教育委員会 監修/人体の不思議展監修委員会 特別協力/東京国際フォーラム 総合企画・運営/マクローズ


2005.01.05
『妊娠カレンダー』を読み終えた。

 小川洋子さんの作品集。
 夢と現の狭間に存在するかのような、ちょっと不思議な物語が三篇。

 嗅覚、味覚、視覚といった身体感覚の精緻な描写が特徴的で魅力的だった。
 こういう小説、かなり好きかも。
 

文春文庫『妊娠カレンダー』
著/小川洋子 発行/文藝春秋
1994年2月10日第1刷発行 ¥400 ISBN4-16-755701-0


2004.12.18
東京国立近代美術館で『草間彌生:永遠の現在』を観た。

 水玉、水玉、水玉、水玉、水玉、水玉、水玉、水玉、水玉…。
 網目、網目、網目、網目、網目、網目、網目、網目、網目…。
 突起、突起、突起、突起、突起、突起、突起、突起、突起…。

 立体や平面を埋め尽くす無数の反復は、その制作過程を想像すると気が遠のきそうになる。尋常じゃねえ。
 尋常じゃねえが、ちょっと憧れる。
 一日じゅう網の目だけを描き続けたらひょっとして案外気持ちよくなれるのかも、などとも思う。
 今度やってみようかな。

 ところで近年の草間アートの見栄えのよさはどういうわけなのだろう。
 水玉の円の並びが計ったようにキレイだよ。円のひとつひとつも歪みなくまんまるだし。
 丁寧に描くことに捕われていたりするのか。
 それともアシスタントか誰かに描かせたりしてるのか。
 あまりに整いすぎている点が気になる。
 

『草間彌生:永遠の現在』
2004年10月26日〜12月19日 東京国立近代美術館
主催/東京国立近代美術館・京都国立近代美術館


2004.12.13
『図説 拷問全書』を読み終えた。

 拷問である。
 拷問と聞いて思わず口元が弛んでしまった方はもしかしたら私の仲間かも。
 ピンヒールで仁王立ちの女王様だとか、一見セレブ実は裏社会を牛耳るボスだとか、目の焦点が合っていない白衣の研究者だとかをたやすく脳裏に描いてしまった方にいたっては、もはや私の友だちと言ってもいい。

 けれど幸か不幸か、この本にはそういったアングラな妄想が入り込む余地はない。
 至極まっとうな拷問の書なのだ。

 まっとうな拷問?
 妙な表現かな。わかりにくいかな。
 えーと、つまり、日の当たる場所で堂々と行なわれた拷問ってこと。
 容疑者の口から証言を引き出すための拷問。または裁きの後に犯罪者に与えられた罰としての拷問。
 定められた刑法に則って実行された、早い話が合法的拷問ってこと。

 舞台の中心は中世ヨーロッパ。
 歴史上もっとも盛んに拷問が行なわれていた場所と時間だ。
 いくらかは前知識があったつもりだったけど、読んでみたらば、それらのほとんどが私の誤解だってことに気がついたよ。てか甘かった、認識が。

 いやもう凄まじいのなんのって。
 ゆっくりじんわりと指の骨が砕かれるわ、腕がありえない方向に捩じれてもなお紐で吊し上げられるわ、血が噴き出してもおかまいなしに釘付き鞭で打たれるわ、餓死するまで檻に閉じ込められるわ、手足を縛られて川へと放り投げられるわ、生きたままじりじりと焼かれるわ、同じく生きたまま土中に埋められるわ、四肢を引っぱられて四つ裂きにされるわ…。
 うぎゃー、痛ぇ。苦しい。
 「いっそ一気に殺してくれ!」と叫ばずにはいられない責めのオンパレード。どれも執拗。どれも残忍。
 なかにはヘンテコな面やマントを着せられ衆人の前に置かれるだけという一見ユーモラスな刑もあるけれど、町じゅうみんな顔見知りみたいな当時の社会においては、その後待ち受けているは村八分だったそうだから、それはそれでやっぱり酷。

 で、なぜに中世ヨーロッパの拷問がこれほどまでに凄惨だったかというと、背景にキリスト教信仰、神vs悪魔の構図があったからだ。
 犯罪は悪魔が人間にとり憑いて起こすもの。今ならナンセンスと斬って捨てることのできるそういう理屈がまかり通っていたその時代、拷問よりほかに人々は悪魔と闘う手段を持っていなかった。

 自白を引き出すための拷問は、悪魔に憑かれた人間の魂の救済措置として位置づけられていたそうだ。吐けばとりあえず魂が救われたことになったらしい。
 自白したところで次に控えているのは罪を悔い改めるための儀式=過酷な刑罰だったりするのだが、ここで自白を拒否すると悪魔に魂を売り渡した者と見なされて、今度は浄化とかなんとかいう名目でますます苦痛に満ちた刑に処されるのだ。
 冤罪だろうがなんだろうが一度容疑をかけられたら最後、拷問からは逃れられない。
 ああ怖っ。
 今のこの場所に生まれてよかったと思う。
 もし当時当地に生まれていたら、協調性がなくモラルに欠けた私なんて、たとえ罪を犯さなくとも魔女だ悪魔だと言われて間違いなく火責めか水責めにあっていたよ。

 それにしても信心ってつくづく恐ろしい。
 宗教すべてを否定するつもりはないけれど、信仰や思想になにもかも支配された社会なんてのは私しゃまっぴらご免だね。
 自分だけを見ろ信じろと強制するような、そんな嫉妬深くて狭量な神サマは私には要らない、欲しくない。
 と、こんなこと中世ヨーロッパでほざこうものなら異端者のレッテル貼られて即刻拷問だな。
 ああ、今のこの場所に生まれてホンットによかった。
 

ちくま文庫『図説 拷問全書』
著/秋山裕美 発行/筑摩書房
2003年4月9日第1刷発行 ¥1100 ISBN4-480-03799-3


2004.11.26
『AP THE BEST 猿屋ハチ ─ハチ丸編2─』を読んだ。

 猿屋ハチさんの『ONE PIECE』パロ集第2巻。

 各人格のデフォルメっぷりがたまんねぇ。
 ホントに食うことしか頭にないアホなだけの船長が特に笑える。
 あー楽しー。
 

『AP THE BEST 猿屋ハチ ─ハチ丸編2─』
著/猿屋ハチ 発行/ハイランド
2004年9月25日第1刷発行 ¥900 ISBN4-89486-362-6


2004.11.04
『ONE PIECE』第35巻を読んだ。

 クルーに笑顔がない。
 つらい。

 ああでも、この重苦しい展開の先には、きっときっとスッゲェ感動が用意されているに違いない。

 堪えろ、私。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第35巻(巻三十五 “船長(キャプテン)”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2004年11月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-873667-2


2004.10.18
『私の嫌いな10の言葉』を読み終えた。

 中島義道さんの書。
 期待どおり怒りモード全開だった。

 「相手の気持ちを考えろよ!」
 「ひとりで生きてるんじゃないからな!」
 「おまえのためを思って言ってるんだぞ!」
 「もっと素直になれよ!」
 「一度頭を下げれば済むことじゃないか!」
 「謝れよ!」
 「弁解するな!」
 「胸に手をあててよく考えてみろ!」
 「みんなが厭な気分になるじゃないか!」
 「自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!」

 以上が中島さんの嫌いな10の言葉。

 中島さんの感受性は、多くの日本人が「美徳」と信じて無意識にふるまう言動をことごとく不快で醜悪なものとしてキャッチする。
 共感を覚えるところもあり、へぇそう?と思うところもあり。

 ときに大いに拍手を送るが、ときにこちらにも怒りの鉾先が向けられていると感じるので、私にとっては決して痛快なだけの読み物じゃあない。
 けど、そうやって「うわっ、怒られちゃったよ」な気分になるってことは、私にも中島さんの嫌いな、日本人の美徳に通じる妙な感性が、知らずと備わっているということだよね、きっと。

 だからなのだと思う。決して愉快なばかりじゃなく、たまに不愉快にさせられるのをわかっていて、それでもつい手に取っちゃうんだ。
 これってたぶん怖いもの見たさ。知りたいんだな、私のこと。

 私にとっての中島さん本は、自分の日本人度を測る一種のバロメータみたい。
 

新潮文庫『私の嫌いな10の言葉』
著/中島義道 発行/新潮社
2003年3月1日発行 ¥400 ISBN4-10-146722-6


2004.09.21
『こころの処方箋』を読み終えた。

 珍しく気が弱っていると自覚していたせいか、迷わず手が伸びた。

 『人の心などわかるはずがない』
 のっけから、ああ、なんてありがたいお言葉。
 誰よりも心理にお詳しい河合先生がそうおっしゃってくださるのだ。これはきっと真実に違いない。
 仕事づきあいの相手の真意が読めずに疲れていたところだったので、このひとことは本当に効いた。
 わかるはずもないものを無理して読もうとするから疲れるんだよ。仮に読めた気になったとしても、たぶんそれは真意じゃない。だったら妙な勘ぐりはやめて体当たりでいってやろうじゃねえの、そんな気になった。

 思えば、河合さんの言葉にはこれまでもずいぶん助けられてきた。
 だいたいが私は天の邪鬼で疑り深い性格なのだけれど、河合さんのお話は素直に信じられる。
 したり顔でもっともらしいことを言うヤツがごまんといるなかで、わからないことには「わからない」と言い、難しいことには「難しい」と言ってくれる河合さんが、私は好き。
 

新潮文庫『こころの処方箋』
著/河合隼雄 発行/新潮社
1998年6月1日発行 ¥400 ISBN4-10-125224-6


2004.09.08
『家族狩り』全5部作を読み終えた。

 ひきこもり、不登校、摂食障害、売春、レイプ、おやじ狩り、DV、幼児虐待、子殺し、親殺し etc...。そういった闇に深く関わりながら、それでもどこかにあるはずの小さな光を信じて、足掻きながらも懸命に前へと進もうとする者たちの物語。

 現実を意識しながら読んだ。
 思うところはあるものの整理がつかない。

 家族だとか世間だとか。国だとか世界だとか。要するに人間を構成要素とする社会を考えると決まって頭の中がぐるぐるする。
 私って相当頭悪い?
 

新潮文庫『幻世の祈り 家族狩り 第一部』『遭難者の夢 家族狩り 第二部』『贈られた手 家族狩り 第三部』『巡礼者たち 家族狩り 第四部』『まだ遠い光 家族狩り 第五部』
著/天童荒太 発行/新潮社
(第一部)2004年2月1日発行 ¥476 ISBN4-10-145712-3/(第二部)2004年3月1日発行 ¥476 ISBN4-10-145713-1/(第三部)2004年4月1日発行 ¥476 ISBN4-10-145714-X/(第四部)2004年5月1日発行 ¥514 ISBN4-10-145715-8/(第五部)2004年6月1日発行 ¥667 ISBN4-10-145716-6


2004.08.27
『刺星─Shisei』を読み終えた。

 初の単行本のようだ。
 帯のコピーは「模倣すら許さぬ超新星!」。続いて鳩山郁子さんによる称讃の言葉。
 食指が動いた。

 買って正解。

 短編マンガ9作品が収められていた。
 まず新鮮だったのが、その画風。
 イラストチックな軽妙でポップな絵なんだけれど、ペンによる線が極端に少ない。必要最小限といった感じ。代わりに多用されているのがスクリーントーンで、細やかな背景も洋服の柄も、切って貼るトーンとベタだけで巧みに描かれているからびっくり!
 この器用さと根気よさは、版画家や切り絵作家と同じく「職人」と呼びたくなるほどのものだわ。
 構図やアングルも凝っていて、相当なデッサン力が窺える。
 うん、確かにこりゃ、ちょっとやそっとじゃ真似できんわな。

 目を転じて話はどうかというと、ある短編を読みながら途中で思い浮かんだのが高野文子さん。別のある短編で思い浮かんだのが冬野さほさん。いくつかを読んで思ったのが鳩山郁子さん。
 まあ、私の「○○って△△に近いよね」的発言は「え〜〜〜?」という返事でもって却下されることが多いので、きっとアテにならないとは思うが。
 日常の中の幻想とか、洒落たメルヘンとか、少年・少女期の儚い煌めきとか、ごくごく微量の同性愛とか、そんなものが嫌味なく書かれていて、絵同様に惹き付けられた。

 好きなマンガ家さんがひとり増えたよ。
 嬉しい。
 

『刺星─Shisei』
著/中野シズカ 発行/青林工藝舎
2004年7月25日初版第1刷発行 ¥1300 ISBN4-88379-160-2


2004.08.25
東京藝術大学大学美術館で『発見された幻の名画 横山大観「海山十題」展』を観た。

 たまんねぇ。
 カッコイイ…。

 一昨年、所在不明だった2点が発見されたことにより、ようやく実現した大観「海山十題」全作品の一挙公開。昭和15年(1940年)の初公開以来というから64年ぶりだわな。

 「海に因む十題」と「山に因む十題」の計20点の連作は、71歳の大観が自身の画業50年と紀元2600年を記念して描いたものだそう。いわば大観の集大成。
 いや、もう、スゲエのなんの。
 どれもが名作。海ばかりの絵を、また山、しかも富士山ばかりの絵を、ちっとも飽きさせない。

 大観特有とも言えるリアルとフィクションの絶妙なブレンド加減が私は好き。
 好んで描かれる、霧だか靄だか雲だかで煙った景色も大好き。
 大胆だなー、繊細だなー、巧いなー。ホント、たまんねぇ。

 64年ぶりか…。
 こんな歴史的イベントに立ち会えて、ああ私ってなんて幸せ!
 

『発見された幻の名画 横山大観「海山十題」展』
2004年7月27日〜8月29日 東京藝術大学大学美術館
主催/東京藝術大学・NHK・NHKプロモーション 協賛/大日本印刷・三井住友海上火災保険 協力/横山大観記念館


2004.08.23
『イヴの眠り』第2巻を読んだ。

 あードキドキする。
 心臓に悪ィ。

 吉田さん、お願い!
 シン・スウ・リンと彼の息子だけは、どうか殺さないで!!
 

フラワーコミックス『イヴの眠り』第2巻
著/吉田秋生 発行/小学館
2004年8月20日初版第1刷発行 ¥390 ISBN4-09-138034-4


2004.08.13
『EDEN』第11巻を読み終えた。

 裏の社会へと身を投じた主人公エリヤの頼もしい成長っぷりに頬が緩む。
 ホント、いい男になったねー。

 混沌の続く世界。
 舞台は南米からオーストラリアへ。
 

アフタヌーンKC『EDEN』第11巻
著/遠藤浩輝 発行/講談社
2004年7月23日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-314349-X


2004.08.07
『ONE PIECE』第34巻を読み終えた。

 行かないで、ロビンちゃん!
 負けないで、メリー!
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第34巻(巻三十四 “「水の都」ウォーターセブン”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2004年8月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-873638-9


2004.07.30
東京都庭園美術館で『幻のロシア絵本 1920-1930年代展』を観た。

 以前、同じ美術館で『ポスター芸術の革命 ロシア・アヴァンギャルド展』を観た際に味わった興奮を思い出し、楽しみにして出かけた。

 やっぱりイイ! なんて素敵なんだ、ロシア・アヴァンギャルド。
 イラストレーションも色遣いもレイアウトも、みな奔放で斬新。躍動感に満ちた愉快な紙面の向こうに創り手たちの嬉々とした顔が見えるよ。

 イベントのタイトルが示すとおり、このロシア絵本の黄金期は長くは続かなかったんだって。ロシア・アヴァンギャルドとともに消えてしまったそう。スターリンが現われて芸術の息の根を止めてしまったから。
 惜しいね。残念だね。
 けど、ほんのひとときだったとしても、こんなにユニークなアートの時代が存在したことはありがたい。こんなに素敵な遺産が残されたことが嬉しい。
 でもって、それらに今こうして出会えたことはきっと幸せなことなのだと思った。
 

『幻のロシア絵本 1920-1930年代展』
2004年7月3日〜9月5日 東京都庭園美術館
主催/東京都庭園美術館・読売新聞東京本社・美術館連絡協議会 後援/ロシア連邦大使館・ロシア国際文化科学協力センター・東京都・東京都教育委員会・心の東京革命推進協議会 協賛/花王・戸田建設・東京ガス 協力/日本写真印刷


2004.07.04
『無限の住人』第16巻を読み終えた。

 山田浅右衛門、登場!
 刀剣試し斬りを稼業とし処刑者の死体を刻んでいた実在の人物だ。
 「吉寛」とある。調べたら四代目だった。

 で、その四代目「人斬り浅右衛門」が何をしているかというと、我らが卍(まんじ)さんの腕やら脚やらをエイヤッ!と切り落としてくれている。
 なんて素晴らしい展開! 加えて、どこかイッちゃってるふうの浅右衛門の顔形も素晴らしい。

 しかし卍さん、いつまでプラナリア状態なんだろう。
 監禁されて、切断されて、繋ぎ合わされて、それらをつぶさに観察されて。
 不死身の肉体の移植実験、私も結果が気になるけどさ。
 狂気の沙汰にも怖じけない、そんな胆の座った態度もカッコイイけどさ。

 そろそろ見たいよ、卍さんの大立ち回り。
 

アフタヌーンKC『無限の住人』第16巻
著/沙村広明 発行/講談社
2004年5月21日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-314348-1


2004.07.02
東京都美術館で『栄光のオランダ・フランドル絵画展』を観た。

 案の定、私の苦手な「混んでる美術展」だった。まあ、程度はそこそこだったけど。

 フェルメールをやはり観ておかなくちゃと思った。
 「画家のアトリエ」をむざむざと見逃すのはもったいないと。

 果たしてその「画家のアトリエ」は、想像していたよりちょっと小ぶりの作品だった。
 人だかりができていてじっくり観ることは叶わなかったけれど、でも会えて嬉しかった。

 フェルメールの絵って嫌味がないよね。鼻につくところがない。
 だから間口がめちゃくちゃ広い。
 そのくせ入ると奥深い。

 カタログを買った。
 部分部分を拡大して眺めると、フェルメールの絵はますます楽しい。

 細かいように見えて、ところどころ筆致がすごーく大胆なんだな。そんなところが私は好き。
 ああ、こんな筆遣いをする人とはいいお友だちになれそーだ、なんて身の程知らずにも思ったりして。

 いくら観てても飽きないよ、フェルメール。
 すっげー画家だよな、と改めて感嘆。
 

『栄光のオランダ・フランドル絵画展』
2004年4月15日〜7月4日 東京都美術館
主催/東京都美術館・読売新聞東京本社・美術館連絡協議会 後援/外務省・オーストリア大使館・オランダ大使館・ベルギー大使館 協賛/トヨタ自動車・KDDI・JR西日本・東レ・花王・安藤建設・大阪芸術大学・きんでん・大和ハウス工業・ダイワボウ情報システム・図書印刷・ニッセイ同和損害保険・非破壊検査・松下電器産業 協力/日本航空・ヤマト運輸・JR東日本


2004.06.18
東京都現代美術館で『YES オノ・ヨーコ』展を観た。

 やはり、私はその向こうにジョン・レノンの姿を追っているのだった。
 たとえば「天井の絵/イエス(YES)・ペインティング」(1966年発表作品)。絵の下の、ちょっとペンキの禿げた白い脚立は、今は残念なことに触ることが禁じられていたけれど、ああこれってもしかしてジョンがロンドンのギャラリーで昇った脚立そのものなのかなぁ、と思ったり。
 まぁそれは仕方がないことだわな。なんてったってヨーコはジョンのパートナーだったのだから。私の中ではジョンあってこそのヨーコだったんだよ、ずっと。

 それでも無理やりジョンと切り離して、ヨーコをひとりのアーティストとして見るならば。
 初期の尖ったアートより、ジョンとふたりでのパフォーマンスより、むしろジョンのいない近年の、1990年代以降の作品に私は強く惹かれる。
 大掛かりなインスタレーションが多いんだけれど、静かなのに雄弁で、強靱なのに優しくて、なんだか不覚にもじんわり泣かされちゃうんだよな。不意に感情を揺さぶられ、「やられた」と思わされちゃうんだよな。

 「エクス・イット」という、幼い樹木を生やす棺桶をいくつも並べた作品がエントランスホールに展示されていた(1997年発表作品)。
 一見、作品とは映らず風変わりなベンチにも見えるその棺桶の群れのひとつに、老夫婦と思しき2人が「疲れたね」といった顔で仲良く腰を下ろしていたよ。ホントはご法度の行為なのだろうが、どういうわけか誰にも咎められずに座ってた。
 棺桶と樹木、そして年老いた夫婦。もともと生と死を意識して生み出されたもののはずだけど、そこに想定外のオプションが加わったことでますます意義深い作品になってて、それを帰り際に見た私はまたもや「やられた」ってな気分になってしまった。

 ところで。
 おいおいおいおい、東京都さんよぉ。
 来るたび思うのだけれど、閉館時刻、18:00 は早すぎだよ!
 って上野あたりの国立の美術館は17:00 閉館ともっと早いけどさ。
 いつも閉館のアナウンスを聞きながら追い立てられるようにして帰ってるんだよな、私。
 だったらもっと早い時間に来ればいいじゃん、ってな声が聞こえてきそうだが、それができたら苦労しないのだ。
 ただでさえ交通の便のあまりよろしくない土地に建っているんだから、もうちょっとサービスしてくれてもいいと思うよ。
 せめて金曜日くらい延長で19:00までにしませんか。いや、してください。お願いします。
 

『YES オノ・ヨーコ』
2004年4月17日〜6月27日 東京都現代美術館
主催/財団法人東京都歴史文化財団・東京都現代美術館・ジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)・朝日新聞社 協賛/凸版印刷 協力/日本航空


2004.06.14
『ONE PIECE』第33巻を読み終えた。

 アフロ万歳!
 ソー・ファンキ〜!

 いやん! 楽しー。かっこいー。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第33巻(巻三十三 “DAVY BACK FIGHT”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2004年6月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-873593-5


2004.06.11
『尾崎放哉随筆集』を読み終えた。

 「俳句」「随筆」「書簡」からなるこの本の、「随筆」と「書簡」にはほとんど心を動かされなかった。
 けれど私は放哉がやはり好きだ。
 いや、正確には放哉の「俳句」が飽きもせずに好き。

 読んではしみじみ。諳んじて呟いてみてはしみじみ。
 愛おしい。

 たぶん私はこの先もずっと放哉の句を好きだと言い続けるんだろうな。
 いいよ。一生、好きでいるよ。

 今日の気分で選ぶ放哉の一句。

    爪切つたゆびが十本ある

 ああ放哉(の句)! 好きだぁ!
 

講談社文芸文庫『尾崎放哉随筆集』
著/尾崎放哉 発行/講談社
2004年5月10日第1刷発行 ¥950 ISBN4-06-198370-9


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