2006.12.08
『ひかりごけ』を読み終えた。

 嵐山光三郎さんの『文人暴食』で知って手にした。
 表題作「ひかりごけ」は人肉喰いの話である。昭和19年に北海道で実際にあった難破船人肉喰事件を題材とする。

 孤立し食糧も尽きた極限状況の中、生き延びるために仲間の死体の肉を喰った男がいた。
 喰えば生きられる、喰わなければ餓死するよりほかはない、究極の二者択一で前者を選んだ男の罪とはいったい何か。

 惨劇の詳細と、生き残った男の法廷での様子が戯曲形式で書かれている。
 もしも私が男の立場だったとしたら、あるいは男を裁くのが私だったとしたら、と想像しつつ読んだ。
 多分私は人肉は喰わない。
 けれど生きようと必死で人肉を喰った男を罪人にもしないだろう。
 人間が人間を喰ってはいけない明確な理由を、私は持っていないらしい。
 

新潮文庫『ひかりごけ』
著/武田泰淳 発行/新潮社
1964年1月25日発行 ¥400 ISBN4-10-109103-X


2006.11.25
『not simple』を読み終えた。

 オノ・ナツメさんの新刊は、出版社の倒産によって未収録分を残したまま絶版となっていた作品の完全版。
 復刊させてくれてありがとう、小学館さん。

 不運な一生を送った男とそれを見つめた小説家の物語。
 救いなどどこにもない滅法暗い話だけれど、それが静かに淡々と綴られているのがよい。
 

IKKI COMIX『not simple』
著/オノ・ナツメ 発行/小学館
2006年12月1日初版第1刷発行 ¥714 ISBN4-09-188344-3


2006.11.22
 『文人悪食』の続編。

 嵐山さんがとりあげた文人の顔ぶれを、自分のために、ここに書いておくとしよう。

『文人悪食』(目次より)
 ・夏目漱石───ビスケット先生
 ・森鴎外────饅頭茶漬
 ・幸田露伴───牛タンの塩ゆで
 ・正岡子規───自己を攻撃する食欲
 ・島村藤村───萎びた林檎
 ・樋口一葉───ドブ板の町のかすていら
 ・泉鏡花────ホオズキ
 ・有島武郎───『一房の葡萄』
 ・与謝野晶子──一汁一菜地獄
 ・永井荷風───最期に吐いた飯つぶ
 ・斎藤茂吉───もの食う歌人
 ・種田山頭火──弁当行乞
 ・志賀直哉───金目のガマのつけ焼き
 ・高村光太郎──咽喉に嵐
 ・北原白秋───幻視される林檎
 ・石川啄木───食うべき詩
 ・谷崎潤一郎──ヌラヌラ、ドロドロ
 ・萩原朔太郎──雲雀料理
 ・菊池寛────食っては吐く
 ・岡本かの子──食魔の復讎
 ・内田百間───餓鬼道肴蔬目録
 ・芥川龍之介──鰤の照り焼き
 ・江戸川乱歩──職業は支那ソバ屋なり
 ・宮沢賢治───西欧式菜食主義者
 ・川端康成───伊豆の海苔巻
 ・梶井基次郎──檸檬の正体
 ・小林秀雄───ランボオと穴子鮨
 ・山本周五郎──暗がりで弁当
 ・林芙美子───鰻めしに死す
 ・堀辰雄────蝕歯にともる洋燈
 ・坂口安吾───安吾が工夫せるオジヤ
 ・中原中也───空気の中の蜜
 ・太宰治────鮭缶に味の素
 ・檀一雄────百味真髄
 ・深沢七郎───屁のまた屁
 ・池波正太郎──むかしの味
 ・三島由紀夫──店通ではあったが料理通ではなかった

『文人暴食』(目次より)
 ・小泉八雲───一椀に白魚の泣き声を聞く
 ・坪内逍遥───牛鍋は不良のはじまり
 ・二葉亭四迷──快男児、酒を飲めず
 ・伊藤左千夫──牛乳屋茶人
 ・南方熊楠───山奥の怪人はなにを食うか
 ・斎藤緑雨───筆は一本、箸は二本
 ・徳冨蘆花───一膳の赤飯
 ・国木田独歩──牛肉か馬鈴薯か
 ・幸徳秋水───獄中で刺身
 ・田山花袋───うどんと蒲団
 ・高浜虚子───ココロザシ俳諧にありおでん食う
 ・柳田国男───うまいもの嫌い
 ・鈴木三重吉──酒を飲んで荒れる『赤い鳥』
 ・尾崎放哉───咳の味
 ・武者小路実篤─公家トルストイ
 ・若山牧水───酒仙歌人の実像
 ・平塚らいてう─元始、女性は実に偏食であった
 ・折口信夫───天ぷら屋になりたかった歌人
 ・荒畑寒村───監獄料理
 ・里見とん────あたまのなかに舌
 ・室生犀星───復讐的食卓
 ・久保田万太郎─せつない湯豆腐
 ・宇野浩二───なぜ薔薇を食べたか
 ・佐藤春夫───さんま苦いか塩っぱいか
 ・獅子文六───死ぬまで食い気
 ・金子光晴───食人鬼の果て
 ・宇野千代───男もまた日常の餌
 ・横光利一───空の弁当箱をかかえて
 ・吉田一徳───月光を飲む暴れん坊
 ・壺井栄────ちゃぶ台文学
 ・稲垣足穂───酒乱・酒魔・毒舌・極貧
 ・草野心平───居酒屋詩人
 ・平林たい子──女賊のにんじん
 ・武田泰淳───トンカツ好きの一家
 ・織田作之助──飢餓恐怖症文学
 ・向田邦子───ライスカレー裏おもて
 ・寺山修司───砂糖入りカレー

ごちそうさまでした。
 

新潮文庫『文人暴食』
著/嵐山光三郎 発行/新潮社
2006年1月1日発行 ¥743 ISBN4-10-141908-6


2006.10.22
『「少年A」この子を生んで……』を読み終えた。

 神戸連続児童殺傷事件の犯人「酒鬼薔薇聖斗」の父母が綴った手記。

 被害者の家族は被害者であるけれど、では加害者の家族は加害者といえるのだろうか。
 加害者の家族もまた、加害者によって害を被った者たちなのではないか。
 そんなことがずっと気になっていた。

 この本を読んで、果たして結論は導きだせなかった。
 やはり被害者だと思う一方で、被害者側の家族に対するのと同じように「気の毒に」とは言えない自分がいた。
 

文春文庫『「少年A」この子を生んで……父と母 悔恨の手記』
著/「少年A」の父母 発行/文藝春秋
2001年7月10日第1刷発行 ¥514 ISBN4-16-765609-4


2006.09.23
『憲法九条を世界遺産に』を読み終えた。

 爆笑問題の太田 光さんと人類学者・中沢新一さんの対談集。
 おふたりとも日本国憲法九条に関しては護憲派で、改正反対! 手をつけず遺すべきだ!と唱えている。

 「永久の戦争放棄と戦力の不保持」を規定した憲法九条がいかに珍品、いかにレアものであるかを考えると、大事にしなくちゃいけないと私も思う。
 戦後の一瞬に奇蹟のようにして生まれたこの憲法九条は世界遺産にしてもいい、という太田さんの発言にもうなづける。
 私と太田さんは同世代。
 だからなのかどうかはわからんが、太田さんと同じく私も、憲法九条を掲げる国に生まれたことを少なからず誇らしく感じている。
 「戦争をしないと決めた唯一の国」であることは、私がこの国を好きでいられる要因のひとつだ。
 憲法九条の改正は、下手すると、日本国民としての私のアイデンティティをも揺るがしかねない。
 改憲派の一部が愛国心から他国に対する武力行使を望むように、私もまた愛国心から憲法九条の保全を望む。

 改憲論議の呼び水となる国際協調やら自衛隊の派遣問題やらに触れずに終わっているため、改憲派にとっては、あるいは他の護憲派にとってもツッコミどころ満載の本なんじゃないかな。
 現実を見てない、とかって叩かれそう。
 でも憲法九条が多分に非現実的で矛盾を孕んでいることなど、太田さんも中沢さんも、おバカなこの私にだってわかっている。
 わかっちゃいるんだ。
 わかっちゃいるけど、それでも無理を押せ!と言いたい。変えてくれるな!と叫びたい。
 「かつて日本にはこんな憲法があってね…」なんて話を子供たちにしなくちゃいけない未来はイヤだ。
 

集英社新書『憲法九条を世界遺産に』
著/太田 光・中沢新一 発行/集英社
2006年8月17日第1刷発行 ¥660 ISBN4-08-720353-0


2006.09.12
『ONE PIECE』第43巻を読み終えた。

 バトルに次ぐバトル。
 技のオンパレードだ。
 新技も続々。

 この巻で各キャラが繰り出した技を新旧問わず全部書き出してみよう!

 ■ルフィ
  ゴムゴムのJET銃
   (ジェットピストル)
  ゴムゴムのJET鞭
   (ジェットウイップ)
  ゴムゴムのJETバズーカ
   (ジェットバズーカ)

 ■ゾロ
  三十六煩悩鳳
   (さんじゅうろくポンドほう)
  弐斬り(にぎり)
  登楼(とうろう)
  応登楼(おうとうろう)
  閃(ひらめき)
  砂紋(さもん)
  獅子歌歌(ししソンソン)
  二剛力斬(ニゴリザケ)
  龍巻き(たつまき)
  豹琴玉(ヒョウキンダマ)
  阿修羅(アシュラ)
  阿修羅弌霧銀
   (アシュラいちぶぎん)

 ■サンジ
  三級挽き肉
   (トロワジェムアッシ)
  肩ロース(バース・コート)
  腰肉(ロンジュ)
  後バラ肉(タンドロン)
  腹肉(フランシェ)
  上部モモ肉(カジ)
  尾肉(クー)
  もも肉(キュイソー)
  すね肉(ジャレ)
  仔牛(ヴォー)ショット
  二級挽き肉
   (ドゥジェムアッシ)
  パーティーテーブル
  もも肉(キュイソー)・
   シュート
  串焼き(プロシェット)
  悪魔風脚(ディアブルジャンプ)
  一級挽き肉
   (プルミエールアッシ)
  画竜点睛(フランバージュ)
   ショット

 ■ナミ
  クール=チャージ
  蜃気楼(ミラージュ)=テンポ
  クラウディ=テンポ
  冷気泡(クールボール)
  レイン=テンポ
  幻想妖精(ファタ・モルガナ)
  電気泡(サンダーボール)
  黒雲(ダーククラウド)=
   テンポ
  サイクロン=テンポ
  電光槍(サンダーランス)=
   テンポ

 ■そげキング
  向日葵星(ひまわりぼし)

 ■フランキー
  風来砲(クー・ド・ヴァン)
  ストロングハンマー
 ■スパンダム[CP9]
  象牙突進(アイボリーダート)

 ■ルッチ[CP9]
  指銃(シガン)
  黄蓮(オウレン)
  鉄塊(テッカイ)
  剃(ソル)

 ■カク[CP9]
  嵐脚(ランキャク)
  線(せん)
  鼻銃(ビガン)
  鎌麒麟(かまキリン)
  鉄塊(テッカイ)
  無死角(ムシカク)
  麒麟時雨(キリしぐれ)
  龍断(ロウダン)
  キリン砲台(キリンほうだい)
  麒麟マン射櫓(キリマンジャロ)
  ネジ白刃(ネジはくじん)
  パスタマシン
  月歩(ゲッポウ)
  紙絵(カミエ)
  嵐脚手裏剣
   (ランキャクしゅりけん)
  鞭竹林(へんちキリン)
  猛竹林(もうちキリン)
  逆鱗(げキリン)
  周断(あまねだち)

 ■ジャブラ[CP9]
  十指銃(ジュッシガン)
  剃(ソル)
  狼弾(オオカミハジキ)
  鉄塊(テッカイ)
  嵐脚(ランキャク)
  孤狼(ころう)
  狼牙(ろうが)
  狼狩(ろうかる)エリア・
   ネットワーク
  重歩狼(ドン・ポー・ロウ)
  月歩(ゲッポウ)
  群狼連星(ルーパスフォール)
  摩天狼(マテンロウ)
  月光十指銃
   (ゲッコウジュッシガン)

 ■カリファ[CP9]
  剃(ソル)
  ゴールデン泡(ゴールデンアワー)
  嵐脚(ランキャク)
  指銃(シガン)
  月歩(ゲッポウ)
  羊雲リラックス泡
   (ひつじぐもリラックスアワー)
  鞭(ウイップ)
  石鹸羊(ソープ・シープ)
  羊雲大津波
   (ひつじぐもタイダル・ウェイブ)

 ふう…。

 ゾロ vs カクの技の応酬がすっげー面白かった。
 弐斬り(にぎり)=握りの登楼(とうろう)=トロ、応登楼(おうとうろう)=大トロ、閃(ひらめき)=ヒラメ、砂紋(さもん)=サーモン。
 ゾロ、おにぎりシリーズを経て寿司シリーズに突入だよ。
 笑える〜。 でもカッコイイ。
 そして出た!“九刀流”阿修羅!!
 ……う〜ん、この技はビジュアル的になんとなく勘弁って感じだなぁ。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第43巻(巻四十三 “英雄伝説”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2006年9月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-874149-8


2006.09.03
『リストランテ・パラディーゾ』『LA QUINTA CAMERA(ラ・クインタ・カーメラ)〜5番目の部屋』『さらい屋 五葉』を読み終えた。

 オノ・ナツメさん。
 出版社や書店の枠を超えてのフェアが実施されたり、モーニングの増刊『モーニンング2』で表紙&巻頭に抜擢されたり、といった最近の躍進ぶりを紹介する記事が夕刊のコミック欄にあり、そこで絵を見てあれっ?と思った。
 調べてみたら案の定、この方、bassoさんと同一人物だった。
 そんなわけで何の迷いもなく3冊まとめ買い。

『リストランテ・パラディーゾ』
 従業員すべてが老眼鏡紳士という人気リストランテ「カゼッタ・デッロルソ」が舞台。
 オーナー夫人とその娘ニコレッタのドラマを縦軸に、ニコレッタと老眼鏡紳士たちの関係を横軸に、物語は展開する。
 ミニシアター系のオシャレな映画を観てるみたいだ。
 絵は言わずもがなだが、オノさんて、脚本づくりもうまいなぁ。

『LA QUINTA CAMERA(ラ・クインタ・カーメラ)〜5番目の部屋』
 これもイタリアもの。
 4人の独身男が住むアパートは、5番目の部屋が短期留学生の受け入れ先となっていて、そこにいろんな国のいろんな人がやってくる。
 イラストちっくな簡略化された線で描かれた、ハートフルな読切連作集。
 オノさんのデビュー作品だが、出版社の倒産で廃刊の憂き目にあい、それを小学館が救って復刊させたとのこと。
 オノさんご自身、イタリア留学の経験者なのだそう。
 この本読んだら私もイタリアに留学したくなった。

『さらい屋 五葉』第一集
 イタリアンなお方、と思っていたら、最新作はなんと時代劇である。
 引き出し多いんだなー、オノさんて。
 善良で気の弱い浪人・政が、謎多き遊び人・弥一に引きずられ、誘拐専門の賊「五葉」の一味と関わることに…。
 ビバ!裏家業。
 私の好きだった必殺シリーズみたい、嬉しい。

 オノさんのマンガは、ジメッとしてないところがいいな。
 陰気くさくない。
 かといってノーテンキというのとも違う。
 なにげない台詞や動きでほわんと笑わせ泣かせてくれる。
 それがとっても“粋”だと、私は思うのだがどーだろう。

 ともかくイイよ! オノ・ナツメさん。
 ああ、こーゆうマンガ家さんに出会えて幸せ〜。
 ずっと追いかけて読んでいきたいな。
 

f×COMICS『リストランテ・パラディーゾ』
著/オノ・ナツメ 発行/太田出版
2006年6月2日第1版第1刷発行 ¥650 ISBN4-7783-2014-X

IKKI COMIX『LA QUINTA CAMERA(ラ・クインタ・カーメラ)〜5番目の部屋』
著/オノ・ナツメ 発行/小学館
2006年9月1日初版第1刷発行 ¥600 ISBN4-09-188327-3

IKKI COMIX『さらい屋 五葉』第一集
著/オノ・ナツメ 発行/小学館
2006年9月1日初版第1刷発行 ¥600 ISBN4-09-188326-5


2006.08.22
東京国立博物館・平成館で『プライスコレクション 若冲と江戸絵画』を観た。

 米カリフォルニアに住むプライス氏の江戸絵画コレクション。
 その全体像を日本で観ることのできる機会はこれが最後だろう、なんて話を聞いちゃあ逃すわけにはいかなかった。

 所蔵約600点の中から100点を超える作品が来日、いや一時帰国。
 プライス氏といえばの伊藤若冲を中心に、円山応挙、長沢芦雪、勝川春章、河鍋暁斎、酒井抱一 etc...。
 有名無名や世間の評価に左右されることなく自身の感性のみに従って蒐集したというが、いずれも逸品である。

 展示会場には特別な一室が設けられていた。
 光の変化によって作品の表情が変わる、そのさまを見せたいとの氏の要望を受けたものだ。
 そこでの作品はガラスが取り払われむき出し。
 個々に照明装置があてがわれていた。
 移ろう光の中、鮮明に浮かび上がったり、淡く沈んだり。
 なるほど、同じ絵でも朝に観るのと夜に観るのでは印象がまったく違うんだな。

 特に気に入った作品を書いておく。
 若冲のポップな水墨画『鶴図屏風』。
 画面からはみ出る大迫力! 長沢芦雪『白象黒牛図屏風』。
 虎の背の筋骨に見惚れた、亀岡規礼『猛虎図』。
 構図と色遣いの巧さに脱帽の酒井抱一『十二か月花鳥図』。

 いいもの見せてもらいました。
 プライスさん、ありがとう。
 

『プライスコレクション 若冲と江戸絵画』
2006年7月4日〜8月27日 東京国立博物館・平成館
主催/東京国立博物館・日本経済新聞社
特別協力/財団 心遠館
後援/アメリカ大使館・南カリフォルニア日米協会
協賛/NEC・日本興亜損害保険
協力/ロサンゼルス カウンティ美術館・日本航空・ファースト デザイン システム


2006.07.28
『ONE PIECE』第42巻を読み終えた。

 待ってましたのバトルモード。
 誰が誰に勝つのか負けるのか、まったく予想のつかない展開に大コーフン。

 カリファの能力が私は怖い。
 カリファに敗れたサンジの姿が気味悪い。
 ナミ! 絶対カリファに勝ってよね。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第42巻(巻四十二 “海賊 vs CP9”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2006年7月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-874127-7


2006.06.12
『クマとインテリ』を読んだ。

 いつだったか、新聞のコミック評のコーナーでちょろっと紹介されているのを目にして、以来ずっと気になっていたのだ、この本。
 ホモマンガの短編集だが、ありがちじゃない。
 イタリアが舞台であることも、主人公が壮年の政治家であることも新鮮なら、絵もまたオリジナリティに溢れてて目新しい。
 「ジェラートにまつわる三つの短編」なんてのがあるから、読後、無性にジェラートが食べたくなった。

 軽快で明るく、お洒落。
 うん、こういう粋なマンガ、大好き!
 

EDGE COMIX『クマとインテリ』
著/basso 発行/茜新社
2005年6月10日初版発行 ¥600 ISBN4-87182-760-7


2006.06.03
『無限の住人』第19巻を読み終えた。

 凛ちゃん、ゴール!
 やっと卍さんへと辿り着いた。おめでとう。

 私は性格が悪いので、好きな男性キャラにまとわりつく女性キャラにはたいてい敵意を抱くのだが、凛ちゃんは例外。
 卍さんとの今の関係=兄と妹のような関係を越えて、いっそ夫婦になっちゃってもいーよとまで寛大にも思っている。
 私が許す。ゴーゴー、凛ちゃん。

 それにしてもここまで長かった。
 卍さんの実に久々の立ち回りを見て、やっぱこれがなきゃ「むげにん」じゃねーよなと思う。
 待ちに待ったよ。
 

アフタヌーンKC『無限の住人』第19巻
著/沙村広明 発行/講談社
2006年4月21日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-314409-7


2006.06.02
『イン・ザ・プール』を読み終えた。

 今をときめく「伊良部シリーズ」。
 文庫になったら読もうと決めていた。

 いやホント、おもしれぇ!
 精神科医・伊良部のおバカぶりが、呆れるを通り越してもういっそ愛おしいよ。

 続く『空中ブランコ』『町長選挙』も、早く文庫化されないかなぁ。
 

文春文庫『イン・ザ・プール』
著/奥田英朗 発行/文藝春秋
2006年3月10日第1刷発行 ¥476 ISBN4-16-771101-X


2006.05.28
宮内庁三の丸尚蔵館で『花鳥━愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』を観た。

 第2期最終日。
 明日から展示替え休館というときに駆け込みセーフ。
 第5期まで全部観るぞ!と意気込んでおいてこれである。
 腰が重くていけねぇや。

 前回の図録に続き、今回はポストカードセットを購入。
 伊藤若冲「動植綵絵」30幅すべて揃って箱入り1,200円とは、これまたお得。
 この価格設定、他の美術展もちょっとは見習ってほしいな。
 

『花鳥━愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』
2006年3月25日〜9月10日 宮内庁三の丸尚蔵館


2006.05.20
『死体とご遺体〜夫婦湯灌師と4000体の出会い』を読み終えた。

 「湯灌(ゆかん)師」という職業を初めて知った。
 「湯灌」とは、亡くなった方を湯に入れて葬儀用に遺体をきれいに整えることだそうだ。
 故人の顔を生前の状態にできるだけ近づけるためのサービスともいえる。
 「エンバーミング」と似ているが、遺体の長期保存を可能にするエンバーミングとは異なり、防腐処理は行わない。

 さてこの本の著者は、華やかなCM業界から転身して湯灌師となった人である。
 奥さんを仕事のパートナーにしてご夫婦で働き、これまでに4000体以上のご遺体に接してきたという。

 誰もが安らかな死に顔とはかぎらない。
 事故でバラバラ、水死でパンパン、孤独死で腐乱…そういったご遺体の修復も湯灌師の仕事で、むしろそんなご遺体を前にしてこそ彼らの腕は本領を発揮する。
 飽きることなく読めた一冊だが、さまざまな死体にまつわるエピソードを集めた「記憶に残る特別なご遺体」という章が特に強く印象に残った。
 

平凡社新書『死体とご遺体〜夫婦湯灌師と4000体の出会い』
著/熊田紺也 発行/平凡社
2006年4月10日初版第1刷発行 ¥700 ISBN4-582-85319-6


2006.05.13
『蟲師』第7巻を読み終えた。

 アニメの次は実写版映画だそうだ。
 監督・大友克洋、主演・オダギリジョー。
 豪勢だよね。
 いや、それも当然か?
 なんたっていいマンガだもん。

 7冊目ともなれば、作中世界にすっかり慣れてしまったせいか、第1巻で感じた「おお、なんだこれ、すげえ!」ってな驚きはさすがにない。
 けれど、ざらざらした画面の質感と、普遍的な人情を絡めた夢うつつの物語は、相変わらず私にとって魅力的。

 実写版、どんな感じに仕上がるんだろ。
 世界中で評価されるくらいの出来だったら、『蟲師』ファンとして嬉しい。
 

アフタヌーンKC『蟲師』第7巻
著/漆原友紀 発行/講談社
2006年2月23日第1刷発行 ¥590 ISBN4-06-314404-6


2006.05.12
東京国立近代美術館工芸館で『所蔵作品展 花より工芸』を観た。

 藤田嗣治展を観終えたのち、工芸館まで足を延ばした。
 やや離れているせいだろう、藤田展の客の大半はここまでは来ずに帰って行く。
 混雑していなかった。ホッとする。

 実は今日の私は藤田展よりむしろ、この『所蔵作品展 花より工芸』を楽しみにしてたのだ。
 お目当ては、今年、工芸館のコレクションに初めて加わった球体関節人形。
 どこかサブカルの匂いのする球体関節人形が、国の認める工芸品となり堂々と展示されるとあっちゃあ、見逃すわけにはいくまい。

 四谷シモンの『解剖学の少年』。
 吉田 良の『すぐり』。
 高尚と呼ぶにはセクシャル過ぎる2体が入口近くで出迎えてくれた。
 間近で眺める。やっぱりいいね、この2巨匠の人形は。
 ガラスの目玉に見つめられてどきどきした。

 工芸館に願わくは、今後もっと人形のコレクションを増やしてくれ。
 皿や壺や織物に混じって飾られる様は奇と言えなくもないが、これらもやはり日本が誇る立派な近代工芸だと思う。
 

『所蔵作品展 花より工芸〜新収蔵作品を中心に 2001-2005』
2006年3月14日〜5月21日 東京国立近代美術館工芸館
主催/東京国立近代美術館


2006.05.12
東京国立近代美術館で『藤田嗣治展』を観た。

 ブームが来ているというのは本当らしく、平日昼間の近代美術館に行列ができていた。

 パリで活躍した人だが、その絵は極めて日本チックだよなと思う。
 藤田の代名詞となっている「すばらしき乳白色」だって、日本画の美人の肌に似てやしないか。
 女性の肌にすべらかな質感を出そうとするのは日本人画家の特性かもしれない。

 さて好みで選ぶなら私は後期の作がいい。
 代表作『カフェにて』とか、擬人化された動物たちが主人公の『ラ・フォンテーヌ頌』とか、蚤の市のガラクタを描いた『すぐ戻ります』とか。
 細い線描とカラフルな色彩がポップだ。
 カラーインクで描いた絵みたい。

 ごった返す売店で、おばさんたちの後ろから手を伸ばしてポストカードを8枚買った。
 人が多くてちょっと疲れた。
 

『生誕120年 藤田嗣治展』
2006年3月28日〜5月21日 東京国立近代美術館
主催/東京国立近代美術館・NHK・NHKプロモーション・日本経済新聞社
後援/外務省・フランス大使館
協賛/あいおい損害保険・大日本印刷・松下電器
協力/DNPアーカイブコム・日本航空


2006.04.28
『知っておきたい日本の神様』を読み終えた。

 祈願があれば神社に出向き、結婚式はチャペルで挙げ、死んだら坊さんに拝んでもらう。
 神道もキリスト教も仏教もこだわりなく日常に取り入れてしまう一般的日本人の感覚は、ひとつの宗教の信者として生きる方々にとってはとうてい理解できないものに違いない。
 けれど私は、日本人のこのアバウトさが好きだ。

 で、この本。
 神社に祀られている神様を解説した一冊だが、これを読むと日本人が太古より一貫してアバウトさ全開だったことがよくわかる。
 なにしろ私たちの祖先は「神様」を量産し続けてきたのだ。
 「日本書紀」や「古事記」でお馴染みの神々はもとより、菅原道真、平将門といった歴史上の人物も、近代の軍人たちも、蛇や狐らの動物も、神様に格上げして奉り、ときには他国・他教の神さえ自分の陣地に引き入れて日本の神様に仕立て上げてしまう。
 一神教信者の方々から見れば、これは卒倒しかねないほどの暴挙だろう。
 何をふざけたことを!と罵られそうだよな。
 しかし私から言わせてもらうと、神様がたったひとりであることのほうがイヤ。
 私だけが神であるってのはなんだか尊大じゃあないか。狭量なんじゃあないか。
 いや、別に一神教を批判するつもりはないけどね。
 おバカな神や情けない神、笑える神がいてもいいと思うのだよ。
 きっとそのほうが神の国もにぎやかで楽しい。

 「八百万(やおよろず)の神」、おおいに結構。
 身のまわりのあちこちに、土地のそこここに、いろんな神様がいるって考え、素敵じゃん。
 実におおらかで感性豊かな国の民だと思うよ、私たち。
 

角川ソフィア文庫『知っておきたい日本の神様』
著/武光 誠 発行/角川学芸出版 発売/角川書店
2005年11月25日初版発行 ¥476 ISBN4-04-405701-X


2006.04.19
宮内庁三の丸尚蔵館で『花鳥━愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』を観た。

 6年にわたる修理を終えた伊藤若冲「動植綵絵」が公開されている。
 皇室の持ち物であるからして、会場は皇居東御苑内の三の丸尚蔵館。
 小さいが悪くない場所だ。

 若冲の「動植綵絵」は30幅からなる。
 当然全部を並べきれないので、約1カ月ごとに展示替えを行う。
 1期あたり6幅。全30幅を観るには5回通わなくてはならない。
 しかし通う価値はある。
 この機会を逃すのは惜しい。
 というわけでまず第1期の6幅を拝む。

 やっぱ、すげぇ。
 光を発する白。溢れかえる極彩色。執拗なまでに細かな描写。神経質な筆遣い。
 若冲の絵だ!としかいいようがない。
 こんな絵描くヤツは若冲しかいない。

 予想に反して空いていたので、じっくりと眺めることができた。
 これで入場料無料とは太っ腹だな、宮内庁さん。
 しっかりした図録が1800円と安かったのもありがたい。
 あと4回、なにがなんでも通うぞ。
 

『花鳥━愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』
2006年3月25日〜9月10日 宮内庁三の丸尚蔵館


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