2007.05.10
『赤江瀑短編傑作選<恐怖編> 灯籠爛死行』を読み終えた。

 他の傑作選<幻想編><情念編>と比べると、地方の風習や俗信をモチーフとした作品が多い。
 雛人形、祈り殺し、溺死者、滝夜叉姫、鬼会、坂、平敦盛の笛、織部灯籠……そのようなものに魅入られた者たちの顛末はみな狂おしくも哀しい。

 「花帰りマックラ村」「雛の夜あらし」「影の風神」「七夜の火」「海贄考」「忍夜恋曲者」「原生花の森の司」「宵宮の変」「鬼会」「砂の眠り」「艶かしい坂」「海婆たち」「灯籠爛死行」の13編。
 

光文社文庫『赤江瀑短編傑作選<恐怖編>  灯籠爛死行』
著/赤江 瀑 発行/光文社
2007年3月20日初版第1刷発行 ¥819 ISBN978-4-334-74220-1


2007.04.25
『赤江瀑短編傑作選<幻想編> 花夜叉殺し』を読み終えた。

 <幻想編>とあるように、赤江作品のなかでも殊更幻想的な短編ばかりが集められたが、かといって現実からひどく乖離しているかといえば、私にはそうと感じられない。
 夢うつつの物語をさもありなんと描く手腕のなんという鮮やかさ。

 「花夜叉殺し」「獣林寺妖変」「罪喰い」「千夜恋草」「刀花の鏡」「恋牛賦」「光悦殺し」「八月の蟹」「万葉の甕」「正倉院の矢」の10編を収録。
 

光文社文庫『赤江瀑短編傑作選<幻想編> 花夜叉殺し』
著/赤江 瀑 発行/光文社
2007年1月20日初版第1刷発行 ¥838 ISBN978-4-334-74187-7


2007.04.12
日本橋HD DVDプラネタリウムで『宇宙へのパスポート』を観た。

 「地球」は、太陽の周りをまわる「太陽系」の惑星である。
 太陽系は「銀河系」にある。銀河系には太陽のような恒星が約2000億〜4000億個あるらしい。
 銀河系は「局部銀河群」に属する。局部銀河群は約30個の「銀河」からなる。
 局部銀河群は「おとめ座超銀河団」の端っこにある小さな「銀河群」だ。
 おとめ座超銀河団の半径は6千万光年ほど。中核をなすおとめ座銀河団には約2500個の銀河が含まれている。
 宇宙には、このような「超銀河団」がいくつもある。見つかっているのはまだ数個に過ぎないが。

 宇宙はデカイ。とてつもなくデカイ。そして地球はなんて小さい。
 と、わかっちゃいるが、それを想像するのと実際に目にするのとでは、やっぱり感じるものが違うなあ。

 NYのアメリカ自然史博物館付属ヘイデンプラネタリウムで好評を博したヴァーチャル宇宙ツアー。
 100億光年を超高速移動。

 オリオン大星雲のなかに突っ込んで行くときはちょっと興奮した。
 地球から約1500光年の彼方、美しい光を放つ(ハッブル宇宙望遠鏡による撮影画像参照)星雲の姿を、まさか内側から眺める日が来ようとは!
 最新の宇宙観測データを基にこのCGを作成したアメリカ自然史博物館に「あっぱれ!」と言いたい。
 

『宇宙へのパスポート』
2007年3月27日〜 日本橋HD DVDプラネタリウム
主催/三井不動産、TOKYO FM、ぴあ
特別協賛/東芝
協賛/ローソン、読売新聞東京本社
協力/三越


2007.04.04
『赤江瀑短編傑作選<情念編> 禽獣の門』を読み終えた。

 赤江 瀑さんの作品は端的に説明するのが難しい。
 ミステリー小説であり、幻想小説であり、伝奇小説であり、耽美小説であり、官能小説でもある。
 とにかく「これは○○小説です」と言い切ることが困難な小説なのだ。
 もっともそうやって無理矢理どれかの型にはめることには何の意味もない。
 むしろ容易に型にはめられないのが赤江作品の魅力。
 それでもなんとかどこかに納めようと思うのならば、そのときは「赤江瀑小説」という新ジャンルを打ち立てるしかあるまい。
 いやもう、このジャンル、すでに確立されているかも。

 最近出た3冊の傑作選のなかの一冊、 <情念編>。
 「禽獣の門」「雪華葬刺し」「シーボルトの洋燈」「熱帯雨林の客」「ライオンの中庭」「ジュラ紀の波」「蜥蜴殺しのヴィナス」「象の夜」「卯月恋殺し」「空華の森」の10編を収録。
 

光文社文庫『赤江瀑短編傑作選<情念編> 禽獣の門』
著/赤江 瀑 発行/光文社
2007年2月20日初版第1刷発行 ¥819 ISBN978-4-334-74201-0


2007.03.29
森美術館で『日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで』『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』を観た。

 『日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで』では、笑い顔の土偶・埴輪にはじまり、岸田劉生「麗子像」のでろりな微笑、俵屋宗達、円山応挙、伊藤若冲らの愛くるしい動物画、ヘタクソで笑える江戸初期の屏風画、木喰(もくじき)作のにこやかな仏像などを展示。
 南天棒の禅画にときめいてポストカードを購入した。

 一方の『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』は「笑い」をテーマにした現代アート展で、60年代の前衛芸術から近年の作品に至るまでを幅広く収集。
 この日3つ目の展覧会だったので気力体力ともにかなりすり減っているなかで観たが、赤瀬川源平さんの千円札作品に出会えたのはもうけだったな。
 

『日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで』
2007年1月27日〜5月6日 森美術館
主催/森美術館、日本テレビ放送網
協賛/ソニー、トヨタ自動車
協力/SUS、日本航空、奥の松酒造、ニコラ・フィアット


『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』
2007年1月27日〜5月6日 森美術館
主催/森美術館、日本テレビ放送網
助成/オーストリア文化フォーラム、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団、スウェーデン大使館、OCA(ノルウェー・コンテンポラリーアート・オフィス)、フィンランドセンター、ブラジル大使館
後援/イスラエル大使館
協賛/ソニー、トヨタ自動車
協力/日本航空、奥の松酒造、ニコラ・フィアット、岩崎、特種製紙


2007.03.29
国立新美術館で『異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』を観た。

 展覧会を、というより今年1月にオープンしたばかりの建物を観に行った。
 目を引く波形の外壁デザイン。設計は黒川紀章氏。
 ガラス張り+吹き抜けだけあってロビーが明るい。
 10以上の展覧会を同時開催できると聞いたが、なるほど、さすがの広さだった。

 今後たぶん何度かはお世話になると思う。
 混んでいて座れなかったけど、気軽にビールを注文できるカフェの存在がありがたかった。
 

『異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』
2007年2月7日〜5月7日 国立新美術館
主催/国立新美術館、朝日新聞社、テレビ朝日、ポンピドー・センター
後援/外務省、文化庁、フランス大使館、東京日仏学院
協賛/大日本印刷
協力/日本通運、AIRFRANCE、J-WAVE


2007.03.21
『蟲師』第8巻を読み終えた。

 実写版映画公開に沸く『蟲師』のほぼ1年ぶりとなる新刊。

 変わらずにあってくれさえすれば、作者の漆原さんに対してはもはや何も望みません。
 

アフタヌーンKC『蟲師』第8巻
著/漆原友紀 発行/講談社
2007年2月23日第1刷発行 ¥590 ISBN978-4-06-314442-0


2007.03.05
『さらい屋 五葉』第二集を読んだ。

 オノ・ナツメさんの最新刊。
 誘拐専門の賊「五葉」メンバーのそれぞれの過去が徐々に明かされていく。

 人情モン描いてもサラッとしているところが、とっても好き。
 

IKKI COMIX『さらい屋 五葉』第二集
著/オノ・ナツメ 発行/小学館
2007年4月1日初版第1刷発行 ¥600 ISBN978-4-09-188352-0


2007.03.04
『ONE PIECE』第45巻を読んだ。

 秘密が次々と明かされて、物語が大きく動き出した。
 大物同士の覇権争いに、これからいよいよ直接関わっていくのね。
 舞台はグランドライン後半の海「新世界」へ。
 早く続きが読みた〜い。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第45巻(巻四十五 “心中お察しする”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2007年3月7日第1刷発行 ¥390 ISBN978-4-08-874314-1


2007.03.03
『私という小説家の作り方』を読み終えた。

 大江健三郎ビギナーの私には、まだちょっと早かったな。
 その創作過程を説明されても、肝心の作品を知らないので反応鈍し。
 読むべき本を読んでから手にするのが正解の一冊。
 

新潮文庫『私という小説家の作り方』
著/大江健三郎 発行/新潮社
2001年4月1日発行 ¥362 ISBN4-10-112621-6


2007.02.19
『性的人間』を読み終えた。

 「性的人間」「セブンティーン」「共同生活」の3編を所収。

 自慰にふける気弱な17歳の少年が右翼へと突っ走っていく「セブンティーン」が面白かった。
 解説によれば、この物語には「政治少年死す」という第二部があるが、1960年に社会党委員長を暗殺し少年鑑別所で自決した実在の右翼少年をモデルとしているため、雑誌『文学界』に発表後、激怒した右翼団体からの脅迫に遭い、未だにお蔵入りを余儀なくされているそうだ。
 それ、読んでみたいな。
 

新潮文庫『性的人間』
著/大江健三郎 発行/新潮社
1968年4月25日発行 ¥400 ISBN4-10-112604-6


2007.02.10
『解剖学個人授業』を読み終えた。

 南 伸坊さんの個人授業シリーズ。
 先生が養老孟司さんということで、想像に違わず脳やら数学やら哲学やらの話へと飛躍。それはそれで読んでいて楽しいのだけれど、欲を言えば、私は本筋の解剖学の話をもっと聞きたかった。
 

新潮文庫『解剖学個人授業』
著/養老孟司・南 伸坊 発行/新潮社
2001年4月1日発行 ¥420 ISBN4-10-141033-X


2007.02.06
『般若心経』を読み終えた。

 色即是空、空即是色…の『般若心経』である。
 この本の説明によれば、それは「大乗仏教の基本教典『大般若経』600巻の精髄を300字に満たぬ字句の中に収めたものといわれる」のだそうだ。

 サンスクリット原典、チベット訳、蒙古語訳、漢訳等のテキストが存在し、それぞれに対して夥しい数の注釈が書かれてきた。
 日本でもっとも知られているであろう「色即是空、空即是色」の一文にしても、その解釈はさまざまだ。

 さてそうした事情を踏まえたうえでなお『般若心経』の原意を探ろうとしたのが本書なのだが、『般若心経』の入門書とするには難しい。
 仏教を知らない私にとっては「なんのこっちゃ」なくだりが多く、退屈だった。
 

講談社学術文庫『般若心経』
校注/金岡秀友 発行/講談社
2001年4月10日第1刷発行 ¥900 ISBN4-06-159479-6


2007.02.02
『白い人・黄色い人』を読み終えた。

 遠藤周作ふたたび。
 芥川賞受賞作「白い人」と、もう1編「黄色い人」を収めた一冊。

 キリスト教でいうところの神を考えるのは苦手なんだよなぁ。
 「あなたはなぜ神を信じないのですか?」などと問われても、困る。
 こっちとしては信じずに生活することがあたりまえなので、そこに理由をつけるとなるとちょっと難しい。
 信じて生きていくことこそ不思議だから、「ではあなたはなぜ神を信じるのですか?」と問い返したくなる。

 信仰に熱心でない日本人のすべてがこんな私と同様とは言わないものの、まあ似たような者はかなりの数いるんじゃないかと私は考えるね。
 そんな読者を相手に神の意味の追求に奮闘した遠藤周作氏を思うとやや気の毒ですらある。

 さて本書。所収の2編とも良心の欠けたグロテスクな人物が主人公だ。
 おそらくは、唯一の神を持たないことの悲しみや愚かさを書こうとして創出した人物像なのだろう。信仰ある者の反面教師的な存在として彼らは話し、行動する。
 けど彼らがいくら愚行を重ねても、私には彼らを敵と感受することができない。かといって仲間とも思えない。私は傍観者でしかない。
 傍観者でしかないが、というより傍観者でしかないからか、彼らが卑劣で醜悪であるほど読んでいて楽しい。
 信仰者の真摯さより信仰なき者の身勝手な暴走のほうに興味をそそられて、結果私は以前よりもさらに神から離れたような気がする。
 物語が面白いほど神離れが進んじまうなんて、これまた皮肉な話だよなあ。
 ホント、すみませんねぇ、遠藤さん。
 

新潮文庫『白い人・黄色い人』
著/遠藤周作 発行/新潮社
1960年3月15日発行 ¥362 ISBN4-10-112301-2


2007.01.27
『つかぬことをうかがいますが…─科学者も思わず苦笑した102の質問─』を読み終えた。

 イギリスの週刊科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』の人気Q&Aコーナーに掲載された質問と回答をまとめた本。

 「黒板を爪で引っかく音を聞くと、どうしてぞっとするんでしょう?」
 「自分でくすぐっても平気なのに、なんでひとにくすぐられると我慢できないの?」
 「瞬間接着剤はどうしてチューブの内側にくっつかないの?」
 「どうしたらウイスキーの広告に出てくるような完璧に透明な氷がつくれますか?」
 「もしもタイムマシンでいつだかわからない時代へ送られてしまったら、どうしたらいまが何年何月何日かわかりますか?」
 「一度息を吸いこんだり、ひと口水を飲んだりするたびに、レオナルド・ダ・ヴィンチが吸ったり飲んだりした原子が体内に入るというのはほんとうですか?」
 「赤ワインは飲む前に呼吸をさせて香りを高めろとよくいいますが、それなら赤ワインをシェイカーでシェイクしたほうがてっとり早くはないですか?」
 「地球はなんだってくるくる回ってるんですか?」
 etc...。
 生物、化学、物理、地学の難問奇問が102。

 質問も投稿ならそれに対する回答もまた投稿ってのが人気の理由か。
 ひとつの問題を巡って、各分野の専門家やら作家やら科学ファンやら、ときには馬鹿者などが持論を披露。問題解明のためにわざわざ検証や実験を行う、熱心な回答者もいる。

 つまらなかったわけじゃないけど、すべて縦書き、文章のみってのは味気ない。
 関連写真や図版など添えてもよかったんじゃないかな。
 編集側のひと工夫がほしかった。
 

ハヤカワ文庫『つかぬことをうかがいますが…─科学者も思わず苦笑した102の質問─』
編/ニュー・サイエンティスト編集部 訳/金子 浩 発行/早川書房
1999年7月31日発行 ¥760 ISBN4-15-050262-3


2007.01.24
『一日江戸人』を読み終えた。

 江戸の案内書。
 江戸の人々の衣食住、仕事、趣味娯楽などの実際をイラスト付きで細かく、詳しく解説してくれている。

 長屋の間取り、銭湯の様子、お江戸の人気動物、江戸前料理レシピ、江戸の屋台、江戸のジャーナリズム、旅の装束・持ち物、カブキモノファッション、春画考、江戸っ子スラング…。
 どのページをめくっても楽しい。

 手っ取り早く江戸を知るならやっぱり杉浦日向子さんに限る。
 

新潮文庫『一日江戸人』
著/杉浦日向子 発行/新潮社
2005年4月1日発行 ¥438 ISBN4-10-114917-8


2007.01.19
『思い出トランプ』を読み終えた。

 小説など書いたことがないけれど、もし書くときが訪れたなら私はこういう小説を書いてみたい。
 どこにでもいるような人物が主人公でいい。
 どこにでもあるような家庭や職場が舞台でいい。
 誰にでもあるような喜怒哀楽の出来事でいい。
 誰にでもあるような心やからだの動きでいい。
 要するに日常的。そう、ごくありふれた日常を綴りたい。
 しかし、だ。単なる日常の記録では日記とさして相違ない。
 仮にも小説。ドラマとして読ませる必要がある。そしてそれが、とてつもなく難しい技術であろうと私は考えている。

 なので、それを易々とやってのけている作品を読むと、妬ける。
 こんなに難易度の高い技を見せつけやがってと、同業者でもないくせに、悔しい。

 向田邦子さん。
 スゲーなこの人! おこがましくもはげしく嫉妬を覚えた。

 直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を含む13編。
 極上の短編集。
 

新潮文庫『思い出トランプ』
著/向田邦子 発行/新潮社
1983年5月25日発行 ¥400 ISBN4-10-129402-X


2007.01.12
『「奇譚クラブ」の人々』を読み終えた。

 「奇譚クラブ」は戦後に登場したアブノーマル雑誌。
 沼正三の傑作マゾ長編『家畜人ヤプー』や団鬼六のSM大作『花と蛇』を生み出し、その奇異な存在には三島由紀夫、澁澤龍彦、川端康成、江戸川乱歩、寺山修司らも注目していたという。
 終刊から四半世紀を経て今や伝説と化したこの雑誌の全容を、制作にかかわっていた人々にスポットを当てることによって明らかにしようとしたのがこの一冊。

 縛り絵師、緊縛写真のモデル、緊縛師、カメラマン、SM小説家、女王様、マゾ嗜好・フェチの常連投稿者など。
 実際に誌面を飾った彼らの作品がふんだんに添えられている点はマル。それを観るだけで「奇譚クラブ」がどのような雑誌だったのかわかる。
 しかし同一テーマに解説筆者2人を置くというのは考えもの。重複記事の多さが気になった。並列掲載ではなく、対談形式にするとか1人は補足に回すとかすれば、本としての出来がもっと上がったのになぁと思う。
 

河出 i 文庫『「奇譚クラブ」の人々』
著/北原童夢・早乙女宏美 発行/河出書房新社
2003年4月20日初版発行 ¥690 ISBN4-309-47445-4


2007.01.09
『死者の奢り・飼育』を読み終えた。

 遠藤周作で味を占めたので「読まず嫌いを克服しようキャンペーン」を続行。
 第2弾として対象に選んだのはノーベル賞作家、大江健三郎。

 だいたいにおいて、よく知らなかったのだ、大江さんのことは。
 せいぜい新聞の連載小説を読んだくらいで、しかもその作品の主人公たちが品行方正すぎて鼻についたものだから、ああきっと大江健三郎という作家は私の好みには合わないに違いないと思っていた。
 人間の汚れだの醜さだのには距離を置く作家なんじゃないかと思っていた。

 ところがどっこい。
 すみません、私が無知でした。あまりにも知らなさすぎました。

 グロだし、エロだし、バイオレンス。
 距離を置くどころか、人間の汚れだの醜さだのに進んでズブズブ足を踏み入れていく、実はそういう作家さんだったのね、大江さんは。

 芥川賞受賞作「飼育」をはじめとする初期の6編。
 面白かった。
 

新潮文庫『死者の奢り・飼育』
著/大江健三郎 発行/新潮社
1959年9月25日発行 ¥438 ISBN4-10-112601-1


2007.01.01
『ONE PIECE』第44巻を読んだ。

 出ていることに気づかずにいた。帰省先で妹に借りる。
 「すっげー泣けるよ」と言われて渡された。

 正月からワンピ。  正月から大泣き。
 

ジャンプ・コミックス『ONE PIECE』第44巻(巻四十四 “帰ろう”)
著/尾田栄一郎 発行/集英社
2006年12月9日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-874287-7


2006.12.28
『江戸川乱歩傑作選』を読み終えた。

 おさらい乱歩。

 乱歩の作品は不気味で悪趣味な映像を鮮烈に脳裏に描かせるものの、それゆえにその映像の、しかも印象的な一場面の絵ばかりが記憶に残っちまうんだよなぁ。
 「人間椅子」しかり。「屋根裏の散歩者」しかり。
 あれ、こんなストーリーだったかなぁ、と読みながら思う。
 

新潮文庫『江戸川乱歩傑作選』
著/江戸川乱歩 発行/新潮社
1960年12月24日発行 ¥438 ISBN4-10-114901-1


2006.12.16
『海と毒薬』を読み終えた。

 武田泰淳の『ひかりごけ』と同様、これも実話をモチーフにした作品。
 戦争末期に九州の病院で起きた米軍捕虜の生体解剖事件を小説化したものである。

 医学の進歩のためとはいえ、生身の人間をモルモットのように扱い死に至らしめる行為は、決して許されるものではないだろう。
 しかし戦時下という特殊な状況のなかで事件は起こってしまった。
 生体解剖に参加した者たちはなぜそこから逃れられなかったのか。
 決行を前にして各人に葛藤や躊躇はなかったのか。
 彼らに良心は、果たしてあったのか否か。

 遠藤周作を読むのは実は初めて。
 クリスチャン作家だと知っていたため、殉教者のような登場人物によって妙な倫理観を押しつけられるのではないかと敬遠していたのだが、それは明らかに私の偏見だった。
 確かに根底にはキリスト教的思想があるのだろう。しかし物語には殉教者も聖人も出てこない。氏は、ひたむきな信者よりもむしろ、神を持たない者たちを深く掘り下げたかったらしい。宗教観や倫理観のあからさまな押し売りも見当たらない。
 ならば歓迎。それなら私にも読める。
 そして実際、小説として充分楽しめた。いや中身は楽しい話じゃないのだけれど、惹きつけられた。
 いいかも、遠藤周作。
 

新潮文庫『海と毒薬』
著/遠藤周作 発行/新潮社
1960年7月15日発行 ¥362 ISBN4-10-112302-0


2006.12.13
『無限の住人』第20巻を読み終えた。

 卍さんの闘う姿はやはりカッコイイ。
 諸肌脱いじゃってセクシーだよ、このやろう。

 長かった「不死力解明編」、やっと完結。
 恐怖の大魔王みたいなアイツの復活で、暗澹たる雰囲気がたちこめてはいるけれど、とりあえず今は卍さんが凛ちゃんの元に帰ってきてくれたことを祝おう。
 よかったね、凛ちゃん。
 

アフタヌーンKC『無限の住人』第20巻
著/沙村広明 発行/講談社
2006年10月23日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-314430-5


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