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2001.12.23
『風の伝説〜ターフを駆け抜けた栄光と死〜』を読み終えた。

 私が好きだったサラブレッドの一頭にゴールドシチーというのがいて、もう10年以上も前に死んでしまった馬なのだけれど、来年の干支は午かぁ…なんて考えているうちに思い出された彼が、どうにも頭から離れなくなってしまった。
 血統もたいしたことないし、めちゃくちゃ強かったわけじゃない。
 でも、あんなに美しい馬はいなかった。
 尾花栗毛に四白流星。
 銀に近いブロンドの長いたてがみと尾をなびかせて走る彼の姿には思わずため息が漏れた。
 私は密かにこの馬を「王子様」と呼んでいた。ちょっと恥ずかしい話だが。

 さてその王子様ゴールドシチーが頭から離れなくなってしまい、そうなるともう思い出すだけじゃ物足りない。
 どこかに彼の写真はないものかと本屋に入った。しかしそこでは見つからなかった。
 競馬史に残る名馬の域には惜しいかな及んでいなかった馬なので、まあ当然といやぁ当然か。
 あぁでも見たい。欲しい。あの美しい姿をもう一度じっくり拝みたい。

 そんなわけで多大な期待をこめて、絶版状態にあるこの本を購入した。
 ネットで探し、中古本を入手。

 ゴールドシチー、サクラスターオー、マティリアル。
 1984年生まれの同期ライバル3頭の、因縁めいた生涯を追ったノンフィクション。
 ゴールドシチーが主役級で登場する本は、私が調べた限りこの一冊だけだ。

 果たしてゴールドシチーの写真は拝めなかった。
 文字以外は載っていなかった。
 残念。
 残念だし、そのうえ読んだら余計に思いが募ってしまった、どーしてくれよう。

 ゴールドシチー。
 ああ、ほんとうに美しい馬だったんだよなぁ。
 

『風の伝説〜ターフを駆け抜けた栄光と死〜』
著/広見直樹 発行/マガジンハウス
1991年3月26日発行 ISBN4-8387-0200-0(古書店にて購入)


2001.12.16
『自分の骨のこと知ってますか──人のからだは驚異の立体パズル』を読み終えた。

 骨の役割、骨の構造、ヒトの骨の特徴、進化の歴史、各骨の個性などなど。
 説明を補助するイラストがもっと豊富に添えられていたなら、私にとっては申し分のない一冊になったのに。
 楽しい内容だっただけにちょっと惜しい。

 それはそうと、骨に限らず、生き物の身体ってなんてスゴイんだろう。
 何から何まで複雑で精巧で機能的で、まったくもって驚異だよ。
 私のこの身体も不思議に満ち満ちているんだね。

 骨や脳や内臓や血液や、さらにはひとつひとつの細胞なんかに視点を移すとさ、それらによって成されている自分の生が奇跡とさえ思えてくるよ。
 

講談社+α新書『自分の骨のこと知ってますか──人のからだは驚異の立体パズル』
著/桜木晃彦 発行/講談社
2001年8月20日第1刷発行 ¥800 ISBN4-06-272088-4


2001.11.16
『お陽様なんか出なくてもかまわない』を読んだ。

 多田由美さんのベスト作品集その1。

 多田さんの作品からは音が聴こえる。匂いがする。
 そこに空気が流れていて、ああ、人間が生きている。
 

九龍COMICS『お陽様なんか出なくてもかまわない』
著/多田由美 選・解説/矢代丸治 発行/河出書房新社
2001年10月30日初版発行 ¥1300 ISBN4-309-72811-1


2001.11.16
『HUNTER×HUNTER』第13巻を読んだ。

 ゴンとキルアの2人旅は続く。
 このガキんちょコンビの友情は見ていて清々しい。
 

ジャンプ・コミックス『HUNTER×HUNTER』第13巻(NO.13 9月10日)
著/冨樫義博 発行/集英社
2001年11月7日第1刷発行 ¥390 ISBN4-08-873180-8


2001.11.05
『横浜トリエンナーレ2001』に行った。

 3年に1度、横浜で開催されることになった、現代アートの国際展。
 第1回の今回は、世界各国から100人を超える作家の作品が集められた。

 さすが数が多いので観て回るのに時間がかかったよ。
 歩きどおしで疲れたし。
 でも楽しかった。

 さて目玉展示品のひとつであるそれは、日が暮れてから観た。
 赤レンガパークに行くと、何人もの人がその場を離れがたい様子で静かにそれを取り囲んでいた。
 私もしばらくそこに立ち、気の済むまで眺めた。
 オノ・ヨーコの「貨物車」。

 DB(ドイツ鉄道)の貨物車両。いくつもの弾痕。呻きや叫びにも似た奇妙な音。天へと真直ぐ伸びる細く青い光。

 どうしてだか、涙が出そうになった。
 揺さぶられた、完璧に。
 

『横浜トリエンナーレ2001[メガ・ウェイブ─新たな総合に向けて]』
2001年9月2日〜11月11日 パシフィコ横浜展示ホールC・D 赤レンガ1号倉庫ほか
主催/横浜市・国際交流基金・NHK・朝日新聞社・横浜トリエンナーレ組織委員会 後援/外務省・文化庁・神奈川新聞社


2001.10.23
『海市』を読み終えた。

 恋愛の果てに死を選択する女たち。
 そういう女たちと深く関わりながら決して死ねない男。

 「私」だったり「彼」だったり「彼女」だったりで語られる断章の積み重ねが物語を形成する、その手法はちょっとは刺激的だったけれど、いかんせん恋愛小説、私には不向きだった。
 死ぬ女にも、死ねない男にも、私は共感できなかった。
 

新潮文庫『海市』
著/福永武彦 発行/新潮社
1981年10月15日発行 ¥629 ISBN4-10-111511-7


2001.10.15
新宿シネマミラノで『COWBOY BEBOP 天国の扉』を観た。

 勧善懲悪なんてイヤラシイ。
 正義の味方なんかチャンチャラオカシイよ。

 だからこそ私は、この作品と主人公スパイクがよけいに愛しくてたまらないんだ。
 

『COWBOY BEBOP 天国の扉』
2001年 日本映画
企画/サンライズ 原作/矢立 肇 監督/渡辺信一郎 脚本/信本敬子 キャラクターデザイン/川元利浩 メカニックデザイン/山根公利 音楽/菅野よう子 プロデューサー/南 雅彦、植田益朗、高梨 実 セットデザイン/竹内志保 アクション作画監督/中村 豊 メカニック作画監督/後藤雅巳 美術監督/深川 篤 色彩設計/中山しほ子 演出/武井良幸 撮影監督/大神洋一 編集/掛須秀一 音響監督/小林克良 制作/サンライズ、ボンズ、バンダイビジュアル 配給/ソニー・ピクチャーエンタテインメント 配給・宣伝協力/東急レクリエーション
出演(声)/山寺宏一、石塚運昇、林原めぐみ、多田 葵、磯部 勉、小林 愛、ミッキー・カーチス、石橋蓮司ほか


2001.10.12
シアターサンモールで『Sons』を観た。

 三原 順さんの長編マンガをStudio Life が舞台化。

 原作にかなり忠実な脚本だった。
 原作者のファンならば、それって本来喜ぶべきことなのだろうか。

 私はなんだか落ち着いて観ていられなかった。
 

『Sons』
2001年10月3日〜14日 シアターサンモール
原作/三原 順 脚本・演出/倉田 淳 企画制作/Studio Life
出演/笠原浩夫・石飛幸治・山崎康一・及川 健・深山洋貴・山本芳樹・曽世海児・野口光雄・高根研一・鶴田浩一・岩崎 大・舟見和利・青山 治・前田倫良・船戸慎士・森川 洋・青木隆敏・奥田 努・小野健太郎・姜 暢雄・倉本 徹・藤原啓児・河内喜一朗


2001.10.10
『EDEN』第6巻を読んだ。

 ひ弱なガキんちょだった主人公のエリヤが、大人の顔を見せ始めた。
 二度と後戻りできない道を選んで、少年時代に自らバイバイしちゃったんだね。
 男の色気が出てきてイイ具合。
 

アフタヌーンKC『EDEN』第6巻
著/遠藤浩輝 発行/講談社
2001年9月21日第1刷発行 ¥505 ISBN4-06-314274-4


2001.09.18
『草の花』を読み終えた。

 「私はその百日紅の木に憑かれていた。」

 冒頭の一文で早くもクラッ。

 冬のサナトリウムで自殺行為にも似た手術を受けて死んだ、ひとりの青年が残した2冊のノート。
 記されていたのは彼自身の「18歳の時の春」と「24歳の時の秋」。
 同性の後輩へと向けられた愛の記録。
 その彼を失った後の、彼の妹との恋の顛末。

 孤独と、愛と、死と。

 ああ、なんだかいいなぁ、福永武彦。
 

新潮文庫『草の花』
著/福永武彦 発行/新潮社
1956年3月10日発行 ¥438 ISBN4-10-111501-X


2001.09.14
『YASHA 夜叉』第10巻を読んだ。

 シン・スウ・リンが気になる。
 泥沼の中でもがき苦しむ双子の兄弟を、どうか救ってやっておくれよ、シン!
 

別コミフラワーコミックス『YASHA 夜叉』第10巻
著/吉田秋生 発行/小学館
2001年9月20日初版第1刷発行 ¥390 ISBN4-09-138030-1


2001.09.10
『東京少年昆虫図鑑』を読み終えた。

 そういえば、実家の近所に半ば朽ちたような古い、ケヤキか何かの木があって、たいして大きな木ではなかったけれど、私たちは特別視してそれを「タマムシの木」と呼んでいた。
 夏になると、その木でタマムシが採れたのだ。
 緑だの青だの紫だの赤だのに輝く、なんだかメタリックなその不思議な虫を、私も何匹か手に入れた。

 そういえば、以前住んでいたウチの庭の堅い土には小さな穴がボコボコとあいていた。
 そのうちのいくつかは蟻の巣への入口だったのだけれど、残りは「ニラムシ」と呼んでいた虫の巣穴で、気配を断って近付くと、何かを待ち受けるように真っ黒い顔がピタリと穴を塞いでいるのが見えた。
 私はよくその穴の中に、辺りの雑草の茎や葉を差し込んだ。
 うまくいけば「ニラムシ」を釣り上げられたはずなのだが、成功した覚えは残念ながら、ない。
 「ニラムシ」。その虫の正体を私はいまだ知らずにいる。

 この本は、東京生まれ・東京育ちの泉 麻人さんによる、虫との思い出エピソード集。
 一話ごとに添えられている安永一正氏の細密画の見事さに惹かれ、手に取った。

 カマキリ、モンシロ、アゲハ、カイコ、トノサマバッタ、カマドウマ、オニヤンマ、カブトムシ、ツクツクホウシ、アブ、ホタル……。

 そういえば。
 そういえば。
 そういえば。
 いくつもの記憶が呼び覚まされて、ちょっとびっくりした。

 どこに隠れていたのか知れないそれら記憶の数々が、あまりにも鮮明に蘇ったことに。
 遠い昔の私が、今よりもはるかに密に、多くの虫たちと接しながら日々を過ごしていたことに。
 

新潮 OH!文庫『東京少年昆虫図鑑』
著/泉 麻人 絵/安永一正 発行/新潮社
2001年7月10日発行 ¥638 ISBN4-10-290105-1


2001.08.16
『木のいのち木のこころ(人)』を読み終えた。

 3巻目、(人)篇。
 今回の主人公は、小川三夫氏率いる工人集団「鵤(いかるが)工舎」で、一人前の宮大工を目指して日々修行に励む若者たち。

 ああどうして、彼らの中に私がいないのだろう、な〜んてことをちらと思った。
 

新潮 OH!文庫『木のいのち木のこころ(人)』
著/塩野米松 発行/新潮社
2001年5月10日発行 ¥619 ISBN4-10-290094-2


2001.07.19
『木のいのち木のこころ(地)』を読み終えた。

 宮大工・西岡常一棟梁の聞き書き『木のいのち木のこころ(天)』が面白かったので、続いて手にした。
 今度は、その西岡氏の唯一の内弟子・小川三夫氏の聞き書きだ。

 弟子入りまでの経緯。西岡氏の元での修行の様子。工人集団「鵤(いかるが)工舎」設立の理由。「鵤(いかるが)工舎」での徒弟制について。
 そういった話が、モノローグの形で記されている。

 職人の世界を覗き見るのは楽しい。
 それがどうしてこうも楽しいのかはよく分からんが。
 

新潮 OH!文庫『木のいのち木のこころ(地)』
著/小川三夫 聞き書き/塩野米松 発行/新潮社
2001年5月10日発行 ¥581 ISBN4-10-290093-4


2001.07.09
『木のいのち木のこころ(天)』を読み終えた。

 もとは1993年に草思社より刊行された一冊。
 「最後の宮大工棟梁」と呼ばれた故・西岡常一氏の語りを収録した本だ。

 代々、法隆寺に仕えてきた宮大工の家に生まれ、子供のころから棟梁となるべく育てられた西岡氏は、言うなれば「宮大工中の宮大工」。
 棟梁として生前、その法隆寺の解体修理をはじめ、法輪寺の三重塔の再建、薬師寺の金堂や西塔などの再建を手掛けている。

 法隆寺といえば、1300年の歴史を誇る世界最古の木造建築物である。
 誰よりもその建物を熟知し、それを建てた飛鳥の工人の知と技を敬って、これらを頑に継承せんとする西岡氏の話は、古いどころか私にはとても新鮮だった。

 宮大工と普通の大工はどこがどう違うのか。
 千年以上持つ建造物を建てるために必要なものは何か。
 職人の徒弟制度とは実際はどのようなものなのか。

 などなど、私にとっては初めて知ることばかり。
 わくわくした。なるほどと感心した。
 でもって思った。もっと知りたい!

 そこですかさず本屋へと走った。
 この作品『木のいのち木のこころ』にはあと2冊、(地)篇と(人)篇が存在する。
 

新潮 OH!文庫『木のいのち木のこころ(天)』
著/西岡常一 聞き書き/塩野米松 発行/新潮社
2001年5月10日発行 ¥543 ISBN4-10-290092-6


2001.06.28
東京都美術館で『アール・ヌーヴォー展』を観た。

 平日の午前中に行ったにもかかわらず、案の定、混んでいた。
 しかもおばさんだらけ。

 おばさんたちはたいてい、2人組あるいは3人以上のグループで行動している。
 おばさんたちは「まぁ綺麗!」「素敵よねぇ」「あーら、これ凄いじゃない」「○○はいいわよねぇ」「でも私は△△のほうが好きなのよ」なんてことを一応はヒソヒソ声で、しかし引っ切りなしに喋りながら観る。
 おばさんたちは……って私は別に「おばさんの生態」展を観に行ったわけじゃないのだけれど、とにかくおばさんたちがたくさんいたよ。

 さておばさんたちがドッと押し寄せるほどに好評のこの『アール・ヌーヴォー展』は、19世紀末に花咲いた芸術様式“アール・ヌーヴォー”の全体像を捉えるべく企画された国際巡回展。英米で話題を呼んだ後に日本にも上陸と相成った。
 ガレにドームにラリックにティファニーにミュシャにビアズリーにマッキントッシュ etc...。
 おお! 華やか、華やか。

 中でも印象に残ったのは、建築家エクトル・ギマールによる「パリの地下鉄入口」と、ルイス・カムフォート・ティファニーによるガラスの品の数々。

 それと。
 「アール・ヌーヴォーの源泉」を紹介するコーナーに見つけた月岡芳年の浮世絵!
 北斎や広重の作品に混じって飾られていた。
 海の向こう、ロンドンからはるばるやってきたものだった。
 ここ数カ月間、会いたい会いたいと思ってきた芳年の作品に、まさかこんなところで会えるとは!

 なんだがすごーく得した気分を味わわせてもらっちゃった。
 どうもありがとね、『アール・ヌーヴォー展』。

 追記。
 おばさんたちには持久力がない。会場の入口付近ではやたらと元気だが、奥へ奥へと進むほどにおとなしくなる。
 しかしおばさんたちはたちまちにして再び元気を取り戻す。会場を出て美術館のレストランの席に座るやいなや。
 

『アール・ヌーヴォー展』
2001年4月21日〜7月8日 東京都美術館
主催/東京都美術館・読売新聞社 企画/ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館 後援/外務省・文化庁 協賛/清水建設・NTTドコモ・大日本印刷 協力/JR東日本・日本航空・日本通運


2001.06.23
『ウィーン世紀末文学選』を読み終えた。

 ウィーンの作家の作品が16篇。
 エッセイ風あり、パロディあり、ミステリーあり、恋愛小説あり、といった具合に形もテーマもさまざま。
 共通するのは、それが19世紀末から20世紀初頭の時期に書かれたものであるということだ。

 なんだか最近、頭の中がざわついていて、ちっとも読書に没頭できないんだな。
 だからきっとそのせいだろうとは思うのだけれど、いまひとつピンとこなかった。

 クリムトやシーレの絵からならいつだってビンビン感じられる「ウィーン世紀末」の特殊な空気を、私は、文学からは感じ取ることができなかったよ。
 

岩波文庫『ウィーン世紀末文学選』
編・訳/池内 紀 発行/岩波書店
1989年10月16日第一刷発行 ¥660 ISBN4-00-324541-5


2001.06.11
『人生を<半分>降りる──哲学的生き方のすすめ』を読み終えた。

 表紙の著者名に「好き勝手なことを言う男」というコピーが添えられているのを見て、笑った。
 中島義道さんのご本はまだ一冊しか拝読したことがないのだけれども、その一冊の内容を思い起こしただけで、「中島義道さん」と「好き勝手なことを言う男」が私の頭の中でも違和感なくすんなりと結びついちゃったものだから。
 その一冊とは『うるさい日本の私』である。
 「音漬け社会・日本」という巨大な敵を相手に孤軍奮闘する「中島義道さん」は、そりゃもうカッコイイくらいに「好き勝手なことを言う男」で、えらく印象に残った。

 けれど、「好き勝手なことを言う男」としては強烈に覚えていたものの、「中島さん」が「哲学の先生」だということは忘れていた。
 というより、端から認識していなかったかも。
 『うるさい日本の私』は「好き勝手なことを言う男」の著ではあっても、「哲学の先生」の著ではなかった、気がする。
 比べて本書 『人生を<半分>降りる』は、「好き勝手なことを言う男」の著でありつつ同時にかなり「哲学の先生」の著でもあったので、「中島さん」=「哲学の先生」という図式が私の中でもようやく初めてできあがった。

 さてこの『人生を<半分>降りる』。
 主に40、50代を対象に、お薦めの生き方として「中島さん」は「半隠遁」をご提案。

 「人生にひととおり勝負がつき、自分の天職(のなさ)と能力(のなさ)を悟った」ころ、そしてまだ知力・体力のあるうちに、積極的に「半分だけ隠遁」してみよう。
 「明日死ぬとしたら」という条件を付けて「何をすべきでないか」を考えれば、あなたがこの先、すべきではない沢山の物事が見えるはず。
 まもなくやってくる「死」について考え、これまでの「人生」についてトコトン考えたいなら、すべきではないことからは極力手を引いて、つまり「半隠遁」して、「自分の時間」を確保せよ。

 とまぁ、このような話を入口として、「半隠遁」とはどのような生き方なのかを具体的に説明してくださっているのだけれど、ご自身の体験と、哲学者をはじめ文学者、芸術家など著名な先達たちの言葉やエピソードがふんだんに盛り込まれていて、楽しかった。

 「半隠遁」か…。
 いいな。悪くはない。憧れちゃう。
 

新潮 OH!文庫『人生を<半分>降りる──哲学的生き方のすすめ』
著/中島義道 発行/新潮社
2000年10月10日発行 ¥581 ISBN4-10-290036-5


2001.04.27
Bunkamura ザ・ミュージアムで『ジャン・コクトー展【美しい男たち】』を観た。

 出かけて行ったらば、予想以上に充実した内容の展覧会で嬉しかった。
 絵や写真ばかりでなく、コクトーの部屋の遺品なども陳列してあったりして。
 中に「コクトーの手の複製」が含まれていたのだけれど、コクトーの指は、あぁいかにも繊細でなんとも美しい指だったなぁ。

 【美しい男たち】とタイトルにあるように、会場は、コクトーと深く関わった男性ごとにコーナー分けされていた。
 レーモン・ラディゲ、ジャン・デボルド、マルセル・キル、ジャン・マレー、エドゥアール・デルミット。
 いずれもコクトーのお眼鏡にかなった、才ある美男。
 なのだろうが私の目には、その誰よりもコクトー自身が、最も美しい存在だと映ったよ。
 描かれている男たちはもはや半ばどーでもよく、それらを描いた瞬間瞬間のコクトーばかりが無性に気になってしまった。
 

『ジャン・コクトー展【美しい男たち】』
2001年3月31日〜5月20日 Bunkamura ザ・ミュージアム
主催/Bunkamura・NHKプロモーション 共催/Cartier 後援/フランス大使館・フランス文化省・パリ市 協力/日本航空・ヤマト運輸 企画協力(仏)/コンタクツ・フランス=エトランジェ 企画協力(日)/ヴィジョン・エイ


2001.03.31
『ぼく自身のノオト』を読み終えた。

 ひとりの青年による記録。
 日常の自身の感情を、悉く深く、内へ内へと掘り下げて書き綴った、哲学書のような妙な日記文。

 「タテマエ」をとことん嫌う筆者の観察眼は、一般的に「ホンネ」と考えられているものの嘘をも見抜く。
 「ホンネ」の下にもまだまだ、本人ですら気付いていない「ホンネ」があると信じて、彼はそれを必死で掴もうとする。

 「ほとんどの判断、おそらくすべての決定は、もっとも深いところにある心の奥底ですでになされていて、理論的に考えてそれらに達しようとするのは何とも無駄なことのように思える。「私は何をしたいのか?」というような問いは、ぼくの潜在意識がすでに決定したことを気づかってなされることが多いのかもしれない」

 そんな一文にグサリやられた。
 

『ぼく自身のノオト』
著/H・プレイサー 訳/北山 修 発行/人文書院
1979年10月30日初版第一刷発行 0098-000105-3266(古書店にて購入)


2001.03.27
『戀愛譚』を読んだ。

 楠本まきさんの新刊。

 楠本さんは大好きなマンガ家さんなのだけれど、最近の楠本さんの作品を果たして「マンガ」と呼んでいいのかどうか、私にはわからない。
 大半のページにはコマもなく、フキダシもない。独特の極細ラインで描かれた印象的なイラストと文章がグラフィカルに配置されている。
 なんだか絵本のよう。イラスト詩集のよう。アール・ヌーヴォーの挿し絵画集のよう。
 ハードカバー、オールカラーで値も高いしね。

 なんと呼んでいいのかよくわからないけれど、なんであろうと好きなので、出たからには買わずにはいられない。価格の高さも何のその、今回も迷わず購入した。

 ああ、いいなぁ。
 今度の本は白と黒と銀(!)の世界だ。

 装丁も含め、まるごと一冊のディレクションを、楠本さんご自身が手掛けてらっしゃると思われる。
 つまりこの本の全部が楠本さんの作品なわけで、絵や文以外にも随所随所に楠本さんのこだわりが見え隠れしている点がとても嬉しい。
 黒の光沢紙にマットな黒インクをのせていたり。
 タイトル文字の下、無地バックかと思いきや、うっすらと、ほんとにうっすらと模様が入っていたり。
 ノンブルが小さな漢数字だったり。

 くーっ、素敵!
 金と才能があったなら、私もこういう凝った本を一度は作ってみたいぜ。
 

『戀愛譚』
著/楠本まき 発行/PARCO出版
2001年3月22日第1刷発行 ¥1900 ISBN4-89194-622-9


2001.03.24
講演会『ゲノムを知る』に行った。

 新聞で知った。
 ゲノムの基礎からゲノムを巡る科学技術の最先端までを、研究者の方々がわかりやすくご説明くださるというので、参加に応募。

 遺伝子にはとても興味を持っている。
 どんな楽しいお話が聞けるのかとワクワクしながら出掛けた。
 にもかかわらずグウグウ寝てしまい、大半を聞き逃してしまった!

 つまらなかったからでは決してない。
 小・中・高・大を貫いて「授業中=睡眠時間」だった私。
 悪癖いまだ直らずだったんだなぁ。

 惜しいことをした。
 

講演会『ゲノムを知る』
2001年3月24日 慶應義塾大学西校舎ホール
主催/情報知識学会 後援/国立遺伝学研究所生命情報研究センター国立情報学研究所
講演者/菅原秀明(国立遺伝学研究所生命情報研究センター)、五條堀孝(国立遺伝学研究所生命情報研究センター)、名和小太郎(関西大学総合情報学部)、佐倉 統(東京大学大学院情報学環)


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