街並みサーベイ・メモ20 
家並みの揃いと道路斜線制限  2007.1.05
我が国現代都市の街並みが乱れている一因に「都市計画の全国一律性と複雑な緩和にある」と主張してきたが、もう少し掘り下げてみる。
●わが国の道路斜線は統一的な家並みとは関係ない。
現代の道路際の高さ制限は道路の物理的環境を守るため(道路の明るさ)であり(図C)、18,9世紀のヨーロッパでは壁面線とスカイライン(デザイン)のためにある。(図A) 
後者は江戸期の町屋の家並みと同じとも言えるが19世紀のパリにあった斜線制限などは単に慣習ではなく、時代や街区により様々で(図B)デザイン性が強い。
パリでマンサード(腰折れ屋根)や丸みのある軒先で揃った街区に建物断面をこれ以下と指定した当時の斜線制限の法令を筆者は見た経験がある。
  ●道路斜線は狭い道で緩和し,セットバックや天空率による緩和は抑制した方がよい。
シリーズの当初(No.1)で述べたように、家並みの大混乱を救うのは複雑な都市計画や建築法規でなく、その町にあったルールであり、単純化である。
右の例では横浜元町は現代では珍しい例である。(図D)
この程度の統一と変化は適切であるが、更に求めるなら、建物デザインや開口部などに元町の特色を出す仕掛けがあればインパクトがある街並みになったと考えられる。
馬車道(図C)は歴史建造物の重みでもっている街並みである。様式別に壁面位置を決めるなどすれば新しい方法となるだろう。ストリートファニチャーなどは素晴らしいが、今論じているのは街並みの骨格である。
●道路斜線だけでなく、家並みの佇まいは街毎、道毎にデザインされる必要がある。
歴史のない街にも、街なりの特色がありこれを引出す方法と仕組みが求められる。
 全国では僅かながらその努力と成果が見られる街がある。しかしで街並みサーベイは真似の出来る類型探しではなく、それぞれの「街の特色と魅力探し」が重要である。
    

A.パリ・マレー地区。スカイラインと壁面を揃えるための斜線制限.わが国の道幅:高さ比(1 :1.5を大きく超えている

B.細街路でも高い建物も建つ。1:5くらいあるか。同上地区付近

C.高い建物が見えるが、セットバックして斜線制限緩和を受けている。馬車道の場合、歴史建物に比べ新しい建物が後退している部分はうまい対比になっている。

D.現代では家並みを揃えた特例:本町。道幅高さ比を雁木巾分だけ緩和したのも特例。
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